産業医面談を実施する意味とは?パターン別の目的や基準について解説

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産業医面談とは

産業医による面談は、従業員の心身の健康管理を主な目的としています。健康診断後に必要な場合や、ストレスチェックで高ストレス者であった場合のほか、休職や復職の際に専門的な判断として行われることもあります。徐々に起こる身体の変化は本人や周囲が気付かないこともあるため、専門的な立場から従業員と企業の双方に助言を行うために大切な取り組みです。

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産業医面談は意味がない?パターン別の目的について解説

「産業医面談を実施してもあまり意味がない」などと言われることもありますが、面談の目的は「従業員の健康を守ること」であり、それはどの事業場にとっても大変重要な事柄です。そこでまずは、産業医面談のおもな目的をパターン別に解説します。

健康診断後の面談の目的

健康診断後の産業医面談では、従業員への生活習慣などに関するアドバイスや企業側への提言を行ない、健康の保持・増進を図ることを目的としています。

労働安全衛生法に則り、健康診断結果で従業員に異常所見が認められた場合には、事業者は必要な措置に関する意見を、3ヵ月以内に医師または歯科医師から聴く義務があります。

何の措置も取らずに就業を続けさせて、従業員の健康を害することのないよう、事業者は専門家の意見をもとに、健康障害を予防するための対策を施します。

また、健康診断結果から、特に健康保持に努める必要があると認められた従業員に対しては、速やかに産業医面談を実施するよう努めなければなりません。

長時間労働者への面談の目的

長時間労働者は、脳血管疾患や虚血性心疾患など、脳・心臓疾患の発症リスクが高い傾向にあります。そのため、発症の予防や早期対応を目的に、産業医面談を実施する必要があります。

長時間労働による、面談の対象者は以下のとおりです。

  1. 時間外労働・休日労働時間が月80時間を超え、疲労蓄積があり面接を申し出た労働者
  2. (1)に加え、月100時間を超える時間外労働・休日労働を行なった研究開発業務従事者
  3. 1週間あたりの健康管理時間(※1)が40時間を超えた場合、その超過時間が1ヵ月100時間を超える高度プロフェッショナル制度適用者

(※1)対象業務に従事する対象労働者の健康管理のために、その対象労働者が事業場にいた時間(ただし、労使委員会が厚生労働省指定の労働時間以外を除くよう決めた場合は、その決議に関わる時間を除く)と、事業場外で労働した時間との合計

なお、時間外・休日労働が月100時間超の研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者は、当人から面接指導の実施申出がない場合でも面談対象です。

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高ストレス者への面談の目的

高ストレス者への面談は、過労やストレスによるメンタルヘルスの不調や精神疾患の発症を未然に防ぐことが目的です。

ストレスチェックは労働安全衛生法により、労働者数が常時50人以上の事業場で年1回の実施が義務付けられています。ストレスチェックの結果、「高ストレス者」と判定された者に対しては、産業医面談を行ないます。産業医は、高ストレス者にストレスへの対処方法やセルフケアについてアドバイスするだけでなく、企業側に対処すべき問題(働きやすい環境作りなど)を意見することもあります。

ただし、従業員本人が面談を希望しない場合には実施できない、という点に注意が必要です。

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従業員の申出による面談の目的

従業員側から産業医面談を希望するパターンもあります。産業医面談は、労働者がメンタルヘルスの不調や健康面での不安を抱えているときの相談窓口としての役割も担います。

企業側は、「中立的な立場として相談に乗ってくれる産業医がいること」を、日頃から従業員へ周知することが大切だといえるでしょう。

休職・復職面談の目的

休職・復職時に行なう面談の目的は、速やかに発症予防や再発防止の措置をとり、企業側の受け入れ体制を整えることです。

休職前の面談では、産業医が従業員の心身の状態を確認しながら、「休息の必要性」を企業側に意見します。すでに休職指示が記載された主治医の診断書がある場合には、産業医面談を行なわず、そのまま休職となるケースもあるでしょう。

一方、復職前の面談では、産業医が本人の希望や主治医の診断書、復職後の業務内容や環境などを確認しながら「就業可能かどうか」「就業する場合、どのような配慮が必要か」などを企業側へ意見します。

産業医面談の復職面談については、以下の記事で判定基準や注意点などを詳しく解説しています。

産業医面談で重要となる、メンタルヘルスケアの考え方

事業者は、ストレスチェック、産業医面談、職場環境の改善などを通して、従業員のメンタルヘルスケアに努める必要があります。メンタルヘルスケアには、以下3つの段階があります。

  • 一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止
  • 二次予防:メンタルヘルス不調の早期発見、適切な措置
  • 三次予防:メンタルヘルス不調となった従業員の職場復帰のための支援

段階ごとの目的を正しく把握し、それぞれの従業員に合わせた適切な措置を取ることが、メンタルヘルスケアを行なううえで重要です。ただし、対策が形式的なものにならないよう、「なぜ行なう必要があるのか」を常に念頭に置いて進めるようにしましょう。

さらに詳しい説明や実際の流れについては、下記の記事を参考にしてください。

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産業医面談のおもな内容

産業医面談では、従業員の心身の状態や仕事内容など、確認すべきことが多々あります。ここでは、産業医面談のおもな内容を具体的に説明します。

産業医面談で話す内容

産業医面談で話す内容は、面談を実施する目的によっても異なりますが、現在の体調、生活リズム、労働環境、人間関係、ストレスの原因などがおもになります。

例えば、高ストレス者の場合は、ストレスの原因やメンタルヘルス不調の有無を確認する、長時間労働者の場合は心身の不調と併せて、疲労の蓄積度や勤務状況を確認する、といった内容がメインになるでしょう。そして、現在の従業員の状況に合わせて、生活や仕事についてアドバイスをしたり、必要であれば専門の医療機関を紹介したりします。

産業医には刑法第134条により守秘義務が課せられているため、企業側の関係者を含めて他人に面談の内容が漏れることはありません。面談を受ける従業員には、あまり気負わず、リラックスして現在の状況や率直な思いを話してよい旨、事前に伝えるようにしましょう。

産業医面談は15~30分程度で行なわれますが、診察や診断、処方などは行なわれません。

面談後には従業員の同意を得たうえで、企業側へ業務内容や勤務時間の調整などを産業医が意見する場合もあります。産業医はあくまで中立の立場であるため、企業側・従業員のどちらかに偏ったアドバイスはせず、双方へ働きかけることを理解しておきましょう。

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産業医面接で退職勧奨することはある?

産業医による「退職勧奨」はNGとされていますが、産業医が労働者の心身の健康を守るために、退職という選択肢を提案する例もあります。それが退職勧奨とみなされてしまい、トラブルになるケースもまれにあります。しかし、この場合の提案は退職勧奨にはあたりません。労働者本人が「自身の健康を守るための方法を考えるきっかけ」として捉えられると良いでしょう。

実際に、退職勧奨された従業員が「退職を強要された」として、会社と産業医が訴えられた事例もあります。産業医に退職勧奨をする権限はありません。企業側も、産業医に依頼して退職勧奨を行なってはいけないことを理解しておきましょう。

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産業医面談は企業の義務?従業員は拒否できる?

従業員の健康を守るうえで非常に重要な役割を果たす産業医面談ですが、実施は企業側の義務なのでしょうか。また、従業員から拒否の意向を示された際には、どのように対処すれば良いのでしょうか。

産業医面談は企業の義務だが、強制力はない

企業は労働安全衛生法に基づき、長時間労働者や高ストレス者などには、必要時に産業医面談を実施する義務があります。しかし、従業員には面談を受ける義務はありません。

そのため、企業は従業員に対して、産業医面談を受けるように推奨はできますが、強制的に受けさせることはできないため注意が必要です。

従業員に産業医面談を拒否された場合の対処法

従業員は産業医面談を受ける義務がないため、拒否するケースもあります。しかし、拒否されたからといって、そのまま放っておくのは得策ではありません。

例えば、「面談内容を秘密にしてもらえるか不安」「なじみのない産業医との面談に抵抗がある」といった理由で面談を拒む従業員に対しては、産業医には守秘義務があり安心である旨を明確に伝えることが必要です。

また、「仕事が忙しくて面談を受ける暇がない」「時間がかかりそうで面倒くさい」という従業員には、可能な限りスケジュール調整を行なって受けやすくするなど、幅広い日程を提示してみましょう。

企業側としては、日頃から従業員に産業医面談のメリットを伝え、ハードルを下げることが重要です。万が一、産業医面談を拒否する従業員がいた場合にも、拒否する理由や気持ちを受け止め、できる限りの対策を講じるように努めてください。

面談後の措置が重要!産業医の意見書について解説

産業医面談の実施後、産業医は意見書を作成し、事業者へ提出します。「産業医の意見書」とは、事業者が従業員に対する措置を適切に行なえるよう、産業医の助言や意見が記載されている報告書のことです。

産業医の意見書は、以下のような場面で作成されます。

  • 健康診断結果に異常所見があったとき
  • 長時間労働があったとき
  • ストレスチェックで高ストレスと判定されたとき
  • 従業員が休職・復職を希望したとき

なお、「産業医の意見書」と「主治医の診断書」は同じと考える事業者も少なくありませんが、それは間違いです。主治医の診断書は、診断結果や疾患・治療の状況、日常生活の安定性について記載されたものであり、産業医の意見書とはまったく異なる性質のものです。

産業医の意見書に関する詳しい説明や意見書のフォーマットは、以下の記事で紹介しています。

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まとめ

産業医面談は実施することが目的ではなく、実施後にどのように対応するかが大切です。産業医を有効的に活用し、従業員の健康を守ることで、企業経営の安定や成長も大いに期待できるでしょう。

しかし、通常業務を行ないながら産業医と連携をとり、従業員全員に適切な対応をするのは容易なことではありません。また、現在産業医がおらず、そもそも何から始めたら良いのかわからない企業担当者の方もいるでしょう。

そのような企業には、エス・エム・エスの「リモート産業保健」のサービス活用をおすすめします。「リモート産業保健」では、産業医がいない企業やさまざまな理由から交代を検討している企業の産業医選任はもちろん、今回紹介した産業医面談についてもご相談いただけます。

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