- 「労働基準監督署に産業医を選任するよういわれたけど、産業医って何……?」
- 「専属産業医って、普通の産業医と何が違うの……?」
- 「専属産業医を探すにはどこに相談したらいい……?」
上記のようなお悩みを抱えていませんか?
企業にとって事業拡大は喜ばしいことですが、事業場の規模や業務内容によっては「専属産業医」の選任義務が発生します。
事業者・企業担当者の方のなかには、「専属産業医」について、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、専属産業医の基礎知識や産業医の種類、専属産業医の探し方や労働基準監督署への報告までをわかりやすく解説します。
産業医選任やオンライン・訪問面談、職場巡視、
衛生委員会の立ち上げ・運営など産業医と産業看護職2名体制で支援
専属産業医とは?
専属産業医とは、大規模な事業場で常勤として働く産業医のことです。そもそも、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任しなければなりません。
産業医には「専属産業医」と「嘱託産業医」の2種類がありますが、業務内容や事業場の規模に応じて選任する産業医の種類が異なります。
専属産業医を選任しなければならないのは以下の事業場です。
大規模な事業場や有害業務に労働者を従事させる事業場では、法令に則して専属産業医を選任しましょう。
なお、産業医の契約方法には、直接雇用契約、業務委託契約、スポット契約の3種類がありますが、常勤の専属産業医とは直接雇用契約を締結するケースが一般的です。
嘱託産業医とは?
嘱託産業医とは、非常勤で働く産業医のことです。専属産業医と同様に、労働者の健康管理がおもな役割です。
嘱託産業医の選任が認められているのは、常時使用する労働者数が50〜999人の事業場です。
「専属産業医」と「嘱託産業医」の違い
産業医は、常勤の「専属産業医」と、非常勤の「嘱託産業医」に分けられます。ここでは、「専属産業医」と「嘱託産業医」の違いについて解説します。
契約形態の違い
専属産業医は特定の企業と直接契約を結ぶことが多く、従業員のように事業場に常駐して働くのが特徴です。直接契約は企業と産業医が契約書を取り交わして直接的に雇用契約を結ぶ方法です。そのため、間に仲介会社などは入っていません。
一方で、嘱託産業医は業務委託契約が多く、非常勤のため事業場にいる時間が限られます。業務委託契約は、産業医と企業の間に仲介会社が入って契約を結ぶ形が多いです。
勤務形態の違い
専属産業医は企業に常駐するため、週に4~5日勤務するケースが多いです。一方、嘱託産業医は非常勤であり、勤務日数は月に1回程度となっています。嘱託産業医は、勤務医や開業医が兼務するケースがほとんどです。
業務内容の違い
専属産業医と嘱託産業医の業務内容に大きな違いはありません。どちらも、事業場で働く労働者の健康保持を目的としたアドバイスや指導を行ないます。
具体的には、以下のような業務を担当します。
- ストレスチェックの実施
- 高ストレス者や長時間労働者に対する面接指導
- 休職・復職面談
- 衛生委員会や安全衛生委員会への出席
- 健康相談
- 職場巡視
- 労働衛生教育 など
専属産業医と嘱託産業医で業務内容に大きな違いはありませんが、勤務日数の違いによって仕事の進め方が異なる場合もあります。
報酬相場の違い
専属産業医の報酬相場は、週1回程度の勤務で年間300〜400万円、週4回勤務で年間1,200〜1,500万円程度です。
嘱託産業医の報酬相場は地域によって異なりますが、目安は以下のとおりです。
労働者数 | 金額相場 |
---|---|
49人以下 | 7万5,000円~ |
50~199人 | 10万円~ |
200~399人 | 15万円~ |
400~599人 | 20万円~ |
600~999人 | 25万円~ |
報酬はさまざまな条件で決まるため、選任する産業医との交渉次第で変動することを理解しておきましょう。
また、産業医の報酬は、産業医の所属や契約形式によって会計処理が異なるため、産業医との契約を自社で行なう場合は、ある程度の会計知識が必要です。産業医の報酬を決定する要素や勘定科目、源泉徴収について知りたい方は、下記の関連記事をご覧ください。
【あわせて読みたい関連記事】産業医の報酬相場はいくら?勘定科目・源泉徴収についても解説
専属産業医のメリット
専属産業医は事業場にいる時間が長い分、事業場の様子を把握しやすいことが強みです。では、専属産業医を選任することで企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここからは、専属産業医のメリットを嘱託産業医と比較しながら紹介します。
常駐により、従業員の状態を把握しやすい
専属産業医は事業場に常駐しているため、労働者の働き方や事業場の雰囲気といった情報を把握しやすい点がメリットです。嘱託産業医の場合、月に数回かつ数時間のみの訪問になることが多く、専属産業医と比較すると得られる情報量は少ないでしょう。
労働者や担当者としても、常駐する専属産業医であれば何かあってもすぐに相談できるため、早期対応につなげることができます。例えば、メンタルヘルス不調者への早期対応により、休職や退職のリスクを低減できる可能性が高まります。
さらに、事業場との距離が近い分、健康課題の実情を把握したうえで事業場の特徴に合った施策を提案しやすいでしょう。
経営層との連携が取りやすい
専属産業医は事業場に常駐しているため、経営層とすぐに連絡を取ることができます。問題に対して迅速に対応できれば、深刻化する前に解決できる可能性が高まります。実際に起きた問題だけでなく、予想される労働災害などのリスクに対しても予防的な対策ができるでしょう。
また、経営層と連携することで、専属産業医も経営的な視点を考慮しながら事業場の健康管理を行なえるようになります。最近は健康経営優良法人の取得を目指す企業が増えているため、専属産業医と連携しながら健康経営を進めていくことは、経営層にとってもメリットになるでしょう。
専属産業医のデメリット
先述したように、専属産業医の選任は企業にとって大きなメリットがあります。しかし、デメリットもありますので、理解したうえで慎重に検討しましょう。
報酬が高くなってしまいがち
月に数回かつ数時間程度の勤務である嘱託産業医と比較すると、専属産業医は勤務時間が長いため、報酬が高額になる傾向にあります。また、企業と産業医がうまく連携を取れていないと納得のいく成果を出せず、支払った報酬に対して十分な成果が得られていないと感じるかもしれません。
そのため、契約前に「企業が求めること」と「産業医が提供できること」がマッチしているかを慎重に考える必要があります。
専属産業医を選任すべき?産業医の要件・選任義務について
常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務付けられています。
しかし、これまで産業医のいなかった事業場では、選任に際してさまざまな疑問が出てくるはずです。例えば、産業医には常勤の専属産業医と非常勤の嘱託産業医がいますが、その違いを理解している担当者の方は少ないでしょう。
そこで、産業医の選任について、担当者の方が把握しておくべきポイントを詳しく解説します。
産業医の要件
産業医には、労働安全衛生規則第14条第2項に定められた以下の要件があります。
1.厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
2.産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
4.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
産業医の選任義務
産業医の選任義務は、事業場の規模や業務内容によって異なります。また、常勤の専属産業医を置かなくてはならない企業がある一方で、非常勤の嘱託産業医でよい企業もあります。
選任する産業医の人数に関する具体的な基準は、以下のとおりです。
上記に加えて、常時使用する労働者が1,000人以上の事業場や、労働安全衛生規則第13条第1項第3号で指定されている有害業務に携わる労働者が常時500人以上の事業場では、専属産業医の選任が必要とされています。
専属産業医の探し方4選
専属産業医が必要になった場合、探し方には以下4つの方法があります。
医師会に相談する
1つ目は、医師会から産業医を紹介してもらう方法です。
登録されている医師の人数が多いため、産業医を探しやすい点や、事業場の近隣で産業医を見つけやすい点がメリットです。医師会は全国の都道府県にあるため、所属地域の医師会に相談すれば近くの産業医を紹介してもらえます。
しかし、医師会が行なうのは紹介のみであるため、報酬を含めた待遇面の交渉や業務の依頼は、すべて企業側で行なわなければなりません。また、産業医の選任は事業場ごとに必要であるため、事業場が複数地域にある場合はそれぞれ探す必要があります。
医師のなかでも産業医の有資格者は限られているため、そもそも産業医が見つからなかったり、断られたりするケースも多いでしょう。産業医の紹介を行なっていない医師会もあるため、問い合わせて確認する必要があります。
医療機関に相談する
2つ目は、医療機関から産業医を紹介してもらう方法です。
すでに付き合いのある医療機関であれば、企業の状態を理解したうえで産業医との仲介役を担ってくれるでしょう。病院内に産業医がいる場合は、すぐに選任できる可能性もあります。ただし、知り合いからの紹介には安心感がある一方で、条件の交渉をしづらい点はデメリットです。
また、相談した病院に産業医がいない場合は医療機関を探し直す必要があるため、選任まで時間がかかるかもしれません。産業医が見つかった場合も、条件面で合わない可能性や、病院との関係上断りにくくなるといった状況は想定しておく必要があります。
健診機関に相談する
3つ目は、健診機関に相談して所属する産業医を紹介してもらう方法です。
健診機関と産業医を同時に探している場合には、まとめて依頼することで費用を安く抑えられる可能性があります。
産業医の紹介サービスに相談する
4つ目は、産業医の紹介サービス(マッチングサービス)を利用する方法です。産業医の紹介サービスとは、企業や事業場の特徴・ニーズに合わせて、産業医を紹介・マッチングしてくれる仲介サービスのことです。
このように、産業医を探す方法はさまざまありますが、自社に合う産業医を見つけられなかったり、条件交渉や変更がうまくいかなかったりするケースもあります。
産業医をスムーズに選任したいなら、仲介のプロである産業医紹介サービスに相談するのがよいでしょう。
リモート産業保健なら、産業医の紹介だけでなく、産業保健に関する業務負担の軽減につながる、産業保健活動全般の各種サポートも受けられます。
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専属産業医を選んだら、速やかに選任報告を
常勤の産業医を選任したあとは、所轄の労働基準監督署への報告が義務付けられています。そこで最後に、報告の際に必要な書類とその作成・提出方法などについて解説します。
産業医の選任報告に必要な書類
産業医の選任報告には、「産業医選任報告」の書面提出が必要です。書式は厚生労働省のWebサイトでダウンロードできます。併せて、医師免許の写しや産業医の資格を証明する書面の提出も必要です。
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オンラインでの書類作成が可能
「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用すれば、オンライン上で「産業医選任報告」の書類を作成できます。帳票に入力したデータをPDFファイルとして出力し、A4サイズ(白色度80%以上)の用紙に印刷しましょう。
ただし、入力支援サービスは書類を作成するためのもので、オンライン提出はできません。オンラインで申請を行なう場合には、e-Gov電子申請システムを利用しましょう。
参考:e-Gov電子申請
選任届・書類の提出先
「産業医選任報告」やその他の書類は、事業場がある地域を管轄する労働基準監督署に提出します。提出方法は、窓口への提出・郵送・電子申請のいずれかを選択できます。電子申請は、年末年始・メンテナンスが必要な場合を除き、24時間365日利用可能です。
産業医選任届は提出期限があったり、産業医変更時に再提出が必要になったりするため、事前に流れを確認しておきましょう。産業医選任届を作成する詳しい手順や記入例を確認したい方は、下記の関連記事をご覧ください。
【あわせて読みたい関連記事】産業医の選任報告とは?選任届の書き方や必要な添付書類、記入例をご紹介
まとめ
専属産業医は常勤、嘱託産業医は非常勤という働き方の違いがありますが、業務の内容は原則変わりません。ただし、事業場の規模や業務内容によっては、常勤の専属産業医を設置する必要があるため、産業医を選任する際には、法令に則して準備を進めるようにしましょう。
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