高ストレス者の判定基準とは?高ストレス者の回答例などもご紹介!

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職場におけるストレスチェック制度とは?実施方法や目的を確認しておこう!

まずは、ストレスチェック制度についての概要を紹介します。

ストレスチェック制度とは?

労働安全衛生法第66条の10に係る制度全体のことをいいます。ストレスチェックはこの法律に基づいて実施されます。

具体的な実施方法としては、労働者に「ストレスチェック」という質問票に回答してもらい、質問票の結果を集計し、各労働者がどの程度のストレス状態かを分析します。この「ストレスチェック」により、各労働者が自分自身のストレス状態を把握することができます。

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ストレスチェックの目的は?

ストレスチェックの目的は以下の3つです。

  • 労働者が自分自身のストレスやその程度に気づき、ストレスを溜めないように対処したり、医療機関へ受診したりする等の「うつ病等の精神疾患」の発症予防の行動へつなげる
  • ストレスチェックの結果を集団ごとに集計・分析をすることで、職場環境の改善につなげる
  • 高ストレス者を早期に発見し、医師(産業医)による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する

ストレスチェックの実施方法は?誰が実施するの?

労働安全衛生法第52条の9に基づき、事業者は労働者に対して、ストレスチェックを1年以内ごとに1回実施する必要があります。

ストレスチェックの実施には「実施者」と「実施実務従事者」、そしてストレスチェック制度全体の担当者が必要です。ただし、人事権を持つ者が「実施者」、「実施実務従事者」になることはできません。

なぜなら、ストレスチェックの結果が労働者へ人事上の不利益な取り扱いをされないようにする必要があるからです。これは、労働安全衛生規則第52条の10第2項で定められています。

そのため、労働者が記入し終わった質問票の回収や集計、結果に基づく高ストレス者の判定など、企業側の人事権を持つ者は、労働者の個人情報に関わる業務を行ってはいけないということについて押さえておきましょう。

では、「実施者」と「実施実務従事者」はどんな役割があり、誰が担当することができるのでしょうか?詳しくは以下の通りです。

実施者
ストレスチェックの企画や実施、結果を評価する者。医師(産業医が望ましい)や保健師、もしくは厚生労働大臣が定める研修を修了し、検査のための知識を得ている歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理士が担当することができる。外部委託も可能。
実施実務従事者
実施者の補助をする者。人事権のない企業側の労働者が担当することができる。質問票の回収やデータ入力、結果の送付等、個人情報を取り扱う業務を担当する。外部委託も可能。

ちなみに、ストレスチェック制度全体の担当者はストレスチェックの結果を知ることはできないため、人事権がある者でも担うことができます。

ストレスチェック報告書の提出先と提出方法は?

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、ストレスチェック実施後の報告書を1年以内ごとに1回、所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。(労働安全衛生規則第52条の21より)

提出する報告書は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」といい、以下の厚生労働省HP(ホームページ)からダウンロード、印刷することができます。
心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書|厚生労働省

提出方法は、直接提出・郵送提出・電子申請の3つがあるので、提出しやすい方法で行うと良いでしょう。

高ストレス者とは?高ストレス者と判断する割合は?

ストレスチェック指針では、ストレスチェックの結果、次の(1)または(2)のいずれかの要件を満たす者を「高ストレス者」として選定しています。

  1. 「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者
  2. 「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一定以上の者であって、かつ、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が著しく高い者

「心身の自覚症状に関する項目」だけを基準にしてしまうと、自覚症状がないが、業務量が多い人や周囲のサポートが不足している等のメンタルヘルス不調になるリスクが高い人を見逃してしまう可能性があります。そのため、上記のような選定方法がとられています。

厚生労働省は、事業場全体の10%程度を高ストレス者として判定する方法を出していますが、あくまで目安として考える方が良いでしょう。

なぜなら、業種や職種、また、毎年のストレスチェックの結果を参考に、事業場ごとに判定基準を設ける方がより労働者や職場環境に合わせた高ストレス者の選定が行えるためです。

事業場全体の10%程度を基準にしながら、自社のストレスチェックの集団分析結果を参考に、実施者と確認しながら判定基準を検討すると良いでしょう。

なお、高ストレス者判定を行う評価方法については、後述するので、こちらも確認してみてください。

ストレスチェックの調査票と質問項目をチェック!ストレスが高い人の回答例もご紹介!

ストレスチェックでは以下の質問項目を含めた調査票を作成し、労働者へ配布し、記入してもらいます。

  1. ストレスの原因に関する質問項目
  2. ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  3. 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

(ストレスチェック導入マニュアルより)

調査票は、上記の内容が含まれていれば独自で項目を選定することが可能です。しかし、全ての項目を企業で作成することは難しい可能性があるため、よくわからない場合は以下のURLから、厚生労働省が推奨する57項目の調査票を活用すると良いでしょう。
厚生労働省 ストレスチェックダウンロード ストレスチェック関連情報

また、調査票の記入はオンラインでも実施できます。近年は在宅勤務を行う労働者も多いため、ぜひITシステムの利用も検討してみましょう。その際は、以下の「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を活用しましょう。
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム

では、ストレスが高い人はどのような回答をしているのでしょうか?

大まかに説明すると、心身への自覚症状が一定以上ある状態で、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪いという内容を回答している人は、ストレスが高い状態にあると言えるでしょう。

例えば、自覚症状の部分では「活気がわいてこない」や「ひどく疲れた」と回答していたり、「動悸や息切れがする」や「よく眠れない」と回答している場合は、心身ともに症状が出ている可能性が高いと言えます。

また、ストレスの原因では、業務量や作業環境、回答者本人の仕事のペースなどを回答してもらうことで、現在の業務に関する情報を知ることができ、業務が心身の不調の原因になっている可能性を知ることができます。

さらに、周囲のサポート状況では、気軽に話ができる相手や頼りになる相手、問題が起きた場合に相談できる相手などがいない場合、上手くストレスと付き合うことが難しくなります。これは、ストレスが高い人に多い傾向があります。

もちろん、上記の項目だけで高ストレス者として選定されるわけではありませんが、回答者自身の心身の状況や環境を見直すこともできるため、受検した労働者はぜひ回答を見直してみるのも良いでしょう。

ストレスチェックの高ストレス者を選定する判定方法と判定基準とは?それぞれの特徴などをご紹介!

ここからは、高ストレス者を選定する判定方法と基準について説明していきます。

単純合計判定法

単純に調査票の回答を元に、合計点数を出す方法です。
ただし、注意点として、質問によって点数が低いほどストレスが高いと評価される質問も混ざっているため、その質問の場合は、回答の点数を逆転させる必要があります。

(数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法 より引用)

厚生労働省が出している57項目の調査票を使用する場合、ストレスが高いとされる回答の最高点は以下の通りになります。

「ストレスの原因に関する質問項目」⇒ 4(点)✖️17(項目)=68点
「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」⇒ 4(点)✖️29(項目)=116点
「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」⇒ 4(点)✖️9(項目)=36点

さらに、ストレスチェック実施マニュアルにおいて、単純合計判定法を用いた高ストレス者の選定は以下のいずれかを満たす場合に行います。

  • 「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目の合計が77点以上
  • 「ストレスの原因に関する質問項目」と「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」の合算の合計点数が76点以上でかつ、「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」の合計点数が63点以上

素点換算表を用いた方法

労働者が調査票に記入、または入力した各項目の点数を元に、素点換算表に当てはめて、評価点を算出します。ストレスチェック実施マニュアルに記載されている、素点換算表は以下の通りです。

(ストレスチェック実施マニュアルより 引用)

素点換算表では男女に分かれていますが、共通して、評価点が低いほど、ストレスの程度が高いという評価になります。

つまり、「低い/少い」から順に5点、「やや低い/少い」が4点、「普通」が3点、「やや高い/多い」が2点、「高い/多い」が1点になります。

ここでは、素点換算表と単純合計判定法の説明で記載している57項目の調査票の画像を見ながら説明を見てください。

例えば、「心理的な仕事の負担(量)」の点数を出す場合、以下のような流れになります。

  • 調査票の1、2、3の項目の点数を足す(今回の場合、4点)※置き換えずにそのままの点数で
  • 15から合計点数をひく(今回の場合、11点)
  • その点数が評価のどこに当たるかをみる(今回の場合、やや高い/多い)
  • 評価の点数を出す(今回の場合、2点)

素点換算表を用いた場合は、単純合計判定法とは異なり、調査票の質問によって点数を逆転させる必要はありません。

なお、厚生労働省が出している57項目の調査票を使用する場合、ストレスが高いとされる評価点における最低点は以下の通りになります。

「ストレスの原因に関する質問項目」⇒ 1(点)✖️9(項目)=9点
「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」⇒ 1(点)✖️6(項目)=6点
「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」⇒ 1(点)✖️3(項目)=3点

ストレスチェック実施マニュアルにおいて、素点換算表を用いた高ストレス者の選定は、以下のいずれかを満たす場合に行います。

  • 「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目の評価点が12点以下
  • 「ストレスの原因に関する質問項目」と「労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目」の評価点の合計が26点以下でかつ、「ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目」の評価点が17点以下

知っておくべきストレスチェックの高ストレス者への対応!面接指導の流れやポイントを解説!

面接指導はどのような流れで行われる?

主な流れは以下の通りです。
(1)実施者から労働者へ面接指導の対象者である通知を行う
ストレスチェックの実施後、高ストレス者の中で、実施者が面接指導を受ける必要があると判断した労働者には、実施者からその旨の通知があります。

(2)労働者から事業者へ面接指導の申し出を希望する
労働者は面接指導対象者である通知を受けた後、遅延なく事業者へ面接指導の希望の申し出を行います。(労働安全衛生規則第52条の16第1項)

ただし、面接指導の申し出は労働者の義務ではないため、希望しない場合は強制することはできません。

ただし、面接指導の目的は労働者のメンタルヘルス不調のリスクを確認し、本人への指導と事業者への適切な措置につなげることであるので、面接指導のメリットをしっかり説明し、できる限り面接指導を受けてもらう方が良いでしょう。

なお、高ストレス者を放置してしまった場合の企業へのリスクも後述するので、ぜひ確認してください。

(3)事業者から医師(産業医)へ面接指導の依頼を行う
労働安全衛生規則第52条の16第2項に基づき、事業者は、面接指導の対象者から申し出があった場合は遅延なく面接指導を行わなければなりません。

実施者ではない医師(産業医)が面接指導を担当することも可能ですが、面接指導の実施においては、できる限り事業場の産業医が行うのが望ましいでしょう。

(4)面接指導の実施をする
面接指導では、医師(産業医)が、労働者のストレスチェックの結果の確認とストレスの要因(労働時間や勤務の内容、心理的な負担やその他心身の状況の確認など)の聴取を行います。

その上で、医師(産業医)による保健指導や専門機関への受診勧奨や紹介を行うことになります。

(5)事業者が医師(産業医)へ意見聴取を行う
面接指導後、事業者は遅延なく、医師(産業医)より就業上の意見を聴取しなければなりません。(労働安全衛生規則第52条の19)

意見聴取は「意見書」を提出してもらう方法で行い、意見書は以下に掲載している「面接指導結果報告書・就業上の措置にかかる意見書」を活用すると良いでしょう。

(6)事業者が労働者へ就業上の措置の実施をする
意見書等で面接指導を実施した医師(産業医)から意見聴取を行った後、事業者が必要と認める場合は、対象労働者の就業上の措置を行う等、医師の意見を衛生委員会や安全衛生委員会等へ報告し、適切な措置を講じることが義務付けられています。(労働安全衛生法第66条の10第6項)

その際は、対象労働者と十分に話し合いを行い、実情を考慮しながら、同意が得られなければいけません。また、対象労働者に対して不利益な扱いとならないよう、十分に注意する必要があります。

就業上の措置が新たなストレスの原因となる可能性もあるため、措置を実施した後も労働者の状況を確認しつつ、慎重に行っていきましょう。

高ストレス者を放置すると・・・

高ストレス者を放置すると、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことができないだけでなく、労働者がうつ病等の精神疾患の発症、自殺等の自傷行為につながる危険性があります。

また、労働者側から企業が訴えられてしまい、民事訴訟に発展したり、それに伴って労働者間・世間への企業イメージ悪化や経営自体にも大きなダメージを与える可能性が高いでしょう。

労働者にとっても企業にとっても大きな損失となるため、高ストレス者の放置はそれだけの危険性があることを理解しておく必要があります。

まとめ

いかがでしたか?ストレスチェックでの高ストレス者は、メンタルヘルス不調をきたす可能性が高いため、早期に対応する必要があります。企業にとって、高ストレス者を発見するためのストレスチェックはとても重要な制度である、ということがご理解いただけたのではないでしょうか。

実施や対応、措置等、負担のかかる業務になりますが、労働者のため、ひいては企業全体のために、ぜひ積極的かつ計画的に実施していきましょう。

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