産業医の役割・働き方とは?働き方改革で産業医の機能はどう変わった?

産業医 働き方改革

  • 働き方改革で産業医の機能はどう変わった?
  • 産業医の役割や産業保健活動の内容をおさえておきたい
  • 企業が行なうべき取り組みを知りたい など

産業保健活動の強化にまつわる悩みを抱えていませんか?常時50人以上の労働者を使用する企業は産業医を選任し、労働者の健康管理と労働環境の改善に取り組む義務があります。

そこで本記事では、産業医の役割や働き方のほか、働き方改革にともない企業が行なうべき取り組みなどについて解説します。

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産業医の役割、働き方とは?

産業医とは、労働者の健康管理を行なう医師のことです。産業医は、労働者が健康的かつ快適な労働環境で働けるよう、医師の立場から指導やアドバイスを行なう役割を担います。

常時50人以上の労働者を使用する事業場は産業医の選任義務があり、産業医は厚生労働省が定める条件を満たした者でなければなりません。病院などで働く一般的な医師と、事業場で働く産業医の仕事内容は異なります。

産業医の選任義務、仕事内容、報酬などの情報は、以下の関連記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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働き方改革の推進のため、労働安全衛生法が一部改正された

働き方改革は、個々が多様な働き方を選べるようにするため、また、少子高齢化・生産年齢人口の減少などの課題解決を目指すために進められている取り組みです。

日本の雇用の7割を担う中小企業や小規模事業者が働き方改革に取り組み、労働者にとって魅力的な職場を作ることができれば、生産性の向上や人手不足の解消につながるはずです。

2019年4月1日、働き方改革関連法に基づいて労働安全衛生法が一部改正されました。この改正によって、「産業医・産業保健機能」と「長期間労働者に対する面接指導等」が強化されています。

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働き方改革における、産業保健活動の目的とは

働き方改革における産業保健活動の目的は、労働者の健康管理と労働環境の改善です。事業を拡大して企業経営を維持・向上させるには、労働者が継続的に質の高い業務を行ない、生産性を上げることが重要です。

労働者の健康状態が悪ければ、業務に支障が出ることは避けられません。そのため企業は、労働者の健康管理を十分に行ない、健康を害する危険のある労働環境があれば改善する必要があります。

企業が適切な産業保健活動を行なっていくために重要なカギとなるのが、「産業医」の存在です。産業医は医学と労働安全衛生の知識を備え、労働者の健康と安全を守るための役割を担います。

産業保健活動の目的を達成するためにも、次で述べる「産業医・産業保健機能」の強化について把握しておきましょう。

働き方改革関連法による「産業医・産業保健機能」の強化について

選任した産業医を適切に活用できていない企業は少なくありません。

「多様で柔軟な働き方を自分自身で選択し、より良い未来を実現する」という働き方改革の目標を達成するには、産業医と企業が連携し、積極的に産業保健活動に取り組むことが不可欠です。

働き方改革関連法による「産業医・産業保健機能」の強化について、要点となるのは以下8項目です。

産業医・産業保健機能の強化(1)産業医の独立性・中立性

産業医は独立性・中立性を高めるとともに、産業医学の専門的立場から労働者の健康管理に必要な知識・能力の維持向上に努め、誠実に職務を行なう必要があります。

産業医が辞任した際には、事業者は遅延なく、おおむね1ヵ月以内に、その旨と理由を安全衛生委員会に報告しなければなりません。これは、産業医の立場の安定性を担保し、その職務の遂行の独立性・中立性を高める観点からも、非常に重要なことです。

ただし、健康上の問題をはじめとする機微な内容による辞任・解任である場合には、産業医の意向を確認し、「一身上の都合」や「契約期間満了」と報告しても問題はありません。

産業医・産業保健機能の強化(2)産業医の権限

事業者が産業医に付与すべき権限は、以下のとおりです。

  • 事業者または総括安全衛生管理者に意見を述べること
  • 労働者の健康管理などに必要な情報を労働者から収集すること
  • 健康確保について緊急性がある場合に、労働者に対して必要な措置をとるべきと指示を出すこと

2つ目の情報収集を行なう方法としては、「作業場などを巡視して対面で労働者から話を聞く」「事業者や労働者から労働時間や業務に関する情報を提供してもらう」などがあります。ただし、情報収集をする際には労働者へ不利益が生じることのないよう、十分に注意しましょう。

3つ目の「健康確保について緊急性がある場合」とは、「労働災害が発生する危険や熱中症等がおこる前触れが見られ、健康を確保するための緊急の措置が必要となるケース」などを指します。

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産業医・産業保健機能の強化(3)産業医への情報提供

事業者は産業医に対し、以下のような労働者の健康管理に必要な情報を提供しなくてはなりません。

  • ①健康診断、②長時間労働者に対する面接指導、③ストレスチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報
  • 時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり80時間を超えた労働者に関する情報
  • 労働者の業務に関する情報で、産業医が労働者の健康管理などを適切に行なうために必要と認めるもの

なお、事業者から産業医への情報提供は、書面で行なうのが推奨されています。具体的な情報提供方法については、事業者と産業医との間であらかじめ決めておくことが望ましいでしょう。

産業医・産業保健機能の強化(4)産業医による勧告内容の記録と保存

労働者の健康を確保するために必要が生じた際には、産業医は事業者に対して、労働者の健康管理に関する勧告を行なうことができます。

産業医から勧告があった場合には、事業者は当該勧告を尊重するとともに、勧告の内容や措置の内容(措置を講じない場合は、その旨や理由)について記録し、3年間保存しなくてはなりません。

また、産業医から勧告を受けたときは、勧告の内容や勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨や理由)を、遅延なく衛生委員会などに報告する必要があります。

産業医・産業保健機能の強化(5)産業医と衛生委員会の関係

産業医は衛生委員会などに対し、労働者の健康確保のため必要な調査審議を求めることができます。その際、産業医は発議の趣旨などを説明するために、該当の委員会に出席します。

また、事業者は安全委員会や衛生委員会などで出た意見や措置の内容について、開催されるごとに記録を行ない、3年間保存しなければなりません。

産業医・産業保健機能の強化(6)健康相談の体制整備

事業者は、労働者が産業医の健康相談を安心して受けられるよう、必要な体制を整備しなくてはなりません。そのためには、産業医の業務内容や健康相談の日時・場所の周知徹底、プライバシーへの配慮などが求められます。

情報を周知させる方法としては、各事業場の見やすい場所への提示、書面での通知、内部のネットワークを用いた労働者への共有などがあげられます。

産業医・産業保健機能の強化(7)健康情報の取り扱い

労働者の健康情報は、適切に管理されなくてはならず、労働者本人の同意または正当な理由がない場合、目的の範囲外での使用はできません。

「正当な理由」とは、メンタルヘルス不調により自殺の兆候が見られたり、生命や身体または財産の保護のために必要となったりする場合で、本人の同意を得るのが困難であるときなどが該当します。

産業医・産業保健機能の強化(8)産業医の業務内容の周知

事業者は、以下の内容について労働者に周知しなければなりません。

  • 産業医の業務の具体的な内容
  • 産業医に関する健康相談の申し出の方法
  • 産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いの方法

上記を見やすい場所に掲示する、書面で交付する、磁気テープ・磁気ディスクなどに記録して常時確認できるようにするといった工夫をして、周知に努めましょう。

働き方改革関連法による「長時間労働者への面接指導等」の強化について

近年、ニュースでもよく取り上げられるようになった「過労死」の原因の一つとして、「長時間労働による脳・心疾患の発症」があげられます。法改正では、長時間労働者への面接指導などについても以下のように強化されています。

事業者は労働者の「労働時間の状況」を把握しなければならない

事業者は、タイムカードやパソコンなどの記録で、労働者の労働時間の状況を正しく把握しなくてはなりません。また、把握した労働時間の記録は、3年間の保存が必要とされています。

なお、派遣労働者については、派遣先の事業者が労働時間の状況を把握し、派遣元の事業者が産業医の面接指導などの措置を行なわなければなりません。

時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり80時間を超えた場合

労働者の時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり80時間を超えた場合は、労働者本人に対して、労働時間に関する情報をすみやかに通知しなければなりません。通知は、書面や電子メールなどで行なうとよいでしょう。

また、労働者側から労働時間の開示を求められた場合は、80時間を超えていない場合でも応じるのが望ましいとされています。

面接指導が必要な労働者の条件とは?

制度強化に基づき、面接指導の対象となる労働者の要件が拡大しています。
面接指導が必要な労働者の条件は、以下のとおりです。

  • 時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり80時間を超え、疲労蓄積があり面接を申し出た者
  • 時間外・休日労働時間が1ヵ月当たり100時間超の研究開発業務従事者
  • 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えており、その時間について1ヵ月当たり100時間を超えている、高度プロフェッショナル制度対象労働者

上記に該当する労働者に対しては、遅滞なく(おおむね1ヵ月以内)に面接指導を行なう必要があるため、事業者は確認を怠らないように注意しましょう。

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働き方改革を受けて、企業がまず取り組むべきこと

産業医・産業保険機能強化を受け、まず企業が実施すべき取り組みは次の3つです。

  • 産業医の活動環境を整備する
  • 産業医に必要な情報を提供する
  • 健康相談や面談の体制を整備する

上記の各取り組みについて、詳しく解説します。

産業医の活動環境を整備する

産業医は、独立性・中立性を保ち、医学の知識に基づいた指導やアドバイスを行なう必要があります。企業側は、産業医への情報提供を円滑にするための仕組み作りに努めましょう。

また、産業医が適切かつ効果的な活動を行えるように、上層部に対して意見する権限や、緊急時に必要な措置をとる権限を与えることが重要です。特に、労災発生リスクが高まっていたり、熱中症など健康被害をもたらしたりする可能性がある場合などは、現場の迅速な措置が求められるからです。

産業医からの指摘やアドバイスは積極的に受け入れ、労働者の健康管理と労働環境の改善に役立てるのが、企業側の責務といえます。

産業医に必要な情報を提供する

働き方改革にともない面接指導の要件が拡大されたため、時間外労働や休日労働が月80時間を超える労働者の情報は、産業医に報告する必要があります。

企業側は、タイムカードやパソコンのログイン時刻などで、労働者の労働時間を把握しておきましょう。以前は曖昧にされがちであった管理職の労働時間も、例外ではありません。

ほかにも、産業医が労働者の健康管理を行なうために必要と認める情報を、企業側は提供しなければなりません。前述のとおり、情報提供は書面で行なうことが推奨されていますが、提供方法の詳細については、企業と産業医との間で事前に決めておきましょう。

健康相談や面談の体制を整備する

労働者が安心して相談や面談を受けられる体制を整えるとともに、個人情報は厳密に管理し、情報漏えいさせないことが大切です。

また、相談や面談を受けることで、労働者が不利益を被るようなことがあってはなりません。相談や面談を受ける場所についても、労働者のプライバシーを確保できるよう配慮しましょう。

加えて、労働者に産業医の業務内容を周知する必要があります。掲示板や書面、社内イントラネットなど、労働者の目に留まりやすい方法で知らせるのが効果的です。労働者から産業医へ相談や面談を申し出やすいよう、手順なども合わせて案内するとよいでしょう。

まとめ

働き方改革により労働安全衛生法が一部改正され、「産業医・産業保健機能」と「長期間労働者に対する面接指導等」が強化されました。企業は、産業医の活動環境の整備や必要な情報提供、健康相談・面談の体制の整備などに、積極的に取り組むことが望まれます。

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