ハラスメント相談窓口を設置する必要性とは?窓口の種類も解説

ハラスメント相談窓口を設置する必要性とは?窓口の種類も解説

  1. 自社でハラスメント相談窓口を設置すべきなのか、どのような相談窓口を設置すれば良いのかがわからない
  2. 従業員から相談を受けたときのどう対処したらいいかわからない

上記のような困りごとはありませんか?
パワハラ防止法の施行により窓口を設置したあと実際に相談を受けた際には、どのように対応すべきか、悩まれる企業様も少なくありません。

本記事では、企業の事例を元に社内外の相談窓口に関する基礎知識と、相談を受けた際の適切な対応方法について解説します。

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職場にハラスメント相談窓口が必要な理由とは?

結論から述べると、すべての事業主は職場にハラスメント相談窓口を設置しなければなりません。2020年6月1日の「改正労働施策総合推進法」(いわゆるパワハラ防止法)の施行により、職場のハラスメント防止対策が強化されました。

この法律の施行で、大企業にはハラスメント相談窓口の設置が義務化されました。そして、これまでは努力義務であった中小企業も、2022年4月1日よりパワーハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられ、そのなかの対応として相談窓口の設置が定められました。

2022年10月、厚生労働省から公表された令和4年版の「過労死等防止対策白書」によると、令和3年の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は86,034件でした。この結果から、依然として職場でのパワーハラスメントが多いことがわかります。

パワーハラスメントの防止措置である「パワハラ防止法」に罰則の規定はありませんが、厚生労働大臣が必要と認めた場合は、助言、指導または勧告の対象になります。さらに、勧告に従わなかった場合は企業名が公表される可能性もあるため、窓口の設置や相談者に対する対応を速やかに行なうことが必要です。

出典:令和3年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況|厚生労働省

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ハラスメント相談窓口の種類

ここまで説明してきた以外にも、職場ではさまざまなハラスメントが実際に起こっています。周囲には気付かれていないケースも多いため、企業側は従業員からの相談に対応するための窓口を設置しなければなりません。

しかし、「社内や内部の窓口だけでは十分な対応ができない」「専門家を入れて解決を図る必要がある」といったケースにおいては、外部の窓口を活用するのが適切です。そこで本章では、利用可能なおもなハラスメント相談窓口について紹介します。

社内のハラスメント相談窓口

社内のハラスメント相談窓口は、従業員が気軽に悩みを相談できるように設置します。厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、以下のような相談窓口の設置例が紹介されています。

  • 管理職や従業員をパワーハラスメント相談員として選任して相談対応
  • 人事労務担当部門
  • コンプライアンス担当部門、監査部門、人権(啓発)部門、法務部門
  • 社内の診察機関、産業医、カウンセラー
  • 労働組合

出典:あかるい職場応援団「パワハラ対策7つのメニュー」|厚生労働省

社外のハラスメント相談窓口

前述のとおり、ハラスメント問題については、専門知識が必要となる場面や社内だけでは対応に困る場面があります。そのようなケースでは、積極的に社外のハラスメント相談窓口を利用しましょう。

厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、以下のような設置例が挙げられています。

  • 弁護士や社会保険労務士の事務所
  • ハラスメント対策のコンサルティング会社
  • メンタルヘルス、健康相談、ハラスメントなど相談窓口の代行を専門に行なっている企業

出典:あかるい職場応援団「パワハラ対策7つのメニュー」|厚生労働省

無料のハラスメント相談窓口

職場のハラスメントに悩んだときには、国や各都道府県労働局が設置している無料の相談窓口も利用できます。

  • 総合労働相談コーナー
  • ハラスメント悩み相談室
  • 労働条件相談ほっとライン
  • みんなの人権110番(法務省・法務局)など

ただし、このような無料の相談窓口は、あくまでも従業員や事業主が個人で相談できる窓口であって、企業が外部の相談窓口として利用することはできません。

「事情があって社内に相談窓口を設置できない」「社内だけでは対応しきれない」といった場合には、外部に委託して有料の相談窓口を設置する必要があります。

職場で起こりがちなハラスメントの例

パワハラをはじめ、ニュースや新聞などのメディアでは「○○ハラ」という言葉が数多く飛び交っています。では、職場で起こるハラスメントにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、職場で起こりがちなハラスメントの例を紹介します。

パワハラ(パワーハラスメント)

パワハラとは、同じ職場で働く人に対して、職務上の権力や優位性を利用し、精神的・身体的な苦痛を与える行為のことです。厚生労働省によると、上司が部下に対して行なうものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらに部下から上司に対して行なうものも含みます。

モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラとは、「相手の人格・見た目を否定する」「見下して悪口を言う」「仕事で必要な情報を伝えない」「ほかの従業員がいる前で叱責する」など、相手の尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為のことです。

人によっては無自覚に行なってしまい、相手が精神的苦痛を感じていることに気付かないケースもあります。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)

セクハラとは、性的な発言をする、身体に触れるなどして、相手を不快な気持ちにさせたり、不利益を与えたりする行為のことです。男性から女性に対してだけではなく、女性から男性、同性同士に対するものも含みます。

職場で起こりうる例として、「性的な関係を強要されて精神的な苦痛を受けたことにより、仕事を続けられなくなった」「性的な発言に拒否反応を示したところ、急に配置転換させられた」「ほかの従業員が聞こえる場所で性的な発言をされた」といったケースが挙げられます。

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企業のハラスメント相談窓口|参考事例2選を紹介

ハラスメント相談窓口は設置するだけでなく、従業員に周知し、ハラスメントにあったときにすぐ相談できる環境を準備することが重要です。ここでは、周知する方法などの参考事例を紹介します。

事例(1)相談窓口の情報をカードで周知

従業員が直接相談しやすい環境を整えるために、社外と社内に窓口を設置しました。社内窓口には、社外の相談担当者研修を受講した相談員を男女1名ずつ配置しています。

相談員が定期的に各所に電話をし、現場の状況を確認するようにしています。また、相談窓口の情報をカードに記載して全社員に配布することで、窓口開設の周知も行なっています。

参考:職場のパワーハラスメント対策ハンドブック|公益財団法人21世紀職業財団

事例(2)複数の相談方法を用意

従業員が相談しやすいよう、複数の相談方法を用意しています。具体的には、相談窓口のほか、職員人事の管理職に相談できるヘルプライン、女性相談員が対応するヘルプライン、相談ポストなどがあります。

相談ポストは相談内容を投函する形式ですが、ほかの3つでは内線電話、外線電話、メール、FAX、郵便などあらゆる手段での相談が可能です。

参考:あかるい職場応援団『【第16回】「トップの指針が取組を支える」 ―ブランドを大切にする老舗ホテルのZ社』|厚生労働省

【ハラスメント相談窓口】相談を受けたときの対応方法

ここまで、ハラスメントの種類から相談窓口について説明してきましたが、実際にハラスメントが起きてしまい、相談を受けた場合にはどのように対応すればよいのでしょうか。

相談を受けてからどう対応するかを検討していては迅速な解決にならないため、あらかじめ対応方法を確認し、準備しておきましょう。なお、対応方法については、下記リンクで厚生労働省が提示している内容をもとに記載しています。

参考:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!|厚生労働省

【STEP1】事実確認

従業員から相談を受けたら、まずは事実確認を行ないます。対応が遅れると被害が継続・拡大する恐れがあるため、すぐに動くことが重要です。相談者と行為者からそれぞれ主張を聴き取り、主張が一致しない場合は第三者からの聴取も行ないます。

ただし、ハラスメントがあったのか、ハラスメントに該当するのかを慎重に判断するよりも、問題となっている行為をただちに中止させ、就業環境を改善することを優先しましょう。事実確認に大幅な時間を割かないよう注意が必要です。

【STEP2】被害者に対する措置

ハラスメントの事実確認ができたら、被害者に対する措置(配置転換、行為者との関係改善のためのフォロー、管理監督者や産業保健スタッフによるメンタルヘルスケアなど)を講じます。

ハラスメントによって休業を余儀なくされた被害者が希望する場合は、本人の状態に応じて、原職または原職相当職へ復帰できるよう、積極的に支援を行ないます。

【STEP3】行為者に対する措置

ハラスメントの行為者に対しても、就業規則に基づいた懲戒処分の検討、配置転換、被害者との関係改善のためのフォロー、被害者への謝罪の促しなどを行ないます。

なかには、ハラスメントの事実が確認されても問題を軽く考え、話が社内外へ広がらないよう内密に処理したり、当事者間での解決に委ねたりする事例もあります。

しかし、上記のような対応はさらに問題を深刻化させてしまい、結果として解決を困難にしかねないため、適切とはいえません。

職場内のハラスメントを解決するには、事業者がハラスメントを重大な問題としてとらえ、真摯に取り組むことが重要です。そして、被害者への配慮はもちろん、行為者への制裁についても、公正なルールに基づいて実施することが大切です。

さらに、行為者に対して懲戒規定に則った処分を下すだけでなく、「行為者の言動がなぜハラスメントに該当し、どのような点で問題があったのか」を理解させ、再発防止に努めるのも事業者の役割です。

【STEP4】再発防止の取り組み

職場におけるハラスメントについて、これまでの方針をあらためたことを、社内報やパンフレットの配布、社内ホームページへの掲載などを通して職場全体に周知させ、再発防止を図ります。

なお、ハラスメントの事実が確認されなかったとしても、これまでの対策が十分であったかは再度確認するようにしてください。従業員に対しても、ハラスメントに関する意識を啓発する研修や講習などを実施して、全体の共通認識や理解を深め、ハラスメントが発生しない職場づくりを目指しましょう。

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産業医にもハラスメント相談は可能!

社内の担当者に悩みを打ち明けにくい場合には、産業医に相談するのもよいでしょう。産業医には守秘義務があり、相談者の同意なしに相談内容などを会社に開示することはないので、社内の担当者よりも相談しやすいうえ、客観的な助言を受けることができます。

ただし、産業医は労働者に対して医学的な知見から、心身のケアに関するアドバイスを行なう医師であって、ハラスメントの専門家ではありません。また、産業医は立場上、相談についての助言やフォローのみを行なうことになるため、治療を希望する場合には、専門医の紹介を受ける必要があります。

ハラスメントであるかの判断や行為者への処分、人間関係の改善などの具体的な対応については、会社側が行なう必要があります。

産業医にハラスメントについて相談することはできますが、産業医の立場上、相談したことがハラスメント解決に直結するわけではないことを理解しておきましょう。

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ハラスメント相談窓口と産業医の連携が重要

ハラスメント窓口に寄せられる相談には、「仕事が辛くてもう死にたい」といった深刻なものもあります。このような場合、社内の窓口担当者では対応が難しいため、速やかに産業医などの専門家に相談しましょう。

ハラスメント防止対策について、日頃から産業医にアドバイスをもらうことで、対応困難なケースが発生した際の早期連携や、スムーズな課題の抽出などが期待できます。

ハラスメント相談窓口を設置する際には、産業医の選任も併せて検討してみてはいかがでしょうか。

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まとめ

今回は、2022年4月から中小企業でも設置が義務付けられた、職場のハラスメント相談窓口について解説しました。社内にハラスメント相談窓口がない場合は、速やかに設置してハラスメント防止対策を進めましょう。

しかし実際には、「相談窓口を設置する予算も人手も確保できない」「産業医に相談したくても自社にはおらず、探し方もわからない」などと悩む企業担当者の方もいるでしょう。

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