産業医の選任は義務?選任基準や「専属」と「嘱託」の違いも解説!

産業医の選任

この記事の監修者

産業医や産業保健師など産業保健分野で活躍する専門家チーム

サンチエ編集部

産業医の選任は義務!従業員の健康管理を効率的に行いましょう

早速結論ですが、従業員が50名以上の事業場は産業医の選任が義務です。ここでの事業場というのは、企業全体ではなく、支社や営業所、店舗や工場など、組織上、ある程独立して業務が行われている単位のことを言います。つまり、同じ会社でも、それぞれの事業場で従業員数が50名を超えたとき、その事業場ごとに産業医を選任することが必要となるのです。

これは、労働安全衛生法の第13条に定められていて、違反すると労働安全衛生法120条に基づき、50万円以下の罰金に課せられます。

また、事業場の規模に応じて産業医の人数・種類も変わってきます。事業場の規模は、常時勤務する従業員の人数によって判断をされます。その規模に応じて、産業医を何人選任(人数)するのか、「専属産業医」と「嘱託産業医」のどちらを選任するのか(種類)という違いを理解したうえで産業医を選任することが必要です。ここはとても大事なポイントで、本記事で詳しく解説していますので、ぜひ確認してください。

ここでは、産業医選任の大前提として、従業員50名以上の事業場は産業医の選任が法律で義務になっていて、違反すると罰則があることを覚えておきましょう。

産業医はどうやって選ぶべき?選任方法について

産業医の選任が必要になったら、どのように選んでいくべきなのでしょうか。選ぶ方法は大きく分けて4つあります。

  1. 都道府県ごとの医師会に相談する
  2. 近隣の医療機関に相談する
  3. 健康診断を実施している健診機関に相談する
  4. 医師人材紹介会社に相談する

このほかに、社内の人脈から探すという方法もありますが、今回は上記4つの方法を詳しく解説していきます。メリット・デメリットもありますので、企業や事業場に合った方法を選択してください。

1.都道府県ごとの医師会に相談する

全国47都道府県には医師会があり、その地域で働く多くの医師が登録をしています。そのため、近隣の産業医を見つけやすいというメリットがあります。医師会によっては、産業医の紹介サービスをしている場合もあるのでチェックしてみましょう。

デメリットとして、医師会は産業医を紹介してくれますが、産業医に依頼したり報酬などの交渉をするのは全て企業で行う必要があるという点が挙げられます。産業医は事業場ごとに選任する義務がありますので、事業場ごとの産業医を医師会から紹介してもらい、直接依頼や交渉をしていく労力が企業には必要になります。

2.近隣の医療機関に相談する

事業場の近くの医療機関に相談し、産業医を選任した場合のメリットとしては、連携がとりやすいという点と、身近な医療機関の医師であるため安心感があるという点があります。

デメリットは、医療機関の状況によっては産業医がいなかったり、余裕がなく断られたりする場合も多い事です。また、事業場の近くに医療機関がない場合もあるため、探すのが大変な事もあります。

3.健康診断を実施している健診機関に相談する

健康診断は従業員全員が受けているはずですので、産業医が従業員の健康状態を把握しやすく、連携がとりやすいと言えます。また、1や2のように医療機関を探す手間も省けますし、もともと契約している医療機関のため、相談や交渉がしやすいのもメリットでしょう。

デメリットは、健診機関に産業医がいない場合もあり、断られるケースがあることです。また、企業のニーズとは違う産業医だった場合、産業医の変更や交渉がしにくくなることもあります。

4.医師人材紹介会社に相談する

人材紹介会社は産業医専門で紹介してくれる場所であり、これまで紹介した中で1番手軽で、企業のニーズにあった産業医を探すことができる方法と言えるでしょう。人材紹介会社が仲介に入り、事業場それぞれの産業医を選任してくれるため、事業場ごとに探したり、交渉したりする手間も少なく済みます。また、産業医選任後のフォローも行い、その後の従業員の健康管理等のサポートもしてくれる会社も多いです。

デメリットとしては、人材紹介会社に対して手数料が発生するところです。人材紹介会社ごとに料金やサービスが異なるため、企業や事業場の規模に合わせたサービスを選ぶ工夫が必要でしょう。

産業医の選任は、事業場の今後の従業員の健康管理に大きく関わります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて相性のいい産業医の選択につなげましょう。

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複雑でわかりにくい産業医の選任基準をわかりやすく解説

冒頭で「従業員が50名以上の事業場は産業医の選任が義務」と述べましたが、産業医の人数は従業員の人数に応じて選任しなければなりません。ここでは、産業医の選任基準について説明していきます。

基本的には、従業員数が50名以上3000名以下の規模の事業場では、産業医を1名以上任し、3001名以上の規模の事業場では産業医を2名以上選任しなければなりません。

ただし、常時1000名以上の従業員がいる事業場では「専属産業医」を選任する義務があります。
また、次に掲げる業務(※)のある事業場は従業員500名以上でも「専属産業医」を選任する義務があります。急に「専属産業医」という言葉が出てきましたが、このあと産業医の種類についても解説していきますので、ぜひ確認してください。従業員の人数だけではなく、業務によっても産業医の選任基準が変わってきますので、しっかりチェックしておきましょう。

※労働安全衛生規則第13条第1項第2号
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
二 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
へ さく岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸そのたこれ  らに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、  二酸化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを  発散する場所における業務
ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
(厚生労働省 HPより)

意外と知らない「専属」と「嘱託」の違いを解説

産業医には「専属産業医」と「嘱託産業医」がいて、この2つの違いは一言でいうと、常勤か非常勤かの違いです。「専属産業医」は常時1000名以上の従業員が働く事業場や特定の業務(※)に従事する従業員数が500名以上の事業場で、専属で常勤する産業医のことをいいます。常勤という勤務形態のため、産業医も企業の1従業員として週に4~5日勤務することが多いです。

対して「嘱託産業医」は、非常勤で勤務する産業医のことをさします。従業員が50名~999名の事業場で、月に1回程度勤務する産業医のことをいいます。

産業医のほとんどが「嘱託」で、病院やクリニックなどの本業をしながら産業医の勤務をしています。また、数カ所の事業場を兼任する嘱託産業医もいます。
事業場の従業員数や業種によって、専属産業医の選任が必要な場合もあるため、どちらの産業医が必要なのかしっかり確認しておきましょう。

産業医選任届の内容と提出期限は?

産業医の選任するタイミングがきたら、「14日以内」に選任しなければなりません。これは、労働安全衛生規則第13条で定められています。

そして、産業医を選任したあとは、「遅滞なく」所轄の労働基準監督署へ「産業医選任報告」を届け出る必要があります。つまり、事業場の規模が一定以上を超え、産業医を選任しなければならないタイミングから14日以内に産業医を選任するだけではなく、すぐに労働基準監督署へ届けなければいけないということになります。

次に、届けの内容と提出の流れを解説します。

  1. 提出書類の準備
  2. 書類に記入する
  3. 提出する(直接提出、郵送提出、電子申請のどれかで提出)

では、順番に詳しく解説していきます。

1.提出書類の準備

まずは、提出する書類を準備しましょう。提出する書類は、産業医選任報告書・医師免許証のコピー・産業医の資格を証する書類(産業医認定証など報告書の別表に記載)のコピーの3つです。免許証等は選任した産業医に連絡し、準備しておいもらいましょう。

産業医選任報告書の入手方法は、以下の通りです。

  • 労働基準監督署で直接もらう
  • 厚生労働省ホームページ(HP)よりダウンロードし、印刷する
  • 厚生労働省ホームページ(HP)より報告様式への入力支援サービスを利用する

→入力支援サービスとはインターネット上で報告書を作成できるサービス。登録や事前申請は不要で使用でき、誤入力や未入力などを防止できる機能がついています。また、過去のデータも保存されるため、産業医の交代や追加時の報告する際にスムーズに届け出を行うことができます。

2.書類に記入する

記入内容は以下の通りです。
1)労働保険番号:事業場の労働保険番号を記入する
2)ページ数:2人以上の選任報告を行う場合に記入する。総ページの欄には報告の総合計枚数を        記入し、ページの欄には総枚数のうち当該用紙が何枚目かを記入する
3)事業場情報(名称、所在地、電話番工、労働者数)
4)事業の種類:日本標準産業分類の中分類より記入する
5)産業医の情報:選任した産業医の情報を記入する(氏名、選任年月日、生年月日、選任種別)
6)医籍番号:医師免許証にある登録番号と報告書の別表に記載の種別を記入する
7)参考事項:初めて産業医を選任した場合は「新規選任」と記入する。また、産業医の専門科及び       開業している場合はその旨も記入する
8)届出日、届出先、代表者氏名、捺印など

3.提出する

書類の提出方法は直接提出、郵送提出、電子申請の3通りがあります。これらについて1つずつ解説していきます。
1)直接提出
所轄の労働基準監督署の窓口へ直接提出します。受付時間や休日もありますので、確認して提出しましょう。
2)郵送提出
所轄の労働基準監督署へ郵送で提出します。労働基準監督署の受領印がある選任報告の控えが欲しい場合には、選任報告書2部・返信用封筒(切手貼付、宛名記入)を忘れずに同封しましょう。
3)電子申請
電子申請は24時間365日いつでも申請が可能です。e-Govから行うことが可能で、必要書類を電子ファイルにして申請を行います。ただし、サーバーのメンテナンスやシステムの不具合などが起こると提出ができない場合もありますので、余裕をもって準備しましょう。

産業医の選任は企業の義務!事前知識と準備が大切です!

従業員が50名以上の事業場は産業医の選任が義務です。必要なタイミングになって調べたり、準備したりするのはとても大変です。企業と事業場にマッチした産業医を選任するためにも、必要になる前から準備しておくようにしましょう。