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産業医の選任義務はいつから?従業員が常時50名以上になったら必要!
産業医の選任義務等については後ほど詳しく解説いたします。早速結論ですが、産業医は常時使用する従業員が1事業場あたり50人以上になった場合に産業医の選任する義務が発生します。
また産業医を選任する義務が発生してから14日以内に所轄の労働基準監督署へ届け出なければならないと義務付けられています。
(労働安全衛生法第13条、労働安全衛生規則第13条、労働安全衛生法施行令第5条)
事業場の規模を判断するときの「常時使用する労働者の数」とは
「常時使用する従業員数」とは、どのように考えたらよいでしょうか。端的に言いますと、全ての従業員です。
勤務時間や勤務日数や契約期間に関わらず、社員、嘱託、派遣、パート、アルバイト、全て含まれます。つまり、週1回勤務するアルバイト従業員も含まれるのです。
常時使用する従業員の対象単位は、企業ではなく事業場になるため、従業員の数を算出する場合は注意しましょう。
産業医を選任する事業場って何?定義を詳しく解説!
早速ですが、「事業場」という言葉、あまり馴染みがない方もいるかと思いますが、「事業場」の定義を知らないままですと、産業医の選任義務がある事業場に産業医を選任していない状況になるため、ここで事業場の定義について一緒に確認していきましょう。
労働安全衛生法で使用される「事業場」は、従業員が同一の場所で組織上一定程度独立して業務を行っている場所をいいます。労働基準法の「事業場」と同じ考えです。具体的に3つのパターンを例に挙げながら、説明していきます。
(1)同じ敷地内にある工場と工場の診療所の場合
このような場合は、それぞれを別の事業場として数えます。
なぜなら、同一の場所にあっても、著しく労働の態様が異なる部門がある場合には、別の事業場としてとらえる為です。
この場合、仮に工場の従業員が60人、診療所の従業員が5人だった場合、従業員は合計で65人になりますが、それぞれを別の事業場として考えるため、診療所は従業員が50人未満として産業医を選任する義務はありません。
(2)住所が別で、同じ事業を行っている場合
住所が同一でない場合、それぞれが同じ業務内容であったとしても、別の事業場と考えます。
もしそれぞれの従業員が50人未満であれば、それぞれで産業医を選任する義務はないということになります。
(3)同じビルの別フロアーに事業場がある場合
この場合は事業場が同じ住所になるので、一つの事業場として数えます。
そのため、従業員の合計が50人以上の場合、産業医を選任する義務が生じます。
以上のように、さまざまな状況に応じて事業場のとらえ方が異なります。自分の事業場の常時使用する従業員が、50人を超えていないかどうか、改めて確認しましょう。
なお、50人を超えていなければ産業医を選任する義務はありませんが、常時使用する従業員が10~49人の場合は「安全衛生推進者(衛生推進者)」を選任しなければなりません。(労働安全衛生法第12条の2)
1つの事業場として適用されない例外とは?
例外として、場所が離れていても、規模が小さすぎて一つの事業場として独立性がない場合は、直近上位の事業場と一括してカウントされることがあります。以下に例を挙げて説明いたします。
(1)在宅勤務の場合
この場合、自宅が作業場となるわけですが、事務能力の点から一つの事業という程度の独立性がないため、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱います。
(2)小さな営業所の場合
本社ビルの近くに営業所がある場合です。原則的には異なる住所に事業場がありますので、それぞれを1つの事業場として考える必要があります。
ですが、その営業所の規模が著しく小さく事業場としての独立性がない場合、本社と一括して一つの事業場として扱われる可能性があります。
事業場としての定義に疑問を感じたり心配な点があれば、所轄の労働基準監督署に確認しましょう。
事業場の人数によって変わる!産業医の種類とは
ではここから、産業医について詳しく見ていきましょう。
そもそも産業医とはどの様なものなのでしょうか。
産業医は、従業員が健康に就労できるよう、医師という専門的な立場から、健康管理や職場環境などに対して、指導や助言を行う役割を担います。
つづいて、産業医についてです。産業医は雇用形態によって「嘱託産業医」か「専属産業医」に分けられます。
「嘱託産業医」
嘱託産業医とは、非常勤で働く産業医のことです。多くの産業医がこれに当てはまります。一般的には月に数回、事業場を訪問して職場巡視や産業医面談等を行います。
従業員数が50人以上999人以下の規模の企業の場合、嘱託産業医の選任でも問題ありません。
「専属産業医」
従業員の数が1000人以上の場合、または、500人以上の従業員が有害業務に従事する場合、常勤の専属産業医の選任が義務になります。
従業員の人数や業務内容に応じて選任すべき産業医の人数や雇用形態が決められています。
常時使用する従業員数が50~999人・・・産業医1人
※一定の有害業務に500人以上の従業員を従事させる場合・・・専属の産業医1人
常時使用する従業員数が1000~3000人・・・専属の産業医1人
常時使用する従業員数が3000人以上・・・専属の産業医2人以上
※一定の有害業務とは有害放射線などにさらされる業務や、深夜業を含む業務などがこれにあたります。(労働安全衛生規則第13条第1項第3号)
次に掲げる業務が一定の有害業務に該当します。
イ. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ. ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ. 異常気圧下における業務
ヘ. さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト. 重量物の取扱い等重激な業務
チ. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ. 坑内における業務
ヌ. 深夜業を含む業務
ル. 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ. 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ. 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ. その他厚生労働大臣が定める業務
【厚生労働省、”産業医について~その役割を知ってもらうために~”より引用】
事業場での産業医の仕事や役割をご紹介!
次に、産業医の仕事内容について詳しく見ていきましょう。
産業医の職務については、労働安全衛生規則第14条第1項に基づき、以下の事項を行うこととされています。
(1)健康診断の実施とその結果に基づく措置
(2)長時間労働に対する面接指導・その結果に基づく措置
(3)ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
(4)作業環境の維持管理
(5)作業管理
(6)上記以外の労働者の健康管理
(7)健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
(8)衛生教育
(9)労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
【独立行政法人 労働者健康安全機構 「中小企業事業者の為に産業医ができること」より引用】
それでは次に、各職務について説明していきます。
職場巡視
職場巡視は、毎月1回以上作業場を巡視し、作業環境に問題がないかをチェックするものです。
(2017年の労働安全衛生規則の改正により、産業医が事業場から毎月1回以上、規定の情報の提供を受けている場合で事業者の同意を得ているときは、2か月に1回でも問題ありません。)
オフィスであればVDT作業やPC作業環境の確認をしたり、製造業であれば機械を使うことも多いので安全対策が講じられているかを確認したりなど、事業場に合った視点で職場巡視を行います。
その結果を産業医が職場巡視報告書として事業場に提出します。
作業環境や衛生状態に問題がある場合は、事業者は直ちに従業員の健康障害を防止する措置を講じなければなりません。
ストレスチェック
ストレスチェックとは?
ストレスチェックは、2015年12月に労働安全衛生法により義務付けられた制度です。従業員数が50人以上の事業場において、年1回実施しなければなりません。(50人未満の事業場では努力義務)
ストレスチェックの目的は?
事業者が従業員のストレスの程度を把握すること、従業員自身のストレスへの気付きを促しメンタル不調を未然に防ぐこと、ストレスチェックの結果をもとに職場環境改善へつなげ、働きやすい職場作りを進めること、等を目的としています。
ストレスチェックを実施しないと罰則はある?
実施しなかったことに対しての罰則はありませんが、労働基準監督署への報告が義務付けられています。(労働安全衛生法第100条)義務を怠ると、最大で50万円の罰金が科されます。(労働安全衛生法第120条第5号)
また、全ての従業員が受検することが望ましいですが、受検義務は課せられていません。ですが、受検者が多い方がストレスの気づきを高めるため、なるべく受検を促しましょう。
高ストレス者や過重労働者に対する面談
ストレスチェックにて高ストレス者と判定された者で、医師との面接を希望する者に対して産業医は面接指導を実施します。
ストレスチェックの結果に基づいて当該従業員の勤務状況や心理的負担の確認、その他の心身の状況を確認し、就業区分判定や保健指導を行い、必要に応じて専門機関への受診勧奨をします。
そして報告書・意見書を作成し、事業者へ提出し、事業者は適宜、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮などを講じます。
過重労働者に対する面接指導は、2019年4月の「働き方改革関連法」により、強化されました。
長時間労働による健康状態悪化リスクが高い従業員を見逃さないためです。
長時間労働者の面談対応には、時間外労働時間以外に特定の業務によって対象条件が異なります。
(1)労働者(高度プロフェッショナル制度適用者を除く):月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者(申出)
(2)研究開発業務従事者:(1)に加えて、月100時間超の時間外・休日労働を行った者
(3)高度プロフェッショナル制度適用者:1週間当たりの健康管理時間 が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について月100時間を超えて行った者
【厚生労働省_長時間労働者への医師による面接指導制度について”長時間労働者への面接指導制度の概要”より引用】
上記の通りですが、時間外労働が1か月80時間を超えた従業員に対して、疲労の蓄積が認められ、本人が申し出た場合に面接指導を行わなければなりません。
産業医の資格要件
続いて産業医の資格要件についてもあわせてご紹介します。
産業医になるためには、医師であることに加えて日本医師会の研修を履修するか、産業医科大学の産業医学基本講座を受講することなど、厚生労働省が定めた要件を備える必要があります。
その「要件」は労働安全衛生規則第14条第2項によって以下のように定められています。
1.労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修(※)であって厚生労働大臣が指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
(※)現在、日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学の産業医学基本講座がこれに該当します。
2.産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの
3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
4.学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり、又はあった者
5.その他厚生労働大臣が定める者(現在、定められている者はありません。)
(厚生労働省_産業医について ~その役割を知ってもらうために~ “2 産業医の要件 ” 労働安全衛生規則第14条第2項)
産業医の探し方とは
以上の要件を満たさなければならない産業医ですので、臨床医を見つけるよりも困難と言われています。
日本医師会によると、産業認定医は2018年のデータでおよそ10万人弱とされています。
【認定産業医総数 – 日本医師会より引用】
産業医を見つけられたとしても、実際には既に他の企業と契約をしている産業医も多いので、すぐに自社と契約できるとは限らないのが現状のようです。
自社の従業員が50人以上になる前段階から早めに対策をしておくのがいいでしょう。
一般的な産業医の探し方としては以下の方法があります。
1.地域の医師会に相談する
地域で産業医を探すメリットとしては、企業から近い産業医を紹介してもらえることです。
そのような場合、産業医と直接連絡を取りやすく、移動時間も短くて済むため、産業医によっては柔軟に訪問してもらえる可能性があります。
一方でデメリットとしては、訪問時間や報酬、契約内容等を各企業で産業医と直接話し合って決めていく必要があるため、手間がかかるなどが挙げられます。
実際には産業医の紹介を行っていない医師会もあるようですので、まずは問い合わせてみることをお勧めいたします。
2.知人等に紹介してもらう
この方法が一番信頼できますし、コストも安く抑えられるでしょう。しかし実際には知人に産業医がいる事の方が稀かもしれません。
稀に知人に産業医がいて選任した場合、知り合い特有の義理や縁があるために、1ヶ月に1回以上実施義務のある職場巡視や従業員の面接指導が産業医の都合で調整がつかず対応してもらえない等、トラブルが発生した時に意見しにくい問題が発生する可能性があります。
そのようなリスクがあることも念頭に置く必要があります。
3.定期健診を依頼している医療機関に相談する
医療機関には産業医が所属していることも多いので、紹介してもらえる可能性があります。
定期健診とセットで依頼すると割引になる、という場合もあるようです。
但し、健診時期になると繁忙期となり、産業医業務が手薄になる場合もあるようです。
産業医が業務を行えなくなると従業員対応に支障が出る可能性もありますので、産業医の業務時間の確保ができるかも考慮して検討した方が望ましいでしょう。
4.親会社に相談してみる
親会社に産業医がいる場合は、その子会社の産業医としても契約できる場合がありますので相談してみましょう。
5.人材派遣会社に依頼する
自社に最適な産業医を見極めるのは難しいところではありますが、このような派遣会社ですと様々な産業医が登録していますので、自社の条件に合った医師を紹介してもらえる可能性が高いです。
ある程度コストがかかる事が多いようですが、医師に言いにくいことも代わりに交渉してくれる、等のメリットもあります。
また、産業医の派遣だけでなく、衛生委員会サポートなど産業保健の運用をサポートするサービスもあります。
その場合は、産業医選任届の記載方法や衛生委員会の運用方法など、産業保健に関する不明点を気軽に相談することができたり、実際の運用サポートを得られたりすることもあります。
忙しい企業様や初めて産業医を選任する企業様にとってはありがたいポイントですね。
いずれにしても、自分の会社に合った方法で産業医を見つけることが望ましいでしょう。
産業医の選任をしなかった場合の罰則とは
では、産業医を選任しなかった場合の罰則はどのようなものがあるでしょうか。
違反した事業場は50万円以下の罰金を支払わなければならないという罰則がありますので注意が必要です。
(”労働安全衛生法第120条、労働安全衛生法第13条第1項”)
また、重要なのは罰則だけではありません。産業医を選任しなかったことで、企業が従業員の健康配慮を怠り、重大な労働災害等が発生した場合、企業イメージのダウンはもちろんのこと、災害防止対策不十分として、取引先からの取引停止や損害賠償請求などの損害が実際に起こっています。
従業員や職場の健康維持のためにも、産業医の選任は必要不可欠ですので必ず選任しましょう。
名義貸し産業医も罰則対象になる!?
名義貸し産業医とは、産業医として選任されているにもかかわらず、その職務を十分に果たしていない「名前だけの産業医」の事を指します。
職務を十分に果たしていない「名義貸し産業医」は、罰則対象になります。労働安全衛生法違反となりますので50万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役が発生します。
名義貸し状態になってしまうケースはさまざまですが、その中でもよくある事例をご紹介します。
- 人事労務ご担当者が労働安全衛生法違反になることに気づかない
- 産業医が職務範囲を理解していない
(1)人事労務ご担当者が労働安全衛生法違反になることに気づかない
産業医選任義務が発生してから14日に選任しなければならず、急いで産業医を探して契約してしまう企業が多いので、注意しましょう。
例えば、健診機関に在籍している産業医を紹介して貰う場合、「職場巡視はせず、産業医による就業判定で良ければ数万円で対応しますよ。」と言われ契約してしまうと、職場巡視や衛生委員会の運営などの法定義務が満たせず、実質名義貸しになることがあります。
(2)産業医が職務範囲を理解していない
知人からの紹介等で選任した産業医によく起こるケースになります。
ストレスチェックを実施後、高ストレス者が見つかり、産業医面談の相談をしても「自分は精神科医ではないから」と言って高ストレス者面談に応じてくれないとなると、名義貸し産業医に当てはまるケースになります。
上記のように産業医が自分の職務を十分に理解していないことや事業場の担当者が法定義務の範囲をわかっていない状況になると、企業が満たさなければならない法定義務に関わる業務が実施できないことにつながってしまいます。
よって、人事・労務のご担当者は産業医の職務について事前に産業医に確認した上で、選任後、トラブルが起きないよう労働安全衛生法の理解も深めて慎重に進めるとよいでしょう。

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