安全衛生委員会での産業医の役割とは?法令やオンライン化など役立つ情報を紹介

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安全衛生委員会とは?産業医に出席義務はある?

従業員が50人以上いる事業場では、衛生委員会を設置し、開催する義務があります。また、林業、鉱業、建設業など特定の事業場では衛生委員会に加え、安全委員会の設置も義務です。それでは、安全衛生委員会とはどのようなもので、産業医に出席義務はあるのでしょうか。

安全衛生委員会とは?

安全衛生委員会とは、安全委員会と衛生委員会を統合したもので、安全衛生に関する従業員の意見を聞くために設置される委員会です。

安全委員会と衛生委員会、双方の設置が義務付けられている事業場はそれぞれを個別に設置する代わりに、統合して安全衛生委員会を設置することが認められています。

労働安全衛生規則第23条1項により、事業者は安全衛生委員会を毎月1回以上開催しなければなりません。安全衛生委員会では、労働災害の発生を防ぎ、従業員の安全や健康を守るための対策について調査審議を行ないます。

なお、安全衛生委員会の議事録は3年間保管することが義務付けられているので、誤って破棄しないように注意しましょう。

安全衛生委員会における産業医の役割

産業医は、安全衛生委員会の構成メンバーとして出席することが可能で、事業所に対して意見を述べるのが役割です。産業医には出席義務はありませんが、基本的に出席が望ましいでしょう。出席した場合は専門家の立場から意見を出しますが、委員会の進行役にはなりません。

産業医が欠席した場合は議事録を提供し、内容を共有できるようにしましょう。

安全委員会とは?基本情報を紹介

特定の事業場に設置が義務付けられている安全委員会について、基本情報を解説します。

安全委員会の設置義務

従業員が常時50人以上、かつ「労働安全衛生法施行令第8条、第2条第1項および第2項」で定める業種の事業場は、安全委員会の設置義務があります。指定の業種は、以下のとおりです。

  1. 製造業の一部(鉄鋼業、化学工業、木材・木製品製造業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部(道路貨物運送業、港湾運送業)、鉱業、建設業、林業、自動車整備業、機械修理業、清掃業
  2. 1を除く製造業および運送業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、通信業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等小売業、各種商品小売業、燃料小売業、ゴルフ場業、旅館業
  3. ※1は従業員が50人以上、2は従業員が100人以上の事業場

参照:労働安全衛生法施行令第8条、第2条第1項および第2項

安全委員会の構成メンバー

安全委員会の構成メンバーは、以下のとおりです。

  1. 総括安全衛生管理者または総括安全衛生管理者以外で当該事業場において事業の実施を総括管理する者、もしくはそれに準ずる者のなかで事業者が指名した者(1人)
  2. 事業者が指名した安全管理者
  3. 当該事業場の従業員で、事業者が指名した安全に関し経験を有する者

参照:労働安全衛生法第17条第2項

総括安全衛生管理者とは、安全管理者や衛生管理者を指揮し、従業員の安全と健康を守る措置の統括管理を行なう者です。一定以上の規模かつ指定された業種の事業場は、総括安全衛生管理者を選任するよう定められています。

安全委員会の調査審議事項

安全委員会で調査・審議すべきおもな内容としては、以下が挙げられます。

  • 従業員の危険を防止するための基本対策に関すること
  • 労働災害の原因および再発防止対策のうち、安全に係るものに関すること
  • その他、従業員の危険の防止に関する重要事項

参照:労働安全衛生法第17条

なお、3にある「重要事項」は、労働安全衛生規則第21条に主要付議事項として示されています。主要付議事項は以下のとおりです。

  • 安全に関する規程の作成
  • 危険性や有害性などの調査および結果に基づいて講ずる措置で、安全に係るもの
  • 安全衛生に関する計画(安全に係る部分のみ)の作成、実施、評価、改善に関すること
  • 安全教育の実施における計画の作成
  • 官公庁より文書で命令、指示、勧告、指導を受けた事項で、従業員の危険の防止に関すること

参照:労働安全衛生規則第21条

衛生委員会とは?基本情報を紹介

一定規模以上の事業場で設置が義務付けられている衛生委員会について、基本情報を解説します。

衛生委員会の設置義務

従業員が常時50人以上いる事業場では、衛生委員会の設置義務があります。安全委員会とは異なり、すべての業種が対象です。

衛生委員会の構成メンバー

衛生委員会の構成メンバーは、以下のとおりです。

  1. 総括安全衛生管理者、または総括安全衛生管理者以外で当該事業場において事業の実施を総括管理する者、もしくはこれに準ずる者のなかで事業者が指名した者(1人)
  2. 事業者が指名した衛生管理者
  3. 事業者が指名した産業医
  4. 当該事業場の従業員で、事業者が指名した衛生に関し経験を有する者

参照:労働安全衛生法第18条第2項

安全委員会との違いは、産業医が構成メンバーに追加されている点です。しかし、産業医はスケジュールの都合で衛生委員会への参加が難しいケースも少なくありません。欠席が常態化しないよう注意しましょう。

衛生委員会の調査審議事項

衛生委員会で話し合うべき内容は、以下のとおりです。

1. 従業員の健康障害を防止する基本対策に関すること
2. 従業員の健康保持・増進を図る基本対策に関すること
3. 労働災害の原因および再発を防止する対策のうち、衛生に係るものに関すること
4. その他、従業員の健康障害防止および健康保持・増進に関する重要事項

参照:労働安全衛生法第18条

4の重要事項は、労働安全衛生規則第22条に主要付議事項として示されています。主要付議事項は以下のとおりです。

  • 衛生に関する規程の作成
  • 危険性または有害性などの調査・結果に基づいて講ずる措置のなかで、衛生に係るもの
  • 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分のみ)の作成、実施、評価、改善に関すること
  • 衛生教育実施における計画の作成
  • 新たな化学物質に対する有害性の調査および結果に基づく対策の樹立
  • 作業環境測定の結果および結果の評価に対する対策の樹立
  • 健康診断および医師の診断、診察、処置の結果に基づく対策の樹立
  • 従業員の健康保持・増進を図るため、必要な措置に対する実施計画の作成
  • 従業員の長時間労働による健康障害を防ぐため、必要な対策の樹立
  • 従業員のメンタルヘルスを保持増進するため、必要な対策の樹立
  • 官公庁により文書で命令、指示、勧告、指導を受けた事項のなかで、従業員の健康障害防止に関すること

参照:労働安全衛生規則第22条

安全衛生委員会について押さえておきたい6つのポイント

ここでは、安全委員会と衛生委員会を統合した安全衛生委員会について、押さえておきたいポイントを6つに分けて解説します。

産業医との連携が大切

安全衛生委員会には産業医の出席義務はありませんが、構成メンバーとして出席することが可能であることは前述しました。

産業医が出席した場合、産業医に任せきりにして他の人が意見をいわなかったり、逆に産業医がまったく意見を出さなかったりする事態は避けましょう。安全衛生委員会の進行や最終決定は、あくまでも事業所側主導で行なう必要があります。

発言者が偏らないようにする

安全衛生委員会で意見を述べる人が毎回同じというのも、良いことではありません。同じ人ばかりが発言していると、活発に意見や情報が交換できず、一方的な情報共有になってしまいます。

事業所側と従業員側の両方が、それぞれ意見を出して話し合うことが大切です。各々の立場で意見を述べ、従業員の安全と健康のために建設的な場となるように心がけましょう。

内容のマンネリ化に注意

安全衛生委員会は毎月1回以上の実施が定められているため、毎月テーマを考えなければなりません。回を重ねるごとに話すべきテーマがなくなってきて、内容がマンネリ化してしまうケースも多いでしょう。

特に花粉症や熱中症、インフルエンザなどの季節に関する内容は一般的なテーマである分、毎年取り上げてしまいマンネリ化につながります。毎年同じ内容では、議論の幅が広がりません。その時々の時事ネタを適宜取り入れ、マンネリ化を防ぐ工夫をしましょう。

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NGネタを知っておく

マンネリ化を防ぐ工夫は大切ですが、そのために何でもテーマに挙げて良いわけではありません。例えば、抽象的過ぎる内容や一部のメンバーしか理解できないような専門的な内容は避けましょう。

その他、特定の個人にフォーカスした話題を取り上げるのは、個人情報保護の観点から不適切です。また、現場をよく知らない人事や労務などの担当者が構成メンバーになると、実情とはかけ離れた机上の空論で終わってしまう場合もあります。

安全衛生委員会が有意義なものになるよう、各事業所の課題に合ったテーマを適切に選出することが大切です。

委員会開催後は話し合った内容を周知する

安全衛生委員会を開催したあとは、その都度話し合った内容を従業員に周知しなくてはなりません。例えば、話し合った内容を全員が見やすい場所に掲示する、社内報といった誰もが手に取れる形で備え付ける、書面を交付するなどの方法があります。

各事業所でスムーズに周知できる方法を考えておくとよいでしょう。

安全衛生委員会の議事録は3年間保管する

安全衛生委員会で作成した議事録は、3年間保管しなくてはなりません。産業医が欠席した場合は、議事録の内容をきちんと産業医に伝え、意見を聞く必要があります。

安全衛生委員会はオンライン化も可能

コロナ禍の2020年8月27日に厚生労働省労働基準局長より書面で発表があり、安全衛生委員会は情報通信機器を用いての開催、すなわちオンラインでの開催も可能となりました。各事業場の状況に応じて、オンラインでの開催も検討しましょう。

ただし、オンラインで行なうためには、以下の開催要件を満たす必要があります。

安全委員会などの開催に用いる情報通信機器についての要件

ア: 安全委員会などの構成メンバーが容易に利用できること
イ :映像、音声などを常時安定的に送受信可能で、構成メンバー相互の意見交換を円滑に実施できること
ウ: 外部からの不正アクセスや取り扱う個人情報漏洩の防止措置が講じられていること

安全衛生委員会の運営についての要件(以下のア・イのいずれかを満たすこと)

ア: 対面により開催される安全委員会などと同じく、構成メンバー同士が即時円滑に意見交換を行ない、必要事項の調査審議が尽くされていること
イ :情報通信機器を使用した安全委員会などは原則アによって開催するが、以下の(ア)~(エ)に掲げる事項に配慮し、事前に安全委員会などで定められている場合は、電子メールといった即時性のない手段を用いた開催も認められる
(ア) 構成メンバーに資料を送付後、意見の検討に必要な期間を十分設けること
(イ) 構成メンバーの質問や意見が遅滞なくメンバー間で共有され、円滑な意見交換を行なえること
(ウ) 意見表明がない構成メンバーに対し、資料の確認状況や意見提出を行なう意思の有無を確認すること
(エ)構成メンバー同士の意見を調整する作業が煩雑になるときは、同作業に必要な連絡を行なう担当者を事前に決定するといった対策を講じ、調査審議に支障がでないようにすること

なお、情報通信機器を活用してオンラインで安全衛生委員会を開催しても、重要な記録は書面で保存しておきましょう。データで作成・保存する場合は、速やかに写しが提出できるシステムを使用する必要があります。

参照:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について

まとめ

安全衛生委員会は安全委員会と衛生委員会の設置義務がある事業場で、2つを統合した委員会として設置されます。

産業医は安全衛生委員会への出席の義務はありませんが、できる限り出席し、産業医の立場から意見を述べることが望ましいでしょう。出席できない場合は共有された議事録に目を通し、出席した場合と同じく、産業医としてしっかりと意見や助言を伝えることが大切です。

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