産業医選任・訪問/オンライン面談からストレスチェック、職場巡視なども対応
産業医の業務委託って何?嘱託産業医について紹介
はじめにみなさまは産業医の業務委託についてご存知でしょうか。
産業医選任時に結ぶ業務委託契約について知っておくべき産業医の役割や業務内容から、契約方法まで簡単に説明します。
業務委託とは
業務委託は、会社が特定のストレスチェックの実施、職場巡視、産業医面談など、産業保健に関わる業務を委託する契約のことを指します。
主に、仲介会社が会社と嘱託産業医の間に入り、業務をおこなうときに結ばれることが多いようです。
一方で、会社が産業医を直接雇用する直接雇用契約もあります。
直接雇用されるケースとしては、1事業場に従業員が1000名以上いる場合、もしくは会社が産業医を選任した経験があり産業保健の知識が社内にあった場合が想定されます。
嘱託産業医を知らない人のために!役割・業務内容・特徴を解説
嘱託産業医という言葉はなじみの無い方も多いでしょうが、50人以上999人以下の従業員が働く事業場に選任される産業医が、嘱託産業医です。
嘱託産業医は、普段、病院やクリニックなどの医師としての業務をしていますが、月に1回から数回のペースで事業場に訪問し、ストレスチェックや職場巡視、過重労働・高ストレス者の面談、健康指導などの産業保健に関わる業務を行っている産業医を指します。
主に、嘱託産業医の仕事は、法律で定められている以下の9つです。
(1)健康診断の実施とその結果に基づく措置
(2)長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
(3)ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
(4)作業環境の維持管理
(5)作業管理
(6)上記以外の労働者の健康管理
(7)健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
(8)衛生教育
(9)労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
(引用元:厚生労働省 産業医ができること)
したがって1事業場の従業員が1,000名未満の会社は触れる機会が多いので、覚えておきましょう。
産業医はどうやって探す?紹介会社や医療機関への相談も
次に産業医を探す方法について説明していきます。
会社として、まずは「法令順守」までの対応でよいのか、「安全配慮/メンタル対策」や「健康増進/健康経営推進」などのプラスアルファの対応が必要なのかによって相談先は異なりますが、一般的に挙げられる4つの相談先を今回はご紹介します。
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(1)事業場近くの医師会に相談する
(2)知り合い経由の紹介
(3)医療や健診実施機関に相談する
(4)地域産業保健センターを活用
それでは産業医の紹介先について1つずつ解説していきます。
(1)事業場近くの医師会に相談する
従業員の健康管理に力を入れたい、産業医とコミュニケーションを円滑にして産業保健の業務を早く実行したい要望がある会社には有効な探し方でしょう。
医師会は、47都道府県にあり各地域に相談窓口があります。医師会の会員は全国で173,895人(令和3年12月1日時点)在籍しているため、会社近くの産業医を探している場合には、最適な探し方と言えます。
しかし、報酬が高いことや契約の手間がかかることが産業医選任時の障害になることが多いです。
医師会経由で産業医と契約を結ぶ場合は、基本的に会社と産業医間で結ぶ直接契約になります。そのため、産業医との契約が満了、もしくは産業医との調整がつかず、法定義務を満たせない等の問題が発生しリプレイスするとなった場合は、1から産業医を探し契約を行う必要があります。
報酬に関しては、ストレスチェック報酬なしで100人以下の会社で基本月額料金50,000円以上になるため、低コストで法定義務を満たしたい会社はほかの紹介先をおすすめいたします。
(2)知り合い経由の紹介
低コストで法定義務を満たしたい会社には経営者や知人経由から紹介してもらうこともいいでしょう。
しかし、知り合い特有の義理や縁があるために、2ヶ月1回の職場巡視や従業員の面接指導が産業医の都合で調整がつかず対応してもらえない等、トラブルが発生した時に意見しにくい問題が発生する可能性があります。
そのようなリスクがあることも念頭に置く必要があります。
(3)医療や健診実施機関に相談する
産業医選任と健康診断をあわせて契約ができるため、業務や契約の手間、報酬面において重要視される会社にはおすすめです。
医療機関や健診実施機関に紹介して貰う場合は、健康診断の実施だけでなく、健康診断実施後の医師による就労判定から産業医面談の実施までお任せできるかもしれません。
しかし、健康診断の実施時期は、病院や健診機関も繁忙期になるため、職場巡視や衛生委員会の同席など産業保健業務が後ろ倒しになり、結果、法定義務が満たせていない状況が発生する場合もあります。
産業医選任する際は会社が負うリスクも考慮して、ご検討するとよいでしょう。
(4)地域産業保健センターを活用
地域産業保健センターは(独)労働者健康安全機構が運営している機関です。地域産業保健センターは、小規模事業場(従業員50人未満)の事業者や従業員に無料の産業保健サービスを提供しています。そのため、産業医の選任義務がある場合はサービスを受けることができません。
委託した場合の相場はどれくらい?嘱託産業医の給料は安いのか
嘱託産業医は、月1回程度の勤務で3〜10万円が相場とされています。年に換算しますと36万〜120万となり、専属産業医の報酬の1/10以下となることが多いようです。
紹介会社は、複数存在します。産業医の報酬の相場を知りたい場合は、「見積もり」という手段を使い、相談先に依頼することで、実際の相場を確認することができるでしょう。
参考までに日本橋医師会が公表している嘱託産業医の従業員数に応じた基準額は以下のとおりです。
- 50名未満 75,000円〜
- 50〜199名 100,000円〜
- 200〜399名 150,000円〜
- 400〜599名 200,000円〜
- 600〜999名 250,000円〜
(引用元:公益社団法人日本橋医師会,産業医について”産業医報酬基準額の調査結果”)
専属産業医について知らない人のために解説
週に3日〜4日程度の常勤で勤務する産業医を専属産業医と言います。専属産業は1事業場に対し、従業員が1000人以上在籍している、もしくは有害物質を取り扱う業種で従業員が500人以上の場合は、選任義務が発生します。専属産業医に支払う報酬は、事業場の規模や職務内容、経験年数でも異なりますが、週4日勤務で年間1,200〜1,500万円程度が相場になります。
業務委託契約書の作成方法について解説!
業務委託契約書とは自社の業務を外注する際に作成する契約書となります。
産業保健業務をお願いする会社が、業務を引き受ける産業医に対し、一定の業務を外注すること、また、会社が産業医に対して、業務の対価として報酬を支払う約束を交わすことが、業務委託契約書になります。
業務委託契約書の作成手順
1.)契約書を作成する。
産業医の要望、産業医にお願いする業務内容や報酬などのすり合わせを行い、業務委託契約書に記述する。
2.)産業医の確認を得る。
会社が作成した契約書の内容を産業医に確認してもらいます。
3.)製本・印紙・署名捺印をする
完成した産業医と契約する業務委託契約書を製本して、収入印紙を貼り付けます。
契約を交わす前に、事前に下記内容は決めておくとよいでしょう
- 産業医にお願いする業務内容
- 産業医に支払う報酬や訪問頻度、交通費・通信費等諸経費の取扱いについて
- 個人情報の取り扱いについて
- 産業保健業務を従事してもらう産業医と結ぶ契約期間
「産業医と結ぶ契約書」について、さらに詳しく知りたい方におすすめの記事
産業医の契約書の記載内容と作成のポイント、雛形を紹介!
業務委託するなら紹介会社がおすすめ!
失敗しない産業医選びにおすすめなのが紹介会社です。
最近では、紹介会社を利用した嘱託産業医を探す会社が増えています。
以前は、事業場近くの地域にある医師会や医療機関で探すことが多かったですが、産業医ニーズの高まりとともに会社に合った産業医を選任することが困難になっています。
産業医紹介会社を利用することでメリット
産業医紹介会社を利用するメリットは下記内容が考えられます。
1つでも魅力だと感じれば、産業医紹介会社に相談してもよいでしょう。
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1.)産業医を全国規模で登録している医師より選任することが可能になる
2.)紹介会社によっては、産業保健に関わる必要書類の作成を代行してもらえる
3.)会社が産業医と直接連絡することが少ないため、担当者の業務負担が少ない
4.)産業医を1から探し契約を結ぶ手間がない
紹介会社を選ぶポイントとしては、
- 登録している医師が多いか
- 条件や希望をしっかりヒアリングしてくれるか
- 産業保健業務を代行してくれるか
に着目してみてください。
紹介会社によっては、紹介や選任をするだけでなく、選任後の産業保健活動をサポートするサービスを行っているところもあります。中小企業の担当者のように、通常業務と人事労務の業務を兼務していて産業保健業務に時間をかけたくないと考えているなら、アフターサービスも比較して、よりマッチする紹介会社を選ぶことをおすすめいたします。
また、複数の拠点をお持ちの場合は、それぞれの事業場での産業医選任を一手に引き受けてくれるのかも、合わせて確認しておくことで、より心強いサポートが受けられることでしょう。
他にも、健康経営やハラスメント対策支援などのサービスも受けたい、50人未満の事業場が複数あり会社全体で健康経営を考えている会社として健康経営を考えている、ハラスメント相談窓口を設置したいなど産業保健以外の要望があれば、一度紹介会社に問い合わせてみるのもいいでしょう。
職場と従業員を健康にする産業医の選任。会社の要望にこたえてくれる産業医を選任するための方法は多数ありますので、自社に合った方法で産業医を選任しましょう。

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