メンタルヘルスとは?具体的な症状や職場で不調者が出る原因、取り組み内容を解説

メンタルヘルスとは?具体的な症状や職場で不調者が出る原因、取り組み内容を解説

そもそも、メンタルヘルスとは?

メンタルヘルスとは、「心の健康状態」を示す言葉です。気持ちが穏やか、心が軽い、やる気が自然と出てくるときは、「心が健康的な状態」といえます。

しかし、誰にでもメンタルの不調を感じる瞬間はあるものです。イライラや落ち込み、不安などを抱えて心に余裕がないと、体が重い、頭痛がするなど、身体的な不調が出る場合もあります。

適度なストレスは自律神経を整えるために必要ですが、職場やプライベートで過剰なストレスを長時間抱えていると、メンタルヘルス不調(心の健康を崩している状態)に陥いるおそれがあります。

メンタルヘルスの不調は、決して珍しいものではありません。実際に、これまでメンタルヘルス不調とは無縁だった方が、無自覚のうちに心のバランスを崩し、突然仕事に行けなくなるケースもあります。

メンタルヘルス不調は、年齢・性別にかかわらず、誰にでも起こりうることを知っておきましょう。

メンタルヘルス不調が続き、精神疾患に陥る方も少なくない

ストレスが多い現代社会において、気分が落ち込むことは誰にでもあります。しかし、気分の落ち込みが日常生活に支障をきたす場合は、メンタルヘルス不調に陥っている可能性があると考えられます。

例えば、「何もする気が起きない」「好きなことが楽しめない」など、心の調子が悪い状態が1週間以上継続している場合には、注意が必要です。

メンタルヘルス不調が続くと、うつ病やパニック障害などの精神疾患を発症する可能性があります。精神疾患は不調の早期発見と適切なケアで予防できるため、心の不調にいち早く対応することが重要です。

日本国内でも精神疾患の患者数が増加していることから、年々心の健康に関する意識が高まっています。国の医療計画のうち、力を入れる分野(5疾病)として、「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」と並び、「精神疾患」が含まれています。

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メンタルヘルス不調がもたらす代表的な精神疾患

メンタルヘルス不調が悪化すると、精神疾患を発症するリスクが高まります。しかし、精神疾患を発症したとしても、適切なケアや治療を行なうことで、症状の悪化を防ぎ、早期回復を目指せます。

精神疾患の発症にいち早く気付くためには、代表的な疾患を知っておくことが大切です。ここでは、メンタルヘルス不調がもたらす代表的な精神疾患について、簡単に紹介します。

メンタルヘルス不調がもたらす代表的な精神疾患タイプ別

うつ病

うつ病は過度のストレスが原因となり、脳のエネルギーが足りなくなった状態です。脳のエネルギーが足りなくなると、心身の回復力が低下し、さまざまな精神的・身体的症状を引き起こします。

精神的な症状として、「気分が激しく落ち込み、以前好きだったことが楽しめない」「ネガティブな感情が収まらない」といった抑うつ状態があります。このような症状が2週間以上続くと注意が必要です。

また、うつ病では精神的な症状だけではなく、めまいや頭痛、肩こり、動悸、食欲減退などの身体的な症状が起こる可能性もあります。

パニック障害

パニック障害は、日常生活に支障が出るほど、不安や緊張を強く感じてしまう病気です。突然、発作のように不安な気持ちが抑えきれなくなり、めまいや動悸、呼吸困難などを起こしたり、イライラや興奮、倦怠感を抱いたりします。

パニック障害を初めて経験した方は、「このまま死んでしまうのではないか」と恐怖を感じるケースもあるようです。さらに、「また発作が起きたらどうしよう……」と過度に心配してしまう「予期不安」に陥る方も少なくありません。

適応障害

適応障害は、自分の置かれている環境に適応できず、抑うつ気分や強い不安感、怒り、神経過敏、めまいなど、うつ病と似た症状が起こる病気です。

ただし、ストレスの原因から遠ざかれば症状が落ち着くケースが多いため、うつ病とは治療方法が異なります。「職場や学校など、特定の環境にストレスを感じている」「原因から離れると症状が落ち着く」などの場合は、適応障害の可能性があります。

適応障害は「甘えているだけ」「心の強さの問題」と誤解されて周囲の理解を得にくく、治療がなかなか進まないことも少なくありません。

睡眠障害

睡眠障害とは、寝つきが悪い、十分に睡眠を取っているのに常に眠い、夜中に何度も覚醒するといった状況が、1ヵ月以上続く病気です。睡眠障害で最も多いのが「不眠症」で、必要な睡眠時間が足りていないために、日常生活に支障をきたします。

また、睡眠障害が要因となって身体的健康を損なったり、別の精神疾患を招いたりするリスクもあります。睡眠の専門医を受診して障害の原因を明確にし、速やかに治療を開始することが大切です。

メンタルヘルス不調の要因になり得る職場環境とは?

メンタルヘルス不調を予防するには、心の異変をいち早く察知し、要因となっている問題の改善に取り組むことが重要です。

そこで本章では、職場におけるメンタルヘルス不調のおもな要因について解説します。

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長時間労働で生活リズムが崩れている

長時間労働による不規則な生活が続き、休息を十分に取れないでいると、メンタルヘルス不調に陥るリスクが高まります。具体的には、食事の時間が不規則になったり、睡眠時間が極端に短くなったり、帰宅が夜遅くになったりすると、心身をリラックスさせる時間が削られてしまいます。

職場内で多くのメンタルヘルス不調者が発生すると、企業全体の生産性が低下し、離職者・休職者が増える、人材確保のコストが増大するなどして、経営全体に悪影響が出ます。

仕事の自由度が少ない

マニュアルどおりの作業が必須の職種や、やりがいを見出しづらい仕事は、主体的に動けないことからモチベーションが低下しやすく、気付かないうちにストレスが溜まってしまいます。

「仕事の自由度」は、労働者一人ひとりの成長やモチベーションに大きく影響します。いくら仕事に慣れてできることが増えても、自身の裁量でできる仕事が少なければ、やりがいを感じるのは難しいものです。

基本的には決められた手順どおりに行なう作業でも、時おり主体性を発揮できる場面があれば、やりがいを感じられるでしょう。ただし、自由度が高いだけでは、責任に耐えられず、辛く感じる方もいます。次の項目も確認したうえで、仕事を割り振るようにしましょう。

仕事内容が本人の適性に合っていない

仕事の適性やストレスの感じやすさは人それぞれです。与えられた仕事が本人の適性に合っていなければ、能力を発揮できず、ネガティブな思考にもなりやすくなります。

「自分は役に立てていない」「能力が足りていない」などの思いが続くと、労働者が強いストレスを感じ、メンタルヘルス不調に陥るおそれがあります。したがって、管理職は部下の適性を正確に見極め、業務量や業務内容を調整することが大切です。

ハラスメントを受けた

職場で起こりがちなハラスメントといえば、パワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラ、アルハラなどがあります。2022年にパワハラ防止措置が全企業で義務化されるほど、ハラスメントは社会的な課題となっています。

ハラスメントは被害者の心に大きな傷を残します。なかには、ハラスメントを受けても相談できず、負担が大きくなった結果、メンタルヘルス不調や精神疾患を発症するケースもあります。

企業はハラスメントを決して放置せず、積極的に対策を行なうことが重要です。

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職場の人間関係が悪い

一日の大半を過ごす職場の人間関係が悪いことも、メンタルヘルス不調が起こる要因の一つです。具体的には、職場内で対立関係が生まれている、上司とのコミュニケーションが不十分、悩みを相談できない、理不尽な理由で叱責される、といった環境が挙げられます。

過度なストレスを長時間受けていると、憂うつな気分や落ち込み、イライラなどの心理的負担が大きくなり、やがて重大な精神疾患の発症につながるおそれもあります。

メンタルヘルス不調のサイン

人は多かれ少なかれ、誰もがストレスを感じながら生きています。重要なことは、本格的な不調に陥る前に本人や周囲が異変に気が付き、すばやく対処することです。

以下のような症状が2週間以上続く場合は、「メンタルヘルス不調のサイン」と考えて、専門家への相談を検討しましょう。

  • 食欲がなくなる
  • イライラ、不安感、落ち込みが続く
  • 口数が減って消極的になる
  • やる気が出ない
  • 寝つきが悪い、眠りが浅い、朝早く目が覚める
  • 飲酒、喫煙量が増える
  • 身だしなみがだらしなくなる
  • 遅刻や早退、欠勤(無断欠勤なども含む)が増える
  • 仕事のパフォーマンス、集中力が落ちる
  • 挨拶をしなくなる など

上記以外にも、周囲から見て「いつもと違う」と感じたら、メンタルヘルス不調のサインかもしれません。メンタルヘルス不調は自分では気付きにくいケースが多いため、周囲との日々のコミュニケーションをとおして、「気付いてもらう」「気付かせてもらう」ことが大切です。

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職場のメンタルヘルス対策で得られる効果

自社従業員のメンタルヘルス不調は、本人だけではなく企業全体にも影響を与えます。ストレスが多い現代社会では、職場のメンタルヘルス対策に積極的に取り組むことが重要です。

ここでは、職場のメンタルヘルス対策で得られる効果について紹介します。

健康リスクを軽減できる

従業員が心身の調子を崩して休職・離職することになれば、残った従業員の負担が増大します。その結果、次々と心身の調子を崩して休職・離職する者が出る、といった負のループに陥るおそれがあります。

適切なメンタルヘルス対策を行なえば、そういった事態を避けられます。また、従業員が精神的に安定すれば、企業全体の生産性向上や業績向上も期待できるでしょう。

メンタルヘルス不調を経営におけるリスクの一つととらえ、事前に対策を講じたり、リスクが起きた場合の損失を最小限にしたりする「リスクマネジメント」が大切です。

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企業価値の向上につながる

従業員の健康管理ができている「ホワイト企業」として広く認知されれば、企業価値の向上につながり、優秀な人材が集まりやすくなります。

自社の従業員を大切に扱う企業は、求職者や投資家からの注目度が上がり、採用力や資本力を強化できます。企業イメージを向上させて優秀な人材を確保できれば、生産性や収益の向上、ひいては企業の社会的地位の向上も期待できるでしょう。

職場のメンタルヘルスケア|基本的な取り組みを紹介

最後に、職場のメンタルヘルス対策として、基本的な取り組みを紹介します。さまざまな選択肢のなかから、自社で取り組めることを一つずつ実施していきましょう。

ストレスチェック

ストレスチェックとは、ストレスに関するアンケートを通じて、従業員の心の健康状態を把握できる検査のことです。常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、年に1回以上の実施が法律で義務付けられています。

ストレスチェックを実施することで、従業員が自身のストレス状態に早期に気付き、早期に対処することができるため、メンタルヘルス不調の予防に効果的です。

くわえて、努力義務とされているストレスチェック結果の分析(集団分析)を行ない、労働環境の整備までできると理想的でしょう。

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教育研修

自社の労働環境やメンタルヘルスケア対策をいくら整えても、管理監督者や当事者である従業員が主体的に取り組まなければ効果は出にくいでしょう。

そこで、ストレスの対処法や相談対応などについて、メンタルヘルス関連の教育研修を実施して、知識を深める取り組みが有効です。なお、自社で教育研修を行なうのが難しい場合は、外部サービスを利用することも検討しましょう。

相談窓口

「相談できる人が身近にいない」「テレワークなので話し相手がいない」という方のために、相談窓口を用意することも大切です。実際に、悩みを誰かに打ち明けるだけで精神的に救われる、というケースも少なくないでしょう。

こういった相談窓口を利用した方の多くが、「気持ちが少しスッキリした」「心の整理ができた」「少し前向きになれた気がする」と話しています。相談窓口は、可能であれば、社外に委託して設置するのが望ましいでしょう。これは、社内の人間には本心を打ち明けづらい、という声が多く聞かれるからです。

相談窓口の設置後、従業員に対してリーフレットなどで存在や利用方法を周知しておくと、利用してもらいやすくなります。周知の方法については、衛生委員会などで検討しましょう。

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EAP(従業員支援プログラム)

EAPとは、心身に不調を抱える従業員のケアを目的とした支援プログラムのことです。EAP(従業員支援プログラム)を導入することで、心身の不調への早期対応が可能となるため、ビジネス界で注目を集めています。

EAPには「内部EAP」と「外部EAP」があります。内部EAPはEAPの活動すべてを自社で行なうもので、外部EAPは外部の専門機関と協力して行なうものです。

内部EAPは、社内の事情を理解しているので話が通じやすいですが、相談員が常駐するとなると相応のコストがかかります。一方の外部EAPは、社内の人間が対応するわけではないので、従業員が相談しやすいうえ、必要があるときだけの利用でコストを削減できます。

どちらを導入するにしても、情報収集を行なって比較し、自社にあった方法を選択することが重要です。

まとめ

「心の健康状態」を示すメンタルヘルスへの対策は、より良い労働環境を整えるうえで重要です。メンタルヘルス不調が続くと、うつ病やパニック障害などの精神疾患を発症するリスクが高まり、仕事のみならず、日常生活にも大きな影響を与えます。

メンタルヘルス不調の原因はさまざまですが、長時間労働やハラスメントなどがある職場環境が、要因の一つとして挙げられます。メンタルヘルス不調を予防するためには、「いつもと違う」というサインに、自分自身や周囲がいち早く気付くことがポイントです。

そのためにも、ストレスチェックや教育研修などの職場のメンタルヘルス対策をとおして、メンタルヘルスに関する知識を身に付けるようにしましょう。企業側も、メンタルヘルス対策を実施して従業員の健康リスクを軽減し、企業価値の向上に努める必要があります。

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