人事労務必見!産業医と衛生管理者の違いや届出手続きについて一挙紹介!

産業医 衛生管理者

執筆者

産業保健師・行政保健師として定期健康診断での面談、特定保健指導、メンタル相談、ストレスチェック、復職支援・相談、産業医診察の介助、職場巡視などさまざまな経験をしました。現在は子育てをしながらライターとして活動中です。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

産業医と衛生管理者はどのような役割や違いがあるのか
産業医と衛生管理者の兼任は可能なのか
衛生管理者の資格取得方法や合格後の届け出について知りたい

上記のような疑問を持つ方に向けて、本記事では両者の仕事内容や資格、巡視頻度や選任条件の違いをわかりやすく整理し、兼任の可否や注意点なども解説します。

効率的に体制を整えるためのヒントとしてぜひご活用ください。

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産業医の仕事内容とは?

産業医とは、職場の安全や従業員の健康を守る医師です。産業医の仕事は法律で定められており、主に以下の9つです。

(1)健康診断の実施とその結果に基づく措置
(2)長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
(3)ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
(4)作業環境の維持管理
(5)作業管理
(6)上記以外の労働者の健康管理
(7)健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
(8)衛生教育
(9)労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

その他には、月1回の職場巡視や衛生委員会への出席なども含まれます。また、50人未満の事業場は地域産業保健センターが、従業員の健康相談や健康管理などを行います。

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産業医の選任義務について

労働安全衛生法によって、以下の条件に該当する事業場は産業医の選任義務に対応しなければいけません。

区分 50人未満 50人~999人 1,000人~3,000人 3,001人以上
嘱託産業医 選任義務なし
専属産業医も可
(※1)
専属産業医
1人

2人以上
(※1)ただし、有害業務に500人以上の労働者を従事させる事業場においては、専属産業医の選任が必要になります。

労働安全衛生規則第13条第1項によって、従業員数が50人以上になったら14日以内に産業医を選任しなければいけません。そして、選任をしたら所轄の労働基準監督署に届け出が必要です。

選任しないと罰則あり

産業医の選任は義務であるため、必要な人数の産業医を選任していないと罰則があります。違反した場合、50万円以下の罰金に処せられます。そのため、選任事由が発生した時点で、速やかに選任をしてください。

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衛生管理者の仕事内容とは?

衛生管理者は、従業員の健康障害を防止するために衛生に関する管理を行うなどの役割を担っています。労働安全衛生法で決められている国家資格です。

選任基準は常時、使用している従業員が50人以上いる事業場です。選任する人数は、従業員数で違います。

衛生管理者の選任人数
従業員数 選任数
50人以上~200人以下 1人以上
201人~500人以下 2人以上
501人~1,000人以下 3人以上
1,001人~2,000人以下 4人以上
2,001人~3,000人以下 5人以上
3,001人~ 6人以上

産業医のように嘱託ではなく、必ず専属の衛生管理者を選任してください。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合、そのうちの1人が労働衛生コンサルタントであればうち1人は専属である必要はありません。また、誰でもなれるわけではなく、条件を満たしていることが必要です。

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衛生管理者の仕事内容

衛生管理者の仕事内容は、以下の4つが代表的な業務です。

(1)労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
(2)労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
(3)健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
(4)労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること
等のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。

少なくとも週1回は職場巡視をし、安全な労働環境か確認することで健康を害する要因はないかなどをチェックします。そして、改善ポイントがあれば該当部署に伝え、従業員の健康を守らなければいけません。また、衛生委員会のメンバーに含まれます。

衛生管理者を選任しないと罰則がある

衛生管理者は選任しないと、罰則があります。具体的には、労働安全衛生法で50万円以下の罰金に処せられます。そのため、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署に届け出てください。

衛生管理者の資格取得方法

衛生管理者の資格を取るには、公益財団法人安全衛生技術試験協会主催の国家試験に合格しなければいけません。ただし、下記の資格を取得している場合は、衛生管理者試験を受験することなく、第一種衛生管理者を名乗ることができます。

試験免除資格
必要な資格 資格を証明するもの
大学または高専で、医学に関する課程を履修し卒業した者 ・卒業証明書
・学位記 など
大学において、保健衛生に関する学科を専攻して卒業し、労働衛生に関する講座または学科目を修めた者 ・卒業証明書
・学位記 など
※労働衛生に関する講座が選択科目の場合は、履修証明書も必要
保健師免許取得者 ・保健師免許
薬剤師免許取得者 ・薬剤師免許

次の項から一般的な受験資格や取得方法などをご紹介します。

第一種か第二種かを決める

第一種と第二種があり、業務内容に大きな違いはありません。業種に違いがあるため、詳しくは下記の表で違いを参考にしてください。

種別 特徴
第一種 ・有害業務を含む、すべての業種(機械修理業、医療業、建設業、製造業など)で選任可能
・危険度が高い業種も可能
第二種 ・一部の業種(サービス業、情報通信業など)で選任可能
・有害業務がなく危険度が低い業種に限る

受験資格

受験資格は、最終学歴によって異なります。共通していることは、卒業後、一定の実務経験が必要であることです。

最終学歴 必要な実務経験年数
省庁大学 1年以上
大学
高等専門学校 3年以上
高等学校
中高一貫校
高等学校卒業程度認定試験を合格
学歴問わず 10年以上の実務経験者

実務経験として認められるのは、以下の13項目です。

    実務経験の対象業務
  • 1. 健康診断実施に必要な事項又は結果の処理の業務
  • 2. 作業環境の測定等作業環境の衛生上の調査の業務
  • 3. 作業条件、施設等の衛生上の改善の業務
  • 4. 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備の業務
  • 5. 衛生教育の企画、実施等に関する業務
  • 6. 労働衛生統計の作成に関する業務
  • 7. 看護師又は准看護師の業務
  • 8. 労働衛生関係の作業主任者(※1)としての職務
  • 9. 労働衛生関係の試験研究機関における労働衛生関係の試験研究に従事
  • 10. 自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務
  • 11. 保健衛生に関する業務
  • 12. 保健所職員のうち、試験、研究に従事する者等の業務
  • 13. 建築物環境衛生管理技術者の業務
※1 作業主任者の職務について:高圧室内、エックス線、ガンマ線透過写真撮影、特定化学物質、鉛、四アルキル鉛等、酸素欠乏危険、有機溶剤、石綿
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産業医と衛生管理者の違いって?

「産業医」と「衛生管理者」は混同されやすい役割ですが、いずれも労働安全衛生法に基づき必要とされています。ただし資格要件や担う役割は大きく異なり、その違いを正しく理解することが重要です。ここでは両者の違いをわかりやすく解説します。

資格の違い

産業医と衛生管理者の「資格の違い」は以下のとおりです。

項目 産業医 衛生管理者
取得に必要な条件 医師免許+産業医学研修修了 国家試験合格(第一種・第二種衛生管理者)や講習受講+修了試験合格(衛生工学衛生管理者)
業務範囲 労働者の健康管理全般 労働環境の衛生管理
資格の取得難易度 医師免許取得後の専門研修が必要で高難度 衛生管理者の場合、合格率40〜50%程度の国家試験の受験が必要(業種によって第一種・第二種と種別あり)
専門性 医学的判断を行う専門職 職場の安全衛生活動を担う実務職

業務内容の違い

産業医と衛生管理者の業務内容の違いについてまとめた表は下記のとおりです。

項目 産業医 衛生管理者
おもな役割 「人」の健康を守る専門職。労働者の心身の状態を把握し、医学的判断に基づきケアや助言を行う 「環境」を管理する実務職。労働環境の改善や労災防止を通じて、安全で快適な職場を維持する
法律上の位置づけ 労働安全衛生法第13条に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任義務あり 労働安全衛生法第12条に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任義務あり
日常的な業務 健康診断の実施〜結果確認、長時間労働・高ストレス者への面接指導、事業場の月1回以上の職場巡視、衛生委員会への参加、衛生教育、労働者・企業への医学的助言など 週1回以上の職場巡視、作業環境測定の管理、保護具や設備の点検・整備、衛生教育の実施、労働災害の原因調査と再発防止策の検討・実行など
かかわる対象 おもに「人」で、労働者の健康状態やメンタル面にかかわる業務を行う おもに「環境」で、作業場や施設などを中心に管理し、労働者が健康かつ安全に働ける環境づくりを行う
衛生委員会での役割 医学的視点から健康や安全に関する助言を行う 現場の安全衛生活動を報告し、改善策を実行に移す

このように、産業医は労働者を守り、結果的に企業を支える「産業医学の専門家」、衛生管理者は「安心して働ける環境を整える専門家」といえます。両者が連携することで、健康と安全の両面から職場を支える仕組みが実現します。

職場巡視の頻度の違い

産業医と衛生管理者では、職場巡視の頻度が異なります。労働安全衛生規則に基づき、産業医は月1回以上、衛生管理者は毎週1回以上の巡視が必要です。

これは役割の違いによるもので、産業医は医学的な視点から職場全体を評価・助言し、衛生管理者は日常的に現場を見守って小さな変化や危険を早めに把握するためです。

実務上は、産業医が月1回の職場巡視に加えて面談や助言を行い、衛生管理者が日常的に細かく現場をチェックすることで、互いに補い合いながら安全で健康的な職場づくりを支えています。

選任条件の違い

産業医と衛生管理者の選任は、いずれも労働安全衛生法に基づく義務で、常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象です。産業医は1名以上(嘱託可)を基本としつつ、事業場の規模や有害業務の状況に応じて体制が強化されます。

おおまかな目安として、常時使用する労働者数が50人〜1,000人までは嘱託または専属が1名以上、1,001人以上は専属1名以上、3,001人以上は専属2名以上の配置が必要です。また、特定の有害業務に一定数の労働者が従事する場合も専属の要件がかかります。

一方、衛生管理者は規模に応じて必要人数が段階的に増えるのが特徴です。労働者数が50〜200人で衛生管理者1名から始まり、人数帯が増えるごとに2名、3名と増加し、3,001人を超えると6名が最低基準となります。

事業場規模別の選任条件早見表
常時使用する労働者数 産業医(選任義務・人数) 衛生管理者(選任義務・人数)
50人未満 義務なし 義務なし
(10〜49人は安全衛生推進者等の選任が必要な業種あり)
50人〜200人 1名以上(嘱託可) 1名以上
201人〜500人 1名以上(嘱託可)
※ただし、労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる有害業務の場合は専属産業医の選任が必要
2名以上
501人〜1,000人 1名以上(嘱託可) 3名以上
1,001人〜2,000人 1名以上(専属) 4名以上
2,001人〜3,000人 1名以上(専属) 5名以上
3,001人〜 2名以上(全員専属) 6名以上

産業医が衛生管理者を兼任できる?

衛生管理者は「専属でなければいけない」と決められています。例外ケースも存在しますが、要件を満たすことで、常勤かつ専属の産業医が衛生管理者を兼任することは可能です。

例外的に会社の労働者以外を衛生管理者に選任することが認められる条件は、下記3点を満たす必要があります。

(1) 事業場について、安衛則第7条第3号のロに掲げる「農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業」業種の事業場であること。
(2) 衛生管理者として選任する者について、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許若しくは衛生工学管理者免許を有する者又は、医師や労働衛生コンサルタントなど安衛則第10条各号に掲げる者であること。
(3) 衛生管理者として選任する者に係る労働者派遣契約又は委任契約(以下単に「契約」という。)において、衛生管理者が職務を遂行しようとする事業場に専ら常駐し、かつ、その者が一定期間継続して職務に当たることが明らかにされていること。

知りたい!衛生管理者になる為の試験や届出手続きとは

衛生管理者になるためには、国家試験を受験し合格しなければいけません。そのため、衛生管理者を目指している方は受験をして合格をしましょう。試験日は、公益財団法人安全衛生技術試験協会のホームページで確認できます。会場は以下の7ヶ所にある安全衛生技術センターです。

  • 北海道
  • 東北
  • 関東
  • 中部
  • 近畿
  • 中国四国
  • 九州

試験日程は、受験する月と会場によって違います。開催頻度は少ない月で1〜2回、多い月では6回程度も開催されています。そのため、受験しやすい場所や日程で選びましょう。

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衛生管理者試験に合格後はどうする?

衛生管理者試験に合格をしたら、免許の申請が必要です。申請には必要書類を揃えて、一式郵送する必要があります。

衛生管理者の免許申請手続きの流れ

申請の手続きは、必要書類を揃えて簡易書留郵便で「東京労働局」に郵送することで完了します。
次に、必要書類は下記の通りです。

(1)申請書類を入手する

申請には専用の申請書類が必要で、試験当日に配布している書類を、各労働基準監督署・都道府県労働局・厚生労働省のホームページでダウンロードをしてください。

(2)必要書類

申請書類以外で申し込みに必要なものは全部で5点あります。

  • 写真(縦3cm×横2.4cm)
  • 申請手数料:1,500円分の収入印紙
  • 免許試験合格通知書
  • 専用の定型封筒
  • 切手:404円分

全国どこで受験をしても東京労働局に提出します。

〒108-0014
東京都港区芝5丁目35番2号 安全衛生総合会館内
東京労働局免許証発行センター
産業医選任ガイドブック
【関連お役立ち資料】

産業医を探す方法

産業医を探す方法には、医師会への相談や健康診断を依頼している医療機関からの紹介、専門の産業医紹介サービスの活用など、いくつかのルートがあります。それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合う方法で探すことが大切です。

実際の探し方や具体的な手順については下記リンクで詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

産業医と衛生管理者は、それぞれ異なる資格と役割を持ちながら、職場の健康と安全を守るうえで欠かせない存在です。産業医は医師として労働者の健康面を支え、衛生管理者は日常の現場で労働者の職場環境を整えるなど、互いに補い合って機能します。

つまり、どちらか一方では十分ではなく、両者が連携してこそ職場全体の安心と安全が守られるのです。まずは自社の体制を振り返り、必要な人材を正しく選任し、連携を強化することから始めましょう。