産業医訪問・オンライン面談、ストレス予防から
休職・復職者のアフターフォローまで対応
ストレスチェックにおける高ストレス者の判断基準とは?
ストレスチェックで高ストレス者と判断されるのは、どのような場合なのでしょうか。まずは、高ストレス者の判断基準を確認しましょう。
判断基準は2種類
ストレスチェックの設問は、以下の3つの領域に分かれています。
A群 | 仕事のストレス要因(17項目) | 職場による労働者の心理的負担の原因に関連した項目 |
B群 | 心身のストレス反応(29項目) | 心理的な負担によって起こる自覚症状に関する項目 |
C群 | 周囲のサポート(9項目) | 職場の労働者からのサポートに関する項目 |
3つの領域を数値化して、高ストレス者か否かを判断する仕組みです。判断方法には、「合計点数を使う方法」または「素点換算表を使う方法」があります。
合計点数を使う方法
まずは、合計点数を使う方法について解説します。合計点数を使う方法の手順は以下のとおりです。
1.回収した調査票をもとに、合計点数を出す
2.各群(※)の合計点数を算出後、高ストレス者を以下の基準に照らし合わせる
・「心理的な負荷による心身の自覚症状に関する項目」(心身のストレス反応)の合計点数77点以上である(最高点は4×29=116点)
・「心理的な負荷による心身の自覚症状に関する項目」(心身のストレス反応)の合計点数が63点以上、かつ、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」(仕事のストレス要因)と「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」(周囲のサポート)の合計点数が76点以上である(最高点は4×17+4×9=104点)
(※)群の分類は、以下のとおりです。
A群:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
B群:心理的な負荷による心身の自覚症状に関する項目
C群:職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
合計点数を算出するときは、質問の内容をよく確認しましょう。ストレスチェックの質問の一部に、点数が低いほどストレスが高いと評価すべき質問が混ざっていることがあるためです。
こうした質問が混ざっている場合は、回答のあった点数を逆転させて足し合わせていく必要があります。
例えば、A群の1~7・11~13・15は、点数が低いほど高ストレスであると判断してください。つまり、回答が1なら4点、2なら3点といった具合になります。
引用:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
素点換算表を使う方法
次に、素点換算表を使う方法です。「複雑でややわかりにくい」「評価点が低いほどストレスが高いと判断されてしまう」といった問題点もありますが、質問数の影響を排除し、尺度ごとに評価を考慮しストレスを把握できるメリットがあります。
おおまかな手順は、以下のとおりです。
- 職業性ストレス簡易調査票の質問項目が、いくつかの「尺度」に分けられてまとめられている下記の厚生労働省が公開している素点換算表に「15-(No.1+No.2+No.3)」などと示されているため、計算欄にしたがって計算をする
- 尺度ごとに計算をし、素点換算表を見ながら評価点を出す
- 算出された評価点を「A」「B」「C」の領域ごとに合計し、高ストレス者を選定する数値基準に照らし合わせる
引用:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
より詳細な算出方法についても、上記のページを参考にしてください。
ストレスチェックの結果は直接労働者に通知しなければならない
労働者にストレスチェックの結果を通知する際に、気を付けるべき点がいくつかあります。実施する前に、下記に記載している通知方法や通知する内容を確認しておくことを推奨します。
(検査結果の通知方法について)
事業者は、労働安全衛生規則第52条の12の規定に基づき、ストレスチェック結果が実施者から遅滞なく労働者に直接通知されるようにしなければならない。この場合において、事業者はストレスチェック結果のほか、次に掲げる事項を通知させることが望ましい。
- 労働者によるセルフケアに関する助言・指導
- 面接指導の対象者にあっては、事業者への面接指導の申出窓口及び申出方法
- 面接指導の申出窓口以外のストレスチェック結果について相談できる窓口に関する情報提供
引用:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
上記以外にも、産業医や保健師などの実施者から労働者にストレスチェック結果を通知する場合は、ほかの者に見られないよう、封書または電子メールなどで個別に直接通知しなければならないとされているため、通知方法についても注意が必要です。
また、面接指導の対象者に関しても同様の配慮が必要です。ストレスチェックの結果を労働者に通知する際に、面接指導の対象者である旨の通知文も同封しておくことで、面接指導の要否がほかの者に推測されないようにできます。
ストレスチェックで高ストレス者になった労働者がすべきこと
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され面接指導を受ける必要があると認められた場合は、できるだけ申し出を行ない、医師による面接指導を受けることが望ましいとされています。
医師による面接指導は、心身の状況および勤務状況などを確認してメンタルヘルス不調のリスクを評価し、必要に応じて助言や指導、事業者による適切な措置を進めるためのものです。ご自身の健康を守るためにも、面接指導をお受けになることをおすすめします。
ストレスチェックの高ストレス者に対する企業の対応
高ストレス者からの面接指導の申し出があった場合、事業者は面接指導を実施しなければいけないと義務付けられています。
しかし、面接指導の申し出は義務ではないため、高ストレス者が周りに知られるのが怖いといった理由で申し出をしない場合もあります。そのため、ストレスチェック結果で高ストレス者と判定された労働者が、安心して面接指導を受けてもらえるような配慮が必要です。
具体的な対応策としては、ストレスチェックの実施目的と、その結果によって不利益に取り扱われることがない旨を労働者全体に周知します。そして、すぐ面接指導の申し出ができるよう、ストレスチェック結果と一緒に面接指導の案内を同封し、労働者が安心して申し出られる環境を提供しましょう。
ただし、面接指導が必要であっても、忙しかったり面倒くさがったりして、面接指導の申し出をしない労働者も珍しくありません。そのようなときは、実施者または実施事務従事者が申し出の勧奨をすることも方法の一つです。
また、ストレスチェックを外部委託している場合、面接指導の勧奨も外部機関の実施者に依頼しましょう。
ストレスチェックから職場のヘルスケアを始めませんか?
労働者のストレス状態を把握することは、企業の経営にもかかわる重要な要素です。精神障害による労災請求件数は年々増加傾向にあり、自殺の動機には「健康問題」や「勤務問題」も含まれています。
参考:
令和元年度 過労死等の労災補償状況「精神障害の労災補償状況」|厚生労働省
令和元年版自殺対策白書「原因・動機別の自殺者数の推移」|厚生労働省
「ストレスチェックのやり方がわからない」「ストレスチェックを実施しているが、適切な対応ができていない」という場合には、ストレスチェック代行サービスを活用しましょう。
リモート産業保健は、産業保健に関する業務を一括支援するサービスを提供しています。契約企業には、Web版ストレスチェックを無料でご提供します。また、最短10分でストレスチェックの実施が可能で、その後に面談を申し込めば産業看護職によるフォローなどを受けられます。
職場のメンタルヘルスケアを始めようと検討されている方は、ぜひ「リモート産業保健」のサポート内容をチェックしてみてください。
リモート産業保健のストレスチェック代行サービス
リモート産業保健のサービス詳細
ストレスチェックの高ストレス者への面接指導について
では、ストレスチェックの高ストレス者への面接指導は、どのように行なえばいいのでしょうか?おもな流れについては、以下を参考にしてください。
1.労働者本人から面接指導の申し出があった場合、「1ヵ月以内」に医師による面接指導を行なう
2.面接指導前に、産業医が事業者(人事・労務担当者)と労働者本人から情報収集をする
・対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職など
・ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィールなど)
・ストレスチェックを実施する直前 1 ヵ月間の、労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)など
・定期健康診断やその他の健康診断の結果
・ストレスチェックの実施時期が繁忙期または比較的閑散期であったかどうかの情報
・職場巡視における職場環境の状況に関する情報
3.面接指導実施後、1ヵ月以内に面接指導をした医師から意見聴取を行なう
事業者は面接指導後のおおむね「1ヵ月以内」に、面接指導実施者の就業上の措置に関する意見を産業医から聴取します。この意見の聴取は、面接指導を行なった医師から面接指導結果の報告を受けるのに併せて行なうことが適当です。
4.必要な措置を実施する
事業者は医師からの意見を勘案し、必要に応じて、労働時間の短縮などの措置を講じなければなりません。
面接指導の実施者
面接指導を実施する医師は、事業場で契約している産業医、または事業場において産業保健活動に従事している医師が推奨されています。スポットで面接指導の実施だけを外部の医師に委託する場合も、産業医資格を保有している医師に委託することが望ましいでしょう。
なお、面接指導は精神疾患の診断や治療を行なうものではないため、必ずしも精神科医や心療内科医が実施する必要はありません。しかし、労働者の状況によっては、専門医療機関への受診勧奨の要否も判断する必要があるため、メンタルヘルスに関する知識や技術を持っている医師と契約するのがよいでしょう。
必要な措置の実施とは
面接指導をしたあとの医師からの意見聴取は、1ヵ月以内に行ないましょう。ただし、労働者本人としっかりと話し合い、了解を得ることが大切です。さらに、必要な措置を実施することで、労働者が不利益を被らないよう配慮することも忘れてはいけません。
労働者の許可を得てから、必要に応じて労働者の上司や人事なども交えて話すことも、方法の一つです。

産業医面談とはなにか?産業医面談のメリットから産業医と何を話すのか、従業員から休職・復職の申出があった場合の対応、産業医面談の意見書作成、オンラインでの実施方法など最新の状況までを一つのお役立ち資料にまとめて解説。今すぐチェック
ストレスチェックの高ストレス者への産業医面談のメリット・デメリット
ストレスチェックを有効に活用できれば、自身や事業場の労働者のストレスの程度を知ることができます。しかし、そのあとの高ストレス者への産業医面談には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
ここでは、メリットとデメリットのそれぞれを解説します。
産業医面談のメリット
産業医面談のメリットは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐとともに、その悪化を防げることです。労働者の悩みによって対応は異なりますが、不当な扱いを受けている、長時間勤務がつらいなど、職場環境の改善が必要な場合に産業医からのアドバイスは役に立ちます。
また、休職したいと訴える労働者に対し、産業医との面談を通じて意見を聴取することで、離職率の増加に歯止めをかけることもできます。業務の負担を軽減したり、休職を提案したりするなどの措置を講じることで、離職による急な人材損失を防げるでしょう。
産業医面談のデメリット
産業医面談のデメリットは、時間や回数に制限があることです。あらかじめ何を話すかを面談の前に考えておいても、限られた時間では思いのすべてを伝えられず、問題の核心に迫れないこともあるでしょう。
また、産業医面談をすすめても、「意味のない面談だから」と拒否されるケースもあります。一般的に産業医面談の多くが予約制で、予約をするには企業の窓口を通す必要がある点をデメリットと感じる労働者もいるでしょう。さらに匿名ではないため、会社に不利益な嘘を付いていると思われないか、クビにされるのではないかという不安から、産業医面談に消極的な労働者もいます。
労働者に産業医面談を受けてもらえない場合はどうする?
自身が高ストレス者だとわかっても、「プライベートなことについて立ち入ってほしくない」「わざわざ時間をとるのが億劫」「どうせ何も改善されないと諦めている」といった理由から、産業医面談を受けてもらえないことがあります。
その場合は、メリットを提示することで、産業医面談を受けてもらえるように促しましょう。例えば、産業医面談を受けることには、以下のようなメリットがあります。
- 自分が自覚していないストレスの原因を見つけることができる
- 自身の抱える問題について、客観的に判断してもらうことができる
- 現在の状況を話すことで、自分では思いつかない解決策を知ることができる
さらに、人事や仕事の評価に影響しないことや、個人情報は守られること、医療の専門家として心身の健康を守る方法を提案することなども伝えると、労働者も面談に前向きになってくれるでしょう。
まとめ
ストレスチェック後の高ストレス者の判断方法としては、質問への回答を数値化して「合計点数を使う方法」または「素点換算表を使う方法」があります。こうして出されたストレスチェックの結果は、労働者に直接通知しなければなりません。
ストレスチェックで高ストレス者になった労働者がいた場合、なるべく医師による面接指導を受けさせることが望ましいとされています。
産業医面談は、メンタルヘルス不調の悪化を防ぎ、離職などによる急な人材損失を回避できる一方で、時間や回数に制限があったり、労働者が「意味がないから」と面談を拒否したりするケースもあります。
職場のメンタルヘルス対策を行なうには、メンタルヘルスに関する知識を持つ産業医の選任が欠かせません。産業医の探し方や産業保健に役立つポイントを知りたい方は、ぜひ下記の資料をダウンロードください。
リモート産業保健では、業界最安値水準の月額3万円から、産業保健活動を一括サポートするサービスを提供しています。企業様の産業保健まわりの業務負担を軽減し、労働者のメンタルケアをサポートしますので、気になる企業担当者様の方は、下記の問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、「ストレスチェック」や「衛生委員会の支援」など、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を大幅軽減し、従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
「そのほかにおすすめなお役立ち資料」はこちら
産業医を初めて選任する企業様向けのガイドブック
産業医面談完全ガイドブック
産業保健師監修/職場メンタルヘルス実践ガイドブック
職場パワーハラスメント対策ガイドブック