産業医の医療行為は制限・禁止されているの?主治医との5つの違いとは

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産業医と主治医の5つの違い

産業医と主治医とで異なるポイントは、おもに以下の5つです。

  • 資格
  • 立場
  • 対象者
  • 職務
  • 事業主への勧告権

まずはこれらの違いについて、一つひとつ詳しく解説します。

産業医と主治医の違い(1)資格

産業医と主治医はどちらも医師なので、医師免許を持っている点は同じです。

ただし、産業医は医師免許の取得に加えて、労働安全衛生法第13条第2項で厚生労働省が定める一定の要件を満たさなければなりません。これは、従業員の健康管理を行なうために専門的な知識が必要であるためです

具体的には、労働安全衛生規則第14条第2項に、以下のように定められています。

1.厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行なう研修を修了した者
2.産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行なう実習を履修した者
3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
4.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれらの経験者

出典:厚生労働省

産業医と主治医の違い(2)立場

産業医と主治医は、それぞれ立場にも違いがあります。産業医は企業に選任されており、企業と従業員、それぞれの話を聞いてアドバイスをしたり、措置を講じたりする中立的な立場です。

一方、主治医は患者の立場に立って、病気やケガの治療をしたり、健康的な日常生活を送ることができるよう必要に応じて健康上のアドバイスをしたりします。治療方針も患者の希望に沿うのが基本です。

産業医と主治医の違い(3)対象者

産業医の業務の対象者は、選任した企業が雇用している従業員全員です。したがって、特に健康上の問題がない従業員から、長時間労働やストレスなどによりメンタルヘルスに不調をきたしている従業員まで、すべてが対象者に含まれます。

また、労働環境をチェックし、企業に改善を呼びかけることもあるため、従業員と企業の両者が産業医の仕事の対象といえます。

一方、主治医は病気やケガなど健康上の問題があり、病院やクリニックなどの医療機関を受診した患者が対象です。訪問診療で個人宅に出向くケースもありますが、基本的には来院した患者に対して、診察や治療を行なったり、健康についての相談を受けたりします。

産業医と主治医の違い(4)職務

産業医は選任先の企業に出向き、従業員が健康的に働けるよう健康診断、面接指導、職場巡視、休職や復職の判断、労働衛生教育などを行ないます。

従業員が健康かつ安全に働けるよう、医学の専門家としてサポートすることが産業医の職務であるため、病気の症状が現れる前の状態にも率先して関わるのが特徴です。

従業員の健康増進のためにアドバイスをしたりすることはありますが、診察や治療は基本的に行ないません。

一方、主治医の職務は、病院やクリニックなどの医療機関を受診した患者に対して、診察や検査を行い、その結果に応じて治療などを行います。つまり、主治医が関わるのは、おもに病気の症状が現れたり、ケガをしたりしたあとです。

産業医と主治医の違い(5)事業主への勧告権

産業医は以下のとおり、労働安全衛生法第13条第5項によって事業主への勧告権を有しています。

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

出典:労働安全衛生法第13条

産業医は立場上、改善が必要と判断すれば、事業主に対して勧告を行なうことが可能で、それを受けた事業主は、内容に応じて措置を講じ、衛生委員会に報告する義務があります。

一方、主治医は患者の労働環境を詳しく知る立場にはないので、事業主に対する勧告権は持っていません。

産業医の役割とは?医療行為はできる?

ここからは、具体的な産業医の役割について解説します。

産業医に医療行為はできる?

産業医は医師免許を持っていますが、おもな役割は従業員の健康管理です。そのため、産業医として医療行為を行なうことは基本的にありません。

従業員が体調不良になった場合に投薬や点滴などを行なう、インフルエンザの予防接種を打つ、といった処置は医療行為に当たります。労働安全衛生法に定められた産業医の業務に医療行為は含まれていないため、このような業務を行なうケースはほぼないでしょう。

なお、企業内に診療所を併設するといった条件がそろっていれば、産業医も主治医として医療行為を行なえます。ただし、そこまでの設備を整えている事業場は多くないでしょう。

体調不良の従業員がいる場合の対応は?

従業員のなかで体調不良者が出た場合にも、産業医は診断名の断定や投薬などの医療行為は行ないません。体調不良者の訴えを聞き、意思を尊重しながら、通院を勧めるべきか、事業者に対して労働環境の改善を意見すべきかを判断するのが産業医としての対応です。

症状が続き、日常生活に悪影響をおよぼしている従業員には、医療機関の受診を勧めたり、症状に該当する診療科を助言したりするでしょう。しかし、産業医は医療機関の斡旋はしないので、従業員本人が受診先を探さなければなりません。

一方、体調不良の原因が職場の環境にある場合は、医療機関を受診しても症状が改善されない可能性があるため、事業者に労働環境の改善を求めます。

【復職手続き】産業医の意見書・主治医の診断書の役割とは?

健康上の理由で休職していた従業員が復職する場合、産業医の意見書や主治医の診断書はどのような役割を持つのでしょうか。

産業医の意見書・主治医の診断書の違い

休職していた従業員の復職の可否などについて、産業医と主治医で意見が割れることもあります。例えば、主治医の診断書には「復職可能」と書かれ、産業医の意見書では「復職は難しい」と判定されるようなケースです。

産業医は業務に支障がないかを基準に判断する立場なので、安全に通勤できるか、所定の勤務時間で問題なく働けるかなどを確認し、安定して業務を行なえる状態になければ復職は勧めません。

一方、主治医は患者の生活全般を考慮して判断する立場なので、体調が回復したのか、症状が改善されたのか、安定して日常生活を送ることが可能かといった基準で判定します。

復職手続きの判断基準

産業医と主治医とで復職の可否について意見が分かれた場合、産業医の意見書と主治医の診断書を参考にしたうえで、最終的な判断は企業が行ないます。仮に、産業医が復職可能と判断し、企業が復職は認められないとの決断を下した場合でも、優先されるのは企業の判断です。

企業が最終的な判断をする際には、復職後に再び休職する事態にならないよう、以下の3点を確認するとよいでしょう。

  • 従業員に復職する気持ちがあるか
  • 通常の勤務時間で働けるほど体力や心身の状態が回復しているか
  • 休職の要因となった問題は改善されているか

労働環境の改善や復職後のサポート体制などは産業医にも判断しにくい部分であるため、企業が総合的に判断することが重要です。

まとめ

産業医と主治医はどちらも医師免許の保有者ですが、基本的に産業医が医療行為を行なうことはありません。両者は立場や役割に明確な違いがあり、従業員が抱える健康上の問題や復職の可否などについて、産業医と主治医それぞれの立場で対応します。

事業主は双方の意見を聞いたうえで必要な措置を講じ、復職の最終判断を行なうようにしましょう。

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