- 産業医を選任することになったが、職場巡視の流れがよくわからない
- 職場巡視の前に準備すべきこと、チェックされる内容がわからない
- 産業医が職場巡視を行なわない場合はどうなるのか
- 産業医と日程調整がうまく行かず、長い間職場巡視ができていない
上記のようなお悩みはありませんか?
職場巡視は産業医の重要な業務であり、目的やポイントを押さえ、適切に実施しなければなりません。職場巡視を行わなかった場合には、罰則を科される可能性もあります。
今回は、企業が知っておくべき「産業医の職場巡視」について徹底解説します。そして職場巡視をはじめとする産業医選任やストレスチェック実施、衛生委員会の立ち上げ・運営などの労働安全衛生法に関連する産業保健業務を一括サポートするサービスも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
職場巡視だけでなくストレスチェック実施(実施者代行あり)や
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産業医の職場巡視は、義務として法律で定められている
職場巡視とは、事業場を見回り、「業務内容や作業環境が労働者に有害な影響を与えるおそれがないか」を確認することです。労働安全衛生規則では、産業医は月に1回、職場巡視を実施することが義務とされています。
常時使用する労働者数が50人以上の事業場で選任する必要がある医師のことを産業医といいます。(労働安全衛生法第13条、労働安全衛生法施行令第5条など)
選任された産業医の役割は、「労働者の健康と安全に関して、専門的な立場から助言や指導を行なうこと」です。業務の一つである職場巡視は、産業医の役割を果たすため、確実に行なわれなければなりません。
産業医の定期巡視については、「労働安全衛生規則第15条」で以下のように定められています。
(産業医の定期巡視)
第十五条 産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
産業医の職場巡視にはどのような目的・意味がある?
産業医の職場巡視には、以下のような目的があります。
- 企業や従業員のことを理解する
- 安全面や衛生面の課題を見つけて、指摘する
- 従業員の業務内容や労働環境を理解する
職場巡視において、産業医は企業の事業内容やそれにともなう従業員の労働状況を把握し、心身へ悪影響を与える部分がないかをチェックします。加えて、職場内で危険な箇所がないか、衛生面で気になる点はないかなどを確認し、意見や指摘を行なうのも目的の一つです。
また、産業医が実際に現場を観察し、従業員と積極的にコミュニケーションをとることで、環境面や健康面の問題を解決できるケースも少なくありません。
このように、職場巡視は産業医の役割を果たすために欠かせない業務といえます。
産業医の職場巡視の頻度と変更の条件
労働者の健康と安全の確保には、産業医がしっかり状況を把握することに加え、問題発見時の早急な対処が重要です。そのため、労働安全衛生規則第15条により、産業医の職場巡視は原則として「毎月1回」と義務付けられています。
しかし、以下の2つの条件を満たせば、職場巡視頻度を「2ヵ月に1回」に変更が可能です。
- 産業医に対して、所定の情報が毎月提供されていること
- 事業者の同意を得ていること
ただし、巡視頻度を変更する一定の期間を定めたうえで、その一定期間ごとに、産業医の意見に基づいて適正な頻度を見直す必要があります。
単に巡視回数を減らすのではなく、産業医のより効率的かつ効果的な職務の実現を目指した変更となるようにしましょう。
条件(1)産業医に対して「所定の情報」が毎月提供されなければならない
まず、産業医に対して「所定の情報」が毎月提供される必要があります。所定の情報とは、以下のとおりです。
ア:衛生管理者が少なくとも毎週1回行なう作業場等の巡視の結果
・巡視を行なった衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所
・巡視を行なった衛生管理者が「設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容
・その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項イ:アに掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
ウ:休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合における、その超えた時間が1ヵ月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報
条件(2)事業者の同意を得なくてはならない
産業医の判断だけでは、職場巡視を「月1回」から「2ヵ月に1回」に変更することはできません。必ず、事業者の同意が必要です。
同様に、事業者の判断だけで「2ヵ月に1回」に変更することもできません。職場巡視を2ヵ月に1回にする場合、事業者は産業医の意見に基づいて、衛生委員会などでの話し合いを行なったうえで同意する必要があります。
また、職場巡視を2ヵ月に1回にすると決まった場合にも、変更する期間を定めなければなりません。その期間終了後には、産業医の意見を確認しながら、2ヵ月に1度の頻度で問題ないか、あらためて検討する調査審議が不可欠です。
例えば、職場巡視を4〜9月の6ヵ月間は2ヵ月に1回と決定した場合、10月の衛生委員会内で再び職場巡視の頻度について話し合います。
職場巡視の頻度を抑えるのは、単に訪問回数や業務負担を減らすことが目的ではありません。あくまで多様化する産業医の業務に対応できるよう、時間をより効率的・効果的に使うための変更です。頻度が少なくなっても、職場巡視が重要な業務であることに変わりはありません。
産業医の職場巡視制度改正の背景と今後の展望
近年の労働者における健康問題の増加や多様化する働き方を受け、産業医の業務負担軽減と、より効果的な労働衛生管理を目指して、2017年に職場巡視制度が改正されました。
今後も、テレワークの普及による新たな健康問題への対応やメンタルヘルス対策など、産業医の役割はより重要になると予想されています。また、オンライン活用した効率的な産業保健活動の需要も高まるでしょう。
【産業医の職場巡視】基本的な流れと注意するポイント
職場巡視をより効果的なものにするには、実施前に一連の流れを押さえておくことが大切です。
1回の職場巡視ですべての課題を見つけ、改善することは難しいですが、実施前にできる限りの準備をしてから実施と改善を行なっていけば、一つずつ課題を克服できるでしょう。これから職場巡視を始める企業も、すでに始めている企業も、ぜひ確認してみてください。
職場巡視の事前準備:効果的な計画とチェックリストの作成方法
効果的な職場巡視を行なうには事前準備が重要です。作業環境管理・作業管理・健康管理の3つの観点でチェックリストを作成しましょう。
前回の職場巡視で産業医から受けた指摘事項や最近の労働衛生上の課題など、重点的に確認する項目を明確にし、巡視ルートや時間配分も計画的に設定することがポイントです。
職場巡視当日の5ステップ進行ガイド
職場巡視当日の5ステップを以下にまとめます。
職場の状況を正確に把握するには、従業員とのコミュニケーションが大切な巡視のポイントになります。
職場巡視の結果報告:重要な3つのポイントと活用法
職場巡視の結果報告書は、「概要」「指摘事項」「改善提案」「進捗確認」の4部構成で作成することが一般的です。
職場巡視の結果報告の際に重要な、以下3つのポイントを参考にして、効果的に職場環境の改善につなげましょう。
- 巡視で見つけた重要な問題に優先順位をつける。
- 誰でも理解できるように写真やメモで具体的に記録に残す。
- 問題点とその解決策を具体的に提示する。
報告後は指摘された問題の改善のために、定期的に状況を確認しましょう。
職場巡視を行なう上での大切な点・注意点
ここからは、職場巡視を行なう上での大切な点や注意点についてポイント①〜⑤にまとめてご紹介します。上記で解説した職場巡視の基本的な流れとあわせてより効果的な職場巡視を実現しましょう。
ポイント①:重点項目の設定と集中的な確認で効率アップ
効果的な職場巡視にするためには、重点的に確認する項目を事前に設定しておくことが重要です。過去の事故発生場所や安全性に懸念のある機械設備を優先して確認し、作業環境(照明・温度・騒音)、作業方法(作業姿勢・機械操作手順)、健康管理(休憩取得・労働時間)などの分野別に項目を整理します。
事前にチェックリストを作成することで、確認漏れを防ぎ、限られた時間内で効果的な巡視ができます。
ポイント②:従業員とのコミュニケーションを大切にする技術
職場巡視での課題把握のためには、従業員とのコミュニケーションが不可欠です。
「作業台の高さは調整可能ですか」「適切な休憩時間が取れていますか」など、現場の声を引き出す具体的な質問が、職場の課題や問題を引き出す対話のきっかけになります。
従業員から「〇〇がつらい」と声があれば、詳しく状況を確認し、調整や改善についての具体的な解決策をともに検討しましょう。
定期的な職場巡視をとおして、従業員と対話を継続することで信頼関係が築け、より効果的な職場環境の改善が実現できます。
ポイント③:写真や動画を活用した記録の重要性と方法
職場巡視における記録は、報告書作成や改善計画の立案に必要なとても重要なツールです。写真や動画を効果的に活用し、視覚的な記録を残しましょう。
記録を残すことで、画像データを解析して危険箇所のパターンを把握したり、AIツールで類似事例を検索したりして、より効果的な改善策を見出すことができます。また、定期的な撮影記録により、改善の進捗を客観的に確認することも可能です。
ポイント④:過去の指摘事項のフォローアップで改善を促進
過去の指摘事項のフォローアップは、指摘から1週間以内に初期対応を確認し、1ヵ月後に改善状況の中間確認を行ないます。
改善が遅れている項目は、予算や工期などの課題を分析し、実行可能な代替案を提示しましょう。3ヵ月後には最終確認を実施し、未解決の課題は次回巡視の重点項目として設定します。
このように計画的なフォローアップを行なうことで、職場の安全衛生水準を着実に向上させることができます。
ポイント⑤:新たな健康リスクへの注意と対策立案
働き方の多様化にともない、新たな健康リスクへの対応を強化することが求められています。例えば、テレワーク環境での労働者の健康管理には、オンラインでのストレッチ講座や、月1回の健康相談会の実施を提案するのが効果的です。
高齢の労働者に対しては、体力面での配慮として、作業環境の改善や業務の見直しを検討しましょう。また、メンタルヘルスケアとして、定期的なオンラインカウンセリングの導入を推奨するなど、産業医と連携しながら労働者の健康管理体制を整備していくことが重要です。
よくある質問
職場巡視に関するよくある質問とその回答を解説します。
職場巡視は誰が行うのですか?役割と責任の明確化
職場巡視は、産業医と事業者による安全管理の取り組みです。産業医は専門的な視点から職場の健康面をチェックし、具体的な改善策の提案を行います。
一方、事業者は巡視の調整や必要な情報提供を担当し、指摘された課題の解決に取り組みます。たとえば、換気が不十分と指摘された場合には、事業者が適切な換気設備の導入や改修を進めます。産業医と事業者が連携し、より安全で健康的な職場環境を実現しましょう。
職場巡視で見られるポイントは?チェックリストの活用方法
職場巡視では、作業環境(照明、換気、温湿度)、作業方法(作業姿勢、動線の安全性)、健康管理を重点的に確認します。
そして、健康管理では、労働時間と休憩時間の管理状況、従業員の疲労度や体調、職場のストレス要因、休憩施設の状態、定期健康診断の実施状況を確認します。
チェックリストには、過去の指摘事項と現在の課題を含め、巡視前に準備しましょう。「機械設備の点検状況」や「作業環境について」などの項目を設けることで、重要事項の見落としを防げます。より細かな事前準備で巡視の効果を最大化を図りましょう。
職場巡視の頻度:法令遵守と効果的な実施のバランス
職場巡視の頻度は、事業所の規模とリスク状況に基づいて設定します。基本は毎月1回ですが、安全衛生上のリスクが低い事業所では、産業医の同意があれば2ヵ月に1回に調整可能です。
法令を遵守しながら、効果的な実施のバランスを保ちましょう。巡視頻度を変更する際は、定期的な見直しで適切性の確認が必要になります。
職場巡視を効果的に行うための厚生労働省のガイドライン活用法
厚生労働省の職場巡視ガイドラインには、巡視の計画から実施、結果活用までの具体的な手順が示されています。さらに、「作業環境の評価項目の整理」や「過重労働者リストの確認」など、実践的な方法も明記されています。
職場のリスクに合わせてガイドラインを活用すれば、効果的な巡視計画を立案することができるでしょう。
産業医の職場巡視に関するQ&A
最後に、産業医の職場巡視に関するよくあるQ&Aを紹介します。
職場巡視の役割と責任の明確化は誰が行なうのですか?
職場巡視は、産業医と事業者による安全管理のための取り組みの一つです。産業医は専門的な視点から職場の衛生面をチェックし、具体的な改善策の提案を行ないます。
一方、事業者は巡視の日程調整や必要な情報の提供を担当するとともに、指摘された課題の解決に取り組みます。例えば、職場内の換気が不十分と指摘された場合には、事業者が適切な換気設備の導入や改修を進めます。産業医と事業者が連携し、より安全で健康的な職場環境を実現しましょう。
職場巡視で見られるポイントやチェックリストの活用方法とは?
職場巡視で重点的に見られるポイントは、作業環境(照明、換気、温湿度)、作業方法(作業姿勢、動線の安全性)、有害物質の管理や健康管理です。
職場の安全管理の徹底のために有害物質の管理として、化学物質の保管状況、曝露防止対策、リスクアセスメントの実施状況などが確認されます。また、健康管理では、労働時間と休憩時間の管理状況、労働者の疲労度や体調、職場のストレス要因、休憩施設の状態、定期健康診断の実施状況を確認します。
職場巡視の前に、過去の指摘事項と現在の課題を含めたチェックリストを準備しておきましょう。「機械設備の点検状況」や「作業環境について」などの項目を設けることで、重要事項の見落としを防げます。より細かな事前準備で、巡視の効果の最大化を図りましょう。
職場巡視の頻度はどれくらい?
職場巡視の頻度は、事業場の規模とリスク状況に基づいて設定します。基本は毎月1回ですが、安全衛生上のリスクが低い事業場では、産業医の同意があれば2ヵ月に1回に調整可能です。
法令を遵守しながら、効果的な実施のバランスを保ちましょう。職場巡視の頻度を変更する際は、定期的な見直しで適切性の確認が必要になります。
産業医の職場巡視はオンライン・リモートでも行なえる?
オンライン職場巡視では、スマートフォンやタブレット端末を用いて職場状況をリアルタイムで共有し、産業医が遠隔で状況を確認します。移動時間が不要で、緊急時にも即座に対応できるという利点がありますが、現場の空気感や労働者の細かな様子を直接観察できないという課題があります。
オンライン職場巡視を行なう際には、現場責任者がより細かな状況を報告し、産業医と密に連携を取ることが重要です。
産業医の職場巡視を行なわない場合の罰則はある?知っておくべき3つのリスクとは?
事業者が産業医による職場巡視を実施しなかった場合は、法令違反とみなされ、罰金や懲役に科される可能性があります。
まとめ
職場巡視は産業医の重要業務の一つであり、法律に基づき実施が義務付けられています。産業医の職場巡視は基本的に「1ヵ月に1回」ですが、所定の情報を毎月提供し、事業者の同意を得るなどの基準をクリアすることで、「2ヵ月に1回」に頻度を減らすことは可能です。
しかし、それは単に業務負担を減らすためではなく、より効率的に従業員の健康保持・増進と職場環境の改善を図るための措置です。効率的かつ効果的に改善できるサイクルになるよう、産業医と連携しながら職場巡視の方法を見直してみましょう。
「職場巡視をしっかりやってくれる産業医を選任したい」「職場巡視を含めて、自社の産業保健活動を見直したい」などと考えている人事労務担当者の方には、リモート産業保健のサービス利用がおすすめです。
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産業医による職場巡視はなく、従業員のメンタルヘルス不調などによる産業医面談や休職者対応などの柔軟な対応もなされていない企業が導入し改善された事例もあります。
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