産業医面談では何を話せばいい?何が聞かれるのか・実施効果を紹介

産業医面談

この記事の監修者

産業医や産業保健師など産業保健分野で活躍する専門家チーム

サンチエ編集部

産業医面談とは

産業医による面談は、従業員の心身の健康管理を主な目的としています。健康診断後に必要な場合や、ストレスチェックで高ストレス者であった場合のほか、休職や復職の際に専門的な判断として行われることもあります。徐々に起こる身体の変化は本人や周囲が気付かないこともあるため、専門的な立場から従業員と企業の双方に助言を行うために大切な取り組みです。

どんな時に産業医面談が開かれるのか

長時間労働

長時間労働が続いている場合には、産業医の面談が行われることがあります。2019年の改正労働安全衛生法では、時間外労働に対して罰則付きの上限が定められました。そのため、以下の3つに当てはまる場合には、労働安全衛生法第66条に基づき、産業医の面接指導が義務付けられています。

1) 月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積があり、面接を申し出た者
2) 研究開発業務従事者で、①に該当する者、または月100時間超の時間外・休日労働を行った者
3) 高度プロフェッショナル制度適用者で、1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた時間について、月100時間を超えて行った者
※健康管理時間=事業場内にいた時間+事業場外において労働した時間

長時間労働により脳血管疾患や心疾患を引き起こすリスクが高まることがわかっています。また、睡眠時間が短くなることによりうつ病などのメンタルヘルスの不調についても発生が高まるといわれています。しかし、長時間労働者は心身に不調があっても忙しさから病院に行けないことや、仕事に夢中になるあまり自身の変化に気が付けない場合もあります。基準を設けて面接指導を行うことで、こうした人たちにも自分の体調と向き合う時間をつくることができるのです。

なお、長時間労働者に対する医師の面接指導については、労働者が常時50名未満の事業場であっても実施が義務付けられているため注意が必要です。

ストレスチェックで高ストレス者

ストレスチェックは、常時50人以上の従業員がいる事業場で実施が義務付けられており、対象の従業員に年1回行う必要があります。このストレスチェックで高ストレスと診断された従業員が希望した場合、労働安全衛生法第66条に基づき、企業は産業医の面接指導を行う義務があります。

もしも高ストレスの診断があっても、従業員が希望しない場合は実施する必要はありません。しかし、そのまま無理をして働き続けてしまうと、心身に症状が出現して長期の休養などが必要になる可能性もあります。早期に面談を行い、改善に向けて対応していくことが望ましいでしょう。

面接指導を受ける場合、産業医には守秘義務があり、企業は不利益な取り扱いを行うことが禁止されています。しかし、面談内容から企業側に働きかけが必要だと産業医が判断した場合は、企業へ従業員の情報が提供されることがあります。会社に伝えても良いことと伝えてほしくないことがあると思いますので、報告される内容については産業医に確認しましょう。また、面談の実施にともない、高ストレス者であることを企業に開示することに同意したとみなされることもあるため、知られたくない場合には注意が必要です。

体調不良

企業は従業員に年一回以上の定期健康診断を行うことが義務付けられています。その結果に異常所見があった場合には、生活習慣病の予防など健康保持を目的として産業医等から保健指導が行われることがあります。

また、体調不良が続いていたり、それにより遅刻や欠勤といった影響が出ていたりするときにも、産業医との面談が実施されることがあります。産業医が働き続けることが難しいと判断した場合には、主治医の診断書を踏まえ、休職などの就業制限が必要とする意見書を提出する場合があります。

企業は産業医の意見書を踏まえて休職や時短勤務などの実施を判断するため、現状の働き方がつらいと感じている場合などは産業医に相談してみると良いでしょう。なお、通院しておらず主治医がいない場合は、産業医の判断で受診に必要な紹介状を書いてもらうことも可能です。

原因のわからない体調不良が続くときには、周囲から理解されず、従業員が無理をしてしまうケースもあります。産業医は企業の職場環境を把握しているため、一般的な医療機関よりも従業員について理解した上で専門的な指導を行うことができます。産業医面談を実施することは、従業員にとって適切な就労環境を整えることに繋がるため、結果的に従業員も長く働くことができるのです。

産業医面談では何を話す・何が聞かれる?

身体的な内容について

産業医面談では、まずは睡眠や食事、運動習慣、飲酒や喫煙などの生活習慣について聞かれることがあります。眠れない、食べられない、お酒の量が増えたなど、生活習慣の小さな変化が症状出現の前兆となる場合があるためです。また、検査の数値に基準値外がある従業員に対しては、疾病予防を目的として現状を把握するために質問することもあります。

寝つきの悪さや熟眠感が得られないなどの睡眠不足の状態が続くと、メンタルヘルスの不調や身体的な病気のリスクが高まるといわれています。改善策を考える必要があるため、睡眠時間や睡眠の質、生活リズムについてのお話を伺い、なぜ眠りの質が悪くなっているのかを探っていきます。

もしもストレスで喫煙や飲酒が増えている場合、注意されると面倒だな・・・と実際より少なく答える人もいるかもしれません。産業医は従業員の健康状態の改善や、本人も気付いていない身体からのSOSを発見することを目的にし質問しています。正直に答えることが自身の健康を守ることにつながるのだと考えて質問に答えるようにしましょう。

精神的な内容について

職場での悩みは多岐にわたりますが、昨今ではとくにハラスメントが問題になっています。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントは上司や先輩などから受けることが多いため、逆らえなかったり、周囲に相談できなかったりすることが多く、一人で抱え込んでしまうことでメンタルヘルスの不調に陥りやすい傾向があります。

そのため、体調不良で面談を行う場合でも、産業医から職場の人間関係や勤務時間、業務上の悩みについて伺う可能性があります。また、長時間労働が続いている場合には、体調などに変化がなくても現状を確認するために質問する場合もあるでしょう。

ハラスメントについては、ハラスメントする側に自覚がないことや、従業員が強いストレスを感じたとしてもハラスメントに当たらないかもしれないと考えてしまう場合があります。思い当たることがある場合は一人で抱え込まずに第三者である産業医に相談することが大切です。

人間関係について悩んでいる場合には、産業医に相談することで客観的に状況を受け止めることができ、自身の状況を整理することにつながります。その上で、同僚からの嫌がらせがある場合や先輩からの指導がきついなど、個人での対応が難しい場合には上司に伝えてもらうことも可能です。配置替えの際に考慮してもらうなど何らかの対応がされることもあるので、我慢せずに面談で伝えてみましょう。

就業について

体調不良などが継続している場合は産業医面談を行い、従業員の症状や状態に応じて就業可能な状態か、業務の調整が必要か、休養が必要かを医学的に判断します。企業は主治医や産業医による意見をふまえて、就業措置や休職について決定します。

休職となった場合は、休職開始後に経済面や今後の見通しが立たないことにストレスを感じたり、復職を焦ったりしてはゆっくり休養できません。休職中の給与や補償、休職期間、休職中のルールなど、企業の担当者に説明を受けたうえで気になることがあればしっかり確認しておきましょう。

なお、自立支援医療の対象となる疾患の場合には、所得などの条件に応じて通院医療にかかわる費用の一部が支給されます。休職中も経済的な負担が少なく通院を継続しやすくなるため、主治医に確認してみましょう。

復職について

復職の際には主治医による診断書が必要です。産業医は主治医と連携しながら面談を行い、医学的に判断し復職について意見書にまとめて企業に提出します。

復職に向けた面談では、復職可能な状態か、どのような環境であれば継続的に働けるかを確認するための質問がされます。たとえば、通院状況、復職を意識してからの日常生活習慣、働くことへの意欲や不安など、細かく確認していきます。

復職面談で取り繕って無理に復帰をしても再び体調を崩すリスクが高いため、面談では無理をせずに今の状況を正直に話しましょう。復職を希望している場合には、まずは生活リズムを整えるなどできることからはじめると良いでしょう。

復帰後は再発防止のため、産業医が企業や主治医と勤務状況や治療状況などを共有します。定期的に産業医との面談を実施しながら、状況に応じて業務調整などのフォローも行われます。

退職について

産業医面談で従業員が退職を希望した場合、産業医から無理に引き止めることはありませんが、休職時と同じように従業員の現状を把握するための質問を行うことがあります。退職理由に業務上の理由がある場合、異動や部署変更、業務内容の見直しなどの対応を行うことで仕事を続けられる可能性があるからです。

なお、産業医から退職勧告をすることは従業員への不利益になるため法律で認められていません。本人が退職を希望しなければ、どのような状況でも休職、時短勤務などを活用した就労を継続するための話し合いが行われることになります。

産業医面談の効果

産業医には守秘義務があり、面談時の相談内容を従業員本人の同意なく企業に提供することはありません。そのため、同僚には言いづらい仕事の悩みや、上司が関わるハラスメントなど企業側の人間には話せなかった悩みを聞いてもらうことができます。

仕事とプライベートの切り替えがうまくいかない、プライベートの悩みから仕事が手につかないなど、業務上の悩みでなくても気軽に相談しアドバイスをもらうことができます。一人で抱え込まず誰かに話を聞いてもらうことで気持ちが楽になり、精神面に良い効果を与えることが考えられます。

また産業医は、従業員の業務負荷の状況から疾病のリスクを予測して助言を行うため、従業員一人ひとりの状況に応じて適切なアドバイスを得ることができます。企業に対しても医学的知見をもって助言することから、従業員が個人的に解決することが難しい問題でも対応できる可能性があり、従業員にとっては頼れる存在といえるでしょう。

産業医面談では人事も上司も同席しない

体調不良や高ストレス者で面談を打診された場合、人事担当者や上司が同席するのではないかと考える人もいるのではないでしょうか。その場合、人事評価などを意識して産業医面談を希望されず、体調不良が悪化することも考えられます。また、会社関係者が同席することで、自分の立場を考え、本音でご相談できない可能性もあります。

実際の産業医面談は産業医と従業員だけで実施するものであり、産業医には守秘義務があります。従業員の同意のないまま企業に情報提供をすることはありませんので、安心して面談に参加しましょう。