本記事では、上記のような疑問を持つ方へ向けて、産業医の役割や選び方について詳しく解説します。産業医の重要性を理解し、最適な産業医を見つけるためのポイントを押さえていきましょう。
本記事を読むことで、産業医の業務内容や役割を明確にし、効率的かつ効果的に産業医を選ぶための知識を得ることができますので、ぜひ最後までご参照ください。
産業医選任やオンライン・訪問面談、職場巡視、
衛生委員会の立ち上げ・運営など産業医と産業看護職2名体制で支援
産業医には労働者の健康管理という重要な役割がある
産業医は従業員の健康と安全を守るために、企業内で重要な役割を担っています。ここでは、産業医の役割について、4つご紹介します。
-
健康診断結果に基づく措置
健康診断結果をもとに、従業員が就労に適した健康状態であるかを確認します。健康上の課題が見つかれば、必要に応じて受診を勧めたり、事業者や管理監督者と協力しながら就労環境の調整などを行ないます。
-
治療と仕事の両立支援
現代は、治療を受けながら働く労働者が増加しています。もし治療を受けながら働いている従業員がいれば、産業医が面談を行ない、就業の可否や職場での配慮の必要性について意見します。そして、事業者は産業医の助言を参考に、治療と就業の両立ができるよう支援体制を整える必要があるのです。
-
長時間労働者への対応
長時間労働による健康リスクを防ぐため、面接指導を通じて過労防止や健康リスクの評価を行ない、必要な対策を講じます。事業者と産業医が連携することで、長時間労働による脳・心疾患などの労働災害リスクを低減することが可能です。
-
職場巡視
定期的に産業医による職場巡視を行なうことで、労働環境が従業員の健康に与える影響を評価します。転倒転落などの労働災害や、作業環境の改善に貢献できるでしょう。
上記のような役割を通して、産業医は従業員の健康を守り、結果的に従業員のパフォーマンス向上、企業の生産性の向上につなげます。
産業医選任の法的要件と企業規模別アプローチ
労働安全衛生法第13条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、産業医の選任が法律で義務づけられています。
そして、本来必要なのに産業医を選任しなかった場合は、先述した労働安全衛生法第13条への違反となるため、労働安全衛生法第120条により「五十万円以下の罰金」が課されてしまいます。
常時使用する労働者が50人未満の事業場においては、産業医選任は努力義務となっています。ただし、50人未満の事業場でも長時間労働者への医師面接指導など法律に定められた健康管理を怠ると、安全配慮義務違反とみなされるリスクがあります。
そのため、従業員規模に限らず、従業員の健康維持と安全配慮の観点から、積極的に産業医を活用した方がよいでしょう。
また、小規模事業者にとって心強いサポートとなるのが、地域産業保健センターです。地域産業保健センターは、独立行政法人労働者健康安全機構が運営しており、50人未満の事業場を対象に無料で産業保健サービスを提供しています。コスト負担を軽減しながら従業員の健康管理を強化できるため、気軽に相談してみましょう。
産業医の主な役割と企業における重要性
産業医は、おもに健康診断や職場巡視、長時間労働者への面談、ストレスチェックの高ストレス者への面談を通して従業員の健康と安全を守ります。
例えば、健康診断の事後措置であれば、健康診断の結果をもとに従業員の健康状態を評価し、必要に応じて働き方を見直します。早期に健康問題を発見して改善策を講じることができれば、将来的に休職や退職してしまうリスクを軽減できるでしょう。
産業医の活動は企業が法令遵守をするために重要ですので、積極的に産業医を活用しましょう。
産業医のおもな探し方と、各方法のメリット・デメリット
ここからは、産業医の探し方を5つ紹介します。それぞれメリット・デメリットがあるため、自社にあった方法で進めましょう。
産業医を探す5つの効果的な方法:概要と選び方
産業医を探す5つの効果的な方法や特徴について、表でまとめてみました。各方法の詳細についても解説していきます。
産業医を探す方法 | 特徴 | 適している企業 |
---|---|---|
医師会からの紹介 | 事業場のある地域の医師会に産業医を紹介してもらう方法。 基本的に無料で産業医を紹介してくれるほか、地域の事情に精通した産業医を紹介してもらえるなどのメリットがある。 |
・紹介料などの費用を抑えたい企業 ・地域の事情に精通した産業医を紹介してもらいたい企業 |
定期健康診断の契約医療機関からの紹介 | 普段から健康診断を依頼している健診機関に産業医を紹介してもらう方法。 多くの従業員が健康診断で利用しているため、会社の状態をお理解してもらいやすく、事業場・医療機関・産業医の連携がしやすいといったメリットがある。 |
・すでに信頼関係のある健診機関がある企業 |
自社の人脈を活用 | 経営者や人事部門、税理士、社労士事務所などの人脈を通じて、産業医を選任している企業の担当者につないでもらう方法。 信頼できる紹介者を通じて産業医を探すため、その産業医の実績を事前に知ることができるなどのメリットがある。 |
・紹介料などのコストを抑えたい企業 ・人脈が豊富な企業 |
地域産業保健センターの利用 | 事業場のある地域の地域産業保健センターを利用する方法。 産業保健に関する相談や研修を無料で受けられるため、コスト削減が期待できるほか、専門性の高いサポートが受けられるメリットがある。 |
・事業場の労働者数が50人未満の小規模事業場 |
産業医紹介サービス | 産業医紹介会社を通して産業医を紹介してもらう方法。 多様な産業医から事業場のニーズに合った専門家を選択できるほか、産業医の交代時もスムーズに対応してくれる、産業保健まわりの関連サービスも提供している可能性があるなどのメリットがある。 |
・産業医の選任が初めてであったり、慣れていない企業 ・産業保健まわりの業務も一括して任せたい企業 ・産業保健まわりの業務も一括して任せたい企業 |
産業医の探し方がわかったところで、たくさんの産業医のなかからどのような産業医を選ぶのがよいのでしょうか?ここからは、産業医を選ぶための3つのポイントについて解説します。
どのような産業医が必要かは、事業場のニーズにより異なります。そのため、自社が産業医に求めることを明確化しましょう。
例えば、「工場での業務経験のある産業医が良い」「メンタルヘルス不調者が増えているため、メンタルヘルス対策が得意な産業医が良い」などです。必要に応じて、現場の担当者へ困っていることなどを聴取しておくと、事業場のニーズを把握しやすいでしょう。
信頼できる実績があるかも必ず確認しましょう。例えば、労働衛生コンサルタントや専門医などの資格取得も判断材料になります。また、過去に産業医として担当した業種や対応経験なども、面接のなかで確認するようにしましょう。
一緒に仕事をするにあたり、コミュニケーションが取れるかは大変重要です。訪問日程の調整や業務内容の確認などはもちろん、従業員との面談対応では、事業場側と産業医が密に連携する必要があります。
医師会からの紹介:地域に根ざした産業医を見つける
地域の医師会に産業医を紹介してもらうことも選択肢の一つです。紹介は基本的に無料で行なわれますので、紹介料などの費用を抑えたい企業は医師会の紹介を検討してみましょう。
医師会に産業医を紹介してもらう際の手順は、次の3ステップです。
医師会は、日本医師会のほかに47の都道府県医師会と約920の郡市区医師会があり、その地域で働く医師が登録されています。そのため、事業場が所在する地域の医師会を調べましょう。
医師会のホームページがあれば産業医紹介サービスの有無を調べ、電話やメールで産業医紹介の可否を問い合わせてみましょう。この際、会社の規模や業種、希望する産業医の専門性などの情報を準備しておくとよいでしょう。
紹介された産業医が自社のニーズとマッチしているか確認するため、面談を設定しましょう。
面談をしたうえでお互いの条件がマッチすれば、契約内容(報酬、訪問頻度など)を協議し、契約書の取り交わしなどを行ないます。
また、産業医の選任後は速やかに、労働基準監督署に産業医選任報告書を提出しなければなりませんので、忘れずに提出しましょう。
医師会紹介のメリット3つ:信頼性と地域ネットワーク
医師会に産業医の紹介を依頼するメリットとしては、次の3つが挙げられます。
-
無料で産業医を紹介してもらえる基本的に無料で産業医を紹介してくれるため、紹介料などの費用を抑えることができます。
-
地域の事情に精通した産業医を紹介してもらえる事業場のある地域特有の産業や労働環境を理解している産業医に出会える可能性が高いでしょう。
-
産業医が不足する地方でも医師会がネットワークを持っているため、産業医を見つけやすい産業医は都市部には多く、地方は少ない傾向があり、探すのに苦労する可能性があります。しかし、医師会は地元の医師のネットワークを持っているため、産業医を見つけやすい可能性があります。
医師会紹介のデメリット2つ:選択肢の制限と手続きの煩雑さ
デメリットとしては、次の2つがありますので、事業場の状況に合わせて検討しましょう。
-
産業医の選択肢が限られる
地域の医師会に登録している医師のなかからの紹介になるため、選択肢が限られることに留意しましょう。
-
手続きの煩雑さ
医師会が行なうのはあくまで「紹介のみ」であり、産業医への依頼や交渉は事業場側で行なわなければなりません。交渉などで時間や労力がかかる点は、事業場にとってデメリットといえるでしょう。
こうしたデメリットを避けたい場合は、産業医紹介サービスなど、他の方法も含めて検討しましょう。
定期健康診断の契約医療機関からの紹介:既存の関係を活用
健康診断を依頼している健診機関に、産業医を紹介してもらう方法もあります。日頃から多くの従業員が健康診断で利用しているため、会社の状態を理解してもらいやすく、事業場・医療機関・産業医の連携がしやすいといったメリットがあります。
特に、すでに信頼関係のある健診機関がある企業には適しているでしょう。ただし、健診機関に産業医がいない場合もあるため、注意しましょう。
健診機関に産業医を紹介してもらう具体的な手順は、次の3ステップです。
現在契約している健康診断医療機関に連絡し、産業医の紹介が可能かどうか問い合わせる
医療機関から紹介可能な産業医の情報を受け取り、経歴や専門分野、対応可能な日時などを確認する
産業医と面談を行ない、自社の状況や要望を伝え、お互いが合意すれば契約を締結する
健診機関紹介のメリット3つ:スムーズな連携と専門知識
健診機関に紹介してもらうメリットは、次の3つがあります。
-
会社の状態を理解してもらいやすい
多くの従業員が健康診断を受診している健診機関からの紹介であれば、会社の状態を理解してもらいやすいでしょう
-
信頼関係がある
日頃から健康診断で利用していて付き合いがあるため、安心して依頼できるでしょう。
-
事業場、医療機関、産業医が連携しやすい
健康診断後のフォローアップや異常所見が見つかった場合の迅速な対応が可能になり、従業員の健康管理をスムーズに行える可能性が高いです。
健診機関紹介のデメリット2つ:選択肢の限定と利害関係
一方で、デメリットもありますので注意しましょう。
-
選択肢が限定される
健診機関によっては産業医がいない場合があるため、留意しましょう。そのため、事前に産業医を紹介してもらうことが可能かを確認する必要があります。
-
利害関係がある
万が一選任した産業医が事業場のニーズに合っていなくても、普段から健康診断で利用しているため、断りにくいでしょう。
自社の人脈を活用:信頼できる産業医を見つける
経営者や人事部門、税理士、社労士事務所などの人脈を通じて、産業医を選任している企業の担当者につないでもらうなどの方法もあります。特に、紹介料などのコストを抑えたい企業や、人脈が豊富な企業には適しているでしょう。
人脈を活用して産業医を探す方法を、次の3ステップで紹介します。
経営者や人事部門、税理士、社労士事務所など、産業医とのつながりがありそうな人を探しましょう。
ステップ1で探した人物に、産業医の紹介を依頼します。その際は、事業場のニーズや条件などを事前に伝えておきましょう。
紹介してもらった産業医と一度面談し、事業場のニーズとマッチしていれば契約します。
人脈活用のメリット3つ:信頼性と迅速な対応
人脈を活用して紹介してもらうメリットは、次の3つがあります。
-
信頼性の高さ
信頼できる紹介者を通じて産業医を探すため、その産業医の実績を事前に知ることができます。これにより、自社のニーズに合った産業医を選びやすくなるでしょう。
-
迅速な対応
人脈を通じて直接紹介を受けることで、産業医紹介サービスや広告を通じた探索に比べ、産業医の選任までの時間を短縮できる可能性があります。
-
具体的なノウハウの獲得
産業医をすでに選任している企業の担当者から話を聞くことで、産業医の選び方や契約の進め方など、具体的なノウハウを教えてもらえる可能性があります。
人脈活用のデメリット2つ:客観性の欠如と選択肢の制限
デメリットとしては、次の2つがあります。
-
客観性が欠如している可能性
他社にとっては良い産業医であっても、自社のニーズに合うとは限りません。そのため、自社が産業医に求めることを明確化しておく必要があります。
-
選択肢の制限
人脈を通じて出会える産業医のみが対象となるため、選択肢が限られます。さらに、人脈を通じた紹介であるがゆえに、企業のニーズに合わずに産業医を交代したくても交代しにくいでしょう。
地域産業保健センター:中小企業向けの無料サービス
地域産業保健センターは、全国独立行政法人労働者健康安全機構によって47の都道府県に設置されています。
事業場の労働者数が50人未満の小規模事業場における事業者や労働者を対象に産業保健サービスを無料で提供しているため、小規模事業場にとっては心強い存在になるでしょう。
産業保健サービスの内容は、労働者の健康管理に関わる相談や健康診断結果についての医師からの意見聴取、長時間労働者・高ストレス者に対する医師による面接指導、医師または保健師が事業場を訪問して産業保健指導を行なうなどがあります。
参考:産業保健総合支援センター(さんぽセンター)|独立行政法人 労働者健康安全機構
参考:こころの耳 地域産業保健センター(地さんぽ)|厚生労働省
産業保健センター利用のメリット3つ:コスト削減と専門性
産業保健センターを利用するメリットは、次の3つが挙げられます。
-
コスト削減が期待できる
産業保健に関する相談や研修を無料で受けられるため、企業の経済的負担を軽減できます。
-
専門性の高いサポートが受けられる
医師などが事業場を個別に訪問し、健康管理に関して指導・助言を行なうなど、専門的なサポートを得ることができます。
-
法令遵守ができる
小規模事業場であっても、長時間労働者への面接指導などの法令遵守が求められます。地域産業保健センターは、長時間労働者への医師による面接指導の相談も実施しているため、小規模事業所であってもしっかりと法令遵守に取り組むことが可能です。
産業保健センター利用のデメリット2つ:サービスの制限と予約の困難さ
デメリットとしては、次の2つが挙げられます。
-
従業員数が50人以上の事業場はサービスを受けることができない
法律で産業医の選任を義務づけられている従業員が50人以上の事業場は利用できないため、注意しましょう。
-
利用制限がある
サービスの利用回数が「1事業場あたり2回まで」「労働者1人あたり2回まで」などといった利用制限があります。利用を検討している場合は、事前に確認しておきましょう。
産業医紹介サービス(マッチングサービス):幅広い選択肢と効率的な探索
産業医紹介サービスは、産業医紹介会社を通して産業医を紹介してもらう方法です。紹介会社が間に入ってくれるため、産業医の選任が初めてであったり、慣れていない事業場に適しているでしょう。
産業医紹介サービスを利用する際の手順は紹介会社によって異なりますが、次の流れであることが多いでしょう。
まずは、利用したい産業医紹介サービスをいくつかピックアップしましょう。たくさんの紹介サービスがありますが、予算やサービス内容から2~3つ程度に絞ります。
ステップ1で絞り込んだ会社に問い合わせると、紹介会社の担当者が事業場のニーズなどをヒアリングしてくれ、適したプランや産業医を提案してくれます。
予算やサービスの範囲、事業場のニーズなど総合的に判断し、契約する産業医紹介会社を決めます。産業医を選任したら、忘れずに労働基準監督署に産業医選任報告書を提出しましょう。
紹介サービス利用のメリット4つ:多様な選択肢と迅速なマッチング
紹介サービスを利用するメリットは、次の4つが挙げられます。
-
多様な選択肢
複数の産業医が登録しているため、多くの選択肢のなかから選ぶことができます。例えば、メンタルヘルス対応が得意な産業医、工場での活動経験のある産業医など、事業所のニーズに合った産業医を探しやすいのがメリットです。
-
迅速なマッチング
紹介会社が他企業の事例をよく知っているため、多くの産業医のなかから自社に合った産業医をスムーズに紹介してくれます。そのため、事業場側が産業医を探す時間や労力を削減できるでしょう。
-
産業医の交代がスムーズ
万が一紹介された産業医が事業場のニーズに合わないなどで交代する際も、紹介会社が仲介してくれるのでスムーズに対応できます。
-
産業保健業務の負担軽減
産業医選任だけでなく、ストレスチェック代行など産業保健まわりのサービスを提供していることがあり、産業保健に関する業務の効率化につなげられます。
紹介サービス利用のデメリット2つ:コストと直接的な関係構築の難しさ
デメリットとしては、次の2つが考えられます。
-
コストが高くなる可能性
紹介料などが発生するため、他の方法よりもコストが高くなる可能性があります。ただし、紹介会社はストレスチェック実施代行などのサービスも行なっていることがあり、産業保健業務に関連する費用も含めて、総合的に判断しましょう。
-
直接的な関係構築の難しさ
産業医との直接的な関係がないので、企業固有のニーズや状況に応じた柔軟な対応が難しい場合があります。
産業医との契約形態:専属・嘱託・スポットの比較
産業医とのおもな契約形態について、それぞれの特徴とメリット、デメリットについて解説します。
契約形態 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
専属 | ・常勤として雇用 ・週3〜5日程度の勤務が目安 ・常時使用する労働者が1,000人以上の事業場や、労働安全衛生規則第13条第1項第2号で指定されている有害業務に携わる労働者が常時500人以上の事業場では選任義務あり |
・迅速な対応が可能 ・企業の状況を深く理解できる |
・人件費が高い |
嘱託 | ・非常勤として契約 ・月1回〜数回の訪問 ・従業員50人以上999人以下の事業場で選任 |
・専属産業医よりコストを抑えられる ・外部の視点を取り入れやすい |
・緊急時の対応が遅れる可能性がある ・企業の詳細な状況把握が難しい |
スポット | ・必要に応じて都度契約 ・特定の業務や期間のみ依頼 |
・必要なときだけ利用でき、コスト効率が良い ・専門性の高い助言を得やすい |
・継続的な健康管理が難しい ・従業員との信頼関係構築が困難 |
産業医の契約形態には、それぞれ特徴があり、企業の規模や需要に応じて適切な形態を選択することが大切です。
特に、「常時使用する労働者が1,000人以上の大規模事業場」や「労働安全衛生規則第13条第1項第3号で指定されている有害業務に携わる労働者が常時500人以上の事業場」では専属産業医の選任義務がありますので、対象の事業場は必ず選任しましょう。
嘱託産業医は、従業員50人以上999人以下の中小規模の事業場に適しており、コストを抑えつつ法定義務を満たすことができます。
スポット産業医は、特定のニーズや短期的な要件に対応する際に適していますので、状況に応じて使い分けていきましょう。
産業医の報酬相場:契約形態別の目安
産業医の報酬は専属か嘱託か、勤務日数、企業規模、地域などで異なります。産業医によって費用に差がありますので、自社が求めるレベルと照らし合わせながら検討しましょう。
専属産業医の報酬相場は勤務日数や経験年数などによって異なりますが、週4日であれば年間1,200~1,600万円程度が相場といわれています。
嘱託産業医は、事業所の従業員数によっても変動しますが、日本橋医師会が公表している報酬基準額は以下のようになっています。
労働者数 | 50人未満 | 50~199人 | 200~399人 | 400~599人 | 600~999人 |
---|---|---|---|---|---|
金額 | 7万5,000円~ | 10万円~ | 15万円~ | 20万円~ | 25万円~ |
参考:産業医報酬基準額について | 公益社団法人日本橋医師会 産業保健部委員会
スポット産業医の報酬相場は、1回の対応につき3万円前後といわれています。ただし、業務内容や時間、従業員の数、産業医の経験などによって費用は異なります。
産業医選任後の手続きと運用のポイント
産業医選任後は、速やかに労働基準監督署に産業医選任報告書を提出する必要があります。詳細な手順は、こちらの記事を参考になさってください。
【あわせて読みたい参考記事】

選任後に産業医とスムーズに連携するためには、定期的な面談や情報共有の場を設け、産業医の意見を積極的に聞くことが重要です。また、事業場の担当者が受け身になるのではなく、職場巡視や衛生委員会への参加を促し、産業医の専門知識を積極的に活用しましょう。
こうした連携をすることにより、産業医を選任しているものの実際には活動していない、いわゆる「名義貸し状態」を防ぐことができます。

>>【無料】産業医を初めて選任する企業様向けのガイドブック。
産業医の探し方や必要書類などの産業保健基礎知識をつけたい方はこちら
まとめ
産業医には、労働者が健康で安全に働けるようサポートする大きな役割があります。事業場の従業員数が50人以上になると産業医の選任義務が発生し、14日以内に自社の目的に合った産業医を選任しなければなりません。
産業医を探す方法としては、医師会や定期健康診断で契約している医療機関、自社の人脈を活用するほか、地域産業保健センターや産業医紹介サービスを利用する方法があります。実際に契約する際には、報酬相場の確認はもちろん、名義貸し状態にならないよう注意し、産業医の能力や業務内容のすり合わせを行なったうえで契約しましょう。
産業医の選任について、さらに詳しい情報が知りたい方は、産業医の選任から産業保健の立ち上げまでの流れが1冊で把握できる「産業医を初めて選任する企業様向けのガイドブック」や、「リモート産業保健 お問い合わせフォーム」をぜひご利用ください。

産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、「ストレスチェック」や「衛生委員会の支援」など、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を大幅軽減し、従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
【関連サービス】

「そのほかにおすすめなお役立ち資料」はこちら
