ハラスメントの定義とは?
ハラスメントとは、他者にいじめや嫌がらせをしてダメージを与える発言や行動のことです。ハラスメントの種類はさまざまですが、客観的に理不尽で不必要な言動を行ない、相手が不快に感じたならば、それはハラスメントとされます。
ハラスメントを放置すると、労働者の仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく、企業の社会的評価も落ちてしまいます。
労働者・企業ともにデメリットばかりのハラスメントが起こらないように対策し、ハラスメントが起こった場合も早急な対応を取ることが企業には求められます。
会社でよく見られるハラスメントの種類18選!
パワハラ、セクハラなどの代表的なハラスメント以外にも、対策が必要なハラスメントは数多くあります。ここからは会社でよく見られるハラスメントを紹介します。
ハラスメントの種類(1)パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)とは、同じ会社で働く者に対して、職場における優越的な関係を用いて、身体的・精神的なダメージを与えることです。
具体的には、以下の3要素すべてに該当する言動が、パワハラとみなされます。
- 優越的な関係に基づいて行なわれる
- 業務の適正な範囲を超えて行なわれる
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与える、または就業環境を害する
なお、「優越的な関係」とは、上司といった立場上の上位者だけではなく、専門スキルの高い同僚など、業務の遂行で優位に立っている人も含みます。また、オフィスの中だけではなく、出張先や会社主体の飲み会での言動がパワハラとされることもあります。
ハラスメントの種類(2)セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場で性的な言動をして、他者を不快にさせることです。セクハラは異性間で起こるイメージが強いですが、同性同士の言動も含まれます。
またパワハラと同様に、出張先や飲み会など業務の延長線上で発生した事案も、職場でのセクハラとされる可能性があります。その他、「男のくせに」「女だから」といった固定の役割分担的な発言もセクハラとみなされることがあります。
ハラスメントの種類(3)マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠・出産を理由に嫌がらせをすることです。妊娠・出産をした女性や、産休・育休を取得する労働者に対して、肉体的・精神的ダメージを与えると、マタハラとみなされる可能性があります。
妊娠した女性に退職を迫る、育児休暇の取得を拒否する、給料を下げるといった行為が、代表的なマタハラの例です。他にも、「妊婦はいつ休むかわからない」「短時間勤務でいいよね」といった心ない発言も、マタハラと判断される可能性が高いでしょう。
ハラスメントの種類(4)パタニティハラスメント(パタハラ)
パタニティハラスメント(パタハラ)とは、マタニティハラスメントの男性版で、育休を取得する男性労働者に対する嫌がらせのことです。男性に育児休暇取得・時短勤務などの制度を利用させない、育休を理由に減給・降格・解雇を行なうことなどが挙げられます。
職場の上司や他の労働者が「男のくせに育休を取るのはありえない」「自分のときは、育休なんて取らなかったよ」など、取得を諦めざるをえないような言動をした場合にも、パタハラとみなされます。
ハラスメントの種類(5)モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)とは、モラルに反する言動、つまり嫌がらせをして、相手を精神的に追い詰める行為のことです。特に理由がないのに無視する、睨む、挨拶を返さない、相手を否定するなどがモラハラにあたります。
他にも、周囲の目があるなかで必要以上に厳しく叱責する、仲間はずれにするなども、モラハラとみなされることがあります。モラハラは、本人が「モラハラをしている」と気付かないこともあるため、会社主体で対策を講じることが大切です。
ハラスメントの種類(6)ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、「男らしさ」「女らしさ」を相手に押しつけて基準に当てはめようとし、相手に不快な思いを与えることをいいます。
個人の価値観で「男はこうだ」「女はこうだ」と勝手に当てはめて、多様な生き方を認めずに相手の行動を批判すると、ジェンハラとみなされる可能性があります。
ハラスメントの種類(7)リストラハラスメント(リスハラ)
リストラハラスメント(リスハラ)とは、リストラ対象者を自主退職に追い込む嫌がらせ行為のことです。
原則として、会社側が一方的な解雇を行なうことは、法律で禁止されています。したがって、「特定の労働者を解雇したいが、正当な理由がない」といった状況で、リスハラを行なう会社は少なくありません。具体的には、多すぎる量の仕事を与える、逆にまったく仕事を与えない、能力や経験を活かせないような部署に配置転換する、執拗に退職を迫る、といった行為が挙げられます。
ハラスメントの種類(8)セカンドハラスメント(セカハラ)
セカンドハラスメント(セカハラ)とは、ハラスメントを受けた人が他者に相談したときに、嫌がらせや不利益な扱いをされる二次的な被害のことをいいます。
ハラスメントを受けている人が、自身の被害について誰かに相談するのは簡単なことではありません。やっとのことで相談したにもかかわらず、「あなたの勘違いではないか」「あなたの言動がそもそもの原因ではないか」などと責められてしまう、といったケースがセカハラにあたります。特にセクハラは、セカンドハラスメントにつながりやすいため注意が必要です。
ハラスメントの種類(9)スメルハラスメント(スメハラ)
スメルハラスメント(スメハラ)とは、匂いで他者に不快感を与えることです。ここでの「匂い」とは、口臭、体臭、香水、タバコの匂いなどを指します。匂いの良し悪しに関わらず、相手が不快に感じた場合はスメハラにあたる可能性があります。
スメハラは本人が気付かないケースが多いため、意識的に気をつける必要があります。不快な匂いのせいで気分が悪くなる、仕事に集中できなくなる、という方もいるため、「たかが匂い」と軽く考えてはいけません。
ハラスメントの種類(10)スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメント(スモハラ)とは、タバコを吸わない人に対して吸うように強要することや、タバコを吸わない人が受動喫煙にさらされることです。タバコの煙を吸い込むと健康上の悪影響が大きいため、実際に訴訟に発展する事案も発生しています。
具体的には、会議で上司が喫煙をしている、休憩後の同僚のタバコの匂いが気になる、受動喫煙により持病が悪化した、といったケースが挙げられます。
ハラスメントの種類(11)アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲み会でのアルコールの早飲み・一気飲みの強要、飲めない人に無理矢理飲ませる、飲めないことを嘲笑するなど、飲酒に関する嫌がらせ全般のことを指します。
お酒は飲み方を間違えると急性アルコール中毒を招き、命を落とす危険もあるため、特に注意が必要です。職場での飲酒の強要は、絶対に行なわないようにしましょう。
ハラスメントの種類(12)リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメント(リモハラ)とは、リモートワークで起こるハラスメントのことです。テレワークハラスメント(テレハラ)と呼ぶこともあります。リモートであるため相手との距離感がつかめず、気付かないうちにパワハラ・セクハラなど行なってしまうケースもあります。
リモハラ(テレハラ)にあたる例として、テレビ会議の際にカメラに映る自宅や服装をみて言及する、常にカメラをオンにするよう指示して監視する、などが挙げられます。
ハラスメントの種類(13)テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメント(テクハラ)とは、ITの得意な人が苦手な人に対して行なうハラスメントのことです。テクハラは、ITに慣れている若い世代から中高年に対して行なわれるケースが多く、部下から上司、同僚間でも起こりえます。
例えば、IT機器をうまく使いこなせないことを責める、専門知識が必要な高度な業務をITが苦手な人に担当させるなどは、テクハラとみなされる可能性があります。
ハラスメントの種類(14)パーソナルハラスメント(パーハラ)
パーソナルハラスメント(パーハラ)とは、その人の性格や見た目、話し方の癖などをからかって、嫌がらせをすることです。相手が無意識に発言したことでも、本人にとってはかなりの苦痛になり、精神的ダメージを受けることがあります。
例えば、「○○だから仕事ができないんだ」などと発言して、精神的苦痛を与える、個人の特性を理由に仕事内容を制限するなどが挙げられます。他にも、あだ名をつけたり、見た目で判断したりすることもパーハラにあたる可能性があります。
ハラスメントの種類(15)コミュニケーションハラスメント
コミュニケーションハラスメントとは、コミュニケーションが不得意な人に会話を強要して、不快感を与えるような言動をすることをいいます。
コミュニケーションには得意不得意があるため、強要すると不快感を与えてしまいます。例えば、良かれと思って「もっと積極的に同僚と話したほうがいいよ」などと促すことも、コミュニケーションハラスメントとみなされるかもしれません。
コミュニケーションが得意な人と苦手な人がいることを認識し、相手を思いやった言動をすることが大切です。
ハラスメントの種類(16)レイシャルハラスメント(レイハラ)
レイシャルハラスメント(レイハラ)とは、人種や民族、国籍を理由に差別をしたり、不適切な言動をしたりすることです。「ハーフってかっこいい」「ハーフなのに英語を話せないの?」など、自身では何気ない会話や質問と思っていても、相手を不快にすることがあります。
他にも、外国人を「ガイジンさん」などと呼ぶ言葉も、差別的な響きがあるため注意が必要です。また、会社で国籍や人種を理由に評価したり、その国の代表のように扱ったりすることも、レイハラとみなされることがあります。
ハラスメントの種類(17)時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメント(ジタハラ)とは、労働時間の削減を強制するハラスメントのことです。労働基準法の改正や働き方改革の促進により、企業には時間外労働の削減が求められています。しかし、対策もないまま、ただ定時退社や残業禁止などを強制する企業もあります。
労働時間の削減ができても、業務を自宅に持ちかえることになったり、仕事の質が落ちたりすると意味がありません。企業は、労働時間を削減してもジタハラが起きないように対策する必要があります。
ハラスメントの種類(18)マリッジハラスメント(マリハラ)
マリッジハラスメント(マリハラ)とは、独身者に結婚の話をして不快感を与えることです。例えば、「いつ結婚するの?」「彼氏はいるの?」「そんな調子だと結婚できないよ?」などといった言葉が挙げられます。
結婚する・しないは個人の自由であり、結婚について聞かれるのが苦痛な人もいます。また、「独身は気楽でいいね」「結婚って幸せだよ」なども、マリハラにあたる可能性があります。
価値観は人それぞれであるため、結婚に対する自身の考えを押しつけるのは、相手の負担になるということを理解しておきましょう。

4月のパワハラ防止法施行に向けて、ハラスメント対策を職場で実践するための知識とヒントがつまった入門書「職場パワーハラスメント対策ガイドブック」をご活用ください。
まとめ
今回は、会社で起こりやすいハラスメントを一挙に紹介しました。令和4年4月からは「パワーハラスメント防止措置」が中小企業でも義務化されているため、今後もハラスメント対策への整備を進めていく必要があります。
しかし、「実際にどのような方法を採れば良いのかわからない」「通常業務と並行して行なうため、業務負担が大きい」といった理由で、ハラスメントへの対応が進まない企業もみられます。
そんな悩みを抱える企業におすすめなのが、「リモート産業保健」のサービスの活用です。リモート産業保健のハラスメント相談窓口サービスを利用すれば、心理カウンセラーなどの専門家による窓口を、社内リソースを割くことなく設置することができます。
また、ハラスメントによるメンタルヘルス不調の対応も産業医・産業看護職の2名体制で行なうため、充実したサポートが可能です。パワーハラスメント対策ガイドブックも用意してあるため、まずは下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
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