そもそもメンタルヘルスとは?
メンタルヘルスとは、その言葉のとおり「心の健康状態」を意味します。日々の生活にストレスを感じ、落ち込むのは決して珍しいことではありませんが、このような状態が慢性的に続くと、心身の健康にさまざまな悪影響が生じます。
なお、厚生労働省ではメンタルヘルス不調を以下のように定義しています。
「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。」
出典:職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~|厚生労働省
過度なストレスが長く続くと、メンタルヘルス不調に陥り心身の調子を崩すことで、精神疾患を発症するおそれがあります。さらに、メンタルヘルス不調は自身や周囲が気付きにくいため、悪化するまでわからないというケースが多くみられます。
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職場におけるメンタルヘルス不調のサイン
メンタルヘルス不調は特別な人がかかるものではありません。良くも悪くもストレスの多い職場ではメンタルヘルス不調になるきっかけが多く潜んでいます。そして、不調に対して本人や周囲が気付きにくいのも事実です。
メンタルヘルス不調のサインを知り、自身や周囲で気付くことが早期発見・早期治療のコツです。ここでは、職場でよくみられるメンタルヘルス不調のサインを紹介します。
メンタルヘルス不調サイン(1)見た目・表情が変わる
メンタルヘルス不調になると、以下のような見た目や表情の変化が生じるケースが多いです。
- 身だしなみが悪くなった
- ぼんやりとした表情をしていることが増えた
- 声のトーンや大きさが変わった
- 俯いていることが多くなった など
メンタルヘルス不調になると、自分自身の見た目や振る舞いに気が回らなくなる傾向にあります。
メンタルヘルス不調サイン(2)態度が変わる
「イライラして周囲と明るく接する余裕がない」「落ち込んでいるので誰とも話したくない」といったことは多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。メンタルヘルス不調に陥ると以下のように、態度や言動が変わることがあります。
- 話しかけても反応が薄い
- 挨拶をしなくなった
- ネガティブな発言が増えた
- 突然泣き出す、怒り出すようになった
- 一人言が極端に増えた など
メンタルヘルス不調者のなかには、無理をして気持ちを押し殺している方もいるため、些細な変化にも気付けるかどうかがポイントです。
メンタルヘルス不調サイン(3)体調不良を訴える
メンタルヘルス不調は体への影響も大きいため、以下のような体調不良を訴える場合があります。
- 疲労感が取れない
- 夜になかなか眠れない
- 頭痛や肩こりが続いている
- 食欲がなく、食事が取れない
- 喫煙量、飲酒量が増えた など
上記のような状態が2週間以上続く場合には、メンタルヘルス不調や精神疾患を発症している可能性があるため、早めの対処が必要です。
メンタルヘルス不調サイン(4)仕事のパフォーマンスが落ちる
メンタルヘルス不調は心身ともに余裕がない状態であるため、仕事のパフォーマンスが落ち、自己嫌悪に陥ることがあります。
- 報連相ができなくなった
- 以前よりも仕事のミスが増えた
- 遅刻・早退・欠勤が増えた
- 無断欠勤や業務中の長時間離席が増えた
- 会議での発言が減った、発言しなくなった など
上記のようなさまざまなサインに気付くためにも、日頃から従業員の業務内容や労働時間を把握する習慣を作ることが大切です。

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メンタルヘルス不調に陥りやすい方の特徴
先述のとおり、メンタルヘルス不調は決して特別なものではなく、誰でも陥る可能性があります。しかし、一般的には以下のような性質の方のリスクが大きいとされています。
- 真面目で丁寧に仕事をする方
- 完璧主義の傾向がある方
- 親切で周囲をよく気遣う方
- 気分転換が得意でない方
真面目で丁寧に仕事をする方
真面目な方は周囲からの信頼が厚いですが、真面目ではない方に対してストレスを感じやすい傾向にあります。一度、真面目ではない方の仕事に不満を感じるとその点に意識が向き、自身の仕事に集中できなくなるおそれもあります。
仕事に対して一切の妥協をせず、誠心誠意取り組む姿勢は素晴らしいですが、適度に気を抜かないと、心身が疲れ切ってしまいます。そのような状況でミスをしたり、仕事が遅れたりすると、「私は仕事ができない」「役立たずだ」などと感じ、メンタルヘルス不調に陥ることもあります。
完璧主義の傾向がある方
完璧主義の方は、真面目な方と同様に仕事熱心で、周囲からの評価も高い傾向にあります。
しかし、完璧を目指しすぎてエネルギーを消耗しやすいため、メンタルヘルス不調に陥るリスクは高めです。他の方から見れば十分な出来栄えでも、自分ではなかなか納得できず、常に100点を目指そうとして疲れ切ってしまうこともあるでしょう。
ときには、60点~80点を及第点とすることで、心身の消耗を回避することが大切です。
親切で周囲をよく気遣う方
周囲に対して気配りができる方は、普段から周囲の状況を常に気にしてしまい、心が休まらないことが多く、その結果メンタルヘルス不調に陥りやすいといわれています。
周囲から信頼されるのは良いことですが、頼まれごとを断れずに「相手優先」の働き方に支配されてはいけません。他人を気遣うように、自分自身の心と体を気遣うことが、長く健康的に働く秘訣といえます。
気分転換が得意でない方
ストレス解消の方法をいくつか持っていると、仕事でストレスを抱えたとしても上手に発散できます。しかし、趣味がない、休日にすることがない、職場以外に居場所がないという方は、ストレスが溜まる一方になるため、注意が必要です。
気分転換は仕事から少し離れ、頭や気持ちをスッキリさせるために有効です。夢中になれる趣味や、ずっとやってみたかったこと、時間を忘れて楽しめることに取り組み、思いきり心身をリフレッシュさせるとよいでしょう。
部下のメンタルヘルス不調サインを見逃さないために、上司が心がけること
メンタルヘルス不調は本人が気付かないケースも多いため、不調のサインを周囲が見逃さないことが重要です。そして、小さな変化に気付きやすいのは、やはり職場の上司などでしょう。
管理者が部下のメンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な配慮をすることで、部下の休職や離職を防ぐことが期待できます。そのためには、管理者がメンタルヘルスの基礎知識を身に付けることが大切です。
具体的には、管理者向けのメンタルヘルス研修などに参加して、部下の健康状態の把握方法、メンタルヘルスに関する基礎知識(ストレス対策、ラインによるケア、セルフケアなど)を一通り押さえておくのがおすすめです。
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部下のメンタルヘルス不調サインに気付いたら?対処のポイントを解説
「体調が気になる部下を見つけても、どうしたらいいのかわからない」と悩む管理者も多いため、部下のメンタルヘルス不調サインを見つけた際の対処を知っておくことが大切です。
ここからは、具体的な対処方法とポイントについて解説します。
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1対1でゆっくり話せる場所を用意する
メンタルヘルス不調が気になる部下を見つけた場合、まず話をしましょう。その際には、人が多くいる場所ではなく、1対1でゆっくり話せる場所の用意が必要です。
「オフィスで仕事をしながら」や「お酒を飲みながら」といった「ながら状態」だと、不用意な発言をしてしまうリスクがあるほか、真面目に聞いていないような印象を与えるおそれもあります。
また、ゆっくり話せる環境を整えることで、部下に対して「周囲に話が漏れることはないので、安心して話して欲しい」という管理者からの意思表示にもなります。本人と向き合い、プライバシーに配慮した環境で話を聞くようにしましょう。
部下の話に耳を傾ける
メンタルヘルス不調サインに気付いたら、声かけを行ない、部下の話に耳を傾けましょう。部下に「心配している」という気持ちを伝え、アドバイスをするというよりは、まずは部下の話を真摯に聞くことが大切です。
「傾聴」は「相手の立場に立ち、共感しながら理解する」という意味です。仮に部下に原因がある内容だとしても、頭ごなしに否定することはせず、まず傾聴することを意識しましょう。
安易な励ましはしない
「頑張って」「どうにかなるよ」などの励ましは、メンタルヘルス不調者にとっては逆効果になるおそれがあります。「すでに頑張っているのに」と部下が感じていれば、適当にアドバイスをされたような印象になりかねません。
メンタルヘルス不調者にとって、「励まし」は負担の大きい言葉になる可能性があります。安易に励ますのではなく、話をしっかりと聞いたうえで、「どうしたら解決できるのか」を一緒に考える姿勢が大切です。
意見を押し付けたり、結論を急かしたりしない
部下が心配であればあるほど、メンタルヘルス不調が良くなるように、何かアドバイスをしたくなるかもしれません。しかし、自分の意見を無理に押し付けたり、結論を急がせたりしないことが重要です。
まずはじっくり話を聞き、部下が自身の考えや感情・悩みを整理できるように、本人のペースに合わせて時間をかけて対応しましょう。
上記のような対処をするには、日頃から密なコミュニケーションをとり、部下の「いつもと違う」に気付くことが大切です。特に、昨今の働き方改革により、リモートワークで業務を行なうようになった企業においては、コミュニケーション方法を工夫することが求められます。
また、管理者が部下の不調に気付くためには、管理者自身の心のケアも重要です。心にゆとりを持つことで、視野が広がり、変化に気付きやすくなるため、自己管理はしっかり行ないましょう。
労働者のメンタルヘルス不調に適切に対処するには、産業医の存在が欠かせない
部下のメンタルヘルス不調サインに気付いたときには、放置せず早めに対処しましょう。周囲の誰も気付かないまま、メンタルヘルス不調が放置されると、休職や離職といった人的損失のリスクが高まります。
ただし、部下から悩みを打ち明けられたとき、自分だけで解決しなくてはならない、と思いつめる必要はありません。
メンタルヘルス不調者の対応は医学的観点から判断し、専門家の意見を仰ぎながら慎重に行なうことが重要です。部下のメンタルヘルス不調に対応する際には、産業保健活動の専門家である産業医と連携して、慎重に取り組みましょう
なお、リモート産業保健では、産業医選任・面談実施などの産業保健活動を一括サポートします。産業医・産業看護職の医療職2名で、メンタルヘルス対策に特化したサービスを提供しますので、初めての企業様も安心してご利用いただけます。
「現在、産業医を選任しておらず、メンタルヘルス不調者の対応に困っている」「産業医を選任したいものの、どこに相談したら良いのかわからない」といったお悩みをお持ちの企業担当者様は、ぜひリモート産業保健にご相談ください。
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まとめ
メンタルヘルス不調のサインは「なんとなくいつもと違う」ことです。服装や表情、声、言動、仕事への取り組み方など、さまざまな視点から変化をキャッチすることで、いち早くメンタルヘルス不調を見抜き、対処することが可能になります。
メンタルヘルス不調は早期対応も重要ですが、急ぎすぎて対処を間違えると余計に悪化し、本格的な精神疾患の発症を招くおそれもあります。管理者だけで解決しようとせず、医学的専門家である産業医と連携して、慎重に取り組むようにしましょう。
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