2022年最新!産業医の変更方法と変更できない時の対処法

この記事の監修者

産業医や産業保健師など産業保健分野で活躍する専門家チーム

サンチエ編集部

産業医って変更できるの?

健康診断後の就業判定や過重労働・長時間労働者への産業医面談、職場の作業環境や業務内容が心身に悪影響を与える場合への意見や措置など、従業員の健康と安全を守るための指導・助言をする産業医ですが、果たして変更することはできるのでしょうか?

答えは「変更できる」です。産業医を変更する際の理由としては様々なものがありますが、結論だけ言うと、産業医の変更は可能です。

しかし、変更の際には産業医の選任時のような手続きや新たな産業医を選任する必要があることを覚えておきましょう。

ここからは、企業が「産業医を変更したい」と考える理由を説明していきます。

”産業医を変えたい”悩みあるある

企業にとって、産業医を変えたいと悩んでしまう代表的なケースを4つ、見ていきましょう。

(1)面談指導をしてくれない

企業には労働安全衛生法第66条に定められている面談指導を行うことが義務付けられています。

しかし、そういった状況でも、産業医によっては「業務が忙しい」や高ストレス判定者や休職者、心理相談での面談指導の場合は、「精神科医ではないので、メンタル面でのケアは難しい」等の理由で、先延ばしにしたり、引き受けてくれなかったりするケースも実際には存在してしまいます。

産業医に言われると、企業側は納得せざるを得なかったり、言い返せなかったりすることもあります。そのような場合には、産業医の変更をする必要があるでしょう。

(2)ストレスチェックの実施者をしてくれない

ストレスチェックは実施するには「実施者」が必要です。実施者とは、労働安全衛生法第52条の10に明記されていますが、医師や保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。

基本的には、企業に選任されている産業医が行うことが多いのですが、ストレスチェック自体が義務化されたのが2015年12月のため、比較的新しい制度となります。

従業員の実施率が年々上昇している段階のため、以前から勤務している産業医がストレスチェックの義務化と流れ・業務内容を理解するには時間が必要です。

実施者として責任を持って対応できるという自信がなければ、引き受けにくい状況であるため、産業医の中には実施者をしてくれない人もいるでしょう。

(3)コミュニケーションがうまくいかない

企業は産業医選任後、その産業医とうまく連携をとりながら業務を進めていく必要があります。企業のニーズを産業医にしっかり伝え、従業員や職場を理解してもらいながら産業医業務を行ってもらわなければ意味がありません。

近医への受診でもあるかと思いますが、主治医に自分の状態をどのように説明するかで悩まれる方も多いかと思います。企業と産業医のコミュニケーションも同じです。

どのように企業の状態を伝えて、どこを目指しているのかをお互いが理解するためにはお互いの歩み寄りが必要です。

その歩み寄りが一方通行になってしまうと企業が求めるニーズを満たせず、産業医として1番重要な職務である「従業員の健康と安全を守るための指導や助言をする」ことができなくなってしまうリスクがあるため、コミュニケーションの取り方を見直したり、産業医の変更を検討する必要があるでしょう。

(4)企業の課題と産業医の専門スキルがマッチしていない

実際には、産業医にも医師としての専門分野があるため、精神科経験の豊富な産業医もいれば、内科経験が豊富な産業医もいます。

そういった知識や経験の違いから、産業医面談などで対応困難なケースもあり、必要な時に、産業医としての職務が果たせない可能性もあります。

産業医選任を焦って行ってしまい、企業の課題を明確にしていなかったために、産業医が対応困難なケースが出てくるということになりやすいため、そのような場合も企業の課題に対応できる産業医への変更が必要でしょう。

産業医の変更に必要な手続き

産業医を変更した場合、解任から新しい産業医の選任まで14日以内に行わなければなりません。これは、労働安全衛生規則第13条で定められています。

そして、「産業医選任報告」を遅延なく所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。そのため、産業医を交代する際は焦らず行えるように事前準備が必要です。

「産業医選任報告」の書類は、以下の方法で入手することができます。

  • 労働基準監督署で直接もらう
  • 厚生労働省ホームページ(HP)よりダウンロードして、印刷する
  • 厚生労働省ホームページ(HP)より報告様式への入力支援サービスを利用する

→入力支援サービスとはインターネット上で報告書を作成できるサービスです。登録や事前申請は不要で使用でき、誤入力や未入力などを防止できる機能がついています。また、過去のデータも保存されるため、産業医の交代や追加時の報告する際にスムーズに届け出を行うことができます。

提出方法は直接提出、郵送提出、電子申請の3つがあります。企業によって、提出しやすい方法で行うようにしましょう。1つずつ解説していきます。

直接提出
所轄の労働基準監督署の窓口へ直接提出します。受付時間や休日もありますので、確認して提出しましょう。
郵送提出
所轄の労働基準監督署へ郵送で提出します。労働基準監督署の受領印がある選任報告の控えが欲しい場合には、選任報告書2部・返信用封筒(切手貼付、宛名記入)を忘れずに同封しましょう。
電子申請
電子申請は24時間365日いつでも申請が可能です。e-Govから行うことが可能で、必要書類を電子ファイルにして申請を行います。ただし、サーバーのメンテナンスやシステムの不具合などが起こると提出ができない場合もありますので、余裕をもって準備しましょう。

産業医選任報告で必要書類は2つ

産業医選任報告を提出する際は、医師免許証のコピー・産業医証明書類を添付する必要があります。産業医証明書類とは、以下のいずれかに該当することを証明する書類のことです。

・労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
・産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
・労働衛生コンサルタントで試験区分が保健衛生である者
・大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり又はあつた者
・労働安全衛生規則第14条第2項第5号に規定する者
・平成8年10月1日以前に厚生労働大臣が定める研修の受講を開始し、これを修了した者
・上のいずれにも該当しないが、平成10年9月30日において産業医としての経験年数が3年以上である者

「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」別表にて記載

免許証等は産業医に連絡し、準備をしておいてもらうとスムーズに手続きが進みます。

産業医が変更できない場合の対処法

ここまで、産業医の変更に伴う内容について説明してきましたが、実際に産業医を変更したいと考えても、産業医との関係や付き合いもあり、かなり労力がかかったり、変更したくても難しいケースもあります。

そんな時は、産業医2名体制を検討してみましょう。2名体制にすることで、業務を補い合ったり、企業のニーズに対して、より効率的・効果的に対応することが可能になります。

従業員数が3001名以上の事業場では、そもそも常勤である専属産業医を2名選任することが義務付けられていますが、もし、3000名以下の場合は専属産業医が1名(義務)と非常勤である嘱託産業医を選任することは可能です。

必要となる産業医の人数は以下のように決められていますが、人数の上限は設けられていないので、必要時は産業医を増やすことが可能です。

  • 従業員数1〜49名     ➡︎ 産業医の選任は努力義務
  • 従業員数50〜999名     ➡︎ 嘱託または専属産業医1名
  • 従業員数1000〜3000名     ➡︎ 専属産業医1名
  • 従業員数3001名〜     ➡︎ 専属産業医2名

※労働安全衛生規則第13条第1項第2号に明記されている有害業務を行う事業場は、従業員数が500名以上で専属産業医が必要になる

しかし、新しく産業医を選任することで、これまでの産業医との関係性やいざこざが発生したり、産業医の名義のみを貸し出す違法行為の疑いをかけられる可能性もありますので、しっかり話し合いを行い、お互いに納得した上で進めるようにしましょう。

また、産業医2名体制の実施後も、両方の産業医としっかりコミュニケーションをとり、新しい問題が発生しないようフォローを行うことも必要になるため、慎重に行いましょう。

まとめ

産業医を1度選任すると、変更には大きな労力と手間がかかります。産業医選任には期限があるため、その間で企業のニーズとマッチする産業医を探す必要があります。

しかし、産業医を選任している以上、企業側は産業医に報酬を払う必要があるため、質の高い産業医に勤務してもらうことが効率的・効果的な産業保健活動につながります。

産業医選びに失敗しないためには、事前の情報収集と医師会などの信頼できる相談先があると安心です。最近は、産業医のマッチングサービスなどの仲介サービスも充実しているので、気になることがあれば、1度相談してみても良いでしょう。

ずっと付き合っていく産業医だからこそ、企業と産業医は密に連携をとりながら業務に従事できることが大切です。今回の記事を参考に、産業医との関係をもう1度考えて、必要な対応を検討してみましょう。