産業医の選任報告とは?選任届の書き方や必要な添付書類、記入例をご紹介

人事労務担当者が記入する産業医選任届

執筆者

看護師ライターとして活動しています。

総合病院で消化器外科、消化器内科、ICUを経験し、看護師歴7年です。手術や内視鏡手術を行う患者さんに接する機会が多く、術前術後の看護、日常生活のサポート、患者さんやご家族の心のケアなどを行なってきました。

結婚を機に病院を退職し、現在は二児の母です。子育てをしながら医療にも携わっていきたいと看護師ライターを始めて、もうすぐ5年になります。これまで学んできた「患者さんの気持ちに寄り添うことの大切さ」をライティングにも活かせるように精進する毎日です。

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患者さんの些細な変化に気付くため五感を駆使していたので、おでこや首に触れてその人の体温を当てるのが得意です。

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  • 「産業医の選任報告はしないといけないのだろうか?」
  • 「産業医選任届の作成方法がわからない」
  • 「作成した産業医選任届に間違いがないか不安」

上記のような、産業医の選任報告にまつわる悩みを抱えていませんか?
産業医の選任や変更をした際には、労働基準監督署への選任報告が必要です。

産業医選任届の作成を効率良く行なうためには、記入例を参考にするのがおすすめです。
見本を見ながら、自分の事業場の情報に置き換えるだけなので、迷わず作成することができます。

本記事では、産業医選任届の基礎情報から作成手順、注意すべきポイント、提出方法や期限までわかりやすく解説します。

またリモート産業保健が作成した産業医を初めて選任するガイドブック内に労働基準監督署に提出する必要書類や産業保健に関わるチェックリストもご用意していますので、ご参考までに資料ダウンロードしお使いください。

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産業医の選任報告義務とは?

常時使用する労働者が50人以上の事業場では、産業医を1名選任することが義務付けられています(労働安全衛生法第13条、労働安全衛生規則第13条、労働安全衛生法施行令第5条)。そして、産業医を選任する際には、「産業医選任届」を労働基準監督署に届け出る必要があります。

労働者数をカウントする際に基準となるのは、支社や営業所などの「事業場」であり、企業単位ではありません。正社員やパート、契約社員だけでなく、派遣労働者なども含む点に注意が必要です。

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「常時使用」に含まれる労働者の定義

常時使用する労働者とは、日雇労働者、パートタイマーなどの臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者のことを指します。

不明な点については、所轄の労働基準監督署に問い合わせて、詳細を確認するとよいでしょう。

産業医を変更・解任する場合にも、選任届は必要?

産業医を変更する際にも、新たに産業医を選任する際と同様に、選任届の提出が必要です。必要な書類や手続きの手順は、新たに選任報告をする場合と同じです。

変更時の手続きを忘れてしまうケースもよく見られるため、遅滞なく報告を済ませるように、十分に気を付けましょう。

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産業医の選任届|作成から提出までの手順

それでは、産業医選任届を作成する手順を順番に解説します。

産業医選任の手順(1)選任届の書類を手に入れる

選任届は、労働基準監督署で書類をもらうか、厚生労働省のホームページからダウンロードして取得します。

参考:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告|厚生労働省

【印刷、記入の際の注意点】

  • A4サイズで白色度80%以上の用紙に印刷する
  • 拡大や縮小をして印刷しない
  • 印刷した用紙をさらにコピーして使用しない
  • 必要事項を記載する際には黒のボールペンを使用する

また、厚生労働省の入力支援サービスを利用するのもおすすめです。入力したデータを保存しておくことで、次回入力の際、共通する部分の入力を省略できるので、非常に便利です。ただし、「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」からの直接申請はできない点に注意しましょう。

参考:労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス

申請の際には、産業医選任届のほかに、産業医の資格証明書と医師免許証のコピーを提出する必要があるので、あらかじめ用意しておきましょう。

産業医選任の手順(2)産業医選任届を記載する

「産業医選任届」を入手できたら、実際に記入します。記入が必要な項目は、以下のとおりです。

  1. 労働保険番号
    事業場の労働保険番号を記入します。
  2. ページ数
    2人以上の報告が必要なときには複数枚提出することになるので、その用紙が何枚目なのか、合計何枚あるのかを右詰めで記載します。
  3. 事業場の情報(名称、所在地、電話番号)
    電話番号は「―(ダッシュ)」で区切って記入します。
  4. 事業の種類
    事業の種類は、総務省が公開している日本標準産業分類「中分類」を参照し、記載することが推奨されています。総務省のホームページをもとに、該当する「事業の種類」を確認しましょう。 参考:日本標準産業分類(令和5年6月改定、令和6年4月1日施行予定)|総務省
  5. 事業場の労働者数
    この欄には、常時使用する労働者数を記入します。
    前述のとおり、常時使用する労働者とは、日雇労働者、パートタイマーなどを含む、常態として使用する労働者のことを指します。なお、出向などで該当の事業場での就業をしていない者は含めません。
    また、労働者数とは別に、「計」の欄には労働安全衛生規則第13条第1項第3号で規定された、特定業務に従事する労働者数を記入します。
  6. 産業医の情報
    産業医の氏名・フリガナ・生年月日を記入します。名前が濁点や半濁点の場合、同一枠内に「ガ」や「パ」と記入します。
    また、生年月日は右詰めで記入し、1桁であっても0は不要です。例えば、昭和50年7月25日生まれの場合は「50725」と記入します。
  7. 産業医選任年月日
    生年月日と同様に、右詰めで記入します。
  8. 選任種別
    産業医の「5」と記入します。
    また、その下の「専属の別」欄には、専属産業医なら「1」、それ以外は「2」を記入します。「専任の別」欄には、選任する産業医が産業医のみの仕事に従事している場合は「1」、ほかの仕事もしていれば「2」と記入します。
  9. 産業医の医籍番号
    医師免許証にある医籍番号を記入します。
    種別は、産業医認定証の場合は「1」、労働衛生コンサルタント登録証の場合は「3」を記入します。
    種別 コード
    労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者 1
    産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの 2
    労働衛生コンサルタントで試験区分が保健衛生である者 3
    労働安全衛生規則第14条第2項第5号に規定する者 4
    平成8年10月1日以前に厚生労働大臣が定める研修の受講を開始し、これを修了した者 5
    上のいずれにも該当しないが、平成10年9月30日において産業医としての経験年数が3年以上である者 7
    出典:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告|厚生労働省
  10. 辞任・解任について
    産業医が交代している場合は、前任の産業医の情報も記載します。(氏名、カタカナ、辞任、解任の年月日)
  11. 参考事項
    初めて産業医を選任した場合は「新規選任」と記入し、産業医の専門科名も併せて記載します。産業医が開業している場合は「開業医」と記載します。わからない場合は、医師に直接確認するようにしましょう。
  12. 届出日・届出先名・事業者職氏名・捺印
    届出日、届出先(所轄の労働基準監督署)、会社の代表者の名前を記入し、捺印します。代表者の署名であれば、捺印はなくても問題ありません。

産業医選任の手順(3)産業医選任届を提出する

記入が済んだら、書類一式を所轄の労働基準監督署へ提出します。管轄する労働基準監督署は、以下の参考ページ(所在地案内)から都道府県ごとのページで確認できます。

提出方法は、窓口への直接提出か郵送のいずれかです。

参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省

電子申請(e-Gov:イーガブ)を利用する場合は、「e-Gov電子申請|手続検索」で「産業医の選任報告」を検索して申請します。産業医選任届以外にも、労働安全衛生法などの手続きのうち、約800の届出の電子申請が可能です。

参考:
手続検索|e-Gov電子申請
労働安全衛生法等の届出などをする際は、電子申請が便利です!|厚生労働省

産業医選任届の様式と記入例

所轄の労働基準監督署へ産業医選任届出書類を提出する際は、「産業医選任届出書(記入例有)」をご活用ください。

「産業医選任届出書(記入例有)」をご希望の方は下記よりダウンロードください。
>>産業医選任届出書(記入例有)をダウンロードする

産業医選任届に必要な添付書類

産業医選任の際に提出すべき書類は、以下の3点です。

  1. 産業医選任届
  2. 産業医の資格証明書(産業医認定証または労働衛生コンサルタント登録証)のコピー
  3. 医師免許証のコピー

産業医選任届
産業医選任届けサンプル

日医認定産業医証書:産業医の資格証明書のコピー
産業医資格証明書

※医師会が発行している証明書となります。
 労働衛生コンサルタントや産業医科大学の証明書は異なりますのでご注意ください。

医師免許証のコピー
医師資格証明書サンプル

なお、日本医師会の認定産業医は、5年ごとに更新申請をする必要があります。

資格を更新するには、認定証を取得したあとの5年間で生涯研修20単位以上(更新研修1単位以上、実地研修1単位以上、専門研修1単位以上の合計20単位以上)の修得が必須です。

更新申請をしなければ、有効期限が切れた段階で認定証は無効になるので、期限が切れていないかも併せて確認しておきましょう。

産業医選任届の提出期限はいつまで?

産業医の選任義務のある事業場では、選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任し、選任後は遅滞なく所轄の労働基準監督署へ選任届を提出する必要があります。

これは、労働安全衛生規則〈労働安全衛生法〉第13条第1項によって定められています。

産業医を選任しないとどうなる?

産業医の選任報告を怠った事業者は、50万円以下の罰金を科されるおそれがあります(労働安全衛生法第120条)。産業医の選任後は、必ず14日以内に報告を済ませるよう、十分にご注意ください。

産業医の選任報告|オフィス移転の場合はどうする?

オフィスを移転する際も、産業医の選任義務が生じている場合は、新たな産業医選任報告が必要です。オフィス移転にともなう手続きには、下記のようなものがあります。

届出書類名 窓口 提出期限
事業年度、納税地、その他の変更・異動届出書 新・旧納税地所轄税務署 移転後速やかに
本店移転登記申請書
支店移転登記申請書
法務局 移転後速やかに
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 年金事務所 移転後5日以内
労働保険名称・所在地変更届 新所轄監督署 保険関係が成立した日の翌日から10日以内
労働保険確定保険料申告書、労働保険概算保険申告書 新所轄監督署 保険関係が消滅・成立した翌日から50日以内
労働保険関係成立届 新所轄監督署 保険関係が成立した日の翌日から10日以内
労働基準法に関する適用事業報告書 新所轄監督署 移転後速やかに
安全管理者選任報告・衛生管理者選任報告・産業医選任報告 新所轄監督署 移転後速やかに
自動車保管場所証明申請書 新所轄警察署 移転から5日以内
防火管理者選任届 新所轄消防署予防課 移転後速やかに

提出期限は届出の内容によってさまざまです。産業医選任報告を含む諸々の手続きは、オフィスを移転したら速やかに行ないましょう。

人事担当が把握しておきたい、産業医選任報告以外の義務

人事担当の方が把握しておくべき産業保健に関する義務には、産業医の選任報告以外にも、定期健康診断やストレスチェック、衛生委員会の設置・衛生管理者の選任報告があります。

定期健康診断

事業場は「労働安全衛生法第66条第1項」および「労働安全衛生規則第44条第1項」に基づき、1年以内ごとに1回、健康診断を定期的に実施しなくてはなりません。

人事担当の方は、健康診断の日程調整や労働者への周知、クリニックの予約、産業医とのやり取り、健康診断結果報告書の提出などを行なう必要があります。そのなかで、以下のような業務にまつわるトラブルを抱えることもあります。

  • 健康診断のコースが複雑で把握できない
  • 補助申請に手間がかかる
  • 日程の調整に手間がかかる
  • 労働者の氏名・年齢などの膨大な情報を整理しなければならない
  • 労働者の都合による急な日程変更や無断キャンセルが発生する
  • クリニックの予約が取れない
  • クリニックによって受診可能な曜日やコースが異なる など

定期健康診断関連の業務は煩雑で負担が大きいため、外部委託を行なうのも業務負担を軽減する方法の一つです。

健診DXサポート
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ストレスチェック

常時使用する労働者が50人以上の事業場は、年に1回ストレスチェックを実施しなくてはなりません。ストレスチェックの実施には、実施者と実施事務従事者が携わります。

実施者 医師や保健師の資格を取得している者。
厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師も可。
実施事務従事者 社内で人事権のない衛生管理者、産業保健スタッフ、​​メンタルヘルス担当者、事務職員など。
外部委託も可。

ストレスチェックの実施事務従事者は、実施者の補助を行ないます。具体的な業務は、調査票の配布や回収、労働者への結果通知、集団分析結果の事業者への通知、面接指導が必要な労働者への通知、未受検者への声かけなどです。

なお、人事権がある者はストレスチェックの実施事務従事者にはなれません。しかし、人事権を持っていなければ、人事担当の部署に所属していても実施事務従事者になることは可能です。

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衛生委員会の設置・衛生管理者の選任報告

労働安全衛生法に基づき、常時使用する労働者数が50人以上の事業場は衛生委員会を設置しなくてはなりません。衛生委員会を設置する目的は、労働災害の防止、労働者の健康と安全の確保です。

さらに、労働者数が50人以上の事業場では、衛生管理者の選任も義務付けられています。

衛生管理者は、労働安全衛生法で定められた国家資格を取得していることが必須条件です。衛生委員会は衛生管理者のほか、議長(総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者)、産業医、衛生に関する経験がある労働者で構成されます。

衛生管理者を選任した際は、労働基準監督署への報告が必要です。一般的に、人事の担当者が選任届を作成して提出します。提出する選任届は、厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。

労働基準監督署に提出する書類は、以下の2点です。

  • 衛生管理者選任届
  • 衛生管理者免許証の写し、または資格を証する書面

選任義務が生じた日から14日以内が提出期限と定められているので、遅れないようにしましょう。

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まとめ

常時使用する労働者が50人以上の事業場は、産業医を1名選任することが義務付けられており、産業医を選任する際には、産業医選任届を労働基準監督署に提出する必要があります。

人事担当者様は、産業医の選任報告以外にも、定期健康診断やストレスチェック、衛生委員会の設置・衛生管理者の選任報告などを行なわなければなりません。

これらの産業保健活動は、労働者の心身の健康をサポートするために非常に重要な業務であると同時に、手間や時間がかかることでもあります。

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