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健康診断は企業の義務!実施しない場合の罰則とは?
健康診断は、雇用する労働者の健康管理のために企業が行なう大切な義務の一つです。健康診断を実施しなかった場合、罰則はあるのでしょうか?また、従業員が健康診断を拒否した場合、どのような対応をとればよいのかについても解説します。
健康診断を実施しないとどうなる?罰則はある?
事業者が健康診断を実施することは、労働安全衛生法で定められた義務です。実施しない場合には法律違反となり、50万円以下の罰金に処されます。
企業の規模を問わず、対象となる労働者を雇用した場合には必ず健康診断を実施しましょう。
従業員が健康診断を拒否した場合の対応は?
労働安全衛生法第66条第5項で定められているとおり、労働者は原則として健康診断を拒否することはできません。拒否した労働者に対する罰則はありませんが、事業者側が50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。したがって事業者側は、就業規則に健康診断を拒否した場合の懲戒規程を盛り込んでおくとよいでしょう。
【健康診断の基礎知識】一般健康診断・特殊健康診断の違い
健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があります。まずは、それぞれの健康診断の概要と違いについて解説します。
一般健康診断とは?
一般健康診断とは、職種に関係なくすべての企業が実施し、常時使用するすべての労働者が対象となる健康診断です。一般健康診断には、以下の5つの種類があります。
- 雇入時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
特殊健康診断とは?
特殊健康診断とは、有害物質の取扱いなど、リスクが高い業務に常時従事している労働者に対して行なわなければならない健康診断のことです。作業内容・作業環境と診断結果とを照らし合わせることで、健康障害を未然に防ぐ目的があります。
診断結果によっては、当該労働者の実情を考慮し、配置転換や労働時間の短縮などの措置を講じたり、作業環境測定を実施したりする必要があります。また、診断結果に関する記録を作成し、一定期間保存することも求められます。
一般健康診断は「個人の診断」という意味合いが強いですが、特殊健康診断は「特定の業務に従事する労働者と、その作業環境の診断」という意味合いが強い健康診断といえるでしょう。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省
一般健康診断の検査項目
健康診断には検査すべき項目が定められており、健康診断の種類によって検査項目にも違いがあります。本章では、各種一般健康診断の検査項目について解説します。
雇入時の健康診断の検査項目
労働安全衛生規則第43条において、常時使用する労働者を新規で雇用する際には、雇入時の健康診断の実施が義務付けられています。
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
四 胸部エックス線検査
五 血圧の測定
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
八 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
九 血糖検査
十 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査
雇入時の健康診断は、新規雇用者が働き始めるタイミングで実施します。ただし、新規雇用者が3ヵ月以内に健康診断を受けている場合には、書面で診断結果を証明することで、雇入時の健康診断を省略することもできます。
定期健康診断の検査項目
1年以内に1回の実施が義務付けられているのが「定期健康診断」です。労働安全衛生規則第44条では、以下のとおり定期健康診断の項目が定められています。
(定期健康診断)
第四十四条 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
四 胸部エックス線検査及び喀痰検査
五 血圧の測定
六 貧血検査
七 肝機能検査
八 血中脂質検査
九 血糖検査
十 尿検査
十一 心電図検査2 第一項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。
3 第一項の健康診断は、前条、第四十五条の二又は法第六十六条第二項前段の健康診断を受けた者(前条ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から一年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。
4 第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、同項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。
なお、労働者の年齢や既往歴により、医師から必要ではないと認められた場合には、省略できる項目があります。省略可能な項目は、厚生労働省の「定期健康診断における健康診断の項目の省略基準」で示されています。
特定業務従事者の健康診断の検査項目
深夜の勤務や危険な業務に携わる「特定業務従事者」に該当する労働者は、一般的な健康診断ではなく、特定業務従事者の健康診断を受けなければなりません。労働安全衛生規則第45条第1項では、特定業務従事者の健康診断について、以下のとおり定められています。
第四十五条 事業者は、第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。
2. 前項の健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において第四十四条第一項第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目について健康診断を受けた者については、前項の規定にかかわらず、医師が必要でないと認めるときは、当該項目の全部又は一部を省略して行うことができる。
3. 第四十四条第二項及び第三項の規定は、第一項の健康診断について準用する。この場合において、同条第三項中「一年間」とあるのは、「六月間」と読み替えるものとする。
4. 第一項の健康診断(定期のものに限る。)の項目のうち第四十四条第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、前回の健康診断において当該項目について健康診断を受けた者又は四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、第一項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。
出典:労働安全衛生規則第45条第1項 | e-Gov法令検索
健康診断の項目は一般の定期健康診断と同じですが、実施するタイミングは労働安全衛生規則により、配置換えのタイミングおよび6ヵ月に1回と定められています。
健康診断は事業者の義務!覚えておきたい8つのポイント
事業者が労働者に対して医師による健康診断を実施することは、労働安全衛生法第66条において義務付けられています。そして、労働者は事業者が実施する健康診断を受ける必要があります。本章では、健康診断実施にあたって、押さえておきたい8つのポイントを紹介します。
健康診断の対象者は常時使用する労働者
雇入時の健康診断および定期健康診断の対象者は、常時使用する労働者(1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上)です。正社員に限らず、一定の条件を満たせばパート、アルバイト、契約社員も該当します。
上記の条件を満たさない場合でも、週の労働時間が正社員の2分の1以上の労働者に対しては、健康診断を実施することが望ましいとされています。ただし、派遣労働者の健康診断は原則、派遣元が実施します。
役員については、健康診断の対象者に必ず該当するとは限りません。業務に従事する役員であれば健康診断の対象となりますが、「代表取締役」や「社長」など業務に従事しない事業主は健康診断の対象外です。
ただし、事業主が健康診断の対象外だからといって健康管理を怠ると、経営に悪影響をもたらすリスクが高まります。そのため、自主的な健康管理は行なうようにしましょう。
また、労働者の配偶者や家族も、健康診断の対象者には該当しません。配偶者や家族と労働契約を結んでいるわけではないからです。
なお、小規模な家族経営(株式会社など法人を設立しておらず、個人事業主と雇用した従業員というかたちで運営された事業者)の場合、個人事業主自身には健康診断の義務はありませんが、常勤の従業員(家族)に対しては健康診断を実施しなくてはなりません。
健康診断後の通知義務
健康診断の結果は、異常所見の有無にかかわらず、労働者へ通知しなければなりません。健康診断後の通知義務については、労働安全衛生法第66条の6で定められています。
(健康診断の結果の通知)
第六十六条の六 事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行なう健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。
健康診断結果には、5~40年の保管義務がある
事業者には、健康診断結果の記録を保管する義務があります。保管期間は5~40年と、健康診断の種類によって異なります。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう|厚生労働省
検査結果の保管には労働者本人の承諾が必要になるため、就業規則に健康診断結果の保管に関する内容も記載し、周知させておくとよいでしょう。結果の保管は書類として残すだけではなく、電子データとして保存することも可能です。
50人以上の事業場には健康診断結果の報告義務がある
常時使用する労働者が50人以上いる事業場は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があり、報告を怠った場合は罰則の対象となります。
なお、常時使用する労働者数が50人未満の事業場に報告義務はありませんが、健康診断の実施義務はあるため、十分に注意しましょう。
医師からの意見聴取と事後措置の実施
健康診断の結果、異常所見ありと判断された労働者がいた場合、事業者は労働者の健康を保持するためにどうすべきか、必要な措置について医師から意見を聴取します。これは、労働安全衛生法第66条の4で規定されている内容です。
医師からの意見聴取による判定は、「通常勤務」「就業制限」「要休業」の3つに分けられます。
区分 | 内容 |
---|---|
通常勤務 | 通常の勤務でよいもの |
就業制限 | 勤務に制限を加える必要のあるもの |
要休業 | 勤務を休む必要のあるもの |
医師から意見を聴取し、事業者が行なう対策のことを「事後措置」といいます。労働者の実情を考慮して行なう事後措置として、労働安全衛生法第66条の5では以下のものが挙げられています。
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数の減少
事業場には、医師からの意見聴取をもとに適切な措置を行なうことが求められます。事後措置についてより詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
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健康診断の事後措置の流れと企業の義務を解説
再検査・二次検診の促進
健康診断で再検査の指示が出た場合、事業者は該当する労働者に対して、再検査・二次検診を受けるよう勧めることが努力義務として定められています。しかし、当該労働者が再検査・二次検診を受けなかったからといって、罰則があるわけではありません。
ただし、当該労働者が再検査・二次検診を受けず、企業側も必要な対応を行なわなかった場合は、安全配慮義務違反となる可能性があります。安全配慮義務とは、労働者が働く際に、企業が安全と健康を確保したり配慮を行なったりする義務のことです。
企業が労働者の健康管理や職場の環境づくりを行なうことは、休職者や離職者を減らすことにつながります。労働者が健康を損ない、勤務の継続が困難な状態にならないよう、再検査の指示が出た際は受診を促しましょう。
健康診断の費用は基本的に事業者が負担
健康診断にかかる費用は、労働者1人当たり1万円~1万5,000円程度が相場です。とはいえ、健康診断用の特殊車両を利用したり、各自で医療施設を訪れたりと、どのように健康診断を行なうかによって金額は異なります。
健康診断の費用は原則、事業者が負担します。関連経費を福利厚生費として処理するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 費用の全額を、企業が直接医療機関に支払うこと
- 対象者の全員が、健康診断を受診できる体制であること
- 常識的な範囲内の費用であり、健康管理を目的として行なわれていること
ただし、健康診断時に任意で追加できるオプション検査を労働者が希望する場合、それにかかる費用は労働者の負担となります。
健康診断とストレスチェックは、同時に実施可能
労働者の健康診断とストレスチェックを同時に実施することも可能です。同時に実施および報告を行なうことで、事務負担の軽減につながるだけでなく、労働者の心と体の健康を効率的に把握・管理できます。
ただし、健康診断の問診票とストレスチェックの調査票は明確に区別しなければならないため、その点には注意が必要です。
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労働者が健康診断を拒否するおもな理由
常時50人以上の労働者を使用する事業場の場合、企業は労働者に対して健康診断を行なう義務があります。しかし、労働者のなかには健康診断を受けたくないと拒否する方がいるかもしれません。
そこで、労働者が健康診断を拒否するおもな理由について、3つのケースについて紹介します。
健康診断は「任意」であると勘違いしている
健康診断の受診が義務であることを知らず、「強制ではないだろう」と思っている労働者は少なくありません。そのような場合には、法的義務である旨を伝えることで、スムーズに受けてもらえるようになるかもしれません。
その他、労働者の健康管理は法律で定められている企業の義務であること、健康診断の費用は基本的に事業者が負担することも説明するとよいでしょう。
健康診断のメリットがわからない
「病気が見つかったら損しかない」と思い込んでいる労働者もいるかもしれません。そうした労働者には、健康診断のメリットを説明しましょう。
具体的には、健康診断を受けることで病気を早期発見できる、健康について考えるきっかけになるなどが挙げられます。健康診断を受けるメリットが明確になれば、前向きに健康診断を受けてくれるかもしれません。
忙しくて健康診断を受ける余裕がない
健康診断の時期と業務の繁忙期が重なっていると、時間や気持ちに余裕がなく、健康診断を受けられない場合があります。
忙しい労働者もスムーズに健康診断を受けられるよう、職場の事情に合わせて日程を調整する、期間を決めて複数の日程のなかから受ける日を選べるようにする、労働時間内に受けられるようにするなどの配慮を行ないましょう。
まとめ
労働安全衛生法により、常時使用する労働者が50人以上の事業場には、健康診断を実施する義務があります。健康診断を実施しない場合には法律違反とみなされ、50万円以下の罰金が科されます。労働者に対する罰則はありませんが、原則として健康診断の受診は拒否できません。
健康診断の対象者は、常時業務に従事する労働者です。正社員に限らず、一定の条件を満たせばパート、アルバイト、契約社員も該当します。また、健康診断にかかる費用は基本的に事業者負担です。
労働者の健康管理や職場の環境づくりは、休職者や離職者を減らすことにつながります。健康診断やストレスチェックの実施を検討している方は、ぜひリモート産業保健のサービス利用をご検討ください。リモート産業保健は、業界最安値の月額3万円からで、健康診断はもちろん、産業医選任、衛生委員会の立ち上げ・運営支援などを通じて、企業様の産業保健活動を一括サポートいたします。
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