産業医の変更・交代はできる?手続きの方法や提出期限、必要書類、記入例を徹底解説

産業医の変更・交代をするには?方法と変更できないときの対処法

執筆者
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心理カウンセラー兼ライターとして活動しています。

弘前学院大学を卒業後、精神科病院の依存症デイケアにて勤務する中で精神看護の学びを深めたいと思いました。精神科の訪問看護ステーションに転職し、働きながら札幌医科大学大学院に入学しました。

大学院を卒業後、心理学を独学で学びながら地域の保健師として、地域の方々が身体的にも精神的にも良い方向に行けることを目指して支援してきました。

看護師・保健師・精神看護学修士の資格を持っています。
ライターとしてはまだまだ駆け出しですが、エビデンスのある情報を参考に記事を作成することを心がけて、読者の方々から信頼を得られるライターになりたいです。

健康オタクなので、調べたヘルスケアの情報を実践することが趣味です。興味を持ったことについて深く調べることが好きなので、持ち前の探求心をライターとしての仕事に活かしていければと思っています。

【略歴】
2011年3月 弘前学院大学看護学部卒業 看護師・保健師の資格を取得
2020年3月 札幌医科大学大学院精神看護学専攻卒業
2012年4月 精神科病院 依存症デイケア勤務
2016年2月 精神科訪問看護ステーション勤務
2020年10月 地域包括支援センター勤務
現在 保健師ライター兼心理カウンセラーとして活動中

監修者

元々臨床医として生活習慣病管理や精神科診療に従事する中で、労働者の疾病予防・管理と職業ストレス・職場環境の密接な関係認識するに至り、病院からだけでなく、企業側から医師としてできることはないかと思い、産業医活動を開始しました。

また、会社運営の経験を通じ、企業の持続的成長と健康経営は不可分であること、それを実行するためには産業保健職の積極的なコミットメントが必要であると考えるに至りました。

「頼れる気さくな産業医」を目指し、日々活動中しています。
趣味は筋トレ、ボードゲーム、企業分析です。

【保有資格】
・日本医師会認定産業医
・総合内科専門医
・日本糖尿病学会専門医
・日本緩和医療学会認定医

産業医の変更にお困りな方

職場巡視や面談指導をしてくれない、企業の課題と産業医の専門スキルがマッチしないなどの事情から、産業医を変更したいと思っている企業担当者の方は少なくありません。しかし、産業医を変更するには、さまざまな手間と労力がかかります。

本記事では、産業医の変更を検討している方や変更手続きについて知りたい方向けに、産業医の変更に必要な手続きや変更できない場合の対処法、自社に合う産業医を選任するコツについて解説します。

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「産業医を変更したい……」企業の悩みあるあるを紹介

本章では、よくある産業医にまつわる悩みを紹介します。

(1)面談指導をしてくれない

労働安全衛生法第66条に基づき、企業は適宜、医師による面談指導を実施する義務があります。

しかし、産業医によっては「本業の業務が忙しく、産業医面談に手が回らない」「精神科医ではないので、メンタル面でのケアは難しい」といった理由で、産業医面談を先延ばしにしたり、引き受けてくれなかったりする場合もあります。

しかし、産業医面談の実施は、企業に課せられた義務です。このような産業医の対応を目の当たりにし、産業医の変更を検討する企業もあります。

(2)ストレスチェックの実施者を務めてくれない

ストレスチェックを実施するには「実施者」が必要です。ストレスチェックの実施者は、労働安全衛生規則第52条の10に基づき、医師や保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士などのなかから選ぶ必要があります。

基本的には、企業が選任した産業医がストレスチェックの実施者を務めるのが望ましいとされています。しかし、ストレスチェックが義務化されたのは2015年12月とごく最近のことであり、産業医がストレスチェックの重要性や目的、実施の流れについて正しく把握していないケースもあるかもしれません。

そのような産業医のなかには、ストレスチェックの実施者になることを断る者もいるでしょう。

(3)コミュニケーションがうまくいかない

企業は産業医選任後、その産業医とうまく連携をとりながら業務を進めていく必要があります。企業のニーズを産業医にしっかり伝え、労働者や職場について理解を深めてもらわない限り、産業保健活動はスムーズに進まないでしょう。つまり、産業医と企業、双方の歩み寄りが重要といえます。

しかし、適切な歩み寄りができず、両者の思いが一方通行になってしまうと、産業医の重要な職務である「労働者の安全と健康を守るための指導や助言をする」ことができなくなってしまいます。

したがって、産業医とのコミュニケーションがうまくいかない場合には、コミュニケーションの取り方を見直したり、産業医の変更を検討したりする必要があるでしょう。

(4)企業の課題と産業医の専門スキルがマッチしていない

産業医にも医師としての専門分野があるため、精神科経験が豊富な産業医もいれば、内科経験が豊富な産業医もいます。そういった知識や経験のミスマッチによって、企業が求める産業医の職務を果たせないケースもあります。

産業医の専門と自社のニーズについて十分に検討せず、焦って選任を進めてしまった場合などに、こういった問題が起こりやすくなります。そして、ミスマッチによる問題が深刻な場合には、自社の課題解決に適任の産業医への変更を検討する企業が多いです。

(5)産業医としての職務・役割を果たしていない

産業医の職務は、健康診断の実施やその結果に基づく措置、ストレスチェックの実施、長時間労働者への対応、職場巡視など多岐にわたります。しかし、産業医の立場について正しく理解していない者や、意図的に役割を果たさない者もいるため、注意が必要です。

例えば、産業医は中立の立場で、企業と労働者双方に指導や助言を行ないます。しかし、産業医がどちらか一方に肩入れしてしまい、労働者に不利な取り扱いが起こったり、企業の方針と対立することになったりすることもあります。

このほか、「たまに事業場に顔を出すだけで、しっかりと業務を行なってくれない」「新型コロナウイルスの感染者が出た際の対応について、適切な助言をもらえなかった」といったトラブルも少なくありません。

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(6)産業医を一元管理したい

常時雇用している労働者が3,001人以上の企業や、常時雇用している労働者が50人以上の事業場を全国に複数持つ企業は、複数名の産業医と契約する必要があります。

上記のようなケースだと、それぞれの産業医で休職や復職の判断基準が異なることがあります。とはいえ、判断基準を統一しようとすると、人事・労務担当者の負担は増えるばかりです。

また、それぞれの産業医で契約先が異なることでも、契約に関する事務手続きなどの負担は大きくなります。担当者の負担を減らすためには、産業医を一元管理したいと考える企業も多いでしょう。

産業医の変更に必要な手続き・書類とは?

産業医を変更する場合、労働安全衛生規則第13条に基づき、新しい産業医の選任を14日以内に行なわなければなりません。そして、「産業医選任報告」の書類を遅延なく、所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。

「産業医選任報告」の書類は、以下の方法で入手することができます。

  • 労働基準監督署で直接もらう
  • 厚生労働省ホームページよりダウンロードして印刷する
  • 厚生労働省ホームページの入力支援サービスを利用する

入力支援サービスとは、インターネット上で報告書を作成できるサービスのことです。登録や事前申請なしで使用でき、誤入力や未入力などを防止できる機能もついており便利です。また、過去のデータも保存されるため、産業医の交代や追加時の報告をする際、スムーズに届け出を行なうことができます。

提出方法には、直接提出、郵送提出、電子申請の3つのパターンがあります。

直接提出
所轄の労働基準監督署の窓口へ直接提出する方法です。受付時間や休日に注意しましょう。
郵送提出
所轄の労働基準監督署へ郵送で提出する方法です。労働基準監督署の受領印がある選任報告書の控えが欲しい場合には、選任報告書2部、返信用封筒(切手貼付、宛名記入)を忘れずに同封しましょう。
電子申請
電子申請では、24時間365日いつでも手続き可能です。e-Gov電子申請で、必要書類を電子ファイルにして提出します。稀にサーバーメンテナンスが入ったり、システムの不具合が起こったりする場合もあるので、時間に余裕をもって申請しましょう。

産業医選任報告で必要書類は2つ

産業医選任報告をする際には、医師免許証のコピー、産業医証明書類を添付する必要があります。産業医証明書類とは、以下のいずれかに該当することを証明する書類のことです。

  • 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
  • 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
  • 労働衛生コンサルタントで試験区分が保健衛生である者
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師の職にあり又はあつた者
  • 労働安全衛生規則第14条第2項第5号に規定する者
  • 平成8年10月1日以前に厚生労働大臣が定める研修の受講を開始し、これを修了した者
  • 上のいずれにも該当しないが、平成10年9月30日において産業医としての経験年数が3年以上である者

引用:「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」別表|厚生労働省

産業医に連絡し、書類を準備しておいてもらうと、スムーズに手続きが進みます。

産業医選任報告書に記載する内容

産業医選任報告書を入手またはダウンロードしたら、実際に記入を行ないます。

産業医選任報告書の記載内容は、次のとおりです。

  1. 労働保険番号
  2. ページ数
  3. 事業場の情報(名称、所在地、電話番号)
  4. 事業の種類
  5. 事業場の労働者数
  6. 産業医の情報
  7. 産業医選任年月日
  8. 選任種別
  9. 産業医の医籍番号
  10. 辞任・解任について
  11. 参考事項
  12. 届出日・届出先名・事業者職氏名・捺印

産業医選任報告書の記載内容は、次のとおりです。産業医選任報告書の詳しい記入方法や提出に関する情報は、以下の記事でまとめていますのでご確認ください。

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「書き方がよくわからない」という場合には、以下のページより記入例をダウンロードしてご活用ください。

「産業医選任届出書(記入例有)」をご希望の方は下記よりダウンロード

産業医選任届け出書(記入例有)

産業医が変更できない場合の対処法

実際に産業医を変更したいと考えても、「現職の産業医との関係が長いため、切り出しにくい」「産業医変更にともなう労力をかけたくない」といった事情で変更が難しいケースもあるでしょう。

そのようなときは、産業医の2名体制を検討してみましょう。2名体制にすることで、スケジュールや得意分野に合わせて業務を分担することができます。

産業医の選任人数は、以下のように定められていますが、人数の上限は設けられていないため、必要に応じて産業医を増やすのは自由です。

常時使用する労働者数 産業医の選任人数
常時使用する労働者数1~49人 ➡︎産業医の選任は努力義務
常時使用する労働者数50~999人 ➡︎嘱託または専属産業医1名を選任
常時使用する労働者数1,000~3,000人 ➡︎専属産業医1名を選任
常時使用する労働者数3,001人~ ➡︎専属産業医2名を選任

※労働安全衛生規則第13条第1項第3号に明記されている有害業務を行なう事業場は、常時使用する労働者数が500人以上で専属産業医が必要。

ただし、新しく産業医を選任することで、現職の産業医とのトラブルに発展したり、名義貸しの疑いをかけられたりする可能性もあるため、関係者間でしっかり話し合いを行なったうえで、体制の変更を進めましょう。

自社に合う産業医を選任するコツ

産業医に求める業務は、企業によって様々です。したがって、自社のニーズをしっかりと整理してから、産業医選びを行なうようにしましょう。

例えば、労働者の休職が続出しており、メンタルヘルス対策に力を入れたい企業は、精神科を専門とする産業医や、メンタルヘルス対策の経験が豊富な産業医を選ぶと良いかもしれません。また、女性の労働者が多い事業場では、女性の産業医を選任するのが良いケースもあるでしょう。

産業医としての専門性や経験年数はもちろん、人柄、コミュニケーション力、これまで担当した企業の業種・特徴なども、併せてチェックしておきたいところです。

産業医の選び方、探し方については、以下の関連記事でまとめていますので、ぜひご確認ください。

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まとめ

産業医の変更には、大きな手間と労力がかかります。さらに、新たな産業医を選任する際には、14日以内という期限があるため、迅速に企業のニーズとマッチする産業医を探さなければなりません。

産業医選びに失敗しないためには、事前の情報収集と信頼できる相談先の確保が重要です。ずっと付き合っていく産業医だからこそ、自社と相性の合う人材かどうかを慎重に見極めましょう。

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