ストレスチェックを拒否されたら?対応の基本と、面接指導拒否時の注意点

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執筆者

はじめまして、shirocanと申します。
大学院修了後、フリーター期間を経て、教育系一部上場企業、人材系ベンチャー企業に勤務しました。ベンチャー企業勤務時より、様々な副業や活動を行ない、現在は法人経営のほか、webライター、キャリアアドバイザー、各種試験講師、研修講師などに従事しております。

執筆経験としては、副業系、投資、キャリア、金融、経営、ライフデザイン、中学高校大学受験における各教科の勉強法、各種資格試験の勉強法などがございます。翻訳、校正経験もございます。

文章を書くことが好きであり、はじめは副業で始めたライターのお仕事に充実感や責任感を覚え、約5年続けております。様々なジャンルを執筆する中で、常に学び続けることを忘れず、高品質の記事つくりに邁進しております。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

ストレスチェックの受検や、高ストレス者に対する医師の面接指導を、従業員から拒否されるケースは珍しくありません。従業員数51〜300人規模の企業では、人事労務担当者が一人で対応にあたることも多く、無理に受けさせれば強要にあたるのではないか、放置すれば安全配慮義務違反を問われるのではないかという、板挟みの状況に置かれがちです。

結論として、会社は従業員に受検・面接指導を強制することはできません。一方で拒否を放置してよいわけでもなく、拒否理由の確認と記録、そして安全配慮義務を果たすための代替対応が必要になります。本記事では、拒否された直後の初期対応から、面接指導を拒否されたときの法的な整理、放置した場合に問われうるリスクまでを解説します。

    この記事でわかること


  • 【1】受検・面接指導を拒否されたときに、まず取るべき初期対応

  • 【2】受検・面接指導が労働者の任意である法的な根拠

  • 【3】就業規則での義務化や懲戒処分がなぜ「強要」にあたるのか

  • 【4】拒否を放置した場合に問われうる安全配慮義務との関係

ストレスチェックの受検・面接指導を拒否されたら、まず何をする?

ストレスチェック拒否とは、従業員が受検または面接指導を断る状況を指します。まず押さえておきたいのは、受検・面接指導のいずれも会社が強制できる性質のものではないという点です。対応の第一歩は、拒否そのものを問題視するのではなく、拒否の理由を落ち着いて確認することです。

拒否された直後に確認する3つのポイント
  1. 理由を確認する:プライバシーへの不安か、多忙か、制度への誤解かを聞き取る
  2. 強制していないことを明確にする:受検・面接指導が任意であることを本人に伝える
  3. 記録を残す:拒否の事実と、それに対して会社が行った説明・勧奨の内容を書面またはデータで残しておく

そもそもストレスチェックの受検に義務はある?

ストレスチェックは、労働者数50人以上の事業場に対して事業者に実施が義務づけられている制度です。ただし、義務を負うのは会社側であり、労働者個人に受検義務があるわけではありません。ここでは、会社の実施義務と、労働者の受検の任意性という、混同されやすい2つの義務の違いを整理します。

詳しい実施義務や罰則の全体像は、ストレスチェックの義務化・対象者・罰則を解説した記事もご覧ください。

「受検」と「面接指導」は何が違う?
(図:「受検」と「面接指導」は何が違う?)
(編集部作成)

従業員に受検義務はない

結論として、労働者にストレスチェックの受検義務はありません。受検するかどうかは労働者本人の判断に委ねられており、会社が一方的に決められることではありません。この理解が拒否対応の出発点になります。

ストレスチェックは、事業者に課せられた義務ですが、労働者において受検は強制ではないこと

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省

したがって、受検を拒否する従業員に対し、会社が受検を強制することはできません。受検勧奨(受検するよう促すこと)自体は認められていますが、強要にならない範囲にとどめる必要があります。

会社側には実施義務がある。未報告には罰則も

一方で、会社(事業者)にはストレスチェックの実施義務があります。実施状況を所轄の労働基準監督署へ報告する義務もあり、これを怠ると罰則の対象になり得ます。義務・罰則は会社側の実施・報告に関するものです。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

労働安全衛生法|e-Gov法令検索

ストレスチェックの結果等報告書の未提出は、この第五号(報告義務違反)に該当し得ます。ただし、これは会社の報告義務に関する罰則であり、個々の従業員が受検を拒否したこと自体に罰則が科されるわけではありません。

従業員がストレスチェックを拒否する理由と、会社が取るべき初期対応

ストレスチェックを拒否する背景には、結果が人事評価や配置に影響するのではないかという不安、あるいは検査そのものへの誤解があります。理由を正しく理解し、丁寧に説明することが、無用な対立を避ける近道です。

プライバシー・人事評価への影響を不安視している場合の説明のしかた

ストレスチェックの結果を扱えるのは、実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者に限られ、人事権を持つ者は結果そのものを閲覧できません。この仕組みを説明することが、不安を和らげる有効な方法の一つです。

とはいえ、こうした制度上の建前を口頭で説明しても、担当者個人の言葉では従業員の不安が完全に払拭されないことも少なくありません。説明の仕方や、周知資料の整備まで含めて対応するには、一定の産業保健の知見が必要になります。

就業規則での義務化・懲戒処分はできない

就業規則で受検を義務付け、受検しない労働者に懲戒処分を科すような対応は、受検の強要にあたり認められません厚生労働省「ストレスチェック制度に関するQ&A」Q5-1でも、受検勧奨の妥当な程度は事業場の状況によって異なるとした上で、こうした強要的な対応は行ってはならないとされています。

受検勧奨自体は可能であり、その方法や頻度は衛生委員会等で調査審議した上で決めることが望ましいとされています。

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高ストレス者が面接指導(面談)を拒否したときの対応

ストレスチェックで高ストレスと判定されても、医師による面接指導は自動的に実施されるわけではありません。制度上、面接指導は労働者本人の申出があって初めて実施されるため、申出をしない、あるいは面談を拒否したことを理由に、会社が不利益な取扱いをすることは禁止されています。面接指導を受けることのメリット・デメリットについては、高ストレス者への面接指導のメリット・デメリットを解説した記事もご覧ください。

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ストレスチェック 高ストレス 産業医面談のメリット・デメリットとは?ストレスチェックの高ストレス者への対応を解説

ストレスチェックから面接指導までの流れ
(図:ストレスチェックから面接指導までの流れ)
(編集部作成)

面接指導は本人の申出が起点。拒否・未申出でも不利益取扱いは禁止

高ストレスと判定された労働者に医師の面接指導を実施できるのは、本人から申出があった場合に限られます。会社側が一方的に面接指導を強制する制度にはなっておらず、申出の有無を起点に手続きが進みます。

第五十二条の十六 法第六十六条の十第三項の規定による申出(以下この条及び次条において「申出」という。)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。2 事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。

労働安全衛生規則|e-Gov法令検索

また、申出をしないことや面接指導を拒否したことを理由に、会社が労働者に不利益な取扱いをすることは、法律上明確に禁止されています。

事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。

労働安全衛生法|e-Gov法令検索

産業医面談で実際にどのような内容を話すのかは、産業医面談で話すべき内容を解説した記事で詳しく解説しています。

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産業医面談 高ストレス者面談とは?対象者・進め方・話す内容を実務担当者向けに解説

面談を拒否する従業員への実務的な声かけ例

「時間がない」「内容を知られたくない」など、拒否の理由は従業員によって異なります。理由ごとに声かけの工夫を変えることで、無理な強要にならない形で申出を後押しできます。

理由別の声かけの工夫
  1. 「忙しくて時間が取れない」場合:面談の所要時間や日程調整の柔軟性を伝え、業務都合に合わせて設定できることを説明する
  2. 「内容を知られたくない」場合:面談内容は実施者・実施事務従事者以外には共有されないことを伝える
  3. 「そもそも必要性を感じない」場合:高ストレス状態が心身に与えうる影響と、面談が任意の相談機会であることを併せて伝える

参考として、厚生労働省のマニュアルには、面接指導を実施した医師が、その後の受診を渋る労働者に対して用いる声かけの例が示されています。場面は異なりますが、心身の状態を理由に丁寧に受診・受検を促す伝え方の工夫として参考になります。

「健診結果も併せてみると、身体症状がありますので、受診が必要ですよ。」

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省

ただし、こうした声かけを行う担当者自身が忙しい人事労務担当者であることも多く、理由別の対応まで手が回らないケースも珍しくありません。

拒否を放置するとどうなる?会社が負うリスク

受検や面接指導を強制できないからといって、拒否をそのまま放置してよいわけではありません。会社には労働契約上の安全配慮義務があり、ストレスチェックの結果が得られないことが、この義務を免れる理由にはならないためです。

厚生労働省「ストレスチェック制度に関するQ&A」Q21-1では、安全配慮義務は労働契約法に基づく民事上の問題であり、行政が個別のケースについて解釈を示すものではないとした上で、ストレスチェックの結果を把握できないことをもって、企業の安全配慮義務が一切なくなるわけではないと整理しています。つまり、拒否されたという事実だけで、会社の責任がすべて免除されるとは限りません。

実務上は、拒否に至る経緯(説明の有無、勧奨の記録)を残し、必要に応じて産業医への相談や、本人の心身の状態を注視するなど、できる範囲での配慮を継続することが望まれます。個別の状況に応じた最終的な判断は、産業医に相談してください。

受検率・面談実施率を高める実務のポイント

拒否そのものへの対応と並行して、そもそも拒否が生まれにくい実施の仕組みを整えることも有効です。ここでは、目的の伝え方と実施時期という2つの観点から、実務で使える工夫を紹介します。

より基礎的な制度の全体像は、ストレスチェック制度の基礎を解説した記事もご覧ください。

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ストレスチェック 流れ ストレスチェックの流れってどうなっているの?現役産業医が徹底解説!

目的・匿名性の伝え方(実施前の周知)

ストレスチェックの結果は本人以外には開示されないという匿名性を、実施前にあらかじめ周知しておくことが、拒否理由の一つである不安の払拭に役立ちます。制度の目的(労働者自身の気づきと、集団分析による職場環境の改善)を合わせて説明すると、受検の意義が伝わりやすくなります。

実施時期・体制の工夫(繁忙期回避)

繁忙期にストレスチェックを実施すると、多忙を理由にした受検・面談の先送りが増えやすくなります。決算期や繁忙期を避け、比較的落ち着いた時期に実施時期を設定することが、受検率・面談実施率の向上につながります。

よくある質問

ここでは、ストレスチェックや面接指導の拒否対応について、人事労務担当者からよく寄せられる質問に、結論から簡潔に回答します。個別の事情で対応が変わる論点は、産業医への相談も検討してください。

Q,拒否したら解雇や降格の対象になりますか

結論として、受検や面接指導を拒否したことを理由にした解雇・降格などの不利益な取扱いは認められません。法律上、申出をしない・拒否したことを理由とした不利益な取扱いは明確に禁止されています
Q,拒否した従業員分のストレスチェック費用はどうなりますか

ストレスチェックの費用体系は契約している実施機関によって異なります。受検しなかった従業員分の扱い(費用が発生するかどうか)も契約内容次第のため、正確な取り扱いは契約中の実施機関に直接確認することをおすすめします。
Q,派遣社員やパート従業員もストレスチェックを拒否できますか

ストレスチェックの実施対象は、事業場に常時使用される労働者です。パート・アルバイトは、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば対象に含まれますが、4分の3未満の場合は実施義務の対象外です。派遣労働者については、ストレスチェックを実施する義務は派遣先ではなく派遣元にあります。対象に含まれる場合、受検が任意である点は正社員と同様です。個別の実施義務の有無の判断が必要な場合は、産業医に相談してください。

まとめ

受検・面接指導を拒否されても、会社がこれを強制することはできません。ただし放置してよいわけではなく、拒否理由の確認と記録、そして安全配慮義務を意識した代替対応が求められます。

個別の対応に迷う場合は、産業医への相談も検討してください。多くの企業にとっては、こうした対応の型づくりから面談運用までを、自社の担当者だけで抱え込まず、外部のリモート産業保健サービスを活用するという選択肢も現実的です。

はじめてのストレスチェックガイドブック

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