産業医を選任しているものの、働き方改革で何が変わり、自社が何を整えればよいのか整理しきれず、手が止まっていませんか。
働き方改革関連法に基づく労働安全衛生法の改正により、2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されました。
ただ、結論だけでは迷いやすい点があります。面接指導の対象になる労働者の条件は、区分ごとに異なります。また、産業医が辞任等したときは、衛生委員会(職場の健康管理を話し合う委員会)等への報告に加えて、令和8年8月1日から原則として労働基準監督署長への報告も必要になっています。
この記事では、強化の内容、面接指導、辞任等の報告、企業が取り組むことをご紹介します。
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この記事でわかること
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【1】働き方改革で強化された産業医・産業保健機能の12のポイント -
【2】長時間労働者への面接指導が必要になる条件と、面接指導までの流れ -
【3】産業医の辞任等で必要になる報告の種類と期限 -
【4】産業医・産業保健機能の強化を受けて、企業が取り組むこと
働き方改革では、産業医・産業保健機能の強化と長時間労働者への面接指導等の強化が行われた
働き方改革関連法に基づく労働安全衛生法の改正により、2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」の2つが強化されました。
厚生労働省の働き方改革関連法解説は、前者の内容として産業医の活動環境の整備、健康相談の体制整備、健康情報の適正な取扱いを、後者の内容として労働時間の状況の把握や面接指導の対象となる労働者の要件などを示しています。産業医を選任するだけでなく、産業医が動きやすい環境づくりと、長時間労働者への対応の両方が、事業者(会社などの使用者側)に求められる形になっています。
働き方改革そのものの背景や全体像を知りたい方は、働き方改革の背景と全体像を解説した記事で詳しく解説しています。
まずは、改正の前提になる産業医の位置づけから見ていきましょう。
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産業医の役割と、事業場での働き方
産業医は、事業場(本社や支店、工場など、働く場所ごとのまとまり)で労働者の健康管理を担う医師です。労働安全衛生法第13条第1項は、事業者が事業場ごとに産業医を選任すると定めており、選任は会社全体ではなく事業場単位で考えます。まず産業医の職務、続いて選任が義務づけられる事業場の規模を押さえましょう。
産業医の職務は、労働者の健康管理など労働安全衛生規則に定められた事項である
産業医の職務は、労働者の健康管理など、労働安全衛生規則第14条第1項に定められた事項です。条文では、医学に関する専門的知識を必要とするものとして、九つの事項が挙げられています。主なものは次のとおりです。
このほかに、作業環境の維持管理、作業の管理、衛生教育なども含まれます。産業医が関わる場面は、健康診断から健康相談まで幅広いことが分かります。
産業医の職務の詳しい内容は、産業医の職務を詳しく解説した記事で解説しています。
常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務づけられている
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、事業者に産業医の選任が義務づけられています。人数の基準は労働安全衛生法施行令第5条に、選任義務を負う主体が事業者であることは労働安全衛生法第13条第1項にそれぞれ定められています。
人数は、会社全体ではなく事業場ごとに数えます。たとえば、本社と支店が別の場所にあるときは、それぞれの事業場の人数が基準になります。自社全体の人数だけを見ていると見落としやすいところです。
産業医の選任義務の詳しい内容は、産業医の選任義務を解説した記事をご覧ください。
働き方改革関連法による産業医・産業保健機能の強化の内容
厚生労働省の解説は、産業医・産業保健機能の強化を12のポイントに分けて示しています。大きくは、産業医の活動環境の整備と、健康相談の体制整備・健康情報の適正な取扱いに分かれ、さらに次の4つのまとまりで構成されています。
産業医と労働安全衛生法の関係は、産業医と労働安全衛生法の関係を解説した記事で詳しく解説しています。
ここからは、12のポイントをひとつずつ見ていきましょう。
産業医は、独立性・中立性をもって誠実にその職務を行わなければならない
産業医は、独立性・中立性をもって、誠実にその職務を行わなければなりません。労働安全衛生法第13条第3項は、産業医は労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実に職務を行わなければならないと定めています。
厚生労働省の働き方改革関連法解説によると、この定めは、産業医が産業医学の専門的立場から独立性・中立性をもって職務を行えるようにするためのものです。産業医の意見が医学の知識に基づくものとして位置づけられている点は、事業者として押さえておきたいところです。
産業医は、医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければならない
産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければなりません。労働安全衛生規則第14条第7項は、この定めを「努めなければならない」という文言で置いています。
この定めの主語は産業医自身です。事業者に課された義務ではなく、産業医の側が学び続けることを求める内容だと読み取れます。
産業医の独立性・中立性を高めるため、辞任時の報告が定められている
産業医の独立性・中立性を高める仕組みの1つとして、産業医が辞任したときの報告が定められています。事業者は、産業医が辞任したとき、または解任したときは、遅滞なく、その旨とその理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければなりません(労働安全衛生規則第13条第4項)。
「遅滞なく」の目安は、厚生労働省の働き方改革関連法解説の注記で、おおむね1か月以内とされています。
辞任や解任の理由が産業医自身の健康上の問題であるなど、産業医にとって機微(デリケート)な内容の場合は、産業医の意向を確認した上で、「一身上の都合により」「契約期間満了により」などと報告しても差し支えありません。理由まで報告する決まりがあるため、産業医が話しにくい理由があるときは、本人の意向を先に聞いておくと安心です。なお、令和8年8月1日からは、この報告とは別に、原則として労働基準監督署長への報告も必要になっています。
産業医に付与すべき権限
事業者は、産業医の職務として定められた事項を行える権限を、産業医に与えなければなりません。労働安全衛生規則第14条の4は、この権限に次の3つが含まれると定めています。
緊急の必要がある場合の例として、平成30年12月28日基発1228第16号は、保護具等を使わずに有害な化学物質を取り扱うことで労働災害が発生する危険のある場合や、熱中症等の徴候があり緊急の措置が必要と考えられる場合などを挙げています。
また、産業医が労働者から情報を収集するときは、収集の対象になった労働者に、人事上の評価や処遇などで事業者が不利益を生じさせないようにしなければならないとされています。産業医が情報を集めやすいことと、労働者が安心して応じられることは、あわせて考える必要があります。
産業医の権限の詳しい内容は、産業医の権限を詳しく解説した記事で解説しています。
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事業者は産業医に労働者の健康管理に必要な情報を提供しなければならない
事業者は、産業医に対し、労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません。労働安全衛生規則第14条の2は、提供すべき情報と提供の時期を、次の3種類に分けて定めています。
提供の方法については、厚生労働省の働き方改革関連法解説が、書面により行うことが望まれるとしています。具体的な方法は、事業場ごとにあらかじめ事業者と産業医で決めておくことが望まれます。
提供のタイミングが情報ごとに異なるため、誰がいつ何を産業医に渡すのかを決めていないと、迷いやすい点が実務上のハードルです。
産業医の勧告を受けた事業者は、内容と措置を記録して保存する
産業医の勧告(産業医が、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときに事業者へ行うもの)を受けた事業者は、勧告を尊重したうえで、その内容と講じた措置を記録し、3年間保存しなければなりません。勧告の尊重は労働安全衛生法第13条第5項に、記録と保存は労働安全衛生規則第14条の3に定められています。
記録する事項は次の2つです。
衛生委員会等への報告は、勧告を受けた後、遅滞なく行うものとされています。措置を講じない場合にも理由を残す必要がある点は、見落としやすいところです。
産業医の勧告を受けた事業者は、その内容を衛生委員会等に報告しなければならない
産業医から勧告を受けた事業者は、その内容などを衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければなりません。労働安全衛生法第13条第6項が報告の義務を定め、労働安全衛生規則第14条の3が、報告の時期と内容を次のように定めています。
勧告の内容が事業者の中だけで完結せず、委員会という場でも共有される形になっている点が特徴です。
産業医は衛生委員会等に調査審議を求めることができる
産業医は、衛生委員会または安全衛生委員会に対して、労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議(調べて話し合うこと)を求めることができます(労働安全衛生規則第23条第5項)。
産業医が調査審議を発議するときは、その趣旨などを産業医から他の委員に説明する必要があるため、産業医は委員会に出席する必要があるとされています(平成30年12月28日基発1228第16号)。産業医が提案する場合は出席が前提になるので、委員会の日程には産業医が参加できるよう配慮しておくと安心です。
衛生委員会での産業医の役割と関係する法令は、衛生委員会での産業医の役割と法令を解説した記事で詳しく解説しています。
安全委員会・衛生委員会等の意見や議事は記録して保存する
事業者は、安全委員会・衛生委員会等の開催のたびに、意見などを記録して3年間保存しなければなりません。労働安全衛生規則第23条第4項が定める記録の事項は、次の2つです。
委員会の記録は、開催のたびに作って残していく必要があります。
産業医による健康相談を受けやすい体制の整備が求められている
事業者には、産業医等が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を、講じるように努めることが求められています。厚生労働省の働き方改革関連法解説は、この定め(労働安全衛生法第13条の3)を「講じるように努めなければなりません」と示しており、努力義務にあたります。
体制を整えたら、労働者への周知も欠かせません。周知の方法の例は、次のとおりです。
あわせて、保健指導、面接指導、健康相談等は、プライバシーを確保できる場所で実施できるよう配慮するものとされています。努力義務とはいえ、体制を整えても労働者に知られていなければ相談につながりにくいため、周知の方法まで合わせて考えておきましょう。
労働者の健康情報の取り扱い
労働者の健康情報の取り扱いには、本人の同意がある場合か、正当な事由がある場合かが関わります。厚生労働省の働き方改革関連法解説によると、事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければなりません。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りではありません。
「正当な事由がある場合」について、平成30年12月28日基発1228第16号は、メンタルヘルス不調により自殺企図の徴候が見られる場合など、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難なときなどが含まれるとしています。具体的には、次の4つの場合です。
個別のケースが正当な事由に当たるかどうかは、状況によって判断が分かれます。迷う場合は、産業医に相談すると良いでしょう。
事業者は産業医の業務内容などを労働者に周知しなければならない
産業医を選任した事業者は、産業医の業務内容などを労働者に周知させなければなりません。厚生労働省の働き方改革関連法解説は、周知すべき事項として次の3つを示しています。
周知の方法は、次のいずれかです。
方法が複数あるため、自社の働き方に合う方法を選べます。
働き方改革関連法により、長時間労働者への面接指導等が強化された
長時間労働者への面接指導等は、働き方改革関連法による労働安全衛生法の改正で強化されました。労働時間の状況の把握、本人への通知、面接指導の対象となる労働者の条件が、その主な内容です。面接指導の進め方は、面接指導の流れを解説した記事で詳しく解説しています。
事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならない
事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。把握の方法は、労働安全衛生規則第52条の7の3で、タイムカードによる記録や、パソコン等の使用時間の記録などの客観的な方法、その他の適切な方法と定められています。
把握した労働時間の状況の記録は、作成して3年間保存するための必要な措置を講じなければなりません。
派遣労働者については、厚生労働省の働き方改革関連法解説のとおり、派遣先事業者が労働時間の状況を把握し、派遣元事業者が面接指導等を行わなければなりません。派遣労働者がいる事業場では、把握する側と面接指導を行う側が別の事業者になるため、役割の分担を事前に確かめておくと安心です。
時間外・休日労働が一定時間を超えた労働者には、本人への通知が必要である
時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えた労働者には、超えた時間の算定を行った後、速やかに(おおむね2週間以内に)本人へ通知しなければなりません。超えた時間は、休憩時間を除き、1週間当たり40時間を超えて労働させた時間で数えます。通知の内容は、その労働者に係る超えた時間に関する情報です。
通知の義務は労働安全衛生規則第52条の2第3項に定められ、「おおむね2週間以内」という期限の目安は平成30年12月28日基発1228第16号に示されています。
80時間を超えない労働者から、自分の労働時間に関する情報の開示を求められた場合は、厚生労働省の働き方改革関連法解説によると、これに応じることが望ましいと考えられています。
おおむね2週間以内という期限があるため、労働時間を集計する締め日と、通知を出す担当者を決めておきましょう。
面接指導の対象や制度の背景は、長時間労働者への面接指導について解説した記事で詳しく解説しています。
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面接指導が必要な労働者の条件は、区分によって異なる
面接指導が必要になる労働者の条件は、一般の労働者、研究開発業務従事者、高度プロフェッショナル制度の対象労働者という3つの区分によって異なります。時間数の条件と、労働者の申出が必要かどうかを、区分ごとに並べると次のとおりです。
| 区分 | 時間数の条件 | 労働者の申出の要否 |
|---|---|---|
| 一般の労働者 | 休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が、1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められること | 必要(労働者の申出により行う) |
| 研究開発業務従事者 | 休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が、1か月当たり100時間を超えること | 不要(申出なしに行う) |
| 高度プロフェッショナル制度の対象労働者 | 1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合のその超えた時間が、1か月当たり100時間を超えること | 不要(申出なしに行う) |
一般の労働者の条件は労働安全衛生規則第52条の2第1項に、研究開発業務従事者の時間数は同規則第52条の7の2第1項に、高度プロフェッショナル制度の対象労働者の時間数は同規則第52条の7の4第1項に、それぞれ定められています。申出の要否は、厚生労働省の働き方改革関連法解説にも示されています。
高度プロフェッショナル制度の対象労働者の健康管理時間については、高度プロフェッショナル制度の健康管理時間を解説した記事で解説しています。
一般の労働者の場合、面接指導は次の流れで進みます。

(図:面接指導の流れ(一般の労働者))
(編集部作成)
図の中で、労働者の申出が面接指導の出発点になっている点が、表の「労働者の申出の要否」の違いに対応しています。
この流れを条文でたどると、事業者は超えた時間の算定を行った後、速やかに、80時間を超えた労働者へ通知します。労働者の申出は、その算定の期日後、遅滞なく行うものとされ、事業者は申出があったとき、遅滞なく面接指導を行わなければなりません。面接指導が行われた後は、遅滞なく医師から意見を聴き、その意見を考えて、必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じることになります(労働安全衛生法第66条の8第5項)。「遅滞なく」は日数が決まっていない表現のため、申出を受けたら先延ばしにしない運用が求められます。
産業医の辞任等は、労働基準監督署長への報告も必要になっている
産業医が辞任、解任または退任(以下、辞任等)したときは、事業者が所轄の労働基準監督署長へ、産業医の氏名と辞任等の年月日などを遅滞なく報告しなければなりません。この定めは、令和8年8月1日から施行されました(令和8年4月28日基発0428第4号)。
報告の対象は、産業医の選任義務がある事業場です。また、産業医の選任報告(産業医を選任したときの労働基準監督署への報告)の際に辞任等も報告した場合は、辞任等の報告を別に行う必要はありません。
衛生委員会等への報告とは別の報告のため、報告先、内容、期限を並べて違いを示すと次のとおりです。
| 報告先 | 報告する内容 | 報告の期限 |
|---|---|---|
| 衛生委員会または安全衛生委員会 | 産業医が辞任したとき、または解任したときの、その旨とその理由 | 遅滞なく(おおむね1か月以内) |
| 所轄の労働基準監督署長 | 産業医が辞任、解任または退任したときの、産業医の氏名と辞任等の年月日など | 遅滞なく |
労働基準監督署長への報告の「遅滞なく」について、具体的な日数は示されていません。辞任等が決まった時点で、報告の準備を進めておくと安心です。報告先と報告の内容が異なるため、産業医が辞任または解任されたときは、衛生委員会等への報告と労働基準監督署長への報告の両方が必要です。ただし、選任報告の際に辞任等も報告した場合は、後者を別に行う必要はありません。衛生委員会等への報告は労働安全衛生規則第13条第4項に、「おおむね1か月以内」の目安は厚生労働省の働き方改革関連法解説に示されています。
企業の安全衛生に携わる担当者が知っておかなければならない労働安全衛生法について解説したガイドブックを公開!
はじめて法令義務対応に取り組む方へ向けて、法制度の解説から事業所が行わなければならないことをまとめて解説しております。
産業医・産業保健機能の強化を受けて、企業が取り組むこと
企業が取り組むことは、産業医の活動環境の整備、必要な情報の提供、相談や面談の体制の整備の3つです。これらは、産業医が活動しやすいこと、産業医に必要な情報が届くこと、労働者が相談しやすいことを実現するための取り組みです。
産業医が活動しやすい環境を整える
産業医が独立性・中立性を保って活動できるよう、事業者が整えることは大きく2つです。1つ目は、産業医に付与すべき権限を与えることです。産業医の職務を行える権限として、事業者や総括安全衛生管理者への意見、労働者からの必要な情報の収集、緊急の必要がある場合の措置の指示が含まれます。
2つ目は、産業医からの意見や勧告を受けとめて、職場の改善に生かすことです。勧告を受けたら、その内容と講じた措置を記録して3年間保存し、衛生委員会等へ遅滞なく報告します。産業医の勧告は尊重しなければならないと、労働安全衛生法第13条第5項に定められています。
産業医を選任したものの活かせていない場合は、選任した産業医を活用できない理由を解説した記事で、よくある原因を詳しく解説しています。
産業医に必要な情報を職務ごとに整理して提供する
産業医に提供する情報は、産業医の職務ごとに考えると整理しやすくなります。厚生労働省の検討会資料では、規則で定められた職務ごとに、その職務を実施するために必要と考えられる情報例が示されています。主なものは次のとおりです。
| 産業医の職務 | 必要な情報例 |
|---|---|
| 健康診断の実施とその結果に基づく措置 | 労働時間、作業環境、勤務形態(深夜業の有無・回数等)、業務内容、業務量/健康診断の結果、異常所見の場合の医師の意見、事業者が実施した就業上の措置、保健指導の実施状況 |
| 長時間労働者に対する面接指導とその結果に基づく措置 | 労働時間、作業環境、勤務形態(深夜業の有無・回数等)、業務内容、業務量/面接指導の結果、医師の意見、事業者が実施した就業上の措置の実施状況 |
| ストレスチェック、高ストレス者への面接指導とその結果に基づく措置 | 労働時間、作業環境、勤務形態(深夜業の有無・回数等)、業務内容、業務量/ストレスチェックの個人結果(面接指導を行った場合と、産業医が実施者となった場合に入手可)、集団分析の結果、面接指導による医師の意見、事業者が実施した就業上の措置の内容 |
| 作業環境の維持管理 | 労働衛生に係る死傷病の発生状況、作業場の設備、取り扱う化学物質等、化学物質データシート、リスクアセスメントの結果、作業環境測定結果、局所排気装置等の点検結果、特殊健康診断の結果など |
| 作業管理 | 労働衛生に係る死傷病の発生状況、作業場の設備、取り扱う化学物質・工具等、化学物質データシート、リスクアセスメントの結果、保護具の管理・着用状況、労働者の作業姿勢・作業方法、作業手順書、振動工具等を取り扱う際の作業時間、特殊健康診断の結果など |
| 上記以外の労働者の健康管理(化学物質等の有害性の調査、救急措置等) | 労働衛生に係る死傷病の発生状況、化学物質等の有害性の調査の結果、救急措置に関する計画など |
| 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進のための措置 | 健康教育、健康相談その他の健康の保持増進対策の計画・実施状況など |
| 衛生教育 | 衛生教育の計画・実施状況など |
| 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止 | 労働者の健康障害の原因の調査の内容、再発防止対策の計画・実施状況など |
この表は、産業医制度の在り方に関する検討会の資料2にもとづいています。情報提供の方法は、厚生労働省の働き方改革関連法解説で、事業場ごとにあらかじめ事業者と産業医の間で決めておくことが望まれるとされています。
労働者が相談や面談を受けやすい体制を整える
労働者が安心して相談や面談を受けられるよう、事業者が整えることは、個人情報の管理、相談場所のプライバシー、産業医の業務内容などの周知の3点です。
相談する側の安心は、場所や情報の扱い、周知までそろって初めて高まります。
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産業医の探し方や必要書類などの産業保健基礎知識をつけたい方はこちら
産業医・産業保健機能の強化への対応を支えるリモート産業保健
産業医・産業保健機能の強化への対応で今の体制が足りるかどうかは、産業医への情報提供や面接指導の運用に無理がないかで確かめられます。実際には、産業医への情報提供、労働者への通知、辞任等の報告などが重なり、担当者の負担が大きくなっている企業もあるのではないでしょうか。
負担が重いときの選択肢の1つが、株式会社エス・エム・エスが提供する「リモート産業保健」です。産業医と産業看護職の2名体制で、産業医面談、ストレスチェック、衛生委員会の支援に対応し、人事労務担当者の産業保健業務の負荷軽減をサポートします。基本プランは月額3万円〜です。
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産業医の選任や産業保健の体制づくりに取り組む人事労務担当者様へ。産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、ストレスチェックや衛生委員会の支援にも対応し、産業保健業務の負荷軽減と従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
働き方改革と産業医についてよくある質問
働き方改革で産業医まわりの対応を進めるとき、企業の担当者が迷いやすい3つの疑問に、結論から短くお答えします。対応すべきこと、情報提供の方法、辞任時の報告先という、実務で手が止まりやすい場面を取り上げます。
- Q,働き方改革で、産業医に関して企業が対応すべきことは何ですか?
- A
産業医・産業保健機能の強化に伴い、産業医の活動環境の整備、必要な情報の提供、相談や面談の体制の整備が必要になります。
あわせて、長時間労働者への面接指導等の強化にも対応します。時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えた労働者への通知や、区分ごとに異なる面接指導の条件に沿った対応が必要です。
- Q,産業医への情報提供は、書面で行う必要がありますか?
- A
産業医への情報提供は、書面により行うことが望ましいとされています。具体的な方法は、事業場ごとにあらかじめ事業者と産業医で決めておくことが望ましいとされており、誰がいつ何を渡すのかを先に決めておくと運用しやすくなります。
- Q,産業医が辞任したとき、報告はどこに行いますか?
- A
産業医が辞任したときの報告先は、原則として、衛生委員会または安全衛生委員会と、所轄の労働基準監督署長の2つです。どちらも期限は「遅滞なく」で、衛生委員会等への報告は、おおむね1か月以内とされています。労働基準監督署長への報告は、令和8年8月1日から義務づけられました。ただし、選任報告の際に辞任等も報告した場合は、別に行う必要はありません。
まとめ
働き方改革関連法に基づく労働安全衛生法の改正の要点は、次の3つです。
労働安全衛生法の基礎を学べる資料や、産業医の選任の基礎知識がまとまった資料も用意しています。


