健康診断における産業医の役割とは?検診前後の対応や流れを紹介

健康診断における産業医の役割とは

執筆者
instagram youtube

心理カウンセラー兼ライターとして活動しています。

弘前学院大学を卒業後、精神科病院の依存症デイケアにて勤務する中で精神看護の学びを深めたいと思いました。精神科の訪問看護ステーションに転職し、働きながら札幌医科大学大学院に入学しました。

大学院を卒業後、心理学を独学で学びながら地域の保健師として、地域の方々が身体的にも精神的にも良い方向に行けることを目指して支援してきました。

看護師・保健師・精神看護学修士の資格を持っています。
ライターとしてはまだまだ駆け出しですが、エビデンスのある情報を参考に記事を作成することを心がけて、読者の方々から信頼を得られるライターになりたいです。

健康オタクなので、調べたヘルスケアの情報を実践することが趣味です。興味を持ったことについて深く調べることが好きなので、持ち前の探求心をライターとしての仕事に活かしていければと思っています。

【略歴】
2011年3月 弘前学院大学看護学部卒業 看護師・保健師の資格を取得
2020年3月 札幌医科大学大学院精神看護学専攻卒業
2012年4月 精神科病院 依存症デイケア勤務
2016年2月 精神科訪問看護ステーション勤務
2020年10月 地域包括支援センター勤務
現在 保健師ライター兼心理カウンセラーとして活動中

監修者

元々臨床医として生活習慣病管理や精神科診療に従事する中で、労働者の疾病予防・管理と職業ストレス・職場環境の密接な関係認識するに至り、病院からだけでなく、企業側から医師としてできることはないかと思い、産業医活動を開始しました。

また、会社運営の経験を通じ、企業の持続的成長と健康経営は不可分であること、それを実行するためには産業保健職の積極的なコミットメントが必要であると考えるに至りました。

「頼れる気さくな産業医」を目指し、日々活動中しています。
趣味は筋トレ、ボードゲーム、企業分析です。

【保有資格】
・日本医師会認定産業医
・総合内科専門医
・日本糖尿病学会専門医
・日本緩和医療学会認定医

そもそも健康診断の実施が義務か知りたい
産業医が健康診断結果の確認をいつのタイミングで、どのように行うのか知りたい
産業医の意見聴取や健康診断報告書の作成について知りたい

本記事では上記のような疑問を解決します。また、健康診断実施後の大まかな流れや、産業医の保健指導の内容、面談・指導を拒否する方への効果的な対応などについても解説しているため、事業者や人事・労務担当者の方は必ず押さえておきたい内容です。ぜひ最後までご参照ください。

【健診管理や受診率にお悩みなら】健診DXサポート
健診DXサポートは健康診断結果や過重労働者などのデータ入力・管理による工数削減から受診勧奨の受診率向上に役立つ管理システムです。

健康診断での産業医の役割は、診断結果に基づき、労働者の健康上の課題を改善することです。本来、健康診断は実施が目的ではなく、健康診断の結果から労働者の健康状態を把握し、労働者がより健康的に働けるように支援することが目的です。

そのため、冒頭で述べたように産業医は企業・事業場と連携し、労働者の健康状態の把握と改善に取り組むことが健康診断での大きな役割と言えます。

健康診断における産業医の仕事の多くは健康診断後ですが、産業医の選任義務のある事業場(基本的には労働者50名以上の事業場)では、健康診断実施前に健康診断の計画や実施上の注意について企業や事業場に助言する必要があります。

健康診断における産業医の主要な5つの役割:健康経営の要

企業の経営において、労働者が健康に働けているのかということはとても重要です。

企業が健康診断を行うおもな目的は労働者の病気を早期発見することで、産業医は計画立案の段階から携わります。健康診断の実施後には診断結果の確認と分析をしたり、必要な労働者に対して就業判定や就業上の措置の提案をするなど、企業と産業医は連携しながら労働環境の改善に取り組みます。

また、健康診断の結果を受け、労働衛生の3管理を推進して企業の健康経営の土台を固めていくことも、産業医の重要な役割です。

【あわせて読みたい関連記事】健康診断 義務企業の健康診断は義務?罰則や対象者、検査項目、費用などを詳しく解説
    POINT

  • 【1】健康診断計画の策定と助言 労働者の年齢や作業環境を考慮し、適切な健診項目や種類を提案します。

  • 【2】健康診断結果の確認と分析 異常所見の有無や経年変化を確認し、企業が対応すべきレベルかを判断します。

  • 【3】就業判定と事後措置の提案 「通常勤務」「就業制限」「要休業」の判定を行い、具体的な措置を提案します。

  • 【4】特定健診・特定保健指導との連携 メタボリックシンドローム対策として、特定保健指導の受診勧奨や連携を図ります。

  • 【5】労働衛生の3管理の推進 「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3つの視点から、職場環境の改善を推進します。

産業医のお仕事は健康診断前から始まる!重要なのは結果がでてから!

健康診断自体はそれぞれ病院やクリニックなどで受診しますが、健康診断結果が企業に届いた後は産業医の本格的な出番です。ここでは、健康診断実施から実施後まで、大まかな流れを紹介します。


STEP1

健康診断の実施

健康診断の計画や実施上の注意点の助言を行います。労働者への受診勧奨も重要です。


STEP2

健康診断結果の確認

産業医が結果を確認し、異常所見の有無や健康状態の傾向を把握します。


STEP3

産業医からの意見聴取

異常所見があった労働者について、就業上の措置が必要かどうか産業医に意見を求めます。


STEP4

就業上の措置の判定

産業医の意見を踏まえ、企業として「通常勤務」「就業制限」「要休業」などの措置を決定・実施します。


STEP5

健康診断結果に基づく保健指導

必要に応じて産業医や保健師による保健指導を行い、生活習慣の改善などをサポートします。

健康診断前の産業医の役割:3つの重要ポイント

健康診断前の産業医には、3つの重要な役割があります。
1つ目は、定期的な健康診断の企画・立案に関する助言です。健康診断の種類や項目、実施時期などが適切なものになるよう、専門的な立場から助言を行います。

2つ目は、雇用形態や労働態様などに着目した、定期的な健康診断以外の健康診断の実施です。特定の作業環境に置かれる労働者は、労働により健康が害されていないか定期的に確認する必要があります。

3つ目は、健康診断機関を利用する場合に、適切な機関の選定を行うことです。産業医は、選定した機関と連携して業務を行います。

保健指導の対象となる従業員の分類

企業が従業員の健康管理を進めるうえで欠かせない保健指導は、おもに下記3つのケースが対象です。
厚生労働省の資料「産業医ができること」を参考に解説します。

  • 将来的に健康リスクがある従業員:数値の悪化傾向や生活習慣に問題がある場合、早期の指導でリスクを低減します。
  • 異常所見が見られる従業員:改善に向けた指導を優先的に行い、生活習慣の見直しや改善策を助言します。
  • 受診勧奨が必要な従業員:「要受診」判定でも受診しない従業員に対し、治療放置のリスクを伝え、受診を促します。

産業医が行う保健指導内容は?

事業者は一般健康診断(定期健康診断や雇入時の健康診断など)の結果、特に健康の保持に努める必要があると認めた労動者に対して、医師(産業医)または保健師による「保健指導」を行うように努めなければなりません。(労働安全衛生法第66条の7第1項)

産業医による保健指導では、健康診断結果をもとに、生活習慣の改善や適切な医療の受診を促すアドバイスを提供します。

主な保健指導の内容
  1. 栄養指導血糖値や血圧などのデータに基づき、糖質制限や減塩など、個々の状態に合わせた食事指導を行います。
  2. 運動指導運動器疾患や血圧の状態を考慮し、無理なく続けられる運動方法や運動量を提案します。通勤時の工夫などもアドバイスします。
  3. 生活習慣の指導飲酒・喫煙・睡眠などの生活リズムを見直し、健康的な生活を送るための具体的な改善策を指導します。

産業医による保健指導のメリット

産業医による保健指導は、個人の健康保持・増進や生活習慣病の改善を目的とした専門的指導であるため、結果的に企業全体へ良い影響をもたらします。

    POINT

  • 【労働者の健康改善】 生活習慣の改善により、病気による休業リスクを低減し、パフォーマンス向上につなげます。

  • 【ストレスの軽減】 職場環境や人間関係の悩みに対しても、専門的な視点から適切なメンタルヘルスケアを行います。

  • 【病気発症等の予防】 早期発見・早期対応により、重症化や人材不足を防ぎ、企業全体の安定につなげます。

産業医の指導・面談を拒否する人に対してはどうする?

産業医の指導や面談を拒否する労働者への対応は、企業にとって重要な課題です。拒否の理由はさまざまですが、安全配慮義務を負う企業にとって、放置できない問題でしょう。

とはいえ、拒否する労働者に対して面談を強制できないため、労働者の気持ちに配慮しつつ、適切な対応を行うことが大切です。

### 理由・背景のヒアリング
まずは、拒否する理由や背景を丁寧にヒアリングしましょう。「忙しい」「面倒」といった理由だけでなく、プライバシーへの懸念や不安がある場合もあります。プライバシーに配慮した環境でじっくり話を聞き、信頼関係を築くことが大切です。

### 保健指導のメリットの伝達
労働者が前向きになれるよう、保健指導のメリット(健康維持、個別のアドバイス、働きやすさの向上など)をわかりやすく伝えましょう。

### 産業医を労働者に認知してもらう
「どんな人かわからない」という不安を取り除くため、社内報などで産業医を紹介したり、職場巡視やセミナーで顔を合わせる機会を作ったりして、親しみやすさと信頼感を醸成しましょう。

健康診断後に決める就業区分

「産業医への意見聴取の内容」で述べた就業区分とは、健康診断実施後の就業上における措置の区分をいいます。

就業区分は、**通常勤務・就業制限・要休業**の3区分で判定します。

就業区分 内容
通常勤務 通常の勤務で良いもの。「要経過観察」「要再検査」なども含むが、業務に支障がない場合。
就業制限 勤務に制限を加える必要があるもの(労働時間の短縮、出張の制限、就業場所の変更、深夜業務の免除など)。
要休業 勤務を休む必要のあるもの(療養のため、休暇や休職により一定期間勤務させない)。

ここでほとんどの人が通常勤務に区分されます。就業制限や要休業に当てはまる場合は、労働者の健康診断結果や現在の就業状況、労働者本人の状況などの情報を踏まえたうえで制限をかけていかなければなりません。

産業医の意見聴取の方法!必要に応じて労働者への聴取も必要

健康診断後の産業医の意見聴取の内容は、健康診断個人票の「医師の意見」欄に記入します。これは、健康診断実施日から3ヶ月以内に行うことが定められています。

「医師の意見」欄がない場合は追記する必要があります。厚生労働省の様式を参考に整備しましょう。

また、措置の決定時には、**労働者本人から意見を聴くことも必要**です。勝手に措置を決めるのではなく、労働者の了解が得られるよう、十分な話し合いを行いましょう。必要に応じて産業医の同席も検討してください。

【あわせて読みたい関連記事】

産業医による意見書産業医の意見書とは何?義務や効力の有無、診断書との違いを徹底解説!

健康診断の報告が押印なしの電子申請でも可能に!

労働者数が50人以上の事業者は、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出する義務があります。

令和2年の法改正により、産業医の押印・署名が不要になり、記名のみでよくなりました。これにより、電子申請の利便性が向上し、担当者の負担軽減につながっています。

電子申請の手順:3ステップで簡単申請

電子申請(e-Gov)の手順は以下の通りです。


STEP1

e-Govアカウント登録およびアプリケーションのインストール


STEP2

e-Govにログインし、申請データの作成


STEP3

必要事項を入力して提出する

健診DXサポート
【産業保健関連サービス】

よくある質問

健康診断における産業医の役割について、よくある質問をQ&A形式で説明します。

健康診断における産業医の役割とは?
産業医には、健康診断の前から計画にかかわり、企業に助言をする役割があります。健康診断実施後は、健康診断の結果を分析して労働者が就業可能かどうか就業判定をしたり、労働者と面談したりします。
産業医は診断をしてくれますか?
産業医の職務は、医学的な立場から労働者の健康保持増進や職場環境の改善などについて企業に助言し、 より働きやすい職場を作り上げていくことです。そのため、診断や処方などの医療行為は基本的には行いません。
健康診断結果を産業医に提出する期限は?
健康診断結果で異常所見が見られた労働者については、健康診断を行った日から3ヵ月以内に産業医から意見を聞く必要があるとされています(労働安全衛生法第 66 条)。産業医と優先順位を相談して、面談の日程を決めましょう。

まとめ

健康診断は労働者の健康を守り、より元気に働けるように支援ができる大切な機会です。会社の労働者が健康で元気に働くことは、仕事における生産性もあがり、会社に利益をもたらします。

また、健康診断における産業医の役割や流れを知っておくことで連携がとりやすくなったり、労働者の健康管理を支援しやすくなったりするため、健康診断をすることでの利益をさらに高めることにつながります。

健康診断の実施とその後の措置はとても大変ですので、効率的・効果的にできるようにすすめていきましょう。