産業医面接もオンライン可能?産業医の要件や注意点についても解説!

産業医のオンライン面接

この記事の監修者

産業医や産業保健師など産業保健分野で活躍する専門家チーム

サンチエ編集部

産業医面接もオンラインが可能?衛生委員会や安全衛生委員会も実施できるか解説

労働安全衛生法の医師による面接指導については、平成27年から一定の要件を満たす場合にオンラインによる実施が認められており、令和2年11月にも一部が改訂されました。その背景として、急速なデジタル技術の進展や、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの普及によりオンライン面接へのニーズが高まったことなどがあげられます。

また、衛生委員会や安全衛生委員会については、新型コロナウイルス感染症対策により会議がリモートワークに切り替わったことなどの影響から、令和2年8月に要件を満たすことでオンラインでの実施を認めるとの通達が発出されています。

安全衛生委員会等をオンラインで実施するための要件は以下の通りです。
次のアまたはイのいずれかの要件を満たすこと。
ア: 対面により安全委員会等を開催する場合と同様に、情報通信機器を用いた安全委員会等において、委員相互の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること。なお、音声通信による開催やチャット機能を用いた意見交換等による開催については、調査審議に必要な資料が確認でき、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能であること。

イ: 情報通信機器を用いた安全委員会等はアによって開催することを原則とするが、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能となるよう、開催期間、各委員への資料の共有方法及び意見の表明方法、委員相互で異なる意見が提出された場合の調整方法、調査審議の結果を踏まえて事業者に対して述べる意見の調整方法等について次の(ア)から(エ)までに掲げる事項に留意の上、予め安全委員会等で定められている場合は、電子メール等を活用した即時性のない方法により開催することとして差し支えないこと。

(ア) 資料の送付等から委員が意見を検討するための十分な期間を設けること。
(イ) 委員からの質問や意見が速やかに他の委員に共有され、委員間で意見の交換等を円滑に行うことができること。その際、十分な調査審議が可能となるよう、委員全員が質問や意見の内容を含む議論の経緯を確認できるようにすること。
(ウ) 委員からの意見表明等がない場合、当該委員に対し、資料の確認状況及び意見提出の意思を確認すること。
(エ) 電子メール等により多数の委員から異なる意見が提出された場合等には委員相互の意見の調整が煩雑となることから、各委員から提出された意見の調整に必要な連絡等を行う担当者を予め定める等、調査審議に支障を来すことがないようにすること。

企業で在宅勤務が中心になっている場合や新型コロナウィルスの感染者数が拡大している時期などは、安全衛生委員会などの日程調整が難しい場合があるかもしれません。労働者が50人以上の事業場では月に1回の開催が義務付けられているため、オンライン実施の要件に該当するかを確認し、可能であればできるだけ速やかに移行して、これらの問題を解決することが望ましいでしょう。

また、在宅勤務になったことで働く環境が変わり、労働者の心身の課題もこれまでと変化していることが考えられます。委員会をオンラインに移行するまでに時間がかかる場合には、在宅でも働きやすい環境を整える第一歩として、これらの課題を安全衛生委員会の新たな議題として取り上げてみてもよいかもしれません。

もうどの企業も使ってる?現状の産業医のオンライン面接の普及率とは

これまで対面で行ってきた産業医との面談などは、現在どの程度オンラインに移行しているのでしょうか。エス・エム・エスのリモート産業保健の契約企業の産業保健活動について分析しました。その結果、産業保健業務の実施状況は93.44%が「オンラインで実施した」という回答となり、約9割の企業がオンラインで産業保健業務を実施しています。

オンライン比率が高くなっている業務としては衛生委員会や安全衛生委員会の実施が挙げられました。また、産業医面談をオンラインで実施した割合は低い水準となり、オンライン実施が普及しなかった理由として、2カ月に1回の訪問が義務付けられている職場巡視の影響があったと考えられます。

オンライン面接での対応が難しい場合には、産業医と労働者の双方の懸念材料である感染対策をより入念に行うことが求められるでしょう。できる限り対策を行いながら面接を実施し、並行して産業医とオンライン移行に向けた話し合いを行うことが好ましいでしょう。また、企業のオンラインの体制整備など各種要件を満たしているのかしっかり確認することが大切です。

オンライン面接する医師の要件をチェック!

オンラインで面接する場合、面接指導する産業医については以下のいずれかに該当することが望ましいとされています。

(1)対象労働者の所属する事業場の産業医である
(2)契約(雇用契約を含む)により、過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している
(3)過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある
(4)過去1年以内に、当該労働者に指導等を実施したことがある

すでに事業所で産業医を選任している場合は要件に該当しますが、従業員が50名未満で産業医の選任義務のない事業場の場合、要件に当てはまる産業医を見つけることは難しいかもしれません。長時間労働などを理由として産業医の面談が必要になった場合には、対面の実施が必要になる可能性があるので注意しましょう。

なお、対面の場合と同様に、産業医が面談の際に正しい判断をするためにも、企業は産業医に面接指導対象者の業務の内容や作業環境、労働時間や勤務状況などの情報を提供しなければなりません。また、産業医が必要と判断した場合には対面での面接の実施が必要となります。

オンライン面接に使用する機器にも要注意!

オンラインで面接を行う際、使用する通信機器については以下のすべての要件を満たさなければならないため注意が必要です。

(1)産業医と労働者が互いに表情、顔色、声、しぐさ等を確認でき、映像と音声の送受信が常に安定して円滑である
(2)情報漏洩や不正アクセスの防止のため情報セキュリティが確保される
(3)通信機器の操作が複雑でなく、簡単に利用できる。

面接指導では対象者のさまざまな悩みに寄り添うことが重要であるため、安心して話せるようにセキュリティや面接する環境に気を配る必要があります。対面時と同様に表情や声色の変化などから状態を把握することも求められるという点においても、安定した通信環境が不可欠といえるでしょう。

人事・労務担当者必見!産業医がオンライン面接をするメリットをご紹介!

オンライン面接のメリットは、やはり感染リスクがないことでしょう。対面での面接の場合は感染リスクがあるため、産業医と労働者それぞれの状況によって延期などの対応が必要になることがあります。しかし、心身の不調を感じている労働者への対応が遅れることは、さらなる症状の悪化を招く可能性があるため望ましくありません。

また、オンラインの面接は移動時間が必要ないことから、対面の面接と比較して日程調整を行いやすい傾向があります。そのため、面談が必要になった際に速やかに面接を実施しやすいこともメリットのひとつといえます。

昨今「コロナうつ」という言葉が聞かれるようになりました。これはコロナ禍でテレワークとなり働き方や生活が大きく変わったことや、外出自粛によりストレス発散の機会が減少していることなど、さまざまな原因が考えられます。

テレワークを導入している企業ほど、個人間でのコミュニケーションが減少してしまい、労働者の変化に気が付くことが難しい状況にあります。さらに在宅勤務では運動不足になったり、日光を浴びる機会が減少することでホルモンバランスが崩れて生活リズムが乱れる可能性もあります。

このように、コロナ禍の労働者は心身ともに不調を生じやすい状態であるため、オンラインで滞りなく面接を実施することで適切に状態が把握でき、対策を講じられることは大きなメリットです。

すでに休職中の方や復職を検討している労働者がいる場合でも、環境が整えばオンライン面接を実施することが可能です。面接するにあたって感染への不安などがストレスになっている場合もあるため、精神的な負担を軽減できることも利点といえるでしょう。

産業医がオンライン面接する際の懸念点はある?注意点を解説!!

コロナ禍ではメリットが多いオンライン面接ですが、どのようなことに気をつければ良いかも気になりますよね。企業がオンラインによる面接指導を実施する場合は、以下のいずれの要件も満たす必要があるため、導入時には注意が必要です。

(1)オンライン面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知する
(2)オンラインで実施する場合は、面接指導の内容が第三者に知られることがない環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮する

これらに加えて、オンラインの面接指導で医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合、労働者が面接指導を受けている事業場や近隣の医師等と連携して対応したり、その事業場にいる産業保健スタッフが対応するなどの緊急時対応体制が整備されていることが求められます。

なお、オンライン面接では企業側の環境整備を整えることはできても、労働者側の環境づくりが難しい場合があります。たとえば、在宅勤務をしている従業員が相談内容を家族に聞かれたくない場合でも、一人になれる個室環境などが用意できない可能性が考えられます。その場合は貸会議室を利用するなど、企業と労働者の双方でプライバシーに配慮した環境を整えるための工夫をしていくことが大切です。

健康診断後の面接を行う場合には、個人情報である診断結果の取り扱いについても取り決めを行い、情報漏洩などのトラブルを防げる体制を整備することが必要です。また、面談記録や面談前に提示される事前情報には、労働者が周囲に知られたくないようなセンシティブな内容が含まれていることが考えられます。そのため、これらの共有方法や管理方法についてもあらかじめ取り扱い方法を決めておく必要があるでしょう。

産業医においては、労働者の健康状態の把握が対面と同様に行えるかが肝心です。要件に応じた通信環境であっても、照明の方向やカメラの向きによる映り方などによって適切な判断が行えない可能性もあります。労働者に協力してもらい、お互いにコミュニケーションをとりやすい環境を整えることが大切です。

なお、今後はオンラインの普及によって面接を実施できる回数が増えていく可能性があります。それに伴い、複数の個人情報を同時に扱う機会が増えることから、個人情報の取り扱いにはとくに注意が必要になるでしょう。面接日時の勘違いや、同姓同名の取り違いなどを防ぐためにも本人確認の徹底を行うなどあらかじめ対策をとっておくことが大切です。