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従業員数が50名を超えた事業場には、従業員の安全と健康を守るために行わなければならない「義務」が新たに発生します。これは、国で定められた「労働安全衛生法」に基づくもの。従業員の労務に関わることなので、会社の人事・労務担当者がしっかり把握しておく必要があります。
従業員の安全を守る労働安全衛生法
そもそも、労働安全衛生法とはどのようなもので、何のために定められているのでしょうか。
労働安全衛生法とは
労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を守るため、労働災害を防ぐ基準を確立すべく設けられた法律です。
高度経済成長期の日本は、労働環境の変化や大規模な工事などの影響で毎年多数の労働災害死亡者が出ていました。そこで、労働者の安全・健康を守り快適な職場環境を形成することを目的に、当時の労働基準法の労働安全衛生に関わる規定が改めて見直されることになりました。そして昭和47年、現在の労働安全衛生法が制定されたのです。
従業員が50名を超えると義務が増える
労働安全衛生法では、従業員が50名以上、というのがひとつの大きな区切りになっています。従業員(常時労働者)が50名を超えた事業場には新たに5つの義務が発生します。ここでいう従業員とは、常時の運営状況で働いている人を正規雇用・非正規雇用関係なくカウントするもので、パートやアルバイトの人も含まれます。
従業員50名以上で義務づけられる5つのこと
それでは、従業員が50名を超えた際に、会社としてやらなければならない義務にはどのようなものがあるのでしょうか。労働安全衛生法で定められている5つの義務を解説します。
(1)産業医の選任
産業医とは、会社で従業員が安全・健康に働けるよう、指導やアドバイスを行う医師のことをいいます。従業員が50名を超えた事業場は、14日以内に産業医を選任し、遅滞なく労働基準監督署に報告しなければいけません。ひとつの会社で、従業員が50名を超える事業場を複数所有している場合は、各事業場にそれぞれ産業医を選任する必要があります。
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(2)衛生管理者の選任
衛生管理者は、その名のとおり従業員の衛生面を把握し管理する役割を持ちます。従業員の健康状態や作業環境を確認し、健康を害するおそれがあるときは必要な措置をとります。この衛生管理者も、従業員が50名を超えたタイミングで社内から選任する必要があります。選任の基準としては、まず、衛生管理者の資格をもつ人であること。それだけでなく、長く勤務し現場をよく理解しているか、相談しやすいか、なども加味して検討しましょう。
(3)衛生委員会の設置
従業員の健康障害を防止するための対策などを調査・審議するのが衛生委員会です。衛生委員会は月1回以上開催し、従業員の意見を聞きながら、衛生上の問題や課題、改善案などを話し合います。メンバーは、先ほどの衛生管理者のほか、議長と産業医、衛生に関する経験を有するもの(その会社の従業員で衛生に関する経験がある人)、従業員メンバーで構成します。従業員メンバーは、できるだけ性別や部署のバランスを考えて選任しましょう。
(4)定期健康診断報告書の提出
健康診断自体は従業員の人数に関係なく実施しなければなりませんが、50名以上になった場合は健康診断の診断結果を労働基準監督署へ報告する義務が生じます。
(5)ストレスチェックの実施
2015年から義務化されたのがストレスチェックテストの実施。従業員のメンタルヘルスを確認するため、調査票を用いた調査を行います。調査票から、医師や保健師が各従業員のストレスの度合いを分析し、その結果、高ストレスと判断され、本人が希望した従業員には医師によるには面接指導が行われます。
何をすべきかわからない・不安なときは
人事・労務を担当する会社で従業員が50名を超えるのが初めて、という人もいることでしょう。不安なときはどのように進めていけばよいのでしょうか。
不安なときは労務の専門家に相談を
衛生に関わる義務について理解はできても、いざ実施するとなると戸惑うことも出てくるでしょう。労働安全衛生法で定められた義務は、違反すると会社が処罰されることもあるため、慎重に進めなければなりません。初めて50名以上の従業員の会社を担当する方や不安がある方は、労務の専門家に相談するのもひとつの方法です。専門家には、社会保険労務士や産業カウンセラーがいるほか、産業保健業務サポートを専門とするサービスも展開されています。ひとりで悩まず、専門家に意見を仰ぎながら進めていくと安心です。
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