産業医との契約はどのように進める?契約形態や手順・選び方について解説

産業医の契約方法や相場・報酬について

執筆者

産業保健師・行政保健師として定期健康診断での面談、特定保健指導、メンタル相談、ストレスチェック、復職支援・相談、産業医診察の介助、職場巡視などさまざまな経験をしました。現在は子育てをしながらライターとして活動中です。

監修者

元々臨床医として生活習慣病管理や精神科診療に従事する中で、労働者の疾病予防・管理と職業ストレス・職場環境の密接な関係認識するに至り、病院からだけでなく、企業側から医師としてできることはないかと思い、産業医活動を開始しました。

また、会社運営の経験を通じ、企業の持続的成長と健康経営は不可分であること、それを実行するためには産業保健職の積極的なコミットメントが必要であると考えるに至りました。

「頼れる気さくな産業医」を目指し、日々活動中しています。
趣味は筋トレ、ボードゲーム、企業分析です。

【保有資格】
・日本医師会認定産業医
・総合内科専門医
・日本糖尿病学会専門医
・日本緩和医療学会認定医

  • 産業医の契約方法について、基礎知識や注意点を知りたい
  • 新たに産業医を採用する、または産業医を交代する予定である
  • 産業医の契約をスムーズに行ないたいがどうしたらいいかわからない
  • 産業医との契約が不安なので、利用できる便利なサービスを知りたい

上記のようなお悩みはありませんか。
産業医との契約をどう進めればいいのか?そして、どんなことに注意すればいいのかわからないと感じる人も多いことでしょう。本記事では産業医の契約書の記載内容と作成ポイントを解説します。

常時50名以上の労働者を雇う企業には、産業医を選任する義務があると法律で定められています。産業医選任をはじめとする労働者が50名以上になった際に発生するストレスチェック実施、職場巡視、衛生委員会の立ち上げ・運営などの労働安全衛生法の法定義務を月額3万円~一括サポートを実現するサービスもご紹介しますので、ご参考にしてください。

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契約前に確認を!産業医には、「専属産業医」「嘱託産業医」の2種類がある

「専属産業医」は、常勤で働く産業医のことで、常時1,000人以上の労働者(有害業務の場合は常時500人以上)の事業場で選任しなければいけません。

一方、「嘱託産業医」は非常勤で働く産業医のことで、常時50~999人の労働者を使用する事業場で選任する必要があります。業務内容は同じですが、勤務形態の違いから対応できる業務や報酬が異なります。

産業医の3つの契約形態

実際に産業医と契約をする場合、どのような契約形態があるのかまずは知っておくことが大切です。ここでは、産業医と契約をする際の3つの契約形態について解説します。

直接雇用契約

直接雇用契約は、事業場の一般社員と同じ契約形態です。事業場と産業医が直接契約を結ぶため、産業医は事業場の社員という扱いになります。

ただし、多くの産業医は他の医療機関で常勤医師として働いているため、嘱託社員や契約社員として契約するケースがほとんどです。

業務委託契約

業務委託契約は、自社では対応しきれない業務を外部に委託する契約方法です。自社で産業医を直接雇用することが難しい事業場では、業務委託契約が選択されるケースが多いです。

報酬は契約で定めた業務内容に対して支払われるため、契約時に業務内容をしっかりと決めておくことが重要です。特に、初めて産業医と業務委託契約を結ぶ際には、契約書に明記のない業務を拒否される、といったトラブルを防ぐためにも、契約の詳細について専門業者に相談するのがおすすめです。

スポット契約

スポット契約は、1訪問ごとに報酬が支払われる形式の契約形態です。継続契約をするほどではないものの、必要なときだけ産業医に業務を依頼したい事業場におすすめの契約方法です。

スポット契約で依頼をする業務には、以下のようなものがあります。

  • 突発で発生した面談の対応
  • 在籍している産業医だけでは、産業医業務が終わらない場合の対応
  • 契約産業医の交代時などのつなぎの対応

スポット契約の報酬は、回数・時間・従業員数で決まります。さらに、スポット契約の多くは産業医事務所や産業医紹介所を介するため、それぞれで報酬は異なります。報酬額の目安は、1回32,000〜100,000円程度です。

見積もりを無料でしてくれる産業医紹介会社もあるため、気になる場合は事前に問い合わせるとよいでしょう。

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産業医との契約方法・基本的な流れ

  1. 自社の希望に合った産業医を探す
  2. 契約を締結し、産業医を選任する
  3. 所轄の労働基準監督署に必要書類を提出する

本章では、各ステップについて詳しく解説します。

【STEP1】自社の希望に合った産業医を探す

産業医と契約する際には、まず自社の社風やニーズと合う人材を見つけることが重要です。産業医の探し方にはさまざまな方法がありますが、以下のような手段を用いて産業医の紹介を受けるのが一般的です。

  • 医師紹介会社を利用する
  • 医師会に相談する
  • 近隣の医療機関へ相談する
  • 健康診断で利用している健診機関へ依頼する
  • 社内の人脈を活用する

なお、利用できるサービス内容や料金はそれぞれ異なります。各方法をよく検討したうえで、複数社から見積もりをとって比較検討しましょう。

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【STEP2】契約を締結し、産業医を選任する

正式に契約を締結するには、契約書を作成する必要があります。ここでいう契約とは、雇用契約または業務委託契約のことです。

産業医の契約期間は、1年ごとに自動更新されるケースがほとんどです。ただし、契約社員や嘱託社員として1~5年の有期雇用で契約する場合には、自動更新はされません。契約期間は双方で話し合い、契約書に明記するようにしましょう。

【STEP3】所轄の労働基準監督署に必要書類を提出する

産業医と契約を締結したら、以下の書類を管轄の労働基準監督署に提出してください。

  • 産業医選任報告書
  • 医師免許のコピー
  • 産業医であることを証明できる書類またはそのコピー

選任報告書は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。産業医であることを証明するには、医師免許証の写しをはじめ、厚生労働大臣が定めた産業医研修を修了したことなど、産業医の資格を有することを示す書類の添付が必要です。

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産業医の一般的な契約期間と契約更新時期について

産業医の契約期間は、一般的に1年単位の自動更新になります。契約期間満了日の1ヵ月前までに、企業と産業医のどちらからも解約の申し出がない限り、契約が継続します。

正社員として産業医を雇う場合は、基本的に契約満了日を定めませんが、なかには契約社員や嘱託社員として1~5年の有期雇用で契約するケースもあります。有期雇用の場合は、契約期間が最長5年と労働基準法で定められているため、注意が必要です。

また、スポット契約の場合は、企業が産業医を必要とするタイミングで、1案件ごとに業務を依頼するため、契約期間を定める必要はありません。

企業は、契約が自動更新の場合でも、契約更新前のタイミングで産業医と話し合いの機会を設けるのがよいでしょう。企業の状況や社会の変化にあわせて、産業医に求めることも変化します。そのため、産業医の職務内容や契約内容について、定期的に見直しを行なうのがおすすめです。

出典:産業医契約書の手引き│日本医師会

産業医との契約で注意すべき5つのポイント

産業医との契約では、特に注意すべきポイントが5つあります。ここでは、契約時のトラブルを避けるコツを紹介します。

自社のニーズに合致した産業医を選ぶこと

産業医と契約する際は、自社のニーズに合致した産業医を選ぶことが重要です。産業医は専門や経験によって得意な分野が異なるため、産業医に対応してもらえる業務範囲を確認しましょう。そのうえで、自社の抱える課題に対して産業医が自社のニーズに合致するか検討します。

また、産業医は、専門性だけでなく人柄も大事なポイントになります。自社のニーズに合致した経験やスキルを持っていても、コミュニケーションが円滑でないと業務に支障をきたす可能性があります。コミュニケーション能力や企業との調整力のある産業医を推奨します。また、経験値が高い産業医は、課題解決力や柔軟性の点で優れているため、産業医の経歴についてもしっかり確認しましょう。

産業医の希望条件を事前にヒアリングすること

契約内容には産業医の希望も反映されるため、産業医の希望条件を事前にヒアリングすることが大切です。

産業医を副業にしていることもあるため、本業と合わせて従事するうえで、希望条件のヒアリングは欠かせません。もちろん、事業場の希望もすり合わせながら、契約内容を決めることが重要です。

契約書作成時に必要な項目を明記すること

産業医との契約書には、以下の内容を明記するようにしましょう。

  1. 業務内容(職場巡視、面談、衛生委員会への出席など)
  2. 1ヵ月の訪問回数
  3. 報酬、諸経費(支払日、交通費の支給有無など)
  4. 個人情報、データの取り扱い方針
  5. 契約期間

特に気をつける必要があるのは、個人情報、データの取り扱いについてです。産業医が扱うデータには、健康診断の結果やストレスチェックの結果など、機密性の高い個人情報が含まれます。契約書には、個人情報保護法に則った規則や方針を明記しましょう。

産業医専任の準備はできるだけ早めに行なうこと

産業医の選任は、「産業医が必要になるタイミングから14日以内に行なわなければならない」と労働安全衛生規則第13条で定められています。そして、産業医を選任したら、所轄の労働基準監督署への選任報告書の提出が必要です。そのため、手続きは余裕を持って取り組むことが大切です。

また、産業医が交代するときも、所轄の労働基準監督署に届け出ることを忘れてはいけません。

名義貸し状態にならないように注意すること

産業医として契約をしたにもかかわらず必要な業務を行なわない、名義貸し状態の産業医も少数ですが存在します。具体的には、以下のような状態が名義貸しとされます。

  • 契約を締結したが、実際の業務はほとんど行なわない
  • 訪問しても、部屋で雑談をして帰ってしまう
  • ストレスチェックを実施しない
  • 高ストレス者への面接指導を行なわない
  • メンタル面に問題がある労働者への対応を行なわない

名義貸しは労働安全衛生法違反となるため、違反企業として社名が公表されたり、労働基準監督署の追加調査が入ったりするリスクがあります。人事や労務の担当者は、産業医の業務を正しく把握し、産業医がしっかりと役割を担っているか確認することが大切です。

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産業医を選任する際には、正しく契約を結ばなければなりません。しかし多くの事業場では、産業医を見つけるだけでも大仕事となるでしょう。産業医探しでお困りの企業担当者の方には、産業保健必須業務をすべて行なってくれる、「リモート産業保健」のサービス利用がおすすめです。

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まとめ

産業医には「専属産業医」と「嘱託産業医」の2種類があり、出勤頻度や報酬が異なります。また、契約形態にも「直接雇用契約」「業務委託契約」「スポット契約」の3種類があるため、自社のニーズに合わせて最適な契約方法を選ぶ必要があります。

「初めて産業医を選任するから、勝手がわからず不安……」「久しぶりの産業医の手配なので、流れを再確認したい」という方は、ぜひ『産業医を初めて選任する企業様向けガイドブック』を参考にしてください。

また、産業医選任に関して疑問・質問をお持ちの方は、下記お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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