会社のストレスチェックは意味ないの?実施効果や義務、成功事例を解説!

ストレスチェック

執筆者

はじめまして、shirocanと申します。
大学院修了後、フリーター期間を経て、教育系一部上場企業、人材系ベンチャー企業に勤務しました。ベンチャー企業勤務時より、様々な副業や活動を行ない、現在は法人経営のほか、webライター、キャリアアドバイザー、各種試験講師、研修講師などに従事しております。

執筆経験としては、副業系、投資、キャリア、金融、経営、ライフデザイン、中学高校大学受験における各教科の勉強法、各種資格試験の勉強法などがございます。翻訳、校正経験もございます。

文章を書くことが好きであり、はじめは副業で始めたライターのお仕事に充実感や責任感を覚え、約5年続けております。様々なジャンルを執筆する中で、常に学び続けることを忘れず、高品質の記事つくりに邁進しております。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

ストレスチェックは、意味がないと思われる方も多く、実施の目的を明確にしておきたいと考える企業担当者の方もいるでしょう。

そこで今回は、ストレスチェックは意味がないといわれる理由や本来の目的、効果を高める方法について、実際の成功事例を交えて紹介します。

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ストレスチェックは「意味がない」といわれる理由

ストレスチェックは「意味がない」「信憑性がない」と批判する声がよく聞かれます。
そこでまずは、ストレスチェックは「意味がない」といわれがちなおもな理由について解説します。

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ストレスチェックを受検する労働者が少ないから

ストレスチェックを受検する受検者の数が少ないと、アンケートの結果に偏りが生じてしまい、有効な分析結果を得られない場合があります。このような事情から、「ストレスチェックは意味がない」と判断されることがあります。

近年、ストレスチェックを実施する事業場は増加傾向にあり、厚生労働省の資料によれば、ストレスチェックが義務化されている事業場(常時使用する労働者数が50人以上)での実施率は96%を超えています。くわえて、ストレスチェックの実施が努力義務となっている小規模事業場でも、4割弱が取り組みを行なっています。

しかしその一方で、小規模事業場のうち、単独事業場しか持たない企業での実施割合は、1割にも達していないのが現状です。

労働者の少ない事業場でスムーズにストレスチェックを実施するためには、企業側が受検当日の業務量を調整するなど、労働者の負担を軽減する工夫が必要です。

このほか、外国人労働者のための多言語に対応した質問票や、視覚に障害がある労働者のための点字に対応した質問票を作成するなど、個々に合わせた対応を行なうのが望ましいでしょう。

より良い職場づくりに役立てるためにも、すべての労働者がストレスチェックを受けられるように受検体制を整えることが、多くの企業にとっての課題です。

参考:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省

調査票に本当のことを書けない場合があるから

ストレスチェックを受検した労働者が、自身のストレスや不安に関する質問に対して、正しく回答するとは限りません。

労働者のなかには、「上司に結果を知られるのが怖い」「悩みを周囲に知られたくない」「どうせ本当のことを書いても無駄」などと感じて、正直に回答しない(回答できない)方もいるでしょう。

ストレスチェックで正しい回答を得られなければ、産業医による有効なメンタルヘルスケアができず、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことができません。その結果、「わざわざ実施しても意味がない」と、ネガティブなイメージがついてしまったのです。

面接指導を受ける高ストレス者が少ないから

ストレスチェックによって高ストレス者であると判定されると、本人の申し出によって医師の面接指導が受けられるようになります。言い換えると、本人が「面接は不要」「面接は受けたくない」と判断すれば、面接指導は実施されないのです。

ストレスチェックの実施は、常時使用する労働者数が50人以上の事業場に義務付けられていますが、労働者個人に受検義務はありません。厚生労働省の資料によると、受検対象となる労働者のうち、実際にストレスチェックを受検した労働者が8割を超える事業場は77.5%となっています。

つまり、受検対象となる労働者のすべてが受検しているわけではなく、「ストレスチェックは意味がない」と受検を拒否する労働者が一定数いるのです。

また、ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定される労働者の割合は、大半の事業場で5~20%程度だといわれています。しかし、そのうち医師の面接指導を申し出る者の割合は、5%未満の事業場がほとんどであるようです。

高ストレス者に適切なメンタルヘルスケアを施さなければ、ストレスチェックを実施する意味がありません。したがって企業は、高ストレス者に面接指導を受けてもらうために、さまざまな工夫をする必要があります。

参考:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省

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ストレスチェックの結果を今後に活かせていないから

ストレスチェック・集団分析をただ実施するだけでは、意味がありません。ストレスチェック制度の意義は、分析結果をもとに、労働者のストレス軽減や労働環境の改善を行なうことにあります。

令和2年の労働安全衛生調査によると、ストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、活用している事業場は、全体で66.9%にとどまっています。

参考:「ストレスチェック制度の実施状況」|厚生労働省

繰り返しになりますが、ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐとともに、労働環境の見直し・改善を行なうために実施するものです。個人の結果や集団分析の結果を活かし、職場環境の課題を洗い出して、改善に向けて取り組んでいくことが重要です。

大いに意味がある!ストレスチェックの本来の目的

企業にとってのストレスチェックの目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することです。労働者としては、自身のストレスの状態や原因を知ることで、セルフケアのきっかけが生まれます。

ストレスチェックで高ストレス者と判定された場合は、ストレスチェックの結果や産業医面談での指導をもとに、カウンセリングやアドバイスを受けることで、メンタルヘルス不調などの健康被害を回避できる可能性が高まります。

厚生労働省が行なったアンケート調査によると、ストレスチェック制度の効果として、事業者は「社員のメンタルヘルスセルフケアへの関心度の高まり」を強く感じており、労働者の半数以上は「自身のストレスを意識するようになった」としています。

ストレスチェックの実施には、自分で気付いていないメンタルヘルスの状況を、労働者自身が客観的に見られるという効果があります。企業にとっては、ストレスチェックの結果をもとに労働環境改善に取り組むことで、労働者のストレスを軽減させられるとともに、企業全体の生産性向上も期待できます。

ストレスチェックはただ実施すればよいものではなく、企業と労働者の双方が本来の目的を認識し、取り組みを行なうことで、本来の効果を発揮できるといえるでしょう。

出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省

ストレスチェックに関する労働者のよくある不安

企業側がストレスチェックの受検を推進する一方で、労働者が受検に不安を感じているというケースは珍しくありません。

そこで本章では、ストレスチェックに関する労働者のよくある不安と、それに対する企業としての回答を紹介します。労働者の不安を解消し、ストレスチェックの受検に前向きになってもらうためにも、ぜひご一読ください。

ストレスチェックの結果が適切に管理されるか心配

ストレスチェックの結果は、非常にセンシティブな個人情報であり、情報漏洩が不安な労働者もいます。したがって、結果は厳重に管理される旨を事前に共有しておくことが大切です。

個人のストレスチェックの結果やストレスチェックにかかわる同意書などは、書面・データにかかわらず、事業者において5年間保存することが義務付けられています。

これらの情報については、医師や保健師などの資格を持つ実施者か、実施事務従事者が保存することになっているため、むやみに公開されないことを伝えましょう。

ストレスチェックの結果の保存例としては、以下のような選択肢が挙げられます。

ストレスチェックに関する情報はしっかりと管理される旨を労働者に伝え、安心して受検できるように配慮しましょう。

出典:「ストレスチェック制度 導入ガイド」|厚生労働省

ストレスチェックの結果を会社に知られたくない

「ストレスチェックの結果を上司や同僚に知られるかもしれない」と、不安に思う労働者も少なくありません。そのような思いから、偽りの回答をしたり、受検自体を断ったりする労働者が出る可能性もあります。

ストレスチェックの結果は、本人の同意なしに事業者へ通知されないことを、しっかり周知しておく必要があります。

また、ストレスチェックの結果が人事評価に利用されないように、人事権を持つ者(社長や専務、人事部長など)は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはいけないと定められています。
ストレスチェックの結果が、人事や業務上の不利益な取り扱いに利用されることがないよう、実施体制が細かく定められていることも周知する必要があるでしょう。

ストレスチェックを意味のあるものにするには?効果を高める3つの方法

ストレスチェックの結果を適切に活用できれば、労働者の心身の健康を守るとともに、労働環境の改善を実現することができます。そこで本章では、ストレスチェックの効果を高める3つの方法を紹介します。

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産業医面談の申出をしやすくする

高ストレス者とされた労働者は、メンタルヘルス不調のリスクが高いため、産業医面談を受け、メンタルヘルス不調や精神疾患発症などの予防を図る必要があります。

しかし、産業医面談を受けるかどうかは、労働者本人が決めることです。「忙しい」「周りに知られるのが嫌」「面倒くさい」といった理由で、産業医面談の申出をしない高ストレス者も出てくるでしょう。

ストレスチェックの効果を高めるためには、高ストレス者に産業医面談を受けさせることが大切です。

労働者に不利益が生じることはない旨を丁寧に説明し、「オンライン面談を可能にする」「社外に相談窓口を設ける」「事前に産業医による説明会を開く」といった配慮をして、高ストレス者が申出をしやすい環境を整えていきましょう。

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集団分析でストレスの原因を見つけ出す

ストレスチェック後の集団分析を効果的に活用できれば、「どこが課題で、何を改善すればいいのか」を明確にすることができます。また、部署や課ごとの傾向や特徴を把握することで、それぞれに合った施策も行なえます。

集団分析については、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」に詳しく解説されているので、確認しておきましょう。

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自社の従業員とともに職場改善に取り組む

前述のとおり、ストレスチェックをただ実施するだけでは、あまり意味はありません。ストレスチェックの結果をもとに職場改善を行ない、自社の従業員のストレスを軽減させることが重要です。

ストレスチェックは、従業員と事業者双方に大きなメリットがあります。ストレスチェックを「意味ある」ものにするためには、事業場が一丸となって、職場改善に取り組むことがなにより大切といえるでしょう。

ストレスチェックの成功事例3選

最後に、ストレスチェックを活用し、受検者の増加や労働環境の改善につながった好事例・成功事例を3つ紹介します。

実施ツールを変更し、受検率のアップを実現【株式会社明電舎沼津事業所】

株式会社明電舎沼津事業所(静岡県沼津市)では、ストレスチェックの受検率が上がらないことに対し、従業員の視点に立って問題点を洗い出しました。その結果、これまでのストレスチェックツールの使い勝手が悪く、最後まで受検しない従業員がいることがわかりました。

そこで、スマートフォンやタブレット端末でも受検できるようにして、文字の見やすさやボタンの配置などの画面構成を操作しやすいものに改善したところ、2019年のストレスチェックの受検率は、前年度から約5ポイントアップの96.1%となりました。

従業員のやる気や意欲に焦点を当てて、使用ツールの改善という形で問題解決に取り組み、成功した事例です。

ストレスチェックの実施説明会・事後説明会を実施して、従業員の意識向上に成功【埼玉県教育局】

埼玉県教育局(埼玉県さいたま市)では、職員に対してストレスチェックを実施する前に、各職場の管理者と衛生管理者を集めて事前に実施説明会を開催し、実施の目的や年間のスケジュールなどを共有するようにしています。

ストレスチェック実施後には事後説明会が開催され、状況報告やストレスチェックの受検率、集団分析の結果の読み方、それぞれの職場で集団分析をもとに取り組んだ労働環境改善などの活動報告が行なわれます。

また、福利課の職員が各職場を直接訪問して聞き取りを行ない、職場環境改善に成功した例を好事例集としてまとめるなどして、活発な情報共有が行なわれています。

事前の説明によりストレスチェックの実施・運営が円滑に進み、事後説明でフィードバックを行なうことにより、社内の意識を高めることに成功した事例となっています。

ストレスチェック受検を繰り返し呼びかけ、従業員のセルフチェックが浸透【株式会社セントラル情報センター】

株式会社セントラル情報センター(東京都渋谷区)では、ストレスチェックが義務化される以前から独自にストレスチェックを取り入れるなど、メンタルヘルス対策を実施してきました。

根気強くストレスチェックの受検について声かけを行なうことで、従業員にその必要性が浸透していきました。その結果、今では身体の不調が起こったときに「ただの風邪ではなく、心の状態からきているものかもしれない」と、従業員自身がとらえるようになったそうです。

さらに、法的に義務化されている年1回のストレスチェック以外に、毎月1回、従業員がセルフチェックできる仕組みも構築されています。

ストレスチェックの必要性を従業員自身が認識し、自分自身でメンタルの状態を把握できる仕組みを取り入れることで、メンタルヘルス対策を強化した好事例でした。

まとめ

ストレスチェックは、ただ実施するだけでは意味がありません。労働者のメンタル不調を未然に防ぐという本来の目的を理解し、社内一丸となって取り組む必要があります。

しかし、自社だけでストレスチェックの実施・分析を行ない、結果を有効に活用することは、リソースや知識の問題で困難な場合もあるでしょう。そのような場合には、外部機関のサポートを利用するのも選択肢の一つです。

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