産業医面談でクビになる?産業医の職務に解雇や退職勧奨が含まれない理由と、退職につながるケースを解説

産業医面談何を話す

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働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

産業医面談を控え、「面談の内容が理由でクビになるのでは」「面談が設定されたということは、もうクビが決まっているのでは」と不安に感じている方もいるかもしれません。結論から言うと、産業医の職務に従業員の解雇や退職勧奨は含まれておらず、解雇するかどうかを決めるのは会社です。産業医面談は従業員の健康の確保と必要な配慮の検討のために行われるもので、面談が設定されたこと自体が解雇を意味するわけではありません。ただし、休職期間の満了などで結果的に退職となる経路はあります。

産業医面談をめぐっては、次のような不安や疑問を持つ方が少なくありません。

産業医面談で不調の相談をしたら、会社に漏れて退職や転職を勧められないだろうか
産業医から「少し休んだほうがいい」「復職はもう少し待ったほうがいい」と言われ、退職勧奨されているように感じる
(人事・労務担当者)産業医から休職者やメンタルヘルス不調者に退職勧奨することは可能?

従業員の方は前半(「クビ」と退職勧奨の違い、面談内容の扱い、復職の判断、対処法)を、人事・労務担当者の方は「会社が産業医を通じて退職勧奨や解雇を進めた場合のリスク」以降をお読みください。解説は法令と厚生労働省の資料にもとづいて行い、個別の事情で判断が分かれる点は、確認先とあわせてお伝えします。

    この記事でわかること


  • 【1】産業医の職務に解雇や退職勧奨が含まれない理由と、会社が決める範囲

  • 【2】「クビ」と退職勧奨の法律上の違い、退職勧奨に応じる義務がないこと

  • 【3】面談で話した内容の扱いと、復職の判断で産業医が慎重な意見を出す場面

  • 【4】退職を迫られたと感じたときの対処法

  • 【5】人事・労務担当者が休職者や復職が難しい社員に対応する手順とリスク

産業医が従業員をクビにすることはできず、解雇するかどうかは会社が判断する

産業医面談をきっかけに、産業医が従業員を解雇することはできません。解雇するかどうかを決めるのは会社です。産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に列挙されており、そこに解雇や退職勧奨は含まれていません。解雇は、使用者である会社が一方的に労働契約の解除を通告する行為です。

なお、退職勧奨そのものが一律に違法というわけではなく、行き過ぎた場合に違法と判断されることがあります。産業医が面談で「少し休んだほうがよい」と伝えることと、会社が解雇や退職勧奨を行うことは別の話です。ここからは、産業医の職務、産業医の意見と会社の決定の関係の順に見ていきます。

産業医の職務は従業員の健康管理であり、解雇や退職勧奨は含まれない

産業医の職務は、労働者の健康管理に関する事項です。労働安全衛生規則第14条第1項は、産業医が行う事項を一号から九号まで列挙しており、そのいずれにも、解雇や退職勧奨、雇用契約の終了に関する事項は含まれていません。

列挙されている事項の要点は次のとおりです。

健康診断の実施と、その結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
面接指導やストレスチェック(心理的な負担の程度を把握するための検査)の実施と、その結果に基づく措置
作業環境の維持管理と、作業の管理
健康教育や健康相談など、労働者の健康の保持増進を図るための措置
衛生教育と、労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置

六号は「前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること」と定めています。列挙の外側に置かれた包括的な規定ですが、対象はあくまで労働者の健康管理に関する事項です。

また、産業医は労働安全衛生法第13条第3項により、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行う義務を負います。産業医が「中立」な立場と説明されることがありますが、条文の上で確認できる根拠は、この誠実に職務を行う義務です。産業医面談の目的は、従業員の健康の確保と、必要な配慮の検討にあります。

産業医が会社に伝えるのは就業上の措置についての意見や勧告であり、措置をとるかどうかを決めるのは事業者である

産業医が事業者に対して行うのは、労働者の健康を確保するために必要な勧告です。労働安全衛生法第13条第5項は、勧告の相手方が事業者であること、事業者は勧告を尊重しなければならないことを定めています。

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

労働安全衛生法|e-Gov法令

事業者には勧告を尊重する義務がありますが、就業場所の変更や労働時間の短縮といった措置をとるかどうかは、事業者が判断します。面接指導のあとの措置も、医師の意見を勘案したうえで、事業者が必要があると認めるときに講じる形で定められています(法第66条の8第5項)。産業医の意見が出たことが、直ちに解雇を意味するわけではありません。

産業医・会社・従業員の関係を示す図。産業医は就業上の措置について意見や勧告を伝え、措置をとるかどうかは事業者が判断する
(図:産業医・会社・従業員の関係)
(出典:労働安全衛生規則|e-Gov法令)

労働安全衛生規則第14条第3項では、産業医は、総括安全衛生管理者に対して勧告し、または衛生管理者に対して指導・助言をすることができるとされています。

勧告を受けた会社の対応の流れは、産業医の勧告が無視された場合の流れを扱った記事で詳しく解説しています。

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「クビ」と「退職勧奨」は法律上別のものであり、退職勧奨に応じる義務はない

解雇と退職勧奨は、どちらも会社を辞めることにつながる話に見えますが、法律上は別のものです。厚生労働省の退職勧奨に関するQ&A(スタートアップ労働条件)によると、解雇は使用者が一方的に労働契約の解除を通告するものです。これに対し退職勧奨は、使用者が労働者に辞めてほしいと勧めるものにとどまり、労働者がこれに承諾しなければ、労働契約の終了という効果は発生しません。したがって、退職勧奨を断ったことだけで労働契約が終わるわけではなく、応じるかどうかは本人が決められます。

解雇:会社が一方的に通告する。労働契約法第16条により、合理的な理由と相当性が必要になる
退職勧奨:会社が退職を勧める「申込」にすぎず、承諾するかどうかは本人の自由である

「解雇」と「退職勧奨」の違いを対比した図。解雇は会社が一方的に契約の解除を通告する行為、退職勧奨は会社からの申込で応じるかどうかは労働者の自由
(図:「解雇」と「退職勧奨」の違い)
(出典:労働契約法|e-Gov法令)

ここからは、解雇の制限、退職勧奨は断れること、行き過ぎた退職勧奨が違法と判断されることを順に解説します。

解雇は会社の一方的な通告であり、労働契約法第16条により合理的な理由と相当性が必要になる

解雇は、会社が理由を問わず自由にできるものではなく、法律上の制限があります。産業医面談との関係で不安になりやすい点なので、労働契約法第16条が定める、解雇が有効になるかどうかの基準を確認します。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法|e-Gov法令

つまり、解雇には客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要です。産業医面談を受けたことや産業医の意見が出たことだけで、解雇が有効になる、あるいは無効になると断定することはできません。有効かどうかは個別の事情によって判断されます。

退職勧奨は「申込」にすぎず、応じるかどうかは本人の自由である

退職勧奨は、会社からの「申込」にすぎず、応じるかどうかは本人の自由です。「断ったらどうなるのか」と不安になる場面が多いため、厚生労働省のQ&Aが退職勧奨をどう説明しているかを確認します。

退職勧奨は、労働契約を終了させることの「申込」であり、これに「承諾」するかどうかは労働者の自由です。

退職勧奨とはどのようなものでしょうか|厚生労働省「スタートアップ労働条件」

会社が退職を勧めても、本人が承諾しなければ労働契約は終了しません。ただし同Q&Aは、本人の本来の意思に反して「承諾」の外形をとった行動をした場合(例として、「もう会社を辞める」と口走る、「退職願」を記載する)でも、退職勧奨が違法となったり、労働契約関係の終了の効力が発生しなかったりすることがあると説明しています。また、使用者が虚偽の事実を述べる、脅迫をする、あるいは懲戒解雇事由があると労働者が誤解したといった場合には、錯誤、詐欺、強迫により取消しが可能となることがあるとされています。

その場で退職願を書かない、退職すると口にしないといった対応が必要かどうかは、状況によって異なります。迷ったときは、総合労働相談コーナーなどで、個別の状況を確認してください。

断っているのに繰り返し迫られるなど、行き過ぎた退職勧奨は違法と判断されることがある

退職勧奨は、断っているのに繰り返し迫るなど行き過ぎた場合には、違法と判断されることがあります。厚生労働省は、違法な退職勧奨と判断された事案として、次の2つの行為を挙げています。ここでは事件名ではなく、どのような行為が問題とされたかに絞って紹介します。

違法な退職勧奨と判断された行為(厚生労働省の例示)
  1. 明確に退職勧奨を拒否しているのに、執拗に退職勧奨を繰り返した
  2. 嫌がる労働者に、その場で退職手続きをするよう1時間ほど繰り返し迫った

産業医が面談で発言した場合に違法かどうかは、発言の内容や経緯などの個別の事情によって判断が分かれます。断ったのに繰り返し退職を迫られていると感じたときは、相談先に確認してください。相談先は、対処法の章で紹介しています。

ストレスチェックの面接指導の結果を理由にした解雇や退職勧奨は禁止されている

ストレスチェックの面接指導の結果を理由にした解雇や退職勧奨は、禁止されています。

厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルには、ストレスチェック指針から抜粋する形で、面接指導の結果を理由として次の措置を行うことが、不利益な取扱いとして禁止される旨が示されています。

面接指導の結果を理由とした不利益な取扱いとして示されている措置
  1. 解雇すること
  2. 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  3. 退職勧奨を行うこと
  4. 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換または職位(役職)の変更を命じること
  5. その他、労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること

また、労働安全衛生法第66条の10第3項は、面接指導の申出をしたことを理由として、事業者が労働者に対し不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

高ストレス者の面接指導や受検拒否については、高ストレス者の面接指導のメリット・デメリットを扱った記事やストレスチェックの受検拒否を扱った記事で詳しく解説しています。

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産業医面談で話した内容の扱いには法律上の制限がある

事業者が従業員の心身の状態に関する情報を扱える範囲には法律上の制限があり、面接指導などの実施に関わった者には秘密保持義務が課されています。一方で、産業医が事業者へ意見や勧告を述べる仕組みもあります。

自分の状況で確認したいのは、受ける面談が、法令に定められた健康診断・面接指導・検査にあたるかどうかです。労働安全衛生法第105条が秘密保持義務の対象として挙げているのは、次のものの実施の事務に従事した者です。

健康診断(第65条の2第1項、第66条第1項から第4項)
面接指導(第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項)
ストレスチェックの検査(第66条の10第1項)と、その面接指導(同条第3項)

この列挙に含まれない面談は、条文だけでは扱いを判断できません。就業規則や社内の窓口で確認してください。

会社が従業員の健康情報を使えるのは、健康の確保に必要な範囲に限られる

会社は、従業員の健康に関する情報を自由に集めて使えるわけではありません。労働安全衛生法第104条第1項は、事業者が労働者の心身の状態に関する情報を収集・保管・使用する範囲を、次のように定めています。

事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

労働安全衛生法|e-Gov法令

要点は、収集は労働者の健康の確保に必要な範囲内、保管と使用は収集の目的の範囲内、という制限です。本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでないとされています。この条文だけでは、人事評価への利用の可否までは断定できません。

産業医は会社に選任されていても、従業員の健康を守るために誠実に職務を行う義務がある

「産業医は会社に雇われているのだから、会社の味方なのでは」という疑問は、制度上の位置づけから整理できます。産業医は事業者に選任される一方で、労働安全衛生法第13条第3項により、医学に関する知識に基づいて誠実にその職務を行う義務を負います。

また、産業医が勧告や指導・助言をしたことを理由に、事業者が産業医を解任したり不利益に取り扱ったりすることは、労働安全衛生規則第14条第4項で禁じられています。

事業者は、産業医が法第十三条第五項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

労働安全衛生規則|e-Gov法令

第4項は産業医を守る規定であり、従業員の解雇を制限する規定ではありません。個々の産業医の姿勢を一般化することはできません。面談で不安を感じたときは、その内容を産業医に伝えて確認してください。

産業医への不安や不満をめぐる話題は、ブラック産業医の特徴や従業員の訴訟を取り上げた記事でも扱っています。

面談で緊張したり泣いてしまったりしても、今の状況や気持ちをそのまま話してよい

面談で緊張して言葉に詰まったり、涙が出てしまったりすることは、特別なことではありません。産業医面談の目的は、健康状態の把握と、必要な配慮の検討です。うまく話そうとせず、今の状況や気持ちをそのまま伝えて構いません。

泣いたことが処遇に影響するかどうかは、公的な資料からは判断できません。気になる場合は、面談の中で産業医に直接確認してください。

面談でどのような内容が話されるかについては、面談で話す内容を扱った記事で解説しています。

復職の判断で産業医が慎重な意見を出しても、最終的に復職を決めるのは会社である

産業医が復職に慎重な意見を出すと、「退職させたいのでは」と受け取る従業員もいます。しかし、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、産業医等による精査と、事業者による最終的な職場復帰の決定は、別のステップとして示されています。

手引きの流れのうち、復職の判断に関わる部分を4段階に整理すると、次のとおりです。産業医が関わるのは、主治医の診断書の内容を精査し、意見を述べる段階です。復職を最終的に決めるのは事業者です。

復職の判断で産業医が意見を述べる位置を示す図。主治医の診断書、産業医等による精査、復職可否の判断、事業者による最終決定の4段階
(図:復職の判断で産業医が意見を述べる位置)
(出典:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省)

復職を認めてもらえない状況が続くと、納得できない気持ちが「退職を促されているのでは」という不安に変わることがあります。そう感じるのは自然なことですが、産業医の発言の意図は個別の事情によって異なります。復職の可否や体調に関する判断は、産業医や主治医に相談して確認してください。

復職面談の目的や判断基準は、産業医による復職面談を扱った記事で解説しています。

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復職を認められない状態が続くと、退職を勧められていると感じやすくなる

復職を認められない状態が続くと、退職を勧められていると感じやすくなります。次のような場面が典型です。

休職期限が迫っているのに、なかなか「復職可能」の判断が出ない(就業規則上の休職可能期間が残りわずかになっている)
復職の意欲があるのに、何度産業医面談を受けても「復職可能」の判断が出ない

手引きでは、復職の可否は、主治医の診断書の提出、産業医等による精査、情報の収集と評価などの段階を経て判断される流れが示されています。産業医が慎重な意見を述べた理由は、個別の事情によります。発言の趣旨が分からないときは、面談の場で理由を尋ねてみてください。

休職期間が満了しても復職できない場合は、就業規則の定めにより退職となることがある

「クビ」とは別に、休職期間が満了しても復職できない場合に、就業規則の定めにより退職となる経路があります。これは産業医面談が直接の原因ではなく、休職期間の長さと復職の可否が関わるものです。

休職期間が満了したときの扱いは、会社の就業規則の定めによって異なります。まずは自社の就業規則で、休職できる期間、休職期間が満了した場合の扱い、復職の手続きを確認してください。就業規則を閲覧できない、記載の意味が分からないという場合は、人事・労務担当者に確認します。

休職の手続きや、休職に関する産業医面談については、産業医面談と休職を扱った記事で詳しく解説しています。

休職から退職へ追い込まれていると感じたときは、応じる義務のない退職勧奨かどうかを確認する

休職を勧められた、退職の話を持ちかけられたという場面で「追い込まれている」と感じたときは、まず状況を整理し、応じる義務のない退職勧奨にあたるかどうかを確認します。次の3点が手がかりです。

状況を整理する3つの確認項目
  1. 退職の話を、誰が、どの場面で言い出したか
  2. 断ったのに、繰り返し退職の話をされているか
  3. 「いつまでに決めてほしい」と期限を切られているか

判断の軸は、退職勧奨は断れること、そして断っているのに繰り返し迫るなど行き過ぎた場合は違法と判断されることがあること、の2点です。個別の状況が違法にあたるかどうかは、状況によって判断が分かれます。相談先は、次の章で紹介します。

産業医面談のあとに退職を迫られたと感じたときの対処法

産業医面談のあとに退職を迫られたと感じたときの対処法は、次の3つです。退職勧奨に応じるかどうかは本人の自由であるため、まず「応じない」という選択肢を考え、転職は本人の意思で選ぶ最後の選択肢として位置づけてください。

退職を迫られたと感じたときの対処法
  1. 退職勧奨には応じず、異動や業務量の調整を会社に相談する
  2. 執拗に退職を迫られる場合は、労働組合や公的な労働相談窓口に相談する
  3. 転職を選ぶ場合も、退職を急がず自分の健康状態を優先して決める

退職勧奨には応じず、異動や業務量の調整を会社に相談できる

退職勧奨に応じるかどうかは本人の自由なので、応じないことも可能です。業務が負担になっている場合や、復職を考えている場合は、異動や業務量の調整を会社に相談できます。

復職の際は、主治医、産業医、会社で話し合い、事業場の職場復帰支援プログラムに沿って慎重に進めます。復職の可否や体調の判断は、産業医や主治医に確認してください。

異動に関する産業医面談の詳細は、産業医面談と異動を扱った記事を参照してください。

執拗に退職を迫られる場合は、労働組合や公的な労働相談窓口に相談する

執拗に退職を迫られる場合は、一人で抱え込まず、労働組合や公的な労働相談窓口に相談します。勤務先に労働組合がある場合は、組合の窓口も選択肢になります。

公的な窓口の1つが、厚生労働省が設ける総合労働相談コーナーです。職場のトラブルに関する相談や情報提供をワンストップで行っており、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、あらゆる分野の労働問題を対象としています。

労働者と事業主のどちらからの相談も受け付けており、専門の相談員が面談または電話で対応します。予約は不要で、利用は無料です。各都道府県労働局や、全国の労働基準監督署内などに設置されています。

退職勧奨の相談が対象に含まれるかどうかは、相談の際に窓口へ確認してください。断っているのに繰り返し退職を迫られる行為は、違法と判断される場合があります。

転職を選ぶ場合も、退職を急がず自分の健康状態を優先して決める

転職を選ぶ場合も、退職を急がず、自分の健康状態を優先して決めます。転職は本人の意思で選ぶ選択肢の1つであり、産業医や会社から促されて決めるものではありません。

退職の時期や条件は、焦って決めないことが大切です。復職への不安が強い、体調が優れないといったときは、産業医や主治医に相談して、健康状態を踏まえて検討してください。

会社が産業医を通じて退職勧奨や解雇を進めた場合のリスク

産業医の職務に雇用契約の終了は含まれておらず、退職勧奨を産業医に担わせることは想定されていません。産業医の意見を理由に、会社が退職勧奨や解雇を進めた場合には、次の3つのリスクが考えられます。1つ目と2つ目は法令や資料に根拠があり、3つ目は一般的に想定される影響です。

産業医を通じた退職勧奨や解雇に伴う主なリスク
  1. 不当解雇として無効とされ、訴訟に発展するおそれがある
  2. 違法な退職勧奨と判断されるおそれがある
  3. 会社への信頼が下がり、モチベーション低下や人材流出につながるおそれがある

金額や訴訟件数など、リスクの大きさを示す数値は、確認できる公的な資料が見当たらないため、数値でお示しすることはできません。

不当解雇として無効になり、訴訟に発展するおそれがある

産業医が休職が必要と判断したことを理由に解雇した場合、その解雇が有効かどうかは、労働契約法第16条の基準で判断されます。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められなければ、権利濫用として無効となり得ます。無効とされれば、その解雇をめぐって訴訟に発展するおそれがあります。

産業医の意見が出たことだけでは、解雇の理由として十分とは限りません。

産業医の意見を理由に退職を執拗に迫ると、違法な退職勧奨と判断されるおそれがある

上司や人事が「産業医が休職しろと言っているから、辞めた方がいいのではないか」と提案することは、退職勧奨にあたります。この言い方は、産業医の意見と会社の判断を混同させる点で問題となり得ます。

違法かどうかの軸は、断っているのに繰り返し迫るなど行き過ぎた態様かどうかです。産業医の意見を持ち出したかどうかだけで、適法か違法かが決まるわけではありません。

会社への信頼が下がり、他の従業員のモチベーション低下や人材流出につながるおそれがある

従業員が退職を迫られる様子が社内に伝わると、会社への信頼が下がり、他の従業員のモチベーション低下につながることがあります。「いずれ自分も病気になれば解雇されるのでは」と感じる従業員が増えれば、人材流出につながる可能性もあります。

人事・労務担当者が休職者や復職が難しい社員に対応する手順

結論は、産業医に退職勧奨を担わせる前提で進めず、休職と復職の手順に沿って対応することです。手順は、次の4段階で整理すると分かりやすくなります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、職場復帰支援では職場配置、処遇、労働条件、社内勤務制度、雇用契約等の適切な運用が必要なことから、人事労務管理スタッフが重要な役割を担う点に留意する必要があるとしています。

休職者・復職が難しい社員への対応手順

ステップ1

産業医と主治医の意見を集める


ステップ2

解雇を避けるための措置を検討する


ステップ3

就業規則の定めを確認する


ステップ4

解雇を検討する場合は、法令上の制約を確認する

手引きは、心の健康問題がどのような状態であるかの判断は多くの事業場にとって困難であり、ケースごとに柔軟な対応が必要なことから、主治医との連携が重要になるとしています。個別の法的判断は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してください。

職場復帰支援プログラムの考え方は職場復帰支援プログラムを扱った記事、事業者が負う安全配慮義務については安全配慮義務を扱った記事で解説しています。

産業医の意見と主治医の情報を集めたうえで、復職の可否を判断する

復職の可否を判断する際は、労働者本人が提出する、職場復帰可能の判断が記された診断書に加えて、産業医等による精査の結果を集めます。手引きでは、第2ステップに「産業医等による精査」と「主治医への情報提供」が含まれます。産業医の意見を求める目的は復職の可否を判断することであり、退職の是非を決めることではありません。

復職を最終的に決めるのは事業者です。復職面談の進め方は、産業医による復職面談を扱った記事で詳しく解説しています。

配置転換や業務内容の調整など、解雇を避けるための措置を先に検討する

解雇を検討する前に、配置転換や業務内容の調整など、解雇を避けるための措置を先に検討します。法第66条の8に基づく面接指導を行った場合、事業者は、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置を講じなければならないと、同条第5項に定められています。

これは面接指導の結果に基づく措置についての規定であり、すべての休職・復職対応にそのまま当てはまるものではありません。配置転換に関する産業医面談の詳細は、産業医面談と異動を扱った記事を参照してください。

休職や復職の条件は就業規則にあらかじめ定めておく

休職や復職の条件は、就業規則にあらかじめ定めておきます。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、次の場合について、労働基準法や労働契約法等の関係法令上の制約に留意のうえ、労使の十分な協議によって決定するとともに、あらかじめ就業規則等に定め周知しておくことが「望ましい」としています。

私傷病による休業の最長(保障)期間や、クーリング期間を定める場合
休業期間の最長(保障)期間満了後に雇用契約の解除を行う場合

クーリング期間とは、休業の最長(保障)期間を定めている場合に、いったん職場復帰してから再び同一理由で休業するとき、休業期間に前回の休業期間を算入しないために必要な、職場復帰から新たな休業までの期間を指します。手引きの表現は「望ましい」であり、義務としての記述ではありません。就業規則に休職について定めていない場合は、対応に困らないよう、事前に就業規則や社内ルールを決めておきます。

解雇を検討する場合は、労働契約法第16条などの制約を満たす必要がある

解雇を検討する場合、産業医の意見が出ていても、解雇の有効性は労働契約法第16条で判断されます。解雇には、労働基準法が定める次の2つの制度も関わります。

労働基準法第19条(解雇制限):業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は、解雇してはならない(産前産後の女性が休業する期間とその後30日間も同様)。ただし、打切補償を支払う場合、または天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は除く
労働基準法第20条(解雇予告):解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告する。予告しない場合は、30日分以上の平均賃金を支払う。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は除く

第19条の解雇制限の対象は、業務上の傷病による休業などです。個別の解雇の可否は、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

職場メンタルヘルス実践ガイドブック_産業保健お役立ち資料
【関連お役立ち資料】

産業医面談とクビに関するよくある質問

産業医面談とクビをめぐってよくある、面談の拒否、人事評価への影響、退職の相談の3点について、結論からお答えします。

Q,産業医面談は拒否できますか?
A
産業医面談を拒否できるかどうかは、面談の種類で答えが変わります。労働安全衛生法第66条の8第2項は、労働時間の状況などが厚生労働省令の要件に該当する労働者に事業者が行う面接指導について、労働者は受けなければならないと定めています。ただし、事業者の指定した医師による面接指導を希望しない場合に、他の医師の行う面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでないとされています。

面接指導以外の産業医面談(健康相談や復職面談など)を拒否した場合の扱いや、拒否した場合の懲戒の可否については、産業医面談の基準と、面談を拒否された場合の対処法を扱った記事で解説しています。

Q,面談で話した内容は人事評価に影響しますか?
A
面談で話した内容が人事評価に影響するかどうかは、個社の運用によるため、一概には言えません。労働安全衛生法第104条第1項は、事業者が労働者の心身の状態に関する情報を、収集は健康の確保に必要な範囲内、保管と使用は収集の目的の範囲内で扱うと定めています(本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合を除く)。健康情報を自由に評価へ使える定めではありませんが、この条文だけで人事評価への影響の有無を断定することはできません。「会社が従業員の健康情報を使えるのは、健康の確保に必要な範囲に限られる」の節でも解説しています。
Q,産業医面談の場で退職の相談をしてもよいですか?
A
産業医面談の場で退職の相談をすること自体は、本人の自由です。産業医の職務に退職の決定は含まれておらず、退職を決めるのは本人と会社です。相談に対して産業医が助言をすることはあっても、退職を勧められたと感じたときは、応じるかどうかは本人が選べます。

まとめ

従業員の方へ。 産業医の職務に解雇や退職勧奨は含まれておらず、退職勧奨は断ることができます。行き過ぎた退職勧奨は違法と判断されることがあり、迷ったときは総合労働相談コーナーなどに相談できます。復職の可否や体調に関する判断は、産業医や主治医にご相談ください。

人事・労務担当者の方へ。 産業医に退職勧奨を担わせる前提で進めないでください。休職や復職の対応は、主治医の意見や産業医等の精査を踏まえ、事業者が決定する手順に沿って進め、就業規則の整備と、解雇を避けるための措置の検討を先に行うことが基本です。個別の法的判断は、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

休職者や復職者への対応について、手引きは、心の健康問題がどのような状態であるかの判断は多くの事業場にとって困難で、主治医との連携が重要になるとしています。自社で産業医と契約する方法や、地域の産業医との契約が適した企業もあります。選択肢の一つとして、リモート産業保健は、産業医と産業看護職の2名体制で、産業医面談に対応します。基本プランは月額3万円〜です。

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