産業医の必要性は?仕事内容や役立たずと言われる理由、選任のコツを解説

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産業医とは、常時使用する労働者数が50人以上の事業場で選任する義務がある医師のことです。医師といっても、病院やクリニックで働く医師(臨床医)とは役割が大きく異なります。

本記事では、産業医が企業で果たす役割や、自社に合った産業医を選任するコツなどについて詳しく解説します。

産業医の本来の役割とは?

産業医の本来の役割は、「従業員の健康と安全を守るため、指導や助言を行なうこと」です。産業医の業務は、労働安全衛生規則によって、以下のように定められています。

(1)健康診断の実施と結果に基づく措置
(2)長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
(3)ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
(4)作業環境の維持管理
(5)作業管理
(6)上記以外の労働者の健康管理
(7)健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
(8)衛生教育
(9)労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

出典:独立行政法人 労働者健康安全機構『中小企業事業者の為に産業医ができること』

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事業場の規模ごとに異なる産業医の選任人数

産業医の選任については、事業場の規模ごとに選任すべき人数や種類が異なる点に注意しましょう。

常時使用する労働者の人数に対して、選任する産業医の人数については以下のとおりです。

  • 労働者数50人以上3,000人以下の事業場: 1名以上選任
  • 労働者数3,001人以上の事業場: 2名以上選任

また、以下に当てはまる事業場は、専属の産業医を選任しなくてはなりません。

  • 常時使用する労働者数が1,000人以上の事業場
  • 常時500人以上の労働者を有害業務に従事させる事業場

出典:産業医について~その役割を知ってもらうために~│厚生労働省

なお、労働者数が50人未満の事業場に、産業医の選任義務はありません。しかし、こういった小規模事業場にも、労働者が安全で快適に働けるように適切な配慮をしなければならない「安全配慮義務」が課されています。

したがって、労働者の健康や安全に関する医学的知識を有する医師などに、労働者の健康管理のすべてまたは一部を行なわせることが望ましいとされています。

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産業医の要件

産業医の要件については、労働安全衛生規則第14条第2項で以下のとおり明記されています。

一 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修(※)であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
(※)日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学の産業医学基本講座が該当

二 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの

三 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

四 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあった者

五 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

出典:労働安全衛生規則第14条第2項│e-Gov法令検索

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産業医と臨床医の違い

すべての医師が産業医としての業務を行なえるわけではありません。産業医と医療機関などで勤務する医師(臨床医)には、以下のような違いがあります。

産業医 臨床医
活動場所 企業(常駐または都度訪問) 医療施設
契約方法 事業主との業務契約 患者との治療契約
医療行為 産業医の立場では不可 診断や治療が可能
事業主への勧告権 勧告できる 勧告できない
復職の可否 「働けるかどうか」で判断する 「日常生活を送れるか」で判断する

産業医は、企業内で労働者に対して、健康管理やメンタルヘルスなどに関する指導やアドバイスを行ないます。事業者と労働者の間に立ち、中立の立場で双方の意見や状況を確認したうえで、医学的知識を持つ専門家として対応します。

産業医は医師ですが、立場上、診断や治療といった医療行為はできません。そのため、必要に応じて医療施設を紹介するのが一般的です。ただし、企業内に診療所があり、診療録を作成している場合は、産業医も例外的に医療行為を行なうことができます。

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産業医の必要性が高まっている理由

近年、以下のような背景で産業医の必要性が高まっています。

労働者の健康問題に注目が集まっているから

2019年4月に施行された働き方改革関連法により、産業医が効果的な活動を行なえるようにするため、産業医・産業保健機能が強化されました。

労働者のメンタルヘルス不調や、長時間労働による過労死などを防ぐには、企業が率先して働きやすい環境を整えることが重要です。そして、そのような環境の整備のためには、産業医の存在が必要不可欠とされています。

企業と産業医が連携して、労働者の健康確保に努めることで、労働者は高いパフォーマンスを発揮できるようになります。そして、生産性や業務効率が上がり、結果的には企業の売上・業績の向上につながります。労働者の健康に適切に配慮できれば、従業員エンゲージメントも大いに高まるでしょう。

企業のリスクマネジメントのために産業医が必要だから

企業のリスクマネジメントの観点からも、労働者の健康問題やメンタルヘルス不調への対策は重要な課題です。

心身の不調を抱える労働者を放置すると、休職・離職につながり、人員不足や業績低下を招きかねません。また、メンタルヘルス不調に陥った労働者から訴訟を起こされるリスクもあり、そうなれば企業のイメージダウンは避けられません。

重大なトラブルが起こる前に、産業医からアドバイスをもらいながら、労働者のメンタルヘルスケアや職場環境の改善に努めましょう。

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産業医が「役立たず」と言われる理由とは?

産業医は医学と産業保健のスペシャリストです。産業医が十分に機能しなければ、労働者の健康と安全を守ることは困難になります。企業経営にもかかわる産業医の役割を考えると、「役立たず」とは言い難いでしょう。

それほど、産業医の業務は多岐にわたり、企業内における産業医の役割は非常に大きいといえます。しかし、なかには「役立たず」と言われる産業医がいることも事実です。

産業医自身にやる気がなかったり、能力が足りていなかったりする場合もありますが、優秀で真面目な産業医であっても、企業や労働者から「役立たず」とみなされるケースがあります。

その要因の一つとして、企業や労働者が産業医の業務を理解しておらず、以下のような誤解が生じている可能性があります。

  • 産業医は、労働者の病気やけがの診断・治療をする
  • 産業医は、労働者のメンタルヘルス不調を治してくれる
  • 産業医は、企業(労働者)の意見をすべて受け入れてくれる

産業医の役割は、一般的な病院の医師(臨床医)とは異なり、診断や治療は原則行ないません。また、産業医は中立的な立場を保つのが基本であり、企業と労働者のどちらか一方に肩入れするようなことがあってはなりません。

そういった事情から、産業医の本来の仕事と企業が求める業務内容にズレが生じた結果、「産業医は役に立たない」という印象になることがあるのです。

職務を果たしていない……役立たずと言われる産業医の例

企業側の誤解から「役立たず」と言われる産業医について説明しましたが、職務を果たしておらず、本当に役に立っていない産業医もいます。ここでは、職務を果たしていない産業医の具体例を見ていきましょう。

名義貸しの産業医である

書類上、産業医と登録しているだけで、実際には業務を行なっていない「名義貸し」状態の産業医も存在します。職場訪問さえ行なわない産業医では、役立たずと言われても仕方ありません。

法律に定められた産業医の職務を果たさない場合には、法令違反とみなされ、罰金を科される恐れがあります。

さらに、厚生労働省のホームページに企業名が公開され、経営そのものに悪影響が生じるリスクもあります。企業のイメージを守るためにも、名義貸しとみなされるような契約は行なわないようにしましょう。

職場巡視をしていない

職場巡視は、労働安全衛生規則第15条に定められており、職場の安全や労働者の健康を守るために重要な産業医の職務です。

しかし、職場巡視をまったくしていない、もしくは訪問して企業の担当者と少し雑談するだけで十分なチェックを行なっていない産業医もいます。

職場巡視は、月に1回、条件を満たした場合でも2ヵ月に1回の頻度で実施する必要があります。ただ作業場を訪問するだけでなく、安全に労働できる環境か、労働者の健康を守れるか、という観点で、入念なチェックを行ないます。職場巡視を怠ると労働災害のリスクが高まり、職場の安全管理も疎かになるため、確実に実施する必要があります。

中立的な立場を維持できていない

前述のとおり、産業医はあくまで中立的な立場として、企業・労働者とかかわる存在です。

しかし、なかには労働者の意見ばかりに耳を傾けたり、企業側の言いなりになって労働者にとって不利な判断をしたりと、偏りのある産業医もいます。

産業医は中立的な立場でいることで、企業と労働者双方の事情を汲み取り、医学的知見に基づいた適切な助言を行なうべき立場である、ということを押さえておきましょう。

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守秘義務・報告義務の理解が不十分である

産業医面談で労働者と話した内容は、正当な理由なく事業者に報告してはならないことが、刑法第134条や労働安全衛生法第105条で定められています。

ただし、労働安全衛生法などの法令に基づく場合や、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときなどの「正当な理由」がある場合には、本人の同意を得ることなく報告することができます。

【具体例】

  1. 労働者の自殺のリスクを把握した場合
  2. 就業制限が必要とされる感染症や伝染病に罹患しており、ほかの労働者にも健康被害がおよぶ可能性がある場合
  3. 現状の労働環境のまま働かせることで、病状を著しく増悪させる恐れがある場合 など

守秘義務と報告義務の線引きは難しいため、産業医が労働者の同意なしで企業に面談内容などを報告した結果、トラブルになることもあります。報告をする際には、対象の労働者に同意を得たり、極力本人が特定されないよう配慮したりするなどの対策が必要でしょう。

もう役立たずとは言わせない!産業医採用のコツ

職務をしっかりと果たしてくれる、優秀な産業医を採用できれば、労働者の健康や職場の安全が守られ、企業全体の生産性向上も期待できます。そこで本章では、産業医採用のコツについて解説します。

自社の目的に合わせて産業医を選ぶ

一口に産業医といっても、以下のようなさまざまなタイプがいます。

  • メンタルヘルス不調者・休職者への対応に強い産業医
  • 研修や社内規程の整備が得意な産業医
  • 多くの企業を担当してきたコンサルタントスキルの高い産業医 など

産業医を選ぶ際には、「何が課題で、産業医に何を求めるのか」を整理することが非常に重要です。例えば、女性が多い職場であれば女性の産業医が、外国人が多い職場であれば外国語に対応できる産業医が適任といえます。

まずは、自社の課題や目的を明確にしてから、産業医を選任するのが望ましいでしょう。

産業保健活動のプロに優秀な産業医を紹介してもらう

自社の課題や目的を把握したら、さっそく産業医を探しましょう。産業医の探し方には、さまざまな方法があります。

例えば、「地域の医師会に相談する」「健康診断をしてもらっている医療機関に相談する」といった方法が考えられます。しかし、どれも手間や時間がかかってしまううえ、産業医との交渉は企業が自ら行なわなければなりません。

自社のニーズに合う優秀な産業医をすばやく選任するなら、産業医紹介サービスであるリモート産業保健にお任せください。

リモート産業保健では、企業の課題や事業内容にマッチした産業医の紹介はもちろん、産業医選任後の労働基準監督署への事務手続きなど、関連業務もフルサポートします。職場巡視や定期健診の事後措置、高ストレス者の面談などの法定業務対応も支援するため、産業医の「名義貸し」状態も回避できます。

また、産業医の紹介やフォローだけでなく、ストレスチェックや衛生委員会の立ち上げなど、さまざまな業務に対応可能です。労働者の健康管理を一任できるので、労働者の不調への対応など、企業側が不慣れな業務の負担を大幅に削減できるでしょう。
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まとめ

産業医は、労働者の健康と安全を守る重要な役割を担います。しかし、社内に産業医選任に関する知識がないと、職務を十分に果たさない産業医にあたってしまう可能性も否定できません。自社での産業医選任に不安がある場合には、産業保健活動のプロであるリモート産業保健にご相談ください。

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