【2023年4月より】船員向け産業医制度とは義務なのか?働き方改革としてやるべきこと8選

産業医 船員

執筆者

看護師・保健師としては、2008年に四年制大学の看護学部を卒業後、都内大学病院に就職しました。集中治療室へ配属され、脳神経系や消化器系の疾患で手術を受ける患者様を中心に、乳児から高齢者まで、幅広い年代の方々を看護させていただきました。
結婚を機に地方へ転居することになり、大学病院を退職。四年制大学の非常勤助手として再就職しました。大学では、基礎看護学・成人看護学領域の講義や実習をサポートさせていただきました。

第二子出産を機に介護老人保健施設へ転職しました。介護施設ではショートステイを利用される方々を中心に、入所者様の看護を担当していました。

夫の転勤に帯同するため退職しましたが、医療ライターという働き方があることを知り、まずは動画や書籍などでライティングスキルを学ぶところから始めました。
クラウドソーシングなどでライティング業務を請け負うようになりましたが、自身のスキルに限界を感じて、医療ライティング講座を受講。
ライティングを基礎から学び直し、これまでに医療・健康・福祉・介護・子育てなど、幅広い分野で記事の執筆をさせていただきました。

現在はインタビュー記事を書かせていただく機会もあり、医師や看護師などの医療従事者だけではなく、教育や福祉関係職の方々とお話しさせていただくこともあります。
看護師として現場で働いていたら、出会うことがなかった方のお話を聞くことができるため、自身の知見が広がっていく面白さを実感しています。

プライベートでは二児の母として、日々子育てに奮闘中です。出産を機に家庭でできる健康管理法に興味を持ち、メディカルアロマセラピーやリフレクソロジーによるセルフケアを勉強しています。

趣味はドライブ・ヨガ。転勤先では子どもたちとドライブしながら、新しい公園をめぐるのが楽しみの一つになっています。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

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なぜ今、船員の働き方改革が必要なのか?

労働人口が減少する日本では、多くの業種で人材確保や働き方の見直しが課題となっており、船員も例外ではありません。

船員の働き方改革が必要な理由としては、おもに下記の3点が挙げられます。

船員の労働環境は特殊だから

船員は、陸上の労働者と比較して、以下のような観点で非常に特殊な環境で働いているといえます。

就労時間

内航船員の場合、乗船中は「4時間勤務、8時間非番」をくり返し、「3ヵ月乗船、1ヵ月休暇」というスケジュールでの勤務体系が原則です。乗船期間が長くなれば、そのあとの休暇期間も長くなります。

また、船員の仕事は当直制が多く、特に24時間運航の船舶では残業が多くなったり、夜間の見張りを行なったりする必要があります。

労働環境

内航船員にとって、「職場」と「生活の場」は同一です。したがって、仕事とプライベートの境界があいまいで、精神的な休息が十分にとれないことも珍しくありません。また、船上というひとつの「小社会」においては、人間関係も複雑になりがちです。

さらに、船舶はさまざまな危険と隣り合わせの環境で、一般社会との人的・物的つながりも遮断されています。

こういった環境がもたらす船員への肉体的・精神的負担を減らすため、機関区域無人化(M0)船として運行している船舶もありますが、船舶機関規則で定められた基準に適合しなければならず、すべての船舶に導入されている仕組みではありません。

船員の労働環境改善や生産性向上のため、国土交通省では2025年までに、自動運行船の実用化を目指しています。

船員が抱える健康リスクは大きいから

特殊な環境で働く船員は、陸上で働く労働者に比べて、健康リスクが高い傾向にあります。

船上という限られた空間での仕事は運動不足になりやすく、肥満やメタボリックシンドロームを発症する人が多いのです。

また、特殊な労働環境や閉鎖空間での勤務などにより、船員における高ストレス者の割合は高く、特に内航船員はメンタルヘルス不調に陥る人が多い状況です。

このほか、「持病があっても定期的な通院が難しい」「一人が感染症にかかると周囲に広まりやすい」といったことも、船員の健康リスクを高める要因となっています。

業界全体の人材不足が深刻だから

船員の有効求人者数は2001年からの20年で4分の1にまで減少しており、深刻な人手不足に陥っています。

原因として、陸上の有効求人倍率が上昇し船員の確保が難しくなったことや、船員の労働環境が若年者の志向に合わなくなっていることが挙げられます。

特に内航船員で高齢化が進んでおり、働き方改革の推進によって船員職の魅力を向上させ、人材確保を急ぐ必要があるでしょう。

【船員向け】産業医選任の義務化について

労働基準法が適用されない船員の働き方は、陸上の労働者とは大きく異なります。

特殊な労働環境にある船員の健康確保のため、2022年4月に「船員法施行規則等の一部を改正する省令」が公布され、2023年4月より施行されることになっています。そのなかで、一定以上の規模の船舶所有者に産業医選任が義務付けられました。

法改正により、産業医の選任が義務化された

船員労働安全衛生規則の改正により、常時50人以上の船員を使用する船舶所有者には、産業医の選任が義務付けられました。

常時使用する船員が50人未満の船舶所有者については、産業医選任は努力義務となっており、「医師等に船員の健康管理等を行わせるよう努めることとする」とされています。

海運業界における産業医選任義務の詳細

今回の法改正における、産業医選任に関するおもな内容は下記のとおりです。

常時50人以上の船員を使用する船舶所有者に対し、船員の健康管理等を行う産業医の選任を義務付ける。

産業医の業務を、陸上制度と同様に、船員の健康管理等の医学的サポートとする。

船舶所有者は、産業医に対し、年1回以上の船内巡視や、月1回以上の衛生担当者等による巡視の報告等により、船内の作業環境・衛生状態を把握させ、船員の健康障害を防止するために必要な措置を講じさせなければならない。

その他の船舶所有者についても、医師等に船員の健康管理等を行わせるよう努めることとする。

出典:国土交通省「船員法施行規則等の改正」

船員向け産業医になる要件

船舶所有者が選任する産業医の要件は、労働安全衛生法に基づく陸上の産業医と同一です。

産業医は、産業医科大学等で厚生労働大臣の指定する課程を修めて卒業した者や日本医師会等が実施する研修を修了した医師、労働衛生コンサルタント試験に合格した医師などから選任しなければなりません。

船員向け産業医の役割・職務

船員向け産業医の役割や職務についても、労働安全衛生法に定められている陸上の産業医とおおむね同様です。

陸上労働者と同じように、産業医は船員に対して健康管理の医学的サポートと、適切な措置を行なう必要があります。

具体的な職務としては、「健康証明書に係る健康検査の結果に基づく船員の健康を保持するための措置」や、「長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックの実施およびこれらの結果等に基づく船員の健康管理を保持するための措置」といったことが挙げられます。

必要であれば、船員の健康管理について、船舶所有者や総括安全衛生担当者等に勧告できることや、定期的に船内の巡視を行なうことなども、陸上における産業医の職務と共通する点です。

船員法施行規則等の改正要約ガイドブック_産業保健お役立ち資料
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船員の働き方改革|労働環境改善のために企業がやるべきこと8選

船員法の改正などによって、国は船員の働き方改革を進めています。

船員を雇用している企業においても、船員の労働環境改善のために、法改正にあわせた取り組みが求められます。

労務管理責任者を選任する

船員法の一部改正により、2022年4月から船舶所有者に対して、労務管理責任者の選任が義務付けられました。

労務管理責任者とは、労務管理記録簿の作成と備え置き、船員の労働時間と健康状態の把握、船員からの職業生活に関する相談への対応を行なう者のことです。

併せて、船員の労働時間や健康状態などを考慮し、必要な措置を講じるよう船舶所有者に意見を述べる役割も担っています。

労務管理者責任者を選任することで、船員の労働時間の適正管理や心身の健康確保が、スムーズに進められるでしょう。

労働時間の記録方法を改善する

パソコンやタイムカードの使用など、労働時間の記録様式を電子的な方法に変更して、船員の労働時間を正確に把握しましょう。

船員の労働時間を紙媒体で記録していると、「適切に記載されていない」などの理由から、正確な労働時間の把握が難しいことがあります。紙媒体を使用している場合は、できるだけ早く記録方法の改善を図りましょう。

労働時間の範囲を明確に定める

船員と陸上労働者の労働時間に大きな差が生じないよう、労働時間の範囲を明確に定めておきましょう。

船舶の運行状況に応じて変則的な当直制をとっていることや、職住一致の労働環境であることなどから、船員の労働時間の範囲はわかりにくいのが現状です。

船員法上の労働時間規制の対象となる船員が乗り組む船舶については、2022年3月に国土交通省から発出された「船員の労務管理の適正化に関するガイドライン」を参照するとよいでしょう。

長時間労働者の健康状態を確認する

長時間労働者の健康状態を把握するため、船内外から船員の健康を守るための仕組みを整えることが大切です。

多くの事業場では、船内記録簿をもとに陸上事務所で船員の労働時間を把握しています。しかし、長時間労働者や健康状態が悪化した者については、陸上から確認するのは困難です。

船内での自主的な取り組みに任せるのではなく、ストレスチェック制度の導入や過重労働対策など、陸上からも船員の健康管理に取り組みましょう。

健康診断を実施する

船員の健康状態を把握して適切な健康管理を行なうためには、健康診断の実施が有効です。

船員法には、「船舶所有者は国土交通大臣の指定する医師(指定医)が船内労働に適することを証明した健康証明書を持たない者を船舶に乗り組ませてはならない」という規定があります。

また、船員は所定の健康検査を受けて、国土交通大臣が指定する医師による健康検査合格標準表に合格した旨の判定を受けなければ、船員として就労できません。

健康診断の実施は船員の健康意識の向上にもつながるため、必ず実施しましょう。

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メンタルヘルス対策を行なう

労働環境の特殊性をふまえ、船員のメンタルヘルス対策を行なうことも大切です。

船員たちは閉鎖的な空間で職住をともにしており、人間関係のトラブルやハラスメントが起きても逃げ場がありません。

また、台風や高波といった危険と隣り合わせであることや、家族や友人と長期間にわたって離れることなどから、心身に強いストレスを感じながら職務にあたっています。

船員向けのメンタルヘルス講習やハラスメント対策の実施、若い船員に対するメンター制度の導入などにより、船員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎましょう。

オンライン診療を活用する

オンライン診療を活用すれば、海上にいながら医師の診察や面接指導などを実施できます。

現状では、船内で急病人や怪我人が発生した際に使用するのは無線通信であり、オンライン診療を陸上と同等に受けられる体制が整っているとはいえません。

しかし、船内の通信環境は近年向上しており、今後は船員向けの遠隔健康管理システムの実用化が検討されています。

船員用の相談窓口を設置する

船員向けのメンタルヘルス対策として、電話やメールなどを使用した相談窓口を設置するのもよいでしょう。

相談窓口の活用によって「気持ちが楽になった」「心が軽くなった」といった経験をしている陸上労働者も多く、船員の心の健康を支える有効な手段となることが期待されます。

相談窓口の設置は、船員と長期間離れて暮らす、家族のメンタルケアにも活用できるでしょう。

まとめ

船員の働き方改革を推進し、労働時間の適正化や心身の健康管理などを行なえば、貴重な若手の人材確保につながります。その一環として、船舶所有者には産業医の選任をはじめとする、さまざまな取り組みが求められています。

特に、常時50人以上の船員を使用している船舶所有者は産業医の選任が義務付けられているため、法改正にスムーズに対応できるよう準備しておくことをおすすめします。

リモート産業保健では、産業医を初めて選任する企業様向けに、ガイドブックを配布しています。下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

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