産業医を置く条件とは?仕事内容や必要な人数についてもご紹介!

産業医を置く条件

執筆者

人材マーケティング会社で求人広告の作成、進行管理業務に従事していました。その後、編集プロダクションにてフリーランスの編集ライターを経験いたしました。
産業看護師は未経験ですが、私と同じように未経験の方にも読みやすい記事を心がけ、執筆に取り組みたいと考えております。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

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産業医って何?労働者の健康管理を行います

産業医とは、労働者が健康で安全な作業環境で仕事が行えるよう医学に関する専門的知識をもとに指導・助言を行う医師のことです。産業医の仕事内容にいずれも共通していることは、労働者が健康に働けるようにサポートすることです。

たとえば、従業員が働く環境として適切かを確認し、必要に応じて助言を行うことも役割のひとつです。ここからは、産業医がどんな場面で職場と従業員の健康状態を把握し、企業に対し助言を行っているのかを事例を交えて2つご紹介します。

  • 産業医による職場巡視
  • 産業医が関わる健康診断とは

まず初めに、作業環境の把握を目的として定期的に実施義務が発生する職場巡視について解説していきます。

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産業医による職場巡視

職場巡視は、労働安全衛生規則第15条で定められている産業医の重要な業務になります。
職場巡視では室温、照明の明るさはもちろん、休憩室が確保されているか、キッチンやトイレなどの水回りは衛生的かなど、安心して休むための環境が整っているかを確認します。
危険な環境での仕事に限らず、デスクワークや販売など職業によっても心身への影響や発生しやすい労働災害は異なります。

一般的に多い、オフィスワークでの職場巡視ですと職場の雰囲気や照明、空調や作業姿勢は

  • 眼精疲労、頭痛、腰痛
  • 憂うつやだるさ

など心身に影響を与えるため、事業場は専門的知識のある産業医に職場巡視の結果と助言をもらい、従業員の健康管理を行っています。

近年増加しているテレワークでは、定期的な巡視で作業環境を確認することが難しくなっています。2021年3月25日、厚生労働省がテレワークのガイドラインを公開しており、その中でテレワークの作業環境についても触れられています。

具体的には、ディスプレイを用いる場合の書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とし、作業しやすい照度とすること、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすることが望ましいとされています。されています。その他にも室温については、室温17〜28度、相対湿度40〜70%に調整するよう努めること、机やイス、パソコンについてもガイドラインが示されています。

こうしたガイドラインや「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト」などをもとに、望ましい作業環境を整えるための指導や助言をすることも求められます。

次に、産業医が関わる健康診断業務

健康診断は、労働者の健康状態の把握と病気の早期発見を目的として実施されます。産業医は健康診断の結果に基づき生活指導や助言を行います。労働者の健康状態によっては必要に応じて治療や再検査を促すこともあります。

また、就業環境が心身に影響を及ぼしている場合には、産業医が企業に就業禁止や残業禁止、配置転換などの助言を行うことがあります。
近年は健康診断の結果だけではなく長時間労働やハラスメントへの関心も高まり、メンタルヘルスケアへの取り組みも注目されています。既に休職中の労働者や復職希望者がいる場合には、労働環境を把握している立場として、本人との面談や主治医との連携を行いながら復職の可否を判断する場合もあります。

働き方改革による定年の引き上げに伴い、65歳定年制を導入する企業も増加しています。労働者の高齢化が進んでいることから、これまで以上に労働者の健康管理への取り組みが重要視されていくことが考えられます。産業医は医師であることに加えて一定の要件を満たす必要があり、専門的な知識を持つ産業医は今後ますます必要とされるでしょう。

引用:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省

産業医の選任義務とは?従業員50人以上になったらすぐに選任しましょう!

労働安全衛生規則第13条第1項第1号では、事業者は常時50人以上の労働者を雇うに至った時から14日以内に産業医を選任しなければならないとされています。産業医の選任基準は、「事業場の人数」で決定します。支社、店舗、工場などの1拠点を1事業場と考え、事業場ごとに常時50人以上の労働者がいる場合にはそれぞれの事業場で産業医を選任する必要があります。

労働安全衛生法第120条では産業医を選任しない場合、50万円以下の罰金を処する、と定めています。産業医選任までの期間が短いため、事前に産業医の選任方法を検討しておくと安心です。

従業員数が50人未満の事業場が産業医を選任する場合、要件を満たすことで小規模事業場産業医活動助成金等の制度を活用できることがあります。「小規模事業場産業医活動助成金」は、産業医選任や産業保健体制の環境整備によって発生した費用を申請することで助成金が受け取れる制度です。助成金の詳しい内容については、労働者健康安全機構のホームページなどでご確認ください。

なお、法人の代表者を産業医として選任することは禁止されています。代表者が産業医を兼務することで企業の利益が優先され、労働者の健康管理が軽視されることを防ぐためです。企業内に医師がいる場合でも、条件によっては選任できないケースもあるので注意しましょう。

事業所の規模によって変わる!産業医の必要な人数

産業医は常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任しなければなりません。また、産業医には嘱託産業医と専属産業医がおり、事業所の規模によって以下のように選任基準が決められています。

  • 従業員50人未満…産業医選任義務なし
  • 従業員数50~999人…1人以上の嘱託産業医の選任が必要
  • 有害業務従事者500人以上(深夜業含む)… 1人以上の専属産業医の選任が必要
  • 従業員数1,000~3,000人…1人以上の専属産業医の選任が必要
  • 従業員数3,001人以上… 2人以上の専属産業医の選任が必要

嘱託産業医は、月1~2回と対応できる時間が限られているため、義務とされている業務(職場巡視や長時間労働者の面接指導等)を優先的に行います。

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専属産業医の選任条件とは?選任するポイントも

専属産業医は、常時1000人以上の労働者がいる事業場と、有害業務に従事している労働者が常時500人以上いる場合に選任しなければなりません。また、常時3000人を超える事業場では、専属産業医を2人以上選任する必要があります。

なお、常時500以上の労働者を従事させる場合、専属産業医の選任が必要な業務は以下の通りです。

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務

引用:産業医の関係法令|厚生労働省

専属産業医はいわゆる企業に勤務している産業医のことであり、一週間で数日勤務することが基本とされています。嘱託産業医よりも企業にいる時間が長いため、企業内のことを把握しやすく、疑問や問題が生じたときには相談しやすいでしょう。

一般社員と同じように企業内にいる専属産業医は労働者の変化に気付きやすく、従業員自身が体調に変化を感じた際に相談しやすいというメリットがあります。早期に従業員の体調変化に応じて対策をとることができるため、労働者の健康を守ることにつながるのです。

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【産業医になりたい人向け】産業医になるための条件や資格は?

産業医は医師であることに加えて以下のいずれかの要件を満たす必要があり、より専門的な知識が求められます。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

引用:産業医について|厚生労働省

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産業医の資格を取得する方法

前述した要件を満たしていない場合は、(1)(2)の研修等を修了するか、(3)の試験に合格することが産業医として働く近道です。一例として、日本医師会と産業医科大学が行う研修について紹介します。

(1)日本医師会の産業医学基礎講習について

日本医師会の「日本医師会認定産業医」制度の場合、所定のカリキュラムに基づく産業医学基礎を50単位以上修了する必要があります。

基礎研修の内容としては、前期研修として健康管理、メンタルヘルス対策、健康保持増進、有害業務管理などを含む14単位以上の履修が必要となります。さらに、職場巡視や作業環境測定実習などの実地研修を10単位以上に加え、後期研修として地域の特性などを考慮した専門的かつ実務的な研修を26単位以上履修する必要があります。

50単位以上を修了した医師、または、それと同等以上の研修を修了したと認められる医師に対して、申請に基づき日本医師会認定産業医の認定証を交付します。

(2)産業医科大学の産業医学基本講座について

産業医科大学の研修では「産業医学基本講座」として、大学所在地の北九州市では4〜5月の約2カ月間、東京では6月〜10月の約5カ月間、開講しています。

産業医学の基本的な知識として、産業医の制度と関係法令、職業関連性疾患とその予防等について解説を行い、実践的な技術として作業環境測定と快適職場の形成、労働衛生保護具の使い方などを講義やグループ実習で行います。講座の全授業科目の履修認定を受けることで、産業医学基本講座修了認定書が授与されます。

引用:産業医学基本講座 概要|学校法人 産業医科大学

時期によっては短期集中講座なども開講されています。臨床との両立は簡単ではありませんが、今後ニーズの高まることが期待される産業医に興味がある方はぜひ調べてみてください。

産業医選任ガイドブック
【関連お役立ち資料】