ストレスチェックの担当を任されたものの、義務の範囲や対象者の数え方、実施の手順のどこから着手すればよいかが整理できていない、という状況は珍しくありません。さらに制度は変わりつつあり、令和10年(2028年)4月1日からは50人未満の事業場も実施義務の対象になります。
この記事では、ストレスチェックの定義と目的から、義務の範囲、対象者の2つの要件、9つの実施手順、実施体制、面接指導、労働基準監督署への報告、罰則の切り分けまでを、一次資料にもとづいて一度に確認できるように整理しました。読み終えたときに、自社の事業場が「いつまでに」「誰に対して」「何を」実施すべきかを判断できる状態を目指しています。
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この記事でわかること
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【1】ストレスチェックの定義と、制度の主たる目的が「未然防止」にあること -
【2】実施義務が課される事業場の範囲と、令和10年4月1日からの義務化拡大の内容 -
【3】対象者の2つの要件と、派遣社員・パート・アルバイトの扱い -
【4】準備から労働基準監督署への報告までの9つの手順と実施体制 -
【5】実施しなかった場合と報告を怠った場合とで異なる罰則の扱い
職場におけるさまざまなストレス要因が増加する中、ストレスチェックを活用することで、労働者のメンタルヘルス不調にいち早く対応することが重要です。
ストレスチェックの実施を検討中のご担当者様に向けて、産業保健師が監修した「はじめてのストレスチェックガイドブック」をご提供しますので、ぜひご活用ください。
ストレスチェックとは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査である
ストレスチェックとは、労働安全衛生法にもとづき労働者の心理的な負担の程度を把握する検査です。労働者が調査票(質問票)に回答し、その結果から自分のストレスがどのような状態にあるのかを把握する仕組みで、事業者は1年ごとに1回実施します。厚生労働省の資料でも、ストレスチェックは、ストレスに関する質問票に労働者が記入し、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査だと説明されています。
根拠となるのは労働安全衛生法第66条の10で、制度は平成27年12月から開始されました。健康診断のように身体の状態を測るものではなく、仕事の負担や職場のサポート状況を含めて「心理的な負担」を可視化する点が特徴です。

(図:ストレスチェック制度とは_「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイド)
(出典:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイド)
一方で、実務では「誰が実施者になるのか」「結果を誰が見てよいのか」といった運用の設計まで含めて決めなければ、制度は形だけのものになります。定義を押さえたうえで、次章以降で義務の範囲と手順を確認していきます。
ストレスチェックの目的は、精神疾患の発見ではなくメンタルヘルス不調の未然防止にある
ストレスチェック制度の主たる目的は、メンタルヘルス不調の未然防止です。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルは、この制度が精神疾患の発見を目的とするものではなく、メンタルヘルス不調の未然防止を主たる目的とするものだと明記しています。
目的は大きく2つに分けて理解すると整理しやすくなります。
つまり、ストレスチェックは「不調者を見つけ出す検査」ではありません。ここを取り違えると、結果を人事評価や配置の判断材料に使いたくなり、後述する不利益取扱いの禁止に抵触するおそれが出てきます。「不調者を見つけ出す検査」ではありません
目的の伝え方や従業員への周知の仕方は、受検率にも影響します。具体的な進め方はストレスチェックの目的とは?セルフケアの考え方や従業員への周知方法で整理しています。
ストレスチェックの法的根拠は労働安全衛生法第66条の10である
ストレスチェックの法的根拠は、労働安全衛生法第66条の10です。同条第1項は、事業者に対して検査を行うことを義務づけています。
第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
条文の主語が「事業者」である点は、実務上とくに重要です。ストレスチェックは事業者に課された義務であり、労働者に課された義務ではありません。この非対称性は、後述する「労働者本人に受検義務はない」という論点につながります。
ストレスチェック制度が導入された背景には、精神障害の労災支給決定件数の増加がある
制度が導入された背景には、仕事による強いストレスを原因とする精神障害の労災が増え続けているという実態があります。厚生労働省が公表している精神障害に関する事案の労災補償状況では、請求件数は令和3年度の2,346件から令和7年度には4,958件へと増加しています。
支給決定件数も同様の傾向で、令和3年度の629件に対し、令和7年度は1,082件です。年度ごとの推移は次のとおりです。
「仕事の多様化が進んだから」といった抽象的な説明ではなく、労災の実数が増えているという事実が制度の背景にあります。この数値は、後述する50人未満の事業場への義務化拡大の理由を理解するうえでも押さえておきたい前提です。
ストレスチェックの実施義務は、現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場にある
ストレスチェックの実施義務は、労働安全衛生法施行令第5条に示す「常時50人以上の労働者を使用する事業場」に課されています。判定の単位は企業全体ではなく事業場です。厚生労働省のQ&Aでも、実施義務はそれぞれの事業者に適用されるため、労働者が所属する事業場ごとに実施する必要があるとされています。判定の単位は企業全体ではなく事業場です
そのため、企業全体で200人の労働者を使用していても、本社が60人、3つの営業所がそれぞれ40人・50人・50人という構成であれば、義務がかかるのは本社と50人の営業所2か所です。40人の営業所は、現時点では努力義務にとどまります。
実施の頻度は1年ごとに1回です。厚生労働省のスタートガイドも、事業者は1年ごとに1回ストレスチェックを実施すると記載しています。実施時期そのものに法令上の指定はないため、健康診断と同時期に設定する事業場もあれば、年度初めに固定する事業場もあります。
義務化の全体像や施行時期の整理はストレスチェック義務化はいつから?50人未満・対象・罰則まで総まとめもあわせて確認してください。
「常時50人以上」は雇用形態を問わず、常態として使用している労働者の数で判断する
「常時50人以上」の人数は、雇用形態を問わず、常態として使用している労働者の数で判断します。厚生労働省のQ&Aは、この人数について、契約期間や週の労働時間で線を引くのではなく、常態として使用しているかどうかで判断する旨を示しています。
ここで実務が混乱しやすいのは、この人数のカウントと、次章で扱う「対象者」の判定基準が別物だという点です。両者を混同すると、義務の有無そのものを取り違えます。
したがって、「パート・アルバイトは対象者ではないから人数にも含めない」という処理は誤りです。人数のカウントは義務の有無を決める入口にあたるため、名簿の作り方の段階で判断基準を分けておく必要があります。「パート・アルバイトは対象者ではないから人数にも含めない」という処理は誤りです
50人未満の事業場も、令和10年4月1日から実施が義務になる
労働者数50人未満の事業場も、令和10年4月1日からストレスチェックの実施が義務になります。令和7年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、これまで労働者数50人未満の事業場で当分の間の努力義務とされていたストレスチェックの実施が、事業場規模にかかわらず義務化されることになりました。施行日は令和10年4月1日です。
現時点で50人未満の事業場が努力義務にとどまっているのは、労働安全衛生法の附則による読み替えが根拠です。附則は、第66条の10第1項の「行わなければ」を「行うよう努めなければ」と読み替える旨を定めています。施行日を迎えると、この読み替えが解消される形になります。
現行と施行後の違いを整理すると、次のとおりです。義務の有無が変わるのは50人未満の事業場であり、50人以上の事業場の扱いは変わりません。
| 項目 | 現在 | 令和10年4月1日以降 |
|---|---|---|
| 常時50人以上の事業場 | 実施義務 | 実施義務 |
| 常時50人未満の事業場 | 努力義務(附則による読み替え) | 実施義務 |
| 労働基準監督署への報告 | 常時50人以上の事業場のみ義務 | 常時50人以上の事業場のみ義務(変更なし) |
準備期間は残されていますが、実施者の確保や衛生委員会での調査審議といった段取りは短期間では整いません。50人未満の事業場が具体的に何から着手すべきかは、後述する準備の章で扱います。
労働者本人にストレスチェックの受検義務はない
労働者本人に、ストレスチェックの受検義務はありません。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルは、一般定期健康診断と異なり、ストレスチェックでは労働者に受検義務が課されていないと明記しています。
つまり制度は、事業者側には実施義務があり、労働者側には受検義務がないという二層構造になっています。人事担当者が「全員に受けさせなければ義務を果たしたことにならない」と考えてしまうのは、この構造を健康診断と同じものとして捉えているためです。事業者側には実施義務があり、労働者側には受検義務がない
事業者に求められるのは、受検の機会を適切に提供し、目的や結果の取扱いを説明することです。受検しなかったことを理由に不利益な取扱いをすることは認められません。受検を拒否された場合の具体的な対応は従業員がストレスチェックの受検を拒否した場合の対応で解説しています。
ストレスチェックの対象者は、契約1年以上かつ週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の労働者である
ストレスチェックの対象者は、次の2つの要件をいずれも満たす労働者です。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルが示す要件を整理すると、契約期間と労働時間の2軸で判定することになります。
注意が必要なのは、週の所定労働時間が通常の労働者のおおむね2分の1以上4分の3未満の労働者の扱いです。この層について厚生労働省の資料は、ストレスチェックを実施することが望まれると記載しています。義務の対象として列挙される層ではなく、実施が望ましいとされる層である点を区別してください。義務の対象として列挙される層ではなく、実施が望ましいとされる層である
雇用形態の名称ではなく要件で判定するため、名簿の作成時は「正社員かどうか」ではなく「契約期間」と「週の所定労働時間」の2列を用意しておくと判断がぶれません。役員や管理職の扱いを含めた対象範囲の詳細はストレスチェックの対象範囲|役員・管理職の扱いを参照してください。
派遣社員のストレスチェックは、派遣元事業者に実施義務がある
派遣社員に対するストレスチェックは、派遣元事業者に実施義務があります。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルも、派遣労働者に対するストレスチェックは派遣元に実施義務があると記載しています。
したがって、「常時50人以上」の人数カウントも派遣元の事業場で行います。派遣先の事業場の人数が50人以上であるかどうかは、派遣社員に対する実施義務の有無を決める条件ではありません。ここは解説記事でも取り違えられやすい箇所です。
派遣先に求められるのは、派遣社員が受検しやすいよう配慮し、必要な情報提供に協力する立場です。実施義務者と協力者の役割を分けて整理しておくと、派遣元からの依頼にも滞りなく対応できます。詳しい役割分担は派遣社員のストレスチェックは派遣元と派遣先のどちらが実施するかで確認できます。
パート・アルバイト・役員は要件を満たせば対象に含まれる
パート・アルバイトは、雇用形態を理由に一律で除外されるわけではなく、前述の2要件を満たせば対象に含まれます。判定は「契約期間が1年以上か」「週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上か」の順で確認します。
たとえば週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上あり、1年以上の契約が見込まれるパート社員は対象です。一方、週1日程度の勤務で所定労働時間が4分の3に満たない場合は、義務の対象からは外れます。ただし、おおむね2分の1以上に該当する場合は実施が望まれる層にあたるため、除外の判断を機械的に行わないことが実務上の要点です。
役員については、労働者にあたるかどうかで判断が分かれるため、個別の実態にもとづく確認が必要です。判断に迷う場合は、産業医に相談したうえで整理することをおすすめします。対象範囲の詳細はストレスチェックの対象範囲|役員・管理職の扱い、派遣社員の扱いは派遣社員のストレスチェックは派遣元と派遣先のどちらが実施するかにまとめています。
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ストレスチェックは、準備から労働基準監督署への報告まで9つの手順で進める
ストレスチェックは、思いつきの順序で進められるものではなく、厚生労働省の導入ガイドが示す一連の手順に沿って進めます。準備から労働基準監督署への報告までを9つの手順として整理すると、担当者が抜け漏れなく段取りを組めます。ここでは各手順の要点を確認します。

(図:ストレスチェック制度の流れ_ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
(出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
なお、実施期間の長さや、休職中の労働者を対象から除外できるかどうかについては、一次資料で確認できた記載がないため本記事では扱いません。判断が必要な場合は、自社の実施者や産業医に確認してください。手順ごとの実務の詳細はストレスチェックの流れを実務手順で確認するで補足しています。
ストレスチェックの実施体制は、実施者と実施事務従事者の2役で組む
ストレスチェックの実施体制は、検査の企画と結果の評価を担う「実施者」と、その補助を担う「実施事務従事者」の2役で組みます。実施者は専門職に限られる一方、実施事務従事者に資格要件はありませんが、就いてはならない立場の人が定められています。役割を混同すると、個人情報の取扱いに関する事故に直結します。
| 役割 | 実施者 | 実施事務従事者 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 調査票の選定、結果の評価、高ストレス者の選定 | 調査票の配布・回収、データ入力、結果の出力 |
| 必要な資格 | 医師・保健師、または研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 | 資格要件はない |
| 就けない人 | — | 解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者 |

(図:ストレスチェック制度の実施体制のイメージ_労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
自社に産業医や保健師がいない場合、この2役をどう確保するかが最初のハードルになります。体制が整わないまま外部委託だけを進めると、実施者の選任と社内の運用管理が噛み合わなくなることがあります。
実施者になれるのは医師・保健師と、厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師である
看護師は、厚生労働大臣が定める研修を修了していればストレスチェックの実施者になれます。研修を修了していない看護師は実施者になれません。この点は、実施体制を社内で組むときに最初に確認すべき条件です。研修を修了していない看護師は実施者になれません
厚生労働省の実施マニュアルは、医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師の中から実施者を選定すると記載しています。つまり、医師と保健師は研修の修了を要件とせず、歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師は研修の修了が要件になります。
研修の名称や受講方法といった詳細は本記事では扱いません。実施者の要件と研修の具体的な内容はストレスチェック実施者の資格要件と研修で整理しています。
実施事務従事者には、人事権を持つ者を就けてはならない
実施事務従事者には、人事権を持つ者を就けてはなりません。厚生労働省の実施マニュアルは、当該労働者について解雇、昇進または異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施の事務に従事してはならないとしています。
実施事務従事者が担うのは、調査票の配布・回収、個人票のデータ入力、結果の出力といった実務です。これらの業務では個人の回答内容に触れるため、人事上の決定権を持つ者が関与すると、労働者が正直に回答しにくくなるおそれがあります。

(図:ストレスチェックの実施の事務_労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
注意したいのは、「人事部の所属だから一律で不可」ではないという点です。判断の基準は所属部署ではなく、その労働者に対する解雇・昇進・異動の直接の権限を持つかどうかにあります。社内で担当者を選ぶ際は、組織図ではなく権限の実態で確認してください。判断の基準は所属部署ではなく、その労働者に対する解雇・昇進・異動の直接の権限を持つかどうか
ストレスチェックの調査票は、3つの領域を含むことが必要である
ストレスチェックに使う調査票は、法にもとづく検査として3つの領域を含むことが必要です。厚生労働省の実施マニュアルは、法に基づくストレスチェックが次の3領域を含むことを求めています。市販のツールを使う場合も、この3領域を満たしているかが確認の起点になります。
厚生労働省は、この3領域を含む調査票として職業性ストレス簡易調査票(57項目)を推奨しています。項目数を増やした版もありますが、まずは57項目版が推奨されています。設問の中身や項目数ごとの違いはストレスチェックの質問項目(57項目・80項目)の中身で確認できます。
調査票の選定は衛生委員会等での調査審議事項に含まれるため、担当者が単独で決められるものではありません。実施者の意見を踏まえて選ぶ必要があり、ここでも実施者の確保が前提になります。
高ストレス者は、合計点数を使う方法または素点換算表を使う方法で選定する
高ストレス者の選定方法は2つあります。厚生労働省が示す数値基準にもとづく選定方法では、「合計点数を使う方法」と「素点換算表を使う方法」が示されています。どちらを採用するかは、実施者の意見を踏まえて事業場ごとに決めます。
選定の基準となる割合についても、厚生労働省の実施マニュアルは高ストレス者の割合を全体の10%程度とした場合の例を示したうえで、この比率や割合は変更することが可能だと記載しています。つまり10%は固定の基準ではなく、事業場ごとに設定できる目安です。10%は固定の基準ではなく、事業場ごとに設定できる目安
選定基準を決めるということは、面接指導の対象者数を決めることでもあります。基準を広くとれば申出への対応工数が増え、狭くとれば拾うべき労働者を取りこぼす可能性があります。高ストレス者と判定されたあとの対応は高ストレス者と判定されたあとの対応にまとめています。
高ストレス者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければならない
高ストレス者と判定された労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。起点は事業者の判断ではなく、本人からの申出です。事業者が結果を見て一方的に面接指導を設定することはできず、申出を受けて実施する流れになります。
面接指導の費用は事業者が負担します。厚生労働省のQ&Aも、ストレスチェックおよび面接指導の費用については事業者が負担すべきものだとしています。労働者に費用を負担させることは想定されていません。
面接指導の実施後は、医師から就業上の措置に関する意見を聴きます。厚生労働省の資料は、面接指導が実施された後、面接指導を行った医師から就業上の措置に関する意見を概ね1か月以内には聴くようにするとしています。医師から就業上の措置に関する意見を概ね1か月以内には聴く

(図:ストレスチェックから事後措置までの流れ_労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
(出典:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル)
なお、面接指導の対象となったにもかかわらず申出をしない労働者もいます。申出は本人の意思にもとづくため強制はできませんが、事業者や実施者から申出の勧奨を行うことは可能です。日常的な変化への気づきという観点はメンタル不調のサインの見つけ方も参考になります。
就業上の措置は、労働時間の短縮や作業の転換などから必要なものを選ぶ
就業上の措置は、医師の意見を勘案して事業者が決定します。労働安全衛生法第66条の10第6項は、措置の例として就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を挙げています。
措置を決めるのは事業者ですが、その判断は医師の意見を前提とします。産業医が選任されていない事業場では、意見を聴く相手をあらかじめ確保しておかなければ、申出があってからでは間に合いません。措置の内容や期間の判断で迷う場合は、産業医に相談したうえで決定してください。
人事必見!ストレス社会の今求められる「ストレスチェック」で若手社員からベテラン社員まで守る!
高ストレス者への面接指導や事後措置まで含めて、ストレスチェックを形骸化させずに運用したい人事・労務のご担当者様へ。本セミナーでは、ストレスチェックの義務や必要性、効果的な利用方法、注意事項、現場でうまく活用できた事例などをご紹介します。
集団分析の結果は事業者に提供されるが、個人の結果は本人の同意なく提供されない
ストレスチェックの個人結果は、本人の同意がない限り事業者に提供されません。厚生労働省のスタートガイドは、個人結果は事業者には提供されず、事業者には個人が特定されない方法で集団ごとに集計・分析した結果が提供されると説明しています。
この区別は、担当者が最も誤解しやすい箇所です。事業者が受け取れるのは集団の傾向であって、誰がどの回答をしたかではありません。個人結果を受け取るには、本人の同意を得る手続きが別に必要になります。事業者が受け取れるのは集団の傾向であって、誰がどの回答をしたかではありません
集団ごとの集計・分析と、それにもとづく職場環境改善は、事業場規模に関わらず努力義務とされています。義務ではないものの、制度の目的である未然防止に直接つながる部分であり、実施しなければストレスチェックが受検して終わりの行事になりかねません。
分析の単位にも注意が必要です。厚生労働省の導入ガイドは、集計・分析の単位が10人を下回る場合には個人が特定されるおそれがあることから、個人特定につながらない方法でない限りは、対象となる労働者全員の同意がなければ結果を提供してはならないとしています。小規模な部署を単独の分析単位にしないよう、集計の切り方は事前に決めておきます。集団分析の読み解き方は集団分析の読み方と職場環境改善への活かし方で解説しています。
常時50人以上の事業場は、実施後に労働基準監督署へ報告する義務がある
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックの実施後に、所轄の労働基準監督署へ報告する義務があります。厚生労働省のQ&Aは、労働基準監督署への報告は50人以上の事業場に対してのみ義務付けられるものであり、50人未満の事業場については報告義務はないとしています。
提出するのは「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2)」です。提出時期については、厚生労働省の導入ガイドが事業場ごとに設定して差し支えないとしています。提出の単位は事業場ごとであり、本社でまとめて1通提出する形ではありません。
事業場が複数ある企業では、この報告漏れが起きやすい工程です。実施は外部に委託していても報告は自社で行う必要があるため、誰が提出するかを実施計画の段階で決めておきます。報告書の記入方法は心理的な負荷の程度を把握するための検査結果等報告書の書き方にまとめています。
ストレスチェックを実施しなかったこと自体への罰則はないが、報告を怠ると罰則の対象になる
ストレスチェックの罰則は、「実施しなかった場合」と「報告しなかった場合」「秘密を漏らした場合」で扱いが異なります。労働安全衛生法の罰則章(第115条の3から第123条まで)を確認すると、条文の列挙に第66条の10は出てきません。つまり、実施義務そのものに対する直接の罰則規定は置かれていません。
一方で、報告義務と守秘義務には罰則が定められています。混同を避けるため、3つに切り分けて整理します。
- 実施義務(第66条の10):
罰則章に第66条の10は列挙されていないため、実施しなかったこと自体に対する直接の罰則規定はない。 - 報告義務違反(第100条関係):
第100条第1項または第3項の規定による報告をしなかった場合などについて、50万円以下の罰金と定められている。 - 守秘義務違反(第105条関係):
ストレスチェックの実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らした場合、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる。
さらに、労働安全衛生法には両罰規定(第122条)が置かれています。法人の代表者や代理人、使用人その他の従業者が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても各本条の罰金刑が科されます。担当者個人の問題にとどまらないという点は、社内での説明時に押さえておきたい部分です。担当者個人の問題にとどまらない
したがって、「実施義務そのものに罰則がないから実施しなくてよい」という読み方は成り立ちません。報告と守秘義務には現に罰則が定められており、報告は実施を前提とする手続きです。
ストレスチェックの実施で人事担当者が注意すべき点は3つある
ストレスチェックの実務では、法令の要件を満たすことと、労働者のプライバシーを守ることの両方が求められます。人事担当者が判断を誤りやすいのは、個人情報の取扱い・不利益取扱いの禁止・強制の禁止の3点です。ここでは、実務で確認すべき順に整理します。
1つ目は個人情報の保護と守秘義務です。ストレスチェックの結果は個人情報であり、実施者および実施事務従事者には守秘義務が課されています。閲覧できる範囲をあらかじめ限定し、保管場所やアクセス権限を運用ルールとして定めておきます。
2つ目は不利益取扱いの禁止です。結果や受検の有無を理由に労働者を不利益に取り扱うことは禁じられており、詳細は次の見出しで扱います。3つ目は、受検や結果提供の強制の禁止です。労働者の意思に反してこれらを求めることはできません。
なお、ストレスチェックおよび面接指導の費用は事業者が負担します。労働者に負担を求めることは認められません。費用の相場や内訳の考え方はストレスチェックの費用相場と負担者で扱っています。
ストレスチェックの結果を理由に、解雇や退職勧奨などの不利益な取扱いをすることは禁じられている
事業者が労働者に不利益な取扱いをすることは禁じられています。厚生労働省の導入ガイドが示す禁止事項は、次の2点に整理できます。
これらは制度の信頼性を支える前提です。1件でも不利益取扱いが起きれば、受検率や回答の正確さに影響するおそれがあります。受検率や回答の正確さに影響するおそれがあります
受検を拒否した労働者への対応で迷う場合は、従業員がストレスチェックの受検を拒否した場合の対応を確認してください。
ストレスチェックの結果を保存する義務があるのは実施者であり、事業者ではない
ストレスチェックの結果を保存するのは、原則として実施者です。厚生労働省の導入ガイドは、ストレスチェック結果は実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が保存するとしています。事業者が自動的に保存主体になるわけではありません。事業者が自動的に保存主体になるわけではありません
一方、労働者の同意により事業者に提供された結果については、事業者が5年間保存します。同意の有無によって保存する主体が変わる構造であるため、同意取得の記録とセットで管理する必要があります。
外部機関に実施を委託している場合は、保存の主体と保存場所を契約時に明確にしておきます。委託先の選び方はストレスチェックの外部委託先の選び方、費用の考え方はストレスチェックの費用相場と負担者で整理しています。
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50人未満の事業場がストレスチェックの義務化までに準備しておくことは3つある
令和10年4月1日の施行に向けて、50人未満の事業場が準備しておくべきことは大きく3つあります。産業医が選任されておらず、産業保健の専任担当者もいない事業場では、実施そのものよりも体制づくりに時間がかかります。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルが示す内容にもとづいて整理します。
- 実施者の確保:
医師・保健師などの実施者を確保します。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルは、労働者数50人未満の事業場においてはストレスチェックの実施を外部機関(健診機関等)に委託することが推奨されるとしています。なお、地域産業保健センターはストレスチェック自体の実施や実施者の依頼先にはなれません。地域産業保健センターは、50人未満の事業場が高ストレス者への医師の面接指導を無料で受けられる先として別に用意されています。 - 意見を聴く場の整備:
衛生委員会が設置されていない事業場では、関係労働者の意見を聴く機会を設けます。実施方法や結果の取扱いは、担当者の一存で決められる事項ではありません。 - 実施方法の選択:
調査票をWebで実施するか紙で実施するかを決めます。回収と入力の負荷、個人情報の管理のしやすさが判断材料になります。
3つのうち、多くの事業場でつまずくのが実施者の確保です。実施者の確保が最初の関門になる事業場では、面接指導や事後措置まで含めて依頼できるかを、委託前に確認しておく必要があります。
費用面の支援を検討する場合は、ストレスチェック関連の助成金もあわせて確認してください。
ストレスチェックの実施率は事業場規模によって大きな差がある
ストレスチェックの実施率は、事業場の規模によって大きく異なります。厚生労働省の資料に掲載された令和3年度厚生労働省委託事業「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業」によると、令和2年度時点で全事業場の実施率は84.3%(n=3,633)でした。
これに対し、49人以下の事業場の実施率は37.8%(n=804)です。義務の有無がそのまま実施率の差として表れており、令和10年4月1日の義務化拡大は、この差を埋めることにつながる改正だと位置づけられます。
裏を返せば、50人未満の事業場の6割超が未実施の状態にあります。実施者の確保から結果の取扱いの設計まで、これから体制を組み立てる事業場が少なくないという点が、この数値から読み取れる実務上の課題です。
ストレスチェックの実施は、リモート産業保健にお任せください
ここまで見てきたとおり、ストレスチェックは実施して終わりではなく、実施者の確保、結果の取扱いの設計、面接指導、集団分析、労働基準監督署への報告までを一連の体制として回す必要があります。自社に産業医や保健師がいない事業場では、この体制構築そのものが最初のハードルになります。
自社で採用を進められる企業や、地域で産業医と直接契約できる企業であれば、それが適した選択肢になる場合もあります。一方で、担当者が他業務と兼務している、事業場が複数に分かれている、面接指導の依頼先が決まっていないといった状況では、外部の支援を組み合わせて体制を整えるほうが現実的です。
リモート産業保健は、産業医と産業看護職の2名体制で産業保健業務を支援するサービスです。基本プランは月額3万円〜で、産業医面談やストレスチェック、衛生委員会の支援に対応しています。WEB版ストレスチェック(57項目)は無料で提供しており、実施者代行にも対応しているため、実施者の確保に悩む事業場でも運用を始められます。
実施後の対応まで含めて設計している点も特徴です。高ストレス者への面談に加え、産業看護職が高ストレス者以外のメンタルヘルス不調者にも面談・相談を行うため、結果を出して終わりにせず、早期の対応につなげられます。過去データを遡って確認できるため、経年比較にもとづく職場環境改善の検討にも使えます。
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2028年の義務化拡大を見据えて実施体制を整えたい企業向けに、産業医の切り替えや選任を検討中の企業を対象として、WEB版ストレスチェック(57項目)を無料で提供しています。実施者代行に対応し、メールアドレスの有無やデバイスを選択できます。過去データを遡って確認できるため経年比較も可能です。実施後は高ストレス者への面談に加え、産業看護職が高ストレス者以外のメンタルヘルス不調者にも面談・相談を行い、早期の対応につなげます。
ストレスチェックについてよくある質問
ストレスチェックの実務でよく寄せられる質問を、結論から順にまとめます。
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Q1. ストレスチェックは年1回ですか。 - A
年1回です。厚生労働省の資料も、事業者は1年ごとに1回ストレスチェックを実施すると記載しています。実施時期そのものに指定はないため、健康診断と同時期に設定するなど、事業場の事情に合わせて計画できます。
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Q2. 50人未満の事業場はいつから義務になりますか。 - A
令和10年4月1日からです。令和7年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、事業場規模にかかわらず実施が義務化されます。それまでの間、50人未満の事業場は附則の読み替えにより努力義務とされています。
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Q3. 従業員が受検を拒否した場合はどうすればよいですか。 - A
受検を強制することはできません。労働者には受検義務が課されていないため、目的や結果の取扱いを説明して受検を勧めることはできますが、拒否を理由に不利益な取扱いをすることは認められません。詳しい対応は従業員がストレスチェックの受検を拒否した場合の対応を参照してください。
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Q4. ストレスチェックを実施しないと罰則はありますか。 - A
実施義務そのものに対する直接の罰則規定は、労働安全衛生法の罰則章に置かれていません。ただし、報告義務違反には50万円以下の罰金、守秘義務違反には6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められており、両罰規定により法人にも罰金刑が科されうる点に注意が必要です。
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Q5. 派遣社員は派遣元と派遣先のどちらが実施しますか。 - A
派遣元事業者に実施義務があります。「常時50人以上」の人数カウントも派遣元の事業場で行います。派遣先は、派遣社員が受検しやすいよう配慮し、必要な情報提供に協力する立場です。
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Q6. 看護師はストレスチェックの実施者になれますか。 - A
厚生労働大臣が定める研修を修了していればなれます。研修を修了していない場合は実施者になれません。研修の詳細や実施者の要件はストレスチェック実施者の資格要件と研修で確認できます。
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まとめ
ストレスチェックとは、労働安全衛生法第66条の10にもとづき、労働者の心理的な負担の程度を把握するために事業者が1年ごとに1回実施する検査です。主たる目的は精神疾患の発見ではなく、メンタルヘルス不調の未然防止にあります。
義務の範囲は、現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場です。ただし令和7年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年4月1日からは事業場規模にかかわらず実施が義務になります。50人未満の事業場が「努力義務だから」と整理したままでいると、施行日を迎えた時点で対応が間に合いません。
対象者は、契約期間が1年以上で、1週間の労働時間数が通常の労働者の4分の3以上の労働者です。派遣社員は派遣元事業者に実施義務があり、実施後は常時50人以上の事業場が労働基準監督署へ報告します。実施義務そのものへの直接の罰則はありませんが、報告義務違反と守秘義務違反には罰則が定められています。
自社の体制で実施者の確保や事後措置の対応が難しい場合は、外部の支援を組み合わせる方法もあります。義務化の時期を改めて確認したい場合はストレスチェック義務化はいつから?50人未満・対象・罰則まで総まとめ、実務の段取りはストレスチェックの流れを実務手順で確認するを参考にしてください。判断に迷う点は、産業医に相談したうえで決めることをおすすめします。
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