産業医になるには?条件や資格、研修をスムーズに受ける方法を解説

産業医 なるには

産業医になるには?要件や必要な資格について解説

産業医になるには、医師免許を取得したうえで、さらに専門の研修を受ける必要があります。産業医資格を取得する方法のなかで、医師会が開催する基礎研修において50単位以上を取得するルートが一般的です。

以下は厚生労働省の『現行の産業医制度の概要等』より、産業医の養成研修・講習を終了した医師の数のデータです。

研修
(日本医師会)
研修
(産業医科大学)
産業医科大学卒業生
(産業医科大学)
平成24年度 1,662 901 94
平成25年度 1,687 630 92
平成26年度 1,691 1,017 98
平成27年度 2,401 996 101

引用:現行の産業医制度の概要等│厚生労働省

ではなぜ、産業医の資格を取得するには研修を受ける必要があるのでしょうか。
それは産業医が、労働者の健康と安全を守るために、専門的な立場から指導や助言を行なう医師のことです。産業医も医師ではありますが、医師免許を持っているだけでは、産業医にはなれません。

つまり、「すべての医師=産業医ではない」ということです。

労働安全衛生法第13条第2項によると、産業医は、厚生労働省令で定める要件を備えたものでなければなりません。厚生労働省令で定める具体的な要件は、以下のとおりです。

一. 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者

二. 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの

三. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

四. 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者

五. 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

出典:労働安全衛生規則第14条第2項

なお、1つ目の要件にある、「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修」とは、日本医師会や産業医科大学などの所定のカリキュラムのことです。

産業医になる方法(1)医師会の産業医研修を受ける

産業医になる方法は複数ありますが、なかでも一般的なのが、医師会の産業医研修を受けて資格を得るルートです。

このルートで産業医になるには、医師会などが開催する基礎研修で、50単位以上を取得する必要があります(1時間の研修で1単位とする)。

具体的な研修内容は、以下のとおりです。

  • 前期研修(14単位以上):
    入門的な研修で、総論・健康管理・メンタルヘルス対策・健康保持増進・作業環境管理・作業管理・有害業務管理・産業医活動の実際の8項目の単位の修得が必要
  • 実地研修(10単位以上):
    おもに職場巡視などの実地研修、作業環境測定実習などの実務的研修
  • 後期研修(26単位以上):
    地域の特性を考慮した実務的かつ、やや専門的で総括的な研修

出典:日本医師会「認定産業医の手引」

認定証の申請は、上記の研修の最終受講日から5年以内に1回限り可能です。ただし、受講後はできるだけ速やかに申請することが望ましいでしょう。

産業医になる方法(2)産業医科大学の講座を受ける

産業医になる方法の2つ目は、産業医科大学の講座を受けることです。集中講座は、産業医科大学の卒業生でなくても受講でき、6日間程度で必要な単位を取得できるため、大変人気があります。過去には、福岡や東京(日本医師会と共同)で開催されています。

申込受付は例年、開催年度の3月上旬に始まり、開催期間は基本的に7月下旬から8月上旬の6日間です。2022年度の申し込みはすでに終了しているため、集中講座を受けたい方は、2023年度以降の申し込みを検討しましょう。

ただし、受講者は抽選で選ばれるシステムであり、すべての希望者が受講できるわけではありません。詳細情報については、産業医科大学のホームページを確認するようにしましょう。

産業医になる方法(3)労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格する

産業医になる方法の3つ目は、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格することです。これは、先述した労働安全衛生規則第14条第2項に明記されている(三)にあたります。

労働衛生コンサルタントとは、事業場の衛生状況について診断・指導を行ない、その向上を図ることをおもな業務とする国家資格保持者のことです。

労働衛生コンサルタント試験には「保険衛生」と「労働衛生工学」の2つの区分がありますが、産業医に必要なのは「保健衛生」区分の合格です。医師免許を所有したうえで、労働衛生コンサルタント試験(保健衛生区分)に合格することで、産業医の要件を満たすことができます。

なお、医師免許を有している方は、筆記試験の「労働衛生一般」と「健康管理」については、科目免除となります。

さらに、医師会や歯科医師会の「産業医学講習会※」、産業医科大学の「産業医学基本講座(※)」を修了している場合には、筆記試験は全科目免除を受けることができます。

(※)産業医研修である「認定産業医研修会」や「基礎研修会」は免除対象ではないため注意

産業医研修の申し込み・登録手続きで覚えておきたいポイント

ここでは、産業医研修の申し込みや登録の際に、覚えておきたいポイントについて説明します。

産業医研修の情報をこまめにチェックする

産業医研修の情報は、日本医師会、都道府県医師会、産業医学振興財団のホームページや、雑誌・会報などで得られます。

新型コロナウイルスの影響で、開催日が延期や中止、変更になることもあるため、ホームページで研修の情報をこまめに確認するのがおすすめです。

産業医科大学などで開催される集中講座については、すぐに満席となる可能性が高いため注意してください。産業医研修の詳しい情報は、産業医学振興財団のホームページでも確認できます。

産業医研修後には登録手続きが必要

産業医資格を得るには、基礎研修や集中講座で50単位を取得したあと、登録手続きを行なう必要があります。

登録は基礎研修最終受講日から5年以内に1回限り、基本講座または集中講座の修了認定の日から5年以内に1回限り申請可能ですが、できる限り速やかに行ないましょう。

登録の際には、以下の書類に審査・登録料1万円を添えて、所属の都道府県医師会(医師会員ではない医師は勤務地の都道府県医師会)に提出してください。

  • 認定産業医新規申請書(都道府県医師会に用意あり)
  • 医師免許証のコピー(医師会員は不要)
  • 産業医学研修手帳(I)、または産業医科大学産業医学基本講座修了認定書、産業医科大学産業医学基礎研修会集中講座修了認定書などのコピー

日本医師会長より審査が行なわれたあと、認定証が交付されます。登録有効期間は5年で、その後は更新を行なう必要があります。

5年ごとに認定証の更新申請を行なわなくてはならない

産業医資格は、5年ごとに更新申請を行なわなくてはなりません。社会状況や法律は常に変わり、時代に合わせた、産業医の資質の維持・向上が重要とされているためです。

産業医は認定証を取得したあと、5年間で生涯研修20単位以上を修得する必要があります。(1時間の研修で1単位)

具体的な研修の内容は、以下のとおりです。

  • 更新研修(1単位以上):労働衛生関係法規と関係通達の改正点などの研修
  • 実地研修(1単位以上):おもに職場巡視などの実地研修、作業環境測定実習などの実務的研修
  • 専門研修(1単位以上):地域特性を考慮した実務的、専門的、総合的な研修

更新の際は、以下の書類に登録料1万円を添えて所属の都道府県医師会(医師会員でない医師は勤務地の都道府県医師会)に提出してください。

  • 認定産業医更新申請書(更新時期に都道府県医師会から直接送付あり)
  • 産業医学研修手帳(II)

認定産業医の更新をしないと資格が失われるので、忘れずに更新を行ないましょう。

まとめ

産業医になるには、医師免許を取得したうえで、さらに専門の研修を受ける必要があります。

病院で臨床医として勤務しながら、非常勤の副業で産業医として働くことも可能です。「産業医資格を取得したが、臨床の仕事も続けたい」、「産業医としては未経験なので、サポートが欲しい」という医師の方には、リモート産業保健のサービス利用がおすすめです。

リモート産業保健では、現在非常勤産業医を募集しております。登録している産業医の先生方からは、「スムーズに働き始めることができた」「フレキシブルで働きやすい体制が充実している」と大変ご好評をいただいております。ご質問やご相談も随時受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。