産業医派遣とは?報酬相場や業務内容、依頼方法について解説

産業医派遣とは

執筆者

ママナース×ライターとして活動をしています。
現在、看護師として総合病院に勤務し、急性期病棟で患者さんの看護にあたっています。急性期病棟は、患者さんの治療の場で、手術、抗癌剤治療、点滴治療などを受けに来られる患者さんと日々関わります。その中で私が大切にしていることは、患者さんの立場に立って考え、看護を提供することです。私たち看護師にとって患者さんは、病棟に何十人といらっしゃる患者さんのうちの1人ですが、その患者さんにはその人の人生があり、家族がいます。日々の業務の多忙さから、そんな当たり前のことすら抜けてしまいそうになることがあるので、日ごろから大切にしていることです。

看護師として働くなかで、知り得た知識や経験を活かして、看護師以外のなにかをしてみたいな、と思い始めたのがライティングのお仕事です。「エビデンスに基づいた信憑性のある情報を読み手にわかりやすく伝える」を意識し、記事の作成をさせていただいています。ライターとしての活動は1年ほどですが、文章を書くこと自体が少しずつ楽しいと思えるようになってきたので、これからも継続し頑張っていきます

趣味は、家族や友人と話をすること、美味しいものを食べることです。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

「派遣の産業医の業務内容は?」
「産業医の派遣が禁止になるケースはある?」

産業医の派遣を検討している企業担当者のなかには、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。

企業にとって欠かせない存在である産業医は、派遣での選任も可能です。本記事では、産業医派遣の概要や業務内容、費用の相場について解説します。産業医の選任義務の基準などについても詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

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産業医派遣とは?選任義務についても解説!

「産業医派遣」とは、以下の2つのケースで呼ばれることが多くあります。
・紹介会社からの紹介で産業医が選任されること
・健康診断等で契約をしている医療機関の産業医が面談や訪問などの産業医業務を行なうこと

医師を「派遣」することはあまり一般的ではなく、法律で原則禁止(労働者派遣法施行令第2条)とされているため、イメージしづらいかもしれません。

産業医派遣の意味合いを考える際は、「業務委託」で契約をしているととらえるとよいでしょう。なお、企業と産業医個人の契約は、産業医派遣には該当しません。

常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、産業医の選任が必要です。「事業場」とは、企業全体ではなく、支社や営業所、店舗や工場など、ある程度独立して業務が行なわれている組織単位のことを指します。

産業医の派遣を検討する際には、まず事業場において産業医の選任義務が発生しているかを確認する必要があります。産業医の選任義務は、労働安全衛生法第13条に基づき、以下のとおり定められています。

・労働者数50人以上3000人以下の規模の事業場:産業医1名以上選任
・労働者数3001人以上の規模の事業場:産業医2名以上選任

※常時1,000人以上の労働者を使用する事業場と、深夜業を含む有害物質を取り扱う業務(労働安全衛生規則第13条第1項第3号に記載)に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。

出典:産業医について~その役割を知ってもらうために~|厚生労働省

つまり、事業場の常時使用する労働者数が50人以上になると産業医の選任義務が発生し、労働者数や業務に応じて、必要な産業医の人数や種類(専属か嘱託か)が決まる、ということです。

なお、常時使用する労働者数が49人以下の事業場には、産業医の選任義務はありません。ただし、小規模事業場でも産業医の選任は努力義務とされているため、積極的に検討することが望ましいでしょう。

「常時使用する労働者」に派遣社員は含まれる?選任義務の基準を解説

結論から述べると、「常時使用する労働者」には、派遣社員も含まれます。雇用形態や労働時間に関わらず、該当の事業場で常態的に働く労働者全員が対象となるため、正社員はもちろん、派遣社員、パートタイマー、アルバイト、期間契約のスタッフも漏れなくカウントしましょう。

派遣社員の健康管理については原則、派遣元が責任を負いますが、派遣社員が実際に勤務するのは派遣先であることから、派遣先に責任が生じることもあるため注意が必要です。

派遣元と派遣先、それぞれの責任区分に応じて労働安全衛生法上の措置を滞りなく講ずるためにも、両社の適切な連絡調整が重要といえます。

派遣社員の労働災害や過重労働、不当解雇などが問題になるケースもあるため、国はガイドラインを作成し、派遣元と派遣先が連携して派遣社員の健康と安全を守るように、呼び掛けています。

派遣の産業医の業務内容を紹介

派遣の産業医であっても、その職務は一般的な産業医と変わりありません。健康診断やストレスチェックの実施やその後の措置、職場巡視、衛生委員会の出席、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、仕事と治療の両立支援など、労働者の健康を守り、就業継続をサポートする重要な役割を担います。

産業医を配置する重要性

労働者の健康管理を専門とする産業医が事業場にいれば、労働者の身体的・精神的不調にいち早く気付き、迅速な対応をとることが可能です。

また、企業と産業医が連携して職場環境を改善することで、労働者のパフォーマンスが上がり、体調不良による休職や退職を防ぐことができます。その結果、事業場の生産性が上がり、企業の成長・繁栄につながります。

産業医は、労働者一人ひとりのサポートを行なうのはもちろん、企業の永続的な発展に貢献する重要な役割を担う、必要不可欠な存在といえるでしょう。

産業医派遣の報酬相場

産業医派遣の費用相場は、産業医の種類や経験、勤務日数によって異なります。

専属産業医と嘱託産業医の違い

産業医には、専属産業医と嘱託産業医の2種類があります。事業場の常時使用する労働者数や業種によって、選任すべき産業医の種類が決まります。

専属産業医を選任するケース
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場(勤務の目安:週3日以上、1日3時間以上)
※有害業務等の労働安全衛生規則第13条第1項第3号に記載されている業務に該当する場合は、500人以上の労働者数で専属産業医が必要

嘱託産業医を選任するケース
常時50~999人の労働者を使用する事業場(勤務の目安:月に1回程度)

つまり、常時使用する労働者数が50人以上になると、産業医の選任義務が発生し、労働者数が1,000人以上(有害業務等は500人以上)になると、専属産業医の選任義務が発生します。

専属産業医の選任が必要であるにも関わらず、誤って嘱託産業医を選任してしまうと、法令違反とみなされて罰則が科せられるおそれもあるため、十分に注意しましょう。

専属産業医の報酬相場

専属産業医の報酬目安は、週に1日の勤務で年300~400万円、週に3~4日の勤務で年1,200万円~1,500万円程度です。

ただし、産業医としての経験や実績などによっても報酬は異なるため、上記はあくまで目安として押さえておきましょう。

経験豊かな専属産業医を選任すれば、企業の産業保健活動を活性化させることができますが、報酬は高額になる傾向にあります。専属産業医の派遣を検討する際には、企業として費用対効果をじっくり検討しましょう。

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嘱託産業医の報酬相場

嘱託産業医の報酬相場は、月に1回の勤務で7~15万円程度ですが、事業場の労働者数や地域、産業医の経験値、業務内容などによっても異なります。

事業場の労働者数に応じた大まかな費用の相場は、以下のとおりです。嘱託産業医の派遣を検討している方は、地域の医師会のホームページを確認するか、問い合わせてみるとよいでしょう。

1事業場あたりの従業員数 嘱託産業医の報酬相場
49人以下 7万5,000円~
50~199人 10万円~
200~399人 15万円~
400~599人 20万円~
600~999人 25万円~

嘱託産業医の派遣を検討する際には、医療機関と打ち合わせをし、業務内容や勤務日数などの条件を明確にしたうえで、金額を決める必要があるでしょう。

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産業医の派遣は違法?派遣の際の注意点をチェック

「産業医の派遣は違法」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、厳密には、派遣が禁止されているのは「産業医」ではなく「医師」です。医師の派遣禁止については、労働者派遣法およびその施行令などに明記されています。

ただし、以下の場合においては、例外的に医師の派遣が認められています。

(1)紹介予定派遣
(2)病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われる業務)
(3)産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
(4)就業の場所がへき地・離島の病院、社会福祉施設等および地域医療の確保のための都道府県

※医療対策協議会が必要と認めた病院等における医師、看護師、准看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師の業務

出典:病院・診療所などにおける医療関連業務 | 一般社団法人日本人材派遣協会

医師の派遣は、医療と福祉の関係上やむを得なかったり、へき地や離島で医師をはじめとする医療従事者が足りず、住民の命にかかわる問題に発展したりするなどの事情がなければ、原則としては認められません。

医療行為を行なう職種の派遣は、法律で禁止されていることを覚えておきましょう。

産業医は法律上派遣が可能

産業医は医師ではあるものの、その業務内容は、手術や点滴、投薬などの医療行為ではなく、事業場の労働者の健康管理です。産業医の職務に医療行為は含まれていないため、産業医の派遣は法律上、問題にはなりません。

ただし、派遣された産業医は、事業場で予防接種や投薬などの医療行為をすることはできない、という点には注意が必要です。

なお、医療機関でも常時使用する労働者数が50人以上になった際には、産業医が必要になります。しかし、法人代表者や病院の院長など、事業の統括管理を行なう者が産業医を兼務するのは、労働安全衛生規則で禁止されています。

産業医はどのように派遣してもらうのか?

産業医を選任する際に、自社にあった産業医をどのように派遣してもらうか迷う企業担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。

産業医を派遣してもらうためには、人材紹介会社や健康診断を実施している機関、近隣の医療機関、医師会に依頼するなどの手段があります。また、産業保健サービスの運営会社のサービスを利用することで、産業医の派遣だけではなく、産業保健関連の業務を一貫して対応してもらうことが可能です。

産業医を派遣をしているのはどこか?

産業医を派遣している先は、おもに以下の5つになります。

  1. 人材紹介会社
    人材会社によっては産業医を派遣しているケースがあります。
  2. 健康診断を実施している機関
    健診機関に所属する産業医を派遣しているケースがあります。
  3. 近隣の医療機関
    嘱託産業医を派遣しているケースがあります。
  4. 地域の医師会
    地域の医師会に所属する産業医を派遣しているケースがあります。
  5. 産業保健サービス運営会社
    産業医の派遣および産業保健関連サービスを一貫して行なっています。

産業医の派遣を断られた場合はどうする?

産業医の派遣を断られた場合、派遣以外の方法で産業医を選任しなければなりません。

医師会や健診機関から紹介してもらうこともできますが、常時使用する労働者数が50人未満の小規模事業場であれば、地域産業保健センター(地さんぽ)で、以下のような無料の産業保健関連サービスを受けられます。

  • 長時間労働者の面接指導
  • 健康相談窓口の対応
  • 医師の個別訪問による産業保健指導
  • 産業保健に関する情報提供
  • 上記以外の個別の相談対応

地域産業保健センターでは、ストレスチェック制度を実施するための研修や、導入に向けた個別訪問支援などのサポートも行なっています。さらに、休職中の労働者が職場復帰する際の各種サポートや、健康診断で異常所見がある労働者への指導・助言などに関するアドバイスを受けることもできます。

産業保健活動に関してお困りごとのある小規模事業場は、ぜひ地域産業保健センターのサービス利用を検討してください。

地域産業保健センターのメリット・デメリット

地域産業保健センターでは、産業保健に関するさまざまな支援を無料で受けられますが、利用できるのは常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場に限られており、利用回数にも制限があります。

地域産業保健センターを活用する際には、以下のメリット・デメリットを把握しておきましょう。

<メリット>

  • サービスは原則すべて無料
  • 産業医の選任義務がない小規模事業場でも、産業保健サービスを受けられる
  • 各都道府県の一部のセンターでは、休日や夜間にも相談窓口を開設している

<デメリット>

  • 産業医の選任義務がある事業場は利用不可
  • 利用回数に制限がある(1事業場当たり2回まで、労働者1人当たり2回まで)
  • 複数人の医師が業務を行なうため、担当の産業医が変わる可能性がある
  • サービスの利用は事前の申し込みが必要

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まとめ

常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、産業医の選任が必要です。労働者の健康障害や労働災害を未然に防ぎ、労働者の安全と健康を守るには、企業と産業医の連携が欠かせません。

産業医は派遣での選任も可能で、医師会や健診機関から紹介を受けたり、地域産業保健センターの産業保健サービスを活用したりする方法があります。

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