常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任した際に所轄労働基準監督署への選任報告書(産業医の選任報告)の提出が必要です。初めて産業医を選任する企業の人事労務担当者にとって、記入項目や添付書類、提出方法(2025年1月からe-Gov電子申請が原則化)は分かりにくく、記入ミスによる差し戻しを懸念する声も少なくありません。
本記事では、産業医選任報告書の書き方・記入例、必要な添付書類、提出期限を、根拠となる法令とあわせて解説します。医籍番号「種別」欄の記入方法や、変更・解任時に必要な届出まで一通り把握できます。
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この記事でわかること
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【1】産業医の選任報告が必要な事業場の条件と根拠法令 -
【2】選任報告書の記入から提出までの3ステップ -
【3】医籍番号「種別」欄の記入例 -
【4】提出期限(選任と届出、2段階のルール) -
【5】変更・解任時に必要な手続き
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産業医の選任報告とは?対象事業場と選任義務の根拠
産業医の選任報告とは、事業者が産業医を選任した際に、所轄労働基準監督署長へ届け出る手続きです。一定規模以上の事業場には選任義務があり、選任すれば終わりではなく届出まで行って初めて法令上の義務を果たしたことになります。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、労働安全衛生法施行令第5条により産業医の選任が義務付けられています。労働安全衛生規則第13条第1項は、選任が必要になった事由が発生した日から14日以内に産業医を選任することを求めており、選任後は同条第2項の定めにより遅滞なく所轄労働基準監督署長へ報告しなければなりません。選任と届出は別々の期限を持つ2段階の手続きです。
報告事項は、労働安全衛生規則第13条第2項で次の8項目が定められています。
一 第二条第二項第一号から第三号まで及び第八号に掲げる事項
二 前項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者の数
三 産業医の氏名、生年月日及び選任年月日
四 産業医が第十四条第二項各号又は労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成八年労働省令第三十五号)附則第二条各号のいずれに該当するかの別及び医籍の登録番号
五 産業医の専門科名
六 専属であるか否かの別及び他の事業場に勤務している場合はその事業場の名称
七 前任者がいる場合はその氏名及び辞任、解任又は退任(以下この条において「辞任等」という。)の年月日
八 初めて産業医を選任した場合はその旨
一号は「第2条第2項第1号〜第3号及び第8号に掲げる事項」への引用となっており、労働保険番号(第1号)、事業の種類並びに事業場の名称・所在地・電話番号(第2号)、常時使用する労働者の数(第3号)、報告年月日及び事業者の職氏名(第8号)が該当します。詳しい選任義務そのものの解説は、産業医の選任義務の記事もご覧ください。
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「常時使用する労働者」の数え方(パート・派遣を含む)
「常時使用する労働者」の数は、正社員だけでなく、パートタイマーや契約社員、派遣労働者も含めて、事業場で常態として就労している人数で判断します。日雇い労働者であっても、実質的に常態として使用されている実態があれば算入の対象です。
労働者数の数え方は事業場単位での判断が原則です。自社の雇用形態が複雑で判断に迷う場合は、産業医や社会保険労務士への相談をおすすめします。
産業医の選任報告を怠った場合の罰則(50万円以下の罰金)
産業医の選任報告を怠った場合、労働安全衛生法第120条により罰則の対象になります。同条第一号は、産業医の選任義務を定めた第十三条第一項を含む多数の条項への違反を列挙したうえで、次のとおり罰則を定めています。
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第十三条第一項(産業医の選任義務)は第百二十条第一号に列挙されており、選任義務そのものに違反した場合は五十万円以下の罰金の対象になります。選任は済んでいても報告を忘れているケースもあるため、選任と届出の両方が完了しているかをあわせて確認することが重要です。
産業医を変更・解任した場合も選任報告は必要
産業医を変更・交代した場合や、産業医が辞任・解任された場合も、改めて産業医選任報告書の提出が必要です。「解任届」という専用の様式は存在せず、既に定められている産業医選任報告書の様式を用いて届け出ます。
現行の規定では、産業医の辞任・解任があったときは、遅滞なくその旨と理由を衛生委員会または安全衛生委員会へ報告する義務があります。
4 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
さらに、令和8年8月1日からは労働安全衛生規則の改正により、産業医の辞任等があった場合に所轄労働基準監督署長への報告も新たに義務付けられます。
事業者に対して、産業医の辞任、解任又は退任(以下「辞任等」という。)があった場合に所轄労働基準監督署長へ、当該産業医の氏名及び辞任等の年月日等を遅滞なく報告することを新たに義務付けるものであること。
ただし、安衛則第13 条第2項に基づく産業医の選任報告に際して、辞任等の報告を行った場合は、上記の辞任等の報告は不要とすること。
労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(基発0428第4号)|厚生労働省
なお、新たな産業医の選任報告とあわせて辞任等の報告を行った場合は、辞任等の報告を別途行う必要はありません。産業医の変更・交代に伴う具体的な手続きの流れは、産業医の変更・交代の手続きの記事で詳しく解説しています。
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産業医選任報告書の作成から提出までの3ステップ

(図:産業医選任報告書の作成から提出までの3ステップ)
(編集部作成)
産業医選任報告書の作成から提出までは、大きく3つのステップに分けられます。それぞれの詳細は後述しますが、まずは全体の流れを把握しておくと、記入や提出の段階で迷いにくくなります。
- 様式を入手する
- 産業医選任報告書に記入する
- 所轄の労働基準監督署へ提出する
ステップ1.様式を入手する(PDF・入力支援サービス・e-Gov電子申請の3方法)
産業医選任報告書の様式は、厚生労働省のPDF様式のほか、入力支援サービスやe-Gov電子申請の画面上から入手できます。
2025年1月1日からは、産業医の選任報告を含む複数の届出について電子申請が原則義務化されており、様式の入手段階からe-Gov電子申請を前提に進めるのが基本になります。厚生労働省の入力支援サービスは、届出・申請等の帳票印刷に対応したサービスとして現在も稼働しています。
2025年1月1日より以下の手続について、電子申請が原則義務化される:
■ 労働者死傷病報告
■ 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
■ 定期健康診断結果報告
■ 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告(ストレスチェック結果等報告)
■ 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
■ 有機溶剤等健康診断結果報告
■ じん肺健康管理実施状況報告
記入例つきの様式は、下記からダウンロードできます。
「産業医選任届出書(記入例有)」をご希望の方は下記よりダウンロード
産業医の選任報告(選任届)とは?書き方・記入例と提出期限、必要書類をわかりやすく解説
ステップ2.産業医選任報告書に記入する
産業医選任報告書には、事業場の情報と産業医本人の情報を記入します。主な記入項目は、前述の労働安全衛生規則第13条第2項が定める8項目に対応しています。
事業の種類(産業分類)欄は日本標準産業分類の分類コードを参照して記入します。既存の記入例で参照している令和5年改定版が、現時点でも最新版です。
ステップ3.所轄の労働基準監督署へ提出する
産業医選任報告書の提出方法は、原則としてe-Gov電子申請で行い、電子申請が難しい場合に限って窓口への持参や郵送といった書面での提出が例外的に認められます。
提出先は事業場を管轄する労働基準監督署です。管轄が分からない場合は、事業場の所在地から確認できます。
産業医の医籍番号・種別コードの記入例
産業医選任報告書の医籍番号「種別」欄には、様式第3号が定めるコード1〜7の中から、産業医としての資格要件に該当する区分を選んで記入します。どのコードに該当するかによって記入内容が変わるため、コードごとの区分内容を確認しておく必要があります。
| コード | 区分内容 |
|---|---|
| 1 | 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者 |
| 2 | 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの |
| 3 | 上のいずれにも該当しないが、平成10年9月30日において産業医としての経験年数が3年以上である者 |
| 4 | 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり又はあつた者 |
| 5 | 労働安全衛生規則第14条第2項第5号に規定する者 |
| 6 | 平成8年10月1日以前に厚生労働大臣が定める研修の受講を開始し、これを修了した者 |
| 7 | 労働衛生コンサルタントで試験区分が保健衛生である者 |
多くの場合、産業医研修(コード1)を修了した医師か、産業医科大学など指定の課程を卒業した医師(コード2)のいずれかに該当します。自社で選任する産業医がどのコードに該当するかは、産業医本人に確認するのが確実です。
産業医選任報告書に添付する2つの書類
産業医選任報告書を提出する際は、産業医としての資格を確認できる書類として2点の添付書類が必要です。
産業医選任報告の場合は、医師免許証の写し及び別表コード1から7までのいずれかに該当することを証明する書面(又は写し)を、添付すること。
総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告様式|厚生労働省
- 医師免許証の写し
- 医籍番号「種別」欄のコード1〜7のいずれかに該当することを証明する書面の写し(研修修了証等)
添付書類が不足していると差し戻しの原因になります。提出前に2点がそろっているか確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。
産業医選任報告書の提出期限は「選任後遅滞なく」
産業医選任報告書の提出期限は、選任そのものの期限と、届出の期限を分けて理解する必要があります。産業医の選任自体は事由が発生した日から14日以内に行い、選任後の届出は「遅滞なく」行うことが求められます。
労働者数50人以上の事業場では、産業医を選任したとき、または産業医の辞任等※1があったときは、遅滞なく、電子申請により、所轄労働基準監督署⾧に報告※2する必要があります。
辞任・解任によって改めて産業医を選任する場合も、同じ14日以内のルールが適用されます。
選任していた産業医の辞任等があったときは、当該日から14日以内に新たに産業医を選任する必要があります。
「遅滞なく」には具体的な日数の定めはありませんが、選任後は速やかに手続きを進めることが求められます。
事業所を移転した場合も選任報告書の届出先変更が必要
事業所を移転した場合、産業医選任報告書についても、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署への届出内容の変更が必要になります。産業医の選任報告以外にも、事業所の移転にともなって次のような複数の窓口への届出が必要になるケースがあります。
| 届出書類名 | 窓口 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 事業年度、納税地、その他の変更・異動届出書 | 新・旧納税地所轄税務署 | 移転後速やかに |
| 本店移転登記申請書/支店移転登記申請書 | 法務局 | 移転後速やかに |
| 健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 年金事務所 | 移転後5日以内 |
| 労働保険名称・所在地変更届 | 新所轄監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 労働保険確定保険料申告書、労働保険概算保険申告書 | 新所轄監督署 | 保険関係が消滅・成立した翌日から50日以内 |
| 労働保険関係成立届 | 新所轄監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 労働基準法に関する適用事業報告書 | 新所轄監督署 | 移転後速やかに |
| 安全管理者選任報告・衛生管理者選任報告・産業医選任報告 | 新所轄監督署 | 移転後速やかに |
| 自動車保管場所証明申請書 | 新所轄警察署 | 移転から5日以内 |
| 防火管理者選任届 | 新所轄消防署予防課 | 移転後速やかに |
産業医の選任報告以外に人事担当が押さえておきたい3つの義務
産業医の選任報告以外にも、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、あわせて対応が必要な法定義務があります。
代表的なものとして、定期健康診断、ストレスチェック、衛生委員会の設置が挙げられます。いずれも産業医の選任報告と同じく、実施や選任の状況を所轄労働基準監督署へ報告する義務をともないます。
定期健康診断の実施と結果報告
事業者は、常時使用する労働者に対して年1回の定期健康診断を実施し、結果を所轄労働基準監督署へ報告する義務があります。
定期健康診断の対象者や検査項目の詳細は、定期健康診断の実施項目の記事で解説しています。
ストレスチェックの実施と結果報告
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられており、実施状況を所轄労働基準監督署へ報告します。
ストレスチェック制度の概要は、ストレスチェック制度とはの記事で解説しています。
衛生委員会の設置と衛生管理者の選任報告
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、衛生委員会の設置と衛生管理者の選任も必要です。
第九条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
第四条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
衛生管理者の選任についても、産業医と同様に所轄労働基準監督署への報告が必要になります。設置・運営の詳細は、衛生委員会の設置の記事をご覧ください。
産業医の選任報告に関するよくある質問
産業医選任報告書の記入や様式の呼び方について、人事労務担当者からよく寄せられる質問をまとめました。
医籍番号の「種別」欄はどう記入すればいい?
医籍番号の「種別」欄には、様式第3号が定めるコード1〜7の中から、産業医としての資格要件に該当する区分を選び記入します。
多くの場合、産業医研修を修了した医師はコード1、産業医科大学卒業者などはコード2に該当します。
産業医選任届と産業医選任報告書は同じもの?
様式上の正式名称は「産業医選任報告書」であり、「選任届」は通称として広く使われている呼び方です。提出する書類は同一です。
産業医の役割そのものについては、産業医の役割の記事もご覧ください。
まとめ|産業医選任後は速やかに労働基準監督署へ届け出よう
産業医選任報告書は、常時50人以上の労働者を使用する事業場が産業医を選任した際に、遅滞なく所轄労働基準監督署へ提出する書類です。記入項目は労働安全衛生規則第13条第2項が定める8項目に対応しており、医籍番号「種別」欄や添付書類の不足は差し戻しの原因になります。
産業医の選任・交代・辞任のいずれの場面でも、報告のタイミングと様式は共通しています。自社で対応が難しい場合は、産業医の紹介から書類対応までを含めて外部に相談する方法もあります。
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