東京都で産業医を探す際に、東京都医師会への相談を考える方は多いでしょう。しかし、相談先や選び方によって産業医に支払う報酬が異なるため、産業医紹介会社などほかの方法も併せて検討すべきです。
そこで本記事では、東京都の産業医事情や産業医紹介会社の選び方について紹介します。また、産業医報酬の相場、産業医選任の際にかかる費用など事前にチェックすべき項目について解説しますので、最後までご覧ください。
産業医選任やオンライン・訪問面談、職場巡視、
衛生委員会の立ち上げ・運営など産業医と産業看護職2名体制で支援
気になる東京の産業医事情とは?
東京都の産業医の数は、約15,600人と想定されます。全国で医師の数が48,578人と、都道府県の中で一番多くなり、産業医の数も一番多いと考えられます。
産業医数の算出方法は以下の通りです。
東京都の産業医数 = ①東京都の医師数 x(②全国の産業医数 / ③全国の医師数)
① 東京都の医師数:48,578人(2022年時点)
② 全国の産業医数:約11万人(2024年時点)
③ 全国の医師数:343,275人(2022年時点)
参考:厚生労働省の公開している届け出があった医師数 | 厚生労働省
参考:医師数,主たる従業地による都道府県-指定都市・特別区・中核市(再掲)、主たる業務の種別 | 厚生労働省
東京都の産業医が必要な事務所数
労働安全衛生法第13条に基づき、50人以上の労働者を抱えている事業所は、産業医の選任が必要です。
東京都で50人以上の労働者を抱えている事業所は、2021年時点で28,177事業所でした。そのなかで多い業種としては、卸売業・小売業が5,817事業所(20.6%)、サービス業(他に分類されないもの)が3,895事業所(13.8%)、情報通信業が3,694事業所(13.1%)でした。
近年、情報通信業の発展にともない、情報通信業に従事する労働者はストレスを抱えやすくメンタルヘルス不調により休職するケースが増加しています。そのため、メンタルヘルス対策を得意としている産業医は需要があるといえるでしょう。
東京都の産業医は、約15,600人いることが想定され、そのうち産業医として活動している割合は約48.7%となり、産業医一人あたりが担当する事業所数は、約3.7事業所になります。産業医が不足するということは考えづらいですが、東京都の産業医は求められる対応事項が多いため、求められるレベルも高くなります。
23区内と23区外で産業医が求められることの違い
23区と23区外では、産業医に求められる対応事項が異なります。
23区には大企業が多くあり、特に千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区など経済を担う主要区では、大企業病が見られるケースは少なくありません。大企業病とは、前例主義や責任の所在が曖昧、意思決定が遅いなど、大企業に見られる非効率的な企業体質のことです。大企業病がストレスの原因となり、メンタルヘルスに関する問題が発生しやすいため、メンタルヘルス対策が産業医に求められます。
メンタルヘルスの管理については、産業医の良し悪しが明確に出てきます。コミュニケーション能力が高く、その場で問題を解決できる産業医は需要が高いといえるでしょう。
また、23区のそのほかの地域では、新型コロナウイルス感染症の流行により、オフィスへの出社からテレワークに変わった労働者が増えています。そのため、テレワーク実施による社員の業務管理、健康管理、作業環境の管理が産業医に求められます。
ハラスメントを含むメンタルヘルス対策も産業医の業務範囲となり、適切な指導やアドバイスができる産業医は重宝されるといえるでしょう。
一方、23区外では、大企業の事業所や工場が多く、長時間労働も少なくありません。そのため、健康診断の就業判定、ストレスチェック対応、職場巡視などのコンプライアンス対応、感染症予防対策が産業医に求められます。
就業判定の事後措置をどのようにとるか判断したり、ストレスチェック後に高ストレスと判断された労働者に対する早期フォローを行なうなど、柔軟に対応しなければなりません。産業医は、企業側と労働者側に対して中立な立場となって、合理的な判断が求められます。
東京都で最も産業保健への理解が求められるエリア
東京都は最も産業保健への理解が求められるエリアといえるでしょう。企業担当者が求める産業医のスキルや能力のレベルは、高いといわれています。
特に23区は大企業が多く、メンタルヘルス対策、テレワークの対応、就業判定、ストレスチェック、職場巡視など幅広い職務とさまざまなケースの解決が必須であり、幅広い産業保健の理解および実践が必要となります。
また、23区は大企業の本社も多く、健康管理室を設置している企業は少なくありません。健康管理室を設置している企業では、保健師などの産業保健スタッフと協力のうえ、保健指導、面接の対応が必要です。そのため、高ストレス者や産業保健スタッフとの連携をスムーズに行なう必要があり、コミュニケーション能力の高さが求められます。
東京都の産業医は人数が多く、企業の産業医選任の競争率が高いこともあり、産業医は選任してもらうために、自ら産業保健について学び、スキル向上に努める人が多いといわれています。
東京都でデスクワークとうつ病が問題視されている理由について
東京都は、デスクワークに従事する人が多く、デスクワークによるうつ病が問題視されています。
一日中座って仕事をしていると、疲労がたまりやすくなります。また、コミュニケーション不足に陥りやすいなどデスクワーク特有の労働環境では、メンタル不調を発症する可能性が高くなるといわれています。メンタル不調を放置すると、うつ病につながりやすくなります。メンタルヘルス対策、休職・復職対応などを産業医と協力して対応しましょう。
東京都のうつ病患者について
東京都で2020年に医療機関を受療したうつ病・躁うつ病患者数は約24万人です。2017年の12.2万人から約2倍増えており、年々増加傾向にあります。特に、若年層のうつ病・躁うつ病患者が増えており、原因の一つとしては、新型コロナウイルスの流行があげられます。
うつ病の労働者に対して、企業担当者は、産業医や主治医などと連携をとりながら、労働環境の改善を行ない、再発防止に努めましょう。
参考:4 「 精神疾患 」 | 東京都福祉局
東京では産業医講習に力を入れている
労働安全衛生法の改正や働き方の多様化、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、近年、急激なスピードで社会全体が変化しています。そうした変化に対応していくためには、正しい知識と時代に合わせた対応が不可欠です。
また、労働安全衛生規則の一部が改正されたことで、産業医の役割・職責の重要性も高まっています。そこで、産業医のネットワークの拡大や研修会の開催など、産業医活動に専念するための環境や体制の構築が進んでいます。
そうした背景から、産業医の資格取得を希望する医師が増加しており、産業医を養成する産業医科大学と日本医師会が共同で研修会を開催するなど、国や自治体、大学がそれぞれ協力して、産業医講習に取り組んでいます。
東京都でも、産業医向けの講座や研修会を数多く行なっています。
【2023年】産業医向け研修会
産業医は、以下のような研修会を通して、常に最新の情報を把握・共有しながら、産業保健の見地を踏まえて、企業や労働者に合わせた意見や指導を行ないます。
- 2023年8月6日(日):第4回産業医のためのレベルアップセミナー「トラブル防止のための産業医実務Q&A」
- 2023年9月9日(土):産業医学実践研修(産業医のための教育技術入門)
- 2023年10月1日(日):産業医労働衛生スタッフ研修会
上記のほかにも数多くの研修が行なわれているため、ぜひ東京都医師会のホームページをご確認ください。
産業医の選任にかかるコストの種類
産業医選任にかかるコストは、報酬だけではありません。ここでは、産業医を選任する際にかかるコストを4つ解説します。
産業医の選任までにかかるコスト
産業医を選任するまでに発生するコストには、人的なものと時間的なものがあります。具体的には、産業医を探す担当者の方の労力や手間、業務時間などが挙げられます。
前述のとおり、東京都では事業場の数に対して産業医の数が不足しており、新たな産業医を選任するのは容易ではありません。また、初めて産業医を選任する事業場の場合、14日以内に産業医を選任する必要がある、という時間的制約もあります。
万が一、14日以内に産業医を選任できなければ、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金に処される可能性があるため、注意が必要です。
期限内に産業医を選任するため、高額な報酬金額でも契約せざるを得ない場合もあるでしょう。さらに、企業担当者がこういった対応に追われ、時間外労働を行なった場合にも、追加のコストが発生します。
産業医の選任後にかかるコスト
産業医の選任後にかかるコストは、産業医に支払う報酬やマネジメント業務にともなうコストです。報酬金額は産業医の実績や業務内容、業務時間、勤務日数、事業場の労働者数などによって異なります。
マネジメント業務にともなうコストには、スケジュール調整や産業医とのコミュニケーションを行なう労力や手間なども含まれます。専属産業医は事業場に常駐するため大きな問題にはなりませんが、嘱託産業医は病院などに勤務する非常勤の産業医であるため、来社する勤務日のスケジュール管理や報酬の支払いに関する事務作業を行なわなければなりません。
また、契約後に産業医から辞退の申し出があった場合や契約を更新しなかった場合は、あらためて産業医を探すコストが発生します。
採用した産業医が自社に合わないときにかかるコスト
選任後、産業医が自社に合わないことが判明し、追加のコストがかかるケースもあります。
- 希望する業務に対応してもらえない
- 業種や地域などの特性を加味してもらえない
- 自社のニーズに対して医師が専門外で、対応が不十分
- 女性の産業医を探す必要がでてきた など
上記のような場合は、産業医との話し合いや研修を行なうコスト、産業医をあらためて選任するコストが発生します。
自社に合わない産業医を採用し続けることは、会社の損失につながります。例えば、メンタルヘルスに疎い産業医が、復帰困難な休職労働者に対して復帰可能と判定した場合、労働者が再び休職したり、退職したりするリスクが高まります。
人材が流出すれば、新たに採用活動を行なう必要が生じ、さらにコストがかさむでしょう。
産業医紹介会社に支払う手数料
産業医の紹介サービスを利用する場合、産業医への報酬とは別に、30%程度の手数料がかかります。
【例】手数料が30%の場合
紹介会社への年間の支払い金額=産業医への報酬金額×手数料30%×12ヵ月
追加コストはかかるものの、多くの産業医のなかから自社に合う人材を見つけられる産業医紹介サービスの人気は、近年高まっています。選任後のミスマッチによる追加コスト発生のリスクを回避できるのはもちろん、万一のトラブルの際にも、紹介会社が交渉・仲介してくれるため安心です。
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産業医紹介会社の選び方|事前チェックすべき項目とは?
手間や労力をかけずに、自社にぴったり合う産業医を見つけたいなら、産業医紹介会社を活用するのがおすすめです。紹介会社は、企業や労働者の特徴やニーズを把握したうえで、適切な産業医を紹介してくれます。さらに、産業医の交代や変更が必要になった場合にも、紹介会社が仲介に入るため安心です。
このようにメリットの多い産業医紹介会社ですが、「どの会社にお願いすればいい?」と悩む企業担当者の方もいるでしょう。そこで、産業医紹介会社を活用する際に、事前に確認すべき3つの項目について紹介します。
対応エリアが都内であること
産業医は、職場巡視や面談などで実際に事業場を訪問します。そのため、産業医を選任する予定のある事業場の地域を、紹介会社が対応しているかどうかを確認しておきましょう。
東京都は産業医の数が全国で最も多いため、対応している紹介会社も数多く存在します。しかし、東京都以外の事業場でも産業医の選任を検討している場合は、その地域も対応しているか併せて確認しておく必要があります。
産業医の在籍数
紹介会社に登録している産業医の在籍数も確認しましょう。産業医の在籍数が多いほうが、事業場のニーズに合った産業医を選任するための選択肢が増えるからです。
また、産業医の変更が必要となった際にも、産業医の在籍数が多い紹介会社のほうが、次の候補を見つけやすくなります。
選任後のアフターサービスがあること
産業保健活動は、産業医を選任してからがスタートです。選任後は、職場巡視や衛生委員会の立ち上げ・運営、労働者の日々のメンタルケアや休職・復職時の対応など、膨大で複雑な業務を産業医と連携して行なっていく必要があります。
初めての産業医選任の場合、「産業医を選任して事務手続きは終わったけど、次に何をすべきなのかわからない」といったケースも少なくないでしょう。
したがって、産業医紹介会社を選ぶ際には、アフターサービスの有無や内容もしっかり確認することをおすすめします。産業医との業務調整や事務手続きの代行といった紹介会社のアフターサービスを活用し、企業担当者の方の負担を減らすことで、継続的な産業保健活動が可能になります。
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エス・エム・エスのリモート産業保健では、産業医の選任からストレスチェック、産業医面談、職場巡視、各種産業保健業務にともなう事務作業までをトータルサポートします。
会社概要
- 会社名:株式会社エス・エム・エス (英語表記)SMS Co.,Ltd.
- 本社所在地:東京都港区芝公園2-11-1 住友不動産芝公園タワー
- 設立日:2003年4月4日
- 東証プライム市場上場(証券コード:2175)
- 資本金:25億5,172万円(2024年3月31日時点)
- 従業員数:連結:4,188人、単体:2,754人(2024年3月31日時点)
- 企業URL:https://www.bm-sms.co.jp/
特徴
エス・エム・エスは、「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」ことをミッションに掲げて、高齢社会が直面する以下のような社会問題の解決を目指しています。
- 質の高い医療、介護のサービスの提供が困難になる
- 現役世代の負担がより深刻になる
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まとめ
産業医には労働者の健康と安全を守る役割があり、事業場の労働者数により専属産業医と嘱託産業医に分類されます。産業医のいない事業場で突発的に相談や指導が必要になった場合は、スポット契約も有効です。
本記事では産業医の探し方を6種類紹介しましたが、自社に合う産業医を確実に見つけたい場合には、産業医紹介会社を利用するのがよいでしょう。
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