産業医の契約書の記載内容と作成の注意点、雛形を紹介!

産業医 契約書 作成ポイント

監修者

元々臨床医として生活習慣病管理や精神科診療に従事する中で、労働者の疾病予防・管理と職業ストレス・職場環境の密接な関係認識するに至り、病院からだけでなく、企業側から医師としてできることはないかと思い、産業医活動を開始しました。

また、会社運営の経験を通じ、企業の持続的成長と健康経営は不可分であること、それを実行するためには産業保健職の積極的なコミットメントが必要であると考えるに至りました。

「頼れる気さくな産業医」を目指し、日々活動中しています。
趣味は筋トレ、ボードゲーム、企業分析です。

【保有資格】
・日本医師会認定産業医
・総合内科専門医
・日本糖尿病学会専門医
・日本緩和医療学会認定医

産業医との契約についてお困りではないでしょうか。産業医と契約が必要になった場合、契約をどのように進めればいいのか、どのようなことに注意をすればいいのかわからないと感じる人も多いでしょう。そこで本記事では、産業医との契約の流れや産業医との契約で注意するべき点について紹介します。また、契約書の雛型や契約書に記載する内容、契約書作成のポイントについて詳しく解説しますので、最後までご覧ください。

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そもそも産業医の選任が必要な事業規模は?

まずはじめに、産業医が選任する事業規模とはどれくらいになるかご存知でしょうか?
産業医選任が必要な職場から産業医の勤務形態、そして契約までの流れを簡単にご説明します。

産業医の選任は50名を超えたら義務

事業場当たりに所属する従業員が50名を超えた場合、産業医を選任しなければなりません。
これは、労働安全衛生規則第一項と労働安全衛生法施行令5条に基づいて定められています。
また、産業医選任義務が発生した日から14日以内に選任しなければならないとされているので、義務が発生している状況にも関わらず産業医が選任できていない企業様は、すぐに産業医の選任を検討しましょう。

産業医の契約書に記載する内容・ひな形も合わせて紹介

産業医を選任したら契約書を作成します。契約書に不明確な部分があると、産業医とのトラブルに発展するリスクがあります。また、法令で定められている産業医の職務が行なわれない可能性があるため、適切な内容で契約書を作成しましょう。

産業医の契約書に記載する内容とは?

次に、産業医と契約する際に必要な契約書に記載する内容について触れていきます。
産業医の契約書に記載する内容と言われても、聞き馴染みがない方も少なくないのではないでしょうか。

産業医契約書には、自社の産業医選任することだけでなく、「産業医に従事してもらう業務」や「情報の取扱い」、「産業医に支払う報酬」なども記載します。

それでは具体的な契約書に記載する項目を見ていきましょう。

  1. 産業医選任
  2. 産業医にお願いする業務内容
    労働安全衛生規則第14条第1項と第15条第1項に定められている、産業医が取り組む任務や役目について記載しましょう。
  3. 事業場の責務
    事業場は産業医が効率的に業務を遂行するために、協力する旨を明記します。
  4. 情報の取扱い
    産業医が事業場の従業員から得た個人情報は産業保健業務以外で使用してはならないとされています。その点についても明記しましょう。
  5. 産業医に支払う報酬
    産業医が取り組んだ仕事に業務に対し企業が支払う金額に関して記載します。
  6. 補償
    産業医が職場巡視や産業医面談などの業務中や、事業場へ移動している中で故意なく起きた損害を企業が補償する内容となります。
  7. 契約の有効期間
    本契約の有効期間を明記します。
  8. 反社会的勢力との関与について

(引用元:日本医師会作成「産業医契約書の手引き」)

さらに産業医との契約に関しての知識・理解を深めたい場合は、
日本医師会が公開している「産業医契約書の手引き」をご確認ください。

産業医の契約書の雛形を紹介!

前述では日本医師会が公開している資料を取り上げておりますが、他にも厚生労働省(独立行政法人労働者健康安全機構)も中小企業向けに産業医に関する資料を公開しています。

産業医と契約する際には、公的機関が公開している契約書の雛形や産業医紹介会社が提供している資料などもあるので、参考にしてみるとよいでしょう。

・日本医師会「日本医師会認定産業医制度産業医契約書」
・独立行政法人労働者健康安全機構「中小企業のために産業医ができること」

産業医との契約の流れ

産業医と契約するまでのおすすめの流れとしては

  1. 自社の現状の課題を知る
  2. 現在の体制で不足している業務、対応を洗い出し、求める産業医の役割を決める
    社内の資源についても確認し、社内資源に対するサポートがどの程度必要かも確認しましょう。
  3. 産業医を探す
    直接契約で産業医を探す場合には、医師会、社労士、税理士、弁護士、知り合いからの紹介、近隣の病院への依頼といった方法があります。また、業務委託契約の場合には、健診機関に依頼する、紹介会社へ依頼するというのが主な方法となります。
  4. 産業医と契約

本記事に関しては(4)について詳しく解説しますが、(1)~(3)までは下記の「産業医選任ガイドブック」資料をご確認ください。

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産業医選任ガイドブック産業医を初めて選任する企業様向けのガイドブック

選任報告書とは?産業医契約書との違いについて

産業医を選任する際に、産業医選任報告書の作成が必要になります。選任報告書は産業医を選任した旨を記載した書類で、労働基準監督署に提出しなければなりません。そのため、産業医契約書とは異なります。

産業医選任報告書の雛形は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告

引用:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告│厚生労働省

また、産業医選任報告書は、厚生労働省のホームページにある労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスから作成可能です。しかし、オンライン申請はできないため、作成した報告書を印刷のうえ、所轄の労働基準監督署へ提出しましょう。

産業医の直接雇用と業務委託との違い

産業医と企業が契約する場合、直接産業医を雇用する直接契約と企業から産業医に特定の業務を委託する業務委託契約の2種類があります。

産業医直接雇用とは

企業が労働者と雇用する際に結ぶ契約と同様に、企業と産業医間で直接雇用契約を結ぶことを「直接雇用」といいます。
直接雇用は主に専属産業医と契約するときに用いられる契約方法です。

業務委託とは

業務委託は、会社が特定の業務を企業や個人に委託する契約です。
主に、嘱託産業医と契約する際に用いられることが多いでしょう。

契約方法に関しては、契約締結先が個人か会社によっても変わります。例えば、企業が嘱託産業医の選任を希望し、産業医の紹介会社に相談し紹介してもらうことになった場合は、嘱託産業医と直接契約を結ぶことは難しく、会社間で契約を結ぶ必要性があります。

しかし、紹介会社を仲介したからといって嘱託産業医と直接契約できないことはありません。
企業が産業医選任した経験があり、尚且つ産業保健の知識もある場合は、直接医師と契約する形式の方が連携しやすい場合もあるようです。

以上の事から、企業がどんな契約を望むのかを明確にしておくとよいでしょう。

産業医の契約書作成のポイント

産業医が見つかったあと、どのように契約書を書けばいいのか分からない企業担当者様も多いようです。
厚生労働省や日本医師会が公開している契約書を参考に、企業が産業医に従事してほしい業務に合わせて各社、作成が必要になります。ここからは、契約書作成時に役立つポイントを4つご紹介します。
産業医と契約した後、トラブルが起きないようご参考にしてください。

  1. 職場巡視や従業員の面接指導、衛生委員会の出席等、産業医にお願いする業務内容
  2. 産業医に支払う報酬や訪問頻度、交通費・通信費等諸経費の取扱いについて
  3. 個人情報の取り扱いについて
  4. 産業保健業務を従事してもらう産業医と結ぶ契約期間

では、1つずつ説明していきます。

1) 職場巡視や労働者の面接指導、衛生委員会の出席等、産業医にお願いする業務内容

職場巡視を行うこと、衛生委員会または安全衛生委員会のメンバーとして意見を述べることや面接指導の実施など、具体的な業務を記述します。

2) 産業医に支払う報酬や訪問頻度、交通費・通信費等諸経費の取扱いについて

月の訪問回数に応じて、いつまでに報酬をいくら支払うか、そして交通費や通信費を企業が負担するかなど詳細な内容を事前に決めておきましょう。

3) 個人情報の取り扱いについて

産業医の活動の中には、健診結果や面接指導、ストレスチェックなどの機微な情報を扱う業務もあります。個人情報については、労働安全衛生規則第14条第3項及び第4項に基づき本人の同意なく第三者への提供は禁じられています。

4) 産業保健業務を従事してもらう産業医と結ぶ契約期間

契約期間は、企業や産業医の要望によって異なりますが、一般的に1年契約が多いようです。また契約期間以外にも自動更新あり/なしによって契約内容が変わりますので、事前に産業医にも確認してもらい、契約解除方法についてもあらかじめ決めておくことをお勧めします。

企業が産業医との契約で注意すること

産業医との契約時に注意すべきポイントとして、産業医に依頼したい業務内容を明確にし、産業医が希望する勤務条件や働き方をすり合わせることが大切です。また、産業医の名義貸し状態にならないよう注意が必要です。

産業医に依頼したい業務内容を明確にすること

産業医に依頼する業務内容については、企業が抱えている現状の課題や希望する対応を産業医に共有したうえで決定することが重要です。たとえば、長時間労働者が多い職場やメンタル不調者が何人もいる企業などでは、一般的な契約時間数では対応しきれないことも少なくありません。企業の課題解決に向けて必要になる業務内容や時間を、産業医の意見も取り入れ、双方の認識のすり合わせを行なったあとに契約をしましょう。

「名義貸し」に注意すること

企業は、産業医が名義貸しの状態にならないように注意しましょう。名義貸しとは、選任した産業医が、労働安全衛生法で定められた産業医としての職務を果たさず、選任報告書に名前が記載されているだけの状態のことをいいます。名義貸しの状態の例としては、産業医が企業に訪問せず書類に押印したり、職場巡視やストレスチェック、面談指導を実施しないなどがあります。

名義貸しは違法であり、企業にとってさまざまなリスクとなる可能性が高いです。

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産業医との契約についてお困りの企業担当者の方は少なくないのではないでしょうか。産業医と契約が必要になった場合、契約の進め方や、注意点についてわからないと感じる人も多いでしょう。

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産業医との契約に不安がある場合は、エス・エム・エスの「リモート産業保健」からスタートしてみてはいかがでしょうか。

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まとめ

今回は、産業医との契約の流れや産業医との契約時に注意するべき点、契約書の作成方法などについて紹介しました。

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