本記事では、上記のような疑問を持つ方へ向けて、産業医の役割や選び方について詳しく解説します。産業医の重要性を理解し、最適な産業医を見つけるためのポイントを押さえていきましょう。
本記事を読むことで、産業医の業務内容や役割を明確にし、効率的かつ効果的に産業医を選ぶための知識を得ることができますので、ぜひ最後までご参照ください。
産業医訪問・オンライン面談、ストレス予防から
休職・復職者のアフターフォローまで対応
産業医には労働者の健康管理という重要な役割がある
産業医は労働者の健康と安全を守るために、企業内で重要な役割を担っています。ここでは、産業医の主な4つの役割についてご紹介します。
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POINT
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【1】健康診断結果に基づく措置 結果をもとに就労可否を確認し、必要に応じて受診勧奨や就労環境への助言を行います。 -
【2】治療と仕事の両立支援 治療中の労働者に対し面談を行い、就業の可否や配慮の必要性を助言します。 -
【3】長時間労働者への対応 面接指導を通じて過労防止や健康リスク評価を行い、脳・心疾患などの労災リスク低減に努めます。 -
【4】職場巡視 定期的に職場を巡視し、労働環境が健康に与える影響を評価・改善します。
上記のような役割を通して、産業医は労働者の健康を守ります。それが結果的には、労働者のパフォーマンス向上・企業の生産性向上につながるのです。
従業員50人未満の中小企業でも産業医が必要になるケース
従業員50人未満の事業場には産業医の選任義務がないという原則のなかでも、例外があることをご存じでしょうか?
具体的には、健康診断で労働者の健康状態に異常所見が見つかった場合や、長時間労働や過労リスクが高い場合などで、産業医の選任(または医師の関与)が求められる可能性があります。以下で詳しく解説します。
健康診断で異常の所見がある従業員がいる場合
健康診断で異常所見がある従業員がいる場合には、労働安全衛生法第66条の4に基づき、産業医(医師)による就業上の措置に関する意見聴取が義務づけられています。従業員50人未満の事業場でも、このような状況が発生すれば医師の意見を聞く必要があります。
産業医は、従業員の健康状態から就業可否の判断をしたり、生活習慣改善の指導や職場復帰を支援したりしながら、従業員の健康維持をサポートします。
ストレスチェックを実施する場合
従業員が50人未満の事業場では、ストレスチェックを実施する義務はありません。しかしながら、従業員が少ない場合には、急な休職や退職が業務に大きく影響することもあるため、ストレスチェックを取り入れ、従業員の心身のケアに取り組む事業場が増えています。
ストレスチェックを行う際には、産業医が関わることで安心できる場面が多いでしょう。信頼できる産業医に、計画や実施、高ストレス者への面談指導、職場全体の集団分析などを任せることで、早期に従業員の心身の健康状態を把握できスムーズに対応できます。
従業員の復職の判断を行う場合
従業員が病気やメンタル不調から復職する際は、産業医の関わりがとても重要です。なぜなら、復職の判断は、単に病状が回復したかどうかだけでなく、労働者の健康状態と職場環境、業務内容のバランスを総合的に見て行う必要があるからです。
特にメンタル不調の場合には、十分に回復していないまま復職すると、再発や悪化のリスクがあるため、安全配慮の観点からも産業医の意見が欠かせません。
産業医選任の法的要件と企業規模別アプローチ
労働安全衛生法第13条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、産業医の選任が法律で義務付けられています。
そして、必要であるにもかかわらず産業医を選任しなかった場合は、先述した労働安全衛生法第13条への違反となるため、労働安全衛生法第120条により「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
常時使用する労働者が50人未満の事業場においては、産業医の選任は努力義務です。ただし、労働者が50人未満の事業場でも、長時間労働者への医師面接指導など法律に定められた健康管理を怠ると、安全配慮義務違反とみなされるリスクがあります。
そのため、労働者の数に限らず、労働者の健康維持と安全配慮の観点から、積極的に産業医を活用した方がよいでしょう。
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産業医の役割は、健康診断の事後措置や職場巡視、長時間労働者への面談、ストレスチェックの高ストレス者への面談などを通して、労働者の健康と安全を守ることです。
例えば、健康診断の事後措置であれば、健康診断の結果をもとに労働者の健康状態を評価し、必要に応じて職場環境や働き方に対する助言を行います。早期に健康問題を発見して改善策を講じることができれば、将来的に労働者が休職や退職してしまうリスクを軽減できるでしょう。
産業医のおもな探し方と、各方法のメリット・デメリット
ここからは、産業医の探し方を5つ紹介します。それぞれメリット・デメリットがあるため、自社にあった方法で進めましょう。
産業医を探す5つの効果的な方法:概要と選び方
| 産業医を探す方法 | 特徴 | 適している企業 |
|---|---|---|
| 医師会からの紹介 | 事業場のある地域の医師会に産業医を紹介してもらう方法。 基本的に無料で紹介してくれ、地域の事情に精通している。 |
・紹介料などの費用を抑えたい企業 ・地域の事情に精通した産業医を希望する企業 |
| 定期健康診断の契約医療機関からの紹介 | 普段から健康診断を依頼している健診機関に紹介してもらう方法。 事業場の状態を理解してもらいやすく連携しやすい。 |
・すでに信頼関係のある健診機関がある企業 |
| 自社の人脈を活用 | 経営者や人事部門、税理士等の人脈を通じて紹介してもらう方法。 信頼できる紹介者を通じて実績を事前に知ることができる。 |
・紹介料などのコストを抑えたい企業 ・人脈が豊富な企業 |
| 地域産業保健センターの利用 | 事業場のある地域の地域産業保健センターを利用する方法。 相談や研修が無料で、コスト削減が期待できる。 |
・事業場の労働者数が50人未満の小規模事業場 |
| 産業医紹介サービス | 産業医紹介会社を通して紹介してもらう方法。 多様な産業医からニーズに合った専門家を選択でき、交代時もスムーズ。 |
・選任が初めて、もしくは慣れていない企業 ・手続きをスムーズに行いたい企業 ・産業保健業務も一括して任せたい企業 |
医師会からの紹介:地域に根ざした産業医を見つける
地域の医師会に産業医を紹介してもらうことも選択肢の一つです。紹介は基本的に無料で行われますので、紹介料などの費用を抑えたい企業は医師会の紹介を検討してみましょう。
- 事業場のある地域の医師会を確認する医師会は、日本医師会のほかに47の都道府県医師会と約920の郡市区医師会があります。
- 医師会に問い合わせるホームページや電話で産業医紹介の可否を問い合わせます。会社の規模や業種、希望条件を準備しておきましょう。
- 紹介された産業医と面談・契約面談でマッチングを確認し、契約内容(報酬、訪問頻度など)を協議して契約します。
医師会からの紹介のメリット・デメリット
- 無料で産業医を紹介してもらえる
- 地域の事情に精通した産業医を紹介してもらえる可能性が高い
- 産業医が不足する地方でもネットワークを活用できる
- 産業医の選択肢が限られる
- 医師会は「紹介のみ」であり、交渉や契約などの手続きは自社で行う必要がある(手続きの煩雑さ)
定期健康診断の契約医療機関からの紹介:既存の関係を活用
健康診断を依頼している健診機関に、産業医を紹介してもらう方法もあります。日頃から多くの従業員が健康診断で利用しているため、会社の状態を理解してもらいやすく、連携がしやすいといったメリットがあります。
健診機関からの紹介のメリット・デメリット
- 会社の状態を理解してもらいやすい
- 日頃の付き合いがあり、信頼関係がある
- 事業場、医療機関、産業医が連携しやすい(健診後のフォローなど)
- 健診機関に産業医がいない可能性がある
- ニーズに合わなくても断りにくい(利害関係がある)
自社の人脈を活用:信頼できる産業医を見つける
経営者や人事部門、税理士、社労士事務所などの人脈を通じて、産業医を選任している企業の担当者につないでもらう方法もあります。
人脈活用のメリット・デメリット
- 紹介者を通じて人柄や実績などの事前情報を得られる
- 産業医の選任までの時間を短縮できる可能性がある
- 契約の進め方など具体的なノウハウを教えてもらえる
- 他社には良くても自社のニーズに合うとは限らない(客観性の欠如)
- 紹介であるため、合わなかった場合でも交代させにくい
地域産業保健センター:中小企業向けの無料サービス
地域産業保健センターは、労働者数が50人未満の小規模事業場における事業者や労働者を対象に、産業保健サービスを無料で提供している公的機関です。
地域産業保健センター利用のメリット・デメリット
- 相談や研修が無料であり、コスト削減が期待できる
- 専門性の高いサポートが受けられる
- 小規模事業場でも法令遵守(面接指導など)ができる
- 労働者数が50人以上の事業場は利用できない
- 「1事業場当たり2回まで」などの利用制限がある
産業医紹介サービス(マッチングサービス):幅広い選択肢と効率的な探索
産業医紹介サービスは、産業医紹介会社を通して産業医を紹介してもらう方法です。紹介会社が間に入ってくれるため、産業医の選任が初めて、もしくは選任に慣れていない事業場に適しています。
- 情報収集予算やサービス内容から2~3社程度に絞り込みます。
- 問い合わせ担当者が事業場のニーズをヒアリングし、適したプランや産業医を提案してくれます。
- 契約・選任契約後、産業医を選任し、労働基準監督署へ報告書を提出します。
紹介サービス利用のメリット・デメリット
- 多くの登録医から、自社のニーズ(メンタルヘルス対応、工場経験など)に合った産業医を選べる
- 迅速にマッチングでき、探す手間や労力を削減できる
- 産業医の交代時も仲介してくれるためスムーズ
- ストレスチェック代行など、産業保健業務の負担軽減サービスがある
- 紹介料などのコストが発生する可能性がある
- 直接的な関係構築が難しい場合がある(紹介会社経由のため)
自社に合った産業医を見つけるためのポイント
ここからは、自社に合った産業医を選ぶための3つのポイントについて解説します。
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POINT
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【1】事業場にとって必要な産業医を明確にする 「メンタルヘルス対策が得意な医師が良い」「工場経験がある医師が良い」など、自社の課題に合わせた条件を整理しましょう。 -
【2】信頼できる実績を確認する 労働衛生コンサルタントや専門医などの資格、過去の対応経験などを確認しましょう。 -
【3】柔軟なコミュニケーションが可能か 日程調整や業務確認、従業員への対応など、密に連携が取れる人柄かどうかも重要です。
産業医との契約形態:専属・嘱託・スポットの比較
産業医とのおもな契約形態について、それぞれの特徴とメリット、デメリットについて解説します。
| 契約形態 | 特徴 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 専属 | ・常勤として雇用 ・週3〜5日程度の勤務が目安 ・1,000人以上の事業場などで選任義務あり |
【メリット】 ・迅速な対応が可能 ・企業の状況を深く理解できる 【デメリット】 ・人件費が高い |
| 嘱託 | ・非常勤として契約 ・月1回〜数回の訪問 ・労働者50人以上999人以下の事業場で選任 |
【メリット】 ・専属産業医よりコストを抑えられる ・外部の視点を取り入れやすい 【デメリット】 ・緊急時の対応が遅れる可能性がある ・企業の詳細な状況把握が難しい |
| スポット | ・必要に応じて都度契約 ・特定の業務や期間のみ依頼 |
【メリット】 ・必要なときだけ利用でき効率的 ・専門性の高い助言を得やすい 【デメリット】 ・継続的な健康管理が難しい ・信頼関係構築が困難 |
特に、「常時使用する労働者が1,000人以上の大規模事業場」や「特定の有害業務に携わる労働者が常時500人以上の事業場」では専属産業医の選任義務がありますので、対象の事業場は必ず選任しましょう。
嘱託産業医は、労働者50人以上999人以下の中小規模の事業場に適しており、コストを抑えつつ法定義務を満たすことができます。
産業医の報酬相場:契約形態別の目安
産業医の報酬は専属か嘱託か、勤務日数、企業規模、地域などで異なります。産業医によって費用に差がありますので、自社が求めるレベルと照らし合わせながら検討しましょう。
- 専属産業医:年間1,200~1,600万円程度(週4日勤務の場合)
- 嘱託産業医:月額7万5,000円~25万円程度(労働者数により変動※下記参照)
- スポット産業医:1回につき3万円前後~(業務内容により変動)
産業医選任後の手続きと運用のポイント
産業医選任後は、速やかに労働基準監督署に産業医選任報告書を提出する必要があります。
選任後に産業医とスムーズに連携するためには、情報共有の場を設け、産業医の意見を積極的に聞くことが重要です。また、事業場の担当者も受け身になるのではなく、産業医の専門知識を積極的に活用しましょう。
こうした連携をすることにより、産業医を選任しているものの実際には活動していない、いわゆる「名義貸し状態」を防ぐことができます。
【あわせて読みたい関連記事】ストレスチェックの実施者がいない場合の対処法
ストレスチェック制度では、医師や保健師、研修を受けた看護師や精神保健福祉士など、一定の資格を持つ実施者が必要です。とはいえ、社内に該当する実施者がいない場合、どう対応すればよいか悩む企業も多いでしょう。ここでは、そのような場合の具体的な対処法についてまとめています。
- 産業医にお願いする
- 外部の専門機関に委託する
- 都道府県の産業保健総合支援センターに相談する
- 看護師や精神保健福祉士に実施者の資格を取得してもらう
産業医にお願いする
社内にストレスチェックの実施者がいない場合は、外部の産業医に依頼する方法があります。メンタルヘルスの専門知識を持つ産業医は、職場環境に応じた対応が可能です。
委託する産業医を選ぶ際には、事前に、ストレスチェックの実施経験があるか、対応可能な業務範囲やサポート体制はどうか、面談や実施日程の調整がスムーズに行えるかなどを確認し、自社に合った産業医を選びましょう。
外部の専門機関に委託する
続いてのストレスチェック実施者がいない場合の対処法は、外部の専門機関に委託して、ストレスチェック制度を運用する方法です。具体的な委託先には、健康診断を行う機関やメンタルヘルスサービス、産業保健センターなどがあげられます。
法律に沿ったストレスチェック制度を正しく運用できるだけでなく、準備から実施、結果の集計・分析まで一貫して任せられるため、事業所内の負担も大きく軽減されます。
都道府県の産業保健総合支援センターに相談
都道府県に設置されている産業保健総合支援センターに相談すれば、無料でストレスチェックの実施方法や事務手続きのアドバイスを受けたり、必要に応じて産業医の紹介や面接指導の支援までサポートを受けられたりします。
産業保健総合支援センターは、従業員50人未満の小規模事業場を対象に、労働安全衛生法に基づく産業保健サービスを提供する公的機関です。費用を抑えつつ、適切な体制を整えるのに役立ちます。
看護師や精神保健福祉士に実施者の資格を取得してもらう
ストレスチェックの実施者が社内にいない場合の対処方法の一つとして、既に在籍している看護師や精神保健福祉士に資格を取得してもらう方法も有用です。
看護師や精神保健福祉士は、厚生労働省が指定する研修を受けて修了すれば、実施者資格を取得できるのです。そのためわざわざ外部の専門家を採用したり、委託したりせずに、社内で体制を整えることが可能になります。
まとめ
産業医には、労働者が健康で安全に働けるようサポートする大きな役割があります。事業場の労働者数が50人以上になると産業医の選任義務が発生し、14日以内に自社の目的に合った産業医を選任しなければなりません。
産業医を探す方法としては、医師会や定期健康診断で契約している医療機関、自社の人脈を活用するほか、地域産業保健センターや産業医紹介サービスを利用する方法があります。
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