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- 「産業医との面談で、労働者がドクターストップをかけられた……」
- 「人手が足りないので、産業医のドクターストップを無視しても良い?」
- 「休職者が復職する予定だけれど、企業側は何をすれば良い?」
上記のような経験や疑問はありませんか?
怪我や病気の悪化を防ぐため、主治医から「今は行動禁止」とドクターストップがかかるのと同様に、職場でも産業医から労働者や企業側にドクターストップがかかることがあります。
そこで本記事では、産業医のドクターストップ(勧告権)について解説します。企業担当者の方は、ドクターストップの重大性や具体例、休職者が出た場合に求められる対応などについて、押さえておきましょう。
近年、過労・ストレスによる休職者が増えている
過労やストレスによる休職は、今や珍しいことではありません。しかし、早い段階で適切な対応をしていれば、休職を避けられたというケースも実際には多いでしょう。
そのような背景から、近年、産業医のドクターストップ(勧告権)が注目されています。健康上の問題がある労働者や、メンタルヘルス不調の兆候が見られる労働者に対してドクターストップをかけるのは、産業医の重要な役割の一つです。
具体的には、長時間労働が常態化している部署に残業を減らすよう勧告したり、疾病やハラスメントなど何らかの原因で健康に重大な影響を及ぼす可能性のある労働者を別の部署に異動させるよう勧告したりすることで、労働者の心身の健康を守ることができます。
休職者のメンタルヘルス不調の原因とは
メンタルヘルス不調になる原因は人によってさまざまで
休職者のメンタルヘルス不調の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 職場の人間関係が悪い
- 上司や同僚から適切なサポートを受けられない
- 仕事量が多すぎて勤務時間内に終わらない
- 仕事内容が難しすぎる
- 職場に相談相手がいない
- 就職、転職、異動などの環境の変化があった
- 職場が暑すぎる、寒すぎるなど、環境が良くない
- 騒音で仕事に集中できない
- 毎朝の通勤で気分が悪くなる など
上記のうち、複数の原因が重なり合った結果、メンタルヘルス不調を引き起こすケースが多いとされています。
また、ストレスの感じ方には個人差があるため、同じ環境で同じような働き方をしていても、ストレスを感じる方とストレスを感じない方がいます。そのほか、家庭環境や家族間のトラブル、親しい人の病気や死など、プライベートの問題が原因でメンタルヘルス不調に陥るケースもあります。
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メンタルヘルス不調のおもな理由を年代別に解説!うつ病になりやすい人の特徴も紹介産業医のドクターストップ(勧告権)とは?労働安全衛生法の内容も解説
労働安全衛生法第13条第5項において、「産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。」と定められています。
同法第13条第6項では、「前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。」とされています。
この労働安全衛生法は、平成31年に改正が行なわれており、事業者に対しては、産業医の勧告を尊重したうえで、その内容を衛生委員会や安全衛生委員会へ報告する義務が加わりました。
これまでは産業医からの勧告があった場合にも、事業者はそれを「尊重」すれば良く、実際の改善には必ずしもつながらないケースもありました。
しかし、平成31年の法改正により、現在は勧告を受けたら、「実際に何をしたか」「何をしなかったか」を、理由も含めて文書で衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければならなくなりました。
ドクターストップ(勧告権)を行使する具体的な流れ
労働安全衛生規則第14条第3項では「産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる」とされています。
産業医が何らかの職場改善が必要だと判断した際には、まず事業者と労働者、双方の意見を求めることになっています。そして、衛生委員会で改善内容を提言したり、衛生管理者に指導や助言を行なったりして、問題の是正を図ります。
そのうえで、衛生や健康へ深刻な影響を与える状況が改善されない場合にのみ、事業者に対して勧告が行なわれる、というのが一般的な流れです。この一連の流れには、産業医が的外れな勧告をして、かえって混乱を生む事態を回避する、という側面もあるようです。
適切に勧告を行なうためにも、産業医は毎月の衛生委員会に参加し、問題提起と改善案の提案をするのが望ましいでしょう。
産業医のドクターストップ(勧告権)行使の事例
ここでは、産業医の勧告の事例を紹介します。
- 事例(1)
ある企業で、長時間労働者に対する面接指導が行われておらず、産業医が、時間外労働や休日の労働時間が月に100時間を超える長時間労働者に対する面接指導の実施を求めました。また、80時間を超える労働者に対しても、面接指導の実施が望ましいとされました。さらに、労働時間が100時間を超えた長時間労働者の氏名や、長時間労働に関する情報の提供が求められ、企業によって面接指導の実施体制の再構築などが行なわれ、問題の是正に至ったという事例です。
- 事例(2)
またある企業では、繰り返し産業医が指導を行なったにもかかわらず、適切な配慮がなされず、長時間労働が常態化してうつ病の労働者が続出していました。さらに、法令で定められた有害物質が発生する作業場での環境測定や排気装置の設置が行なわれなかったことにより、最終的に産業医が勧告権を行使するに至った、という事例です。
事業者は産業医の勧告を尊重し、しかるべき対処をする必要がありますが、大前提として、産業医から勧告を受けることがない、快適な職場環境の整備に取り組むことが大切です。
産業医のドクターストップ(勧告権)が無視された場合、訴訟に発展する可能性も
産業医の勧告を無視した結果、労働者に健康被害が生じた場合には、訴訟に発展するおそれもあります。特に、メンタルヘルス不調は目に見えないものであり、素人による判断で問題を悪化させる可能性も大いにあります。したがって事業者は、産業医の意見を尊重し、労働者が健康的に働ける環境づくりに努めることが重要です。
産業医の復職面談に関する詳しい内容は、下記の関連記事をご覧ください。復職面談の目的や復職判断の基準、主治医と産業医の意見書の違いなども解説しています。
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産業医による復職面談とは?目的や復職の判断基準と注意点を紹介休職者が職場復帰した際に求められる企業の対応
ここでは、休職者が職場復帰した際に企業がとるべき対応について紹介します。
職場復帰支援プログラムの実施
職場復帰支援プログラムとは、職場復帰支援の流れを明確にした計画書のことです。産業医のアドバイスを受けながら、事業場の実態に合うプログラムを事前に策定することで、職場復帰を希望する休職者へのスムーズな対応が期待できます。
休職者が職場復帰を希望した場合、企業は職場復帰支援プログラムをもとに、産業医や主治医、管理監督者などと連携を図り、個々の労働者に合わせたケアを行なうようにしましょう。
問題が起きてから都度対処するのではなく、いつ・何が起こっても、すべての事業場で同じように適切な対応ができるように準備しておくことが重要です。
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職場復帰支援プログラムにひな形はある?プラン作成や実施手順についても詳しく解説就業規則・マニュアルの整備
休職制度は、労働者の心身の健康を守るために大切な制度です。休職を認める基準、診断書の提出の要否、期間延長の可否などについては、あらかじめ就業規則やマニュアルに明記しておきましょう。
さらに、個人情報の取り扱いについても、明確なルール設定が必要です。特に労働者の健康に関する情報は、慎重に扱う必要があります。衛生委員会における審議を通してルールを定めたら、関係者への周知を行ないましょう。また、担当者や管理監督者に対して、個人情報の取り扱いに関する研修を実施するのも有効です。
職場環境の見直し
休職後の職場復帰にあたっては、就業上の配慮が必須です。元の職場への復帰が基本となりますが、状況によっては、配置転換を視野に入れましょう。
作業場所や作業内容の変更、短時間勤務、出張制限などについては、職場復帰支援プログラムに産業医の意見、治療の状況などを照らし合わせて、関係者で検討します。
復職後も適宜フォローアップを行ない、労働者の勤務状況と健康状態を確認し、職場環境を見直すことでスムーズな職場復帰が実現できます。
試し出勤制度の導入
復職して通常業務に戻ったとしても、業務負荷に耐えられず、再び休職してしまうケースは少なくありません。そこで、再発予防や労働者の不安軽減のために、試し出勤制度を導入するのも一つの方法です。
試し出勤制度とは、段階的に職場復帰の準備を行なうことで、リハビリ勤務制度とも呼ばれます。具体的には、以下のような勤務形態を提案します。
- 模擬出勤:勤務時間と同様の時間にデイケアなどで軽作業を行なったり、図書館で時間を過ごしたりする
- 通勤訓練:自宅から職場付近まで移動し、一定時間過ごしたあとに帰宅する
- 試し出勤:職場復帰の可否を判断するため、一定期間継続して出勤する
出典:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省
産業医のドクターストップ(勧告権)の強化を徹底解説
平成31年1月27日に行なわれた「政策法制度委員会」において、産業医の権限強化に関する答申が行なわれました。
これに先立って始まった「第13次労働災害防止計画」では、産業医・産業保健機能の強化が謳われ、働き方改革関連法の成立を受けて「労働安全衛生法」「労働安全衛生規則」が改正されています。これにより事業者には、衛生委員会への報告義務が課されました(改正労働安全衛生法第13条第6項)。
改正労働安全衛生規則第14条の3第4項において、事業者が衛生委員会に報告すべき内容は、以下のように定められています。
(2)勧告を踏まえて講じた措置または講じようとする措置の内容
(3)措置を講じない場合は、講じないこととその理由である(改正労働安全衛生法第14条の3第4項)
また、この法改正では、下記の内容も付け加えられました。
改正労働安全衛生法第13条第3項
産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
改正労働安全衛生規則第14条第7項
産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない。
出典:
労働安全衛生法|e-Gov法令検索
労働安全衛生規則|e-Gov法令検索
まとめ
産業医によるドクターストップ(勧告権)は、労働者の健康に深刻な被害を与えかねない問題が、事業者によって改善されない場合などに行使されます。
産業医の勧告を無視した結果、事業場で何らかのトラブルが起こると、訴訟問題に発展するリスクもあるため、事業者は産業医の勧告を真摯に受け止め、改善を図る必要があります。
産業医の勧告権が強化されたことで、企業における産業医の重要性はますます高まっています。産業医の活動は、労働者の健康の保持増進、職場環境改善の観点で非常に重要であるため、自社に合った有能な産業医を探すことが大切です。
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