産業医の派遣を検討している企業担当者のなかには、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
企業にとって欠かせない存在である産業医は、派遣での選任も可能です。本記事では、産業医派遣の概要や業務内容、費用の相場について解説します。産業医の選任義務の基準などについても詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
産業医選任やオンライン・訪問面談、職場巡視、
衛生委員会の立ち上げ・運営など産業医と産業看護職2名体制で支援
産業医派遣とは?選任義務についても解説!
産業医の選任は法定義務となります。常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、産業医を選任する必要があります。また、選任義務の発生から14日以内に、労働基準監督署に選任届を提出しなければなりません。
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
産業医を派遣してもらう方法としては、企業や団体・個人からの紹介や業務委託などがあります。
産業医派遣とは?
「産業医派遣」とは、以下の2つのケースで呼ばれることが多くあります。
- 紹介会社からの紹介で産業医が選任されること
- 健康診断等で契約をしている医療機関の産業医が面談や訪問などの産業医業務を行なうこと
産業医派遣は、業務委託として契約しているととらえると良いでしょう。なお、企業と産業医の直接契約は、産業医派遣には該当しません。
医師を派遣することは一般的ではなく、法律で原則禁止とされているため、イメージしづらいかもしれません。
産業医派遣は違法になる?
産業医派遣は違法ではなく、派遣が禁止されているのは産業医ではなく医師です。医師の派遣禁止については、労働者派遣法およびその施行令などに明記されています。
医師の派遣は、医療と福祉の関係上やむを得なかったり、へき地や離島で医師をはじめとする医療従事者が足りず、住民の命にかかわる問題に発展したりするなどの事情がなければ、原則としては認められません。
医療行為を行なう職種の派遣は、法律で禁止されていることを覚えておきましょう。
「常時使用する労働者」に派遣社員は含まれる?選任義務の基準を解説
結論から述べると、「常時使用する労働者」には、派遣社員も含まれます。雇用形態や労働時間に関わらず、該当の事業場で常態的に働く労働者全員が対象となるため、正社員はもちろん、派遣社員、パートタイマー、アルバイト、期間契約のスタッフも漏れなくカウントしましょう。
派遣社員の健康管理については原則、派遣元が責任を負いますが、派遣社員が実際に勤務するのは派遣先であることから、派遣先に責任が生じることもあるため注意が必要です。
派遣元と派遣先、それぞれの責任区分に応じて労働安全衛生法上の措置を滞りなく講ずるためにも、両社の適切な連絡調整が重要といえます。
派遣社員の労働災害や過重労働、不当解雇などが問題になるケースもあるため、国はガイドラインを作成し、派遣元と派遣先が連携して派遣社員の健康と安全を守るように、呼び掛けています。
産業医を派遣してもらう方法は5つ
産業医を派遣してもらう方法は主に5つあります。
- 医師会からの紹介
- 定期健康診断の契約をしている医療機関からの紹介
- 自社の人脈を活用
- 地域産業保健センター
- 産業医紹介サービス
それぞれメリット・デメリットがありますが、産業医紹介サービスの利用が一般的です。会社に合った産業医を紹介してもらえたり、産業医の一定の質が保証されている点がメリットです。
詳細については、以下の記事で紹介していますので、ご確認ください。
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派遣の産業医であっても、その職務は一般的な産業医と変わりありません。健康診断やストレスチェックの実施やその後の措置、職場巡視、衛生委員会の出席、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、仕事と治療の両立支援など、労働者の健康を守り、就業継続をサポートする重要な役割を担います。
産業医を配置する重要性
労働者の健康管理を専門とする産業医が事業場にいれば、労働者の身体的・精神的不調に対して迅速な対応をとることが可能です。
また、企業と産業医が連携して職場環境を改善することで、労働者のパフォーマンスが上がり、体調不良による休職や退職のリスクを下げられる可能性があります。その結果、事業場の生産性が上がり、企業の成長・繁栄につながります。
産業医は、労働者一人ひとりのサポートを行なうのはもちろん、企業の永続的な発展に貢献する重要な役割を担う、必要不可欠な存在といえるでしょう。
産業医派遣の報酬相場
産業医派遣の費用相場は、産業医の種類や経験、勤務日数によって異なります。
専属産業医と嘱託産業医の違い
産業医には、専属産業医と嘱託産業医の2種類があります。事業場の常時使用する労働者数や業種によって、選任すべき産業医の種類が決まります。
専属産業医を選任するケース
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場(勤務の目安:週3日以上、1日3時間以上)
※有害業務等の労働安全衛生規則第13条第1項第3号に記載されている業務に該当する場合は、500人以上の労働者数で専属産業医が必要
嘱託産業医を選任するケース
常時50~999人の労働者を使用する事業場(勤務の目安:月に1回程度)
つまり、常時使用する労働者数が50人以上になると、産業医の選任義務が発生し、労働者数が1,000人以上(有害業務等は500人以上)になると、専属産業医の選任義務が発生します。
専属産業医の選任が必要であるにも関わらず、誤って嘱託産業医を選任してしまうと、法令違反とみなされて罰則が科せられるおそれもあるため、十分に注意しましょう。
専属産業医の報酬相場
専属産業医の報酬目安は、週に1日の勤務で年300~400万円、週に3~4日の勤務で年1,200万円~1,500万円程度です。
ただし、産業医としての経験や実績などによっても報酬は異なるため、上記はあくまで目安として押さえておきましょう。
経験豊かな専属産業医を選任すれば、企業の産業保健活動を活性化させることができますが、報酬は高額になる傾向にあります。専属産業医の派遣を検討する際には、企業として費用対効果をじっくり検討しましょう。
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嘱託産業医の報酬相場は、月に1回の勤務で7~15万円程度ですが、事業場の労働者数や地域、産業医の経験値、業務内容などによっても異なります。
例えば、日本橋医師会では適当と考えられる産業医の基本報酬額を、下記の通り報告しています。嘱託産業医の派遣を検討している方は、地域の医師会のホームページを確認するか、問い合わせてみるとよいでしょう。
1事業場あたりの従業員数 | 嘱託産業医の報酬相場 |
---|---|
49人以下 | 7万5,000円~ |
50~199人 | 10万円~ |
200~399人 | 15万円~ |
400~599人 | 20万円~ |
600~999人 | 25万円~ |
嘱託産業医の派遣を検討する際には、医療機関と打ち合わせをし、業務内容や勤務日数などの条件を明確にしたうえで、金額を決める必要があるでしょう。
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産業医の派遣を断られた場合、派遣以外の方法で産業医を選任しなければなりません。
医師会や健診機関から紹介してもらうこともできますが、常時使用する労働者数が50人未満の小規模事業場であれば、地域産業保健センター(地さんぽ)で、以下のような無料の産業保健関連サービスを受けられます。
- 長時間労働者の面接指導
- 健康相談窓口の対応
- 医師の個別訪問による産業保健指導
- 産業保健に関する情報提供
- 上記以外の個別の相談対応
地域産業保健センターでは、ストレスチェック制度を実施するための研修や、導入に向けた個別訪問支援などのサポートも行なっています。さらに、休職中の労働者が職場復帰する際の各種サポートや、健康診断で異常所見がある労働者への指導・助言などに関するアドバイスを受けることもできます。
産業保健活動に関してお困りごとのある小規模事業場は、ぜひ地域産業保健センターのサービス利用を検討してください。
地域産業保健センターのメリット・デメリット
地域産業保健センターでは、産業保健に関するさまざまな支援を無料で受けられますが、利用できるのは常時使用する労働者が50人未満の小規模事業場に限られており、利用回数にも制限があります。
地域産業保健センターを活用する際には、以下のメリット・デメリットを把握しておきましょう。
- サービスは原則すべて無料
- 産業医の選任義務がない小規模事業場でも、産業保健サービスを受けられる
- 各都道府県の一部のセンターでは、休日や夜間にも相談窓口を開設している
- 産業医の選任義務がある事業場は利用不可
- 利用回数に制限がある(1事業場当たり2回まで、労働者1人当たり2回まで)
- 複数人の医師が業務を行なうため、担当の産業医が変わる可能性がある
- サービスの利用は事前の申し込みが必要
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常時使用する労働者数が50人以上の事業場では、産業医の選任が必要です。労働者の健康障害や労働災害を未然に防ぎ、労働者の安全と健康を守るには、企業と産業医の連携が欠かせません。
産業医は派遣での選任も可能で、医師会や健診機関から紹介を受けたり、地域産業保健センターの産業保健サービスを活用したりする方法があります。
上記の方法で自社に合う産業医を見つけられなかった場合には、リモート産業保健の利用がおすすめです。リモート産業保健では、産業医の選任・面談はもちろん、ストレスチェックを円滑に運営するための支援をフルパッケージで提供しています。
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