産業医と産業看護職2名体制/長時間労働者の面談対応から不調の再発予防までケア
働きすぎはデメリット多数!長時間労働のリスク
働きすぎによるデメリットやリスクをしっかりと理解することは、長時間労働の問題を是正する第一歩になります。そこでまずは、長時間労働のリスクについて解説します。
生産性が低下する
労働者を長時間働かせると、集中力や思考力が低下します。独立行政法人労働安全衛生総合研究所の調査によると、長時間労働をすればするほど、昼間の過度の眠気や短時間睡眠、疲労回復ができていない人の割合が増加することがわかっています。
日中の眠気や疲労感は、仕事の能率や生産性を大きく低下させるため、長時間労働の最大のデメリットの一つといえるでしょう。
うつ病・過労死のリスクが上がる
常態化した長時間労働は、うつ病などの精神疾患や過労死にもつながります。真面目で仕事熱心な方ほど頑張りすぎてしまい、自身が抱えるストレスに気付かないまま、心身の健康を害してしまうのです。
また、長時間労働で体が休まらない状態が続けば、脳や心臓に深刻な疾患を引き起こすおそれもあります。長時間労働による心身の疾患は命に関わるケースもあるため、労働災害として認められています。
人件費の負担が増える
長時間労働が続くと、企業の残業代の負担が大きくなります。休日労働や深夜業などの法定労働時間(1日8時間、週40時間)以外の労働には、割増賃金の支払いが必要です。割増賃金は、通常の賃金の2割5分以上とされています。
そのため、長時間労働が常態化すると労働者へ支払う残業代が継続的に発生し、企業側の負担が大きくなります。
人材の定着率が低下する
長時間労働が当たり前の企業は、離職率が高く、人材不足に陥りやすい傾向にあります。離職する労働者が増えると、会社に残った労働者に業務の負担が集中してしまい、休職者や退職者が増え、さらに残った労働者への負担が集中する……といった悪循環ができあがります。その結果、世間からはいわゆる「ブラック企業」として認知されてしまうのです。
「ブラック企業」として悪評が広まれば、採用活動にもマイナスの影響が出ることは避けられず、慢性的な人材不足に苦しむことになります。
【行政の長時間労働対策】時間外労働の上限規制とは?
これまで、時間外労働の上限は厚生労働大臣の告示によって定められていましたが、罰則による強制力はありませんでした。しかし、2019年4月(中小企業は2020年4月)より、長時間労働対策として「時間外労働の上限規制」が法律に規定されました。
法改正により、時間外労働は「月45時間、年360時間」を上限とし、違反すると罰則が科されるおそれがあります。
また、大規模なトラブルやクレームによる緊急性の高い業務など臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも、以下を守らなければなりません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が、複数月(2~6ヵ月)平均で月80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヵ月まで
出典:厚生労働省 「時間外労働の上限規則 わかりやすい解説」
企業には、長時間労働を行なうデメリットやリスク、そして法律上の上限規定をしっかり把握し、長時間労働を削減するための対応が求められています。
長時間労働を削減する7つの方法
では、長時間労働を削減するためにはどうすればよいのでしょうか。ここからは、長時間労働を削減するための方法を7つ紹介します。
長時間労働を削減する方法(1)長時間労働削減の指針を示す
長時間労働を削減するには、企業のトップや人事が率先して労働者に指針を示すことが大切です。
しかし、ただ「長時間労働をなくそう」と伝えても、あまり意味がありません。「労働者が長く、健康的に働ける環境を整備するため」「残業代を削減し、浮いたコストを賞与に回すため」など、労働者にとってメリットとなる明確な理由を伝えることが大切です。
指針を示す際には、「1ヵ月あたり○時間の削減を目指す」「週に1回、ノー残業デーを実施する」といったように、削減目標を具体的な数値で示すようにしましょう。
長時間労働を削減する方法(2)労働者の労働時間を把握する
長時間労働を削減するには、労働者一人ひとりの労働時間の実態を正しく把握する必要があります。労働時間の把握方法は、原則として、勤怠管理システムやタイムカードなどを利用し、客観的な方法で確認・記録するのが望ましいとされています。
参考:厚生労働省 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
勤務時間を自己申告制にしてしまうと、労働時間を適正に把握することは困難です。在宅勤務などの場合は、パソコンの使用時間を記録するなどして、客観的把握に努める必要があります。
長時間労働を削減する方法(3)評価基準を見直す
「仕事が終わらなかったら残業すればいい」「残業しないとやる気がないように見られる」などと考え、残業ありきで仕事をする労働者も存在します。したがって、長時間労働の削減を目指すなら、「成果」に加えて「生産性」も適切に評価することが大切です。
「通常の労働時間のなかで仕事を終えることで評価される」という新たな評価基準を労働者に明確に伝え、メリハリをもって働くことを促しましょう。
長時間労働を削減する方法(4)業務の効率化を図る
長時間労働削減のためには、業務内容の見直しも必須です。当たり前のように行なっている日常業務のなかに潜む「無駄」を見つけ出し、改善を図りましょう。
例えば、ただ理念を唱えるだけのルーティン化された朝礼、不必要な会議、丁寧すぎる文章で送る社内メールなど、効率化できる無駄は無数にあるはずです。
一日たった10分ほどの業務でも、一週間で約1時間、一ヵ月で約4時間もの時間を費やすことになります。業務内容を見直し、不要なものはできるだけなくしていきましょう。
長時間労働を削減する方法(5)働き方の選択肢を増やす
裁量労働制やフレックスタイム制、テレワークなど、働き方の選択肢を増やせば、労働者のストレスや疲労を軽減することができ、結果的に長時間労働の削減につながります。
ただし、新しい制度を導入することで、細かなルールや労働時間の管理方法などについて、改めて検討する必要が出てきます。運用方法の定期的な見直しや、労働者からのヒアリング、第三者からの意見聴取などを行ない、自社に最適なかたちに制度をアップデートしていきましょう。
長時間労働を削減する方法(6)有給休暇を取得しやすくする
適度な休息は生産性やモチベーションのアップにつながるため、積極的に有給休暇の取得を促すことが大切です。
しかし、日本では有給休暇を取りにくい風潮が残っています。「上司や先輩が取らないから自分も取れない」「休むと周囲に迷惑がかかる」などと考え、取得を躊躇する方も多いでしょう。
したがって、社内で有給休暇を取得しやすくする仕組み作りが大切です。企業全体で労働者の有給休暇の取得率をチェックし、有給休暇の消化ができていない労働者に対しては、上司や先輩から積極的に有給休暇の取得を勧めましょう。
長時間労働を削減する方法(7)匿名のアンケートで実態を把握する
企業のトップや人事担当者だけでは、現場の実態や課題の把握は難しいでしょう。そこで、完全匿名のアンケートを社内で実施し、労働者目線での課題を挙げてもらうとよいでしょう。
匿名で集めた労働者の本音をもとに、課題が改善されていけば、「一労働者の意見も取り入れてもらえる」ということが伝わり、企業と労働者の信頼関係の構築にもつながります。すると、積極的にアンケートに協力してくれる労働者が増え、さらにスムーズに課題解決に取り組めるようになるはずです。
テレワークの長時間労働にも注意!効果的な対策とは?
近年、広く普及したテレワークは革新的な働き方である一方、長時間労働が発生しやすいという問題も抱えています。最後に、テレワークで長時間労働が発生する理由や、企業が行なうべき対策について解説します。
テレワークでかえって労働時間が長くなる理由
テレワークで長時間労働が発生する理由として、以下の要因が挙げられます。
- 仕事とプライベートの区別がつきにくい
- 労働時間の管理が難しい
- 「目に見えない残業」が発生する
自宅で働くテレワークでは、時間に関係なく仕事ができるため、出社していた頃より働きすぎてしまう方も少なくありません。
また、テレワークでは自己申告で労働時間を管理するケースがほとんどで、「少しくらいの残業は申告しなくてもいいか」などと自己判断する労働者も出てくるでしょう。こうして、企業側が把握できない「目に見えない残業」が発生してしまうのです。
テレワークの長時間労働対策
では、テレワークにおける長時間労働を防ぐためには、どのような対策が必要なのでしょうか。具体的な対策方法は以下のとおりです。
- テレワーク時の時間外労働、休日労働、深夜労働を原則として禁止する
- 業務時間外や休日、深夜のメール送付を控える
- 社内システムへのアクセス制限をする
- テレワーク時の残業申請がしやすくなるようシステムを整える
- 労働時間を正しく把握し、報告するように労働者への意識づけをする
大切なのは、「テレワーク制度の整備・徹底」「労働者への周知・意識づけ」です。前述した「長時間労働を削減する方法」と合わせて、適正な労働時間の把握と長時間労働への対策に努めていきましょう。
まとめ
今回は、企業が行なうべき長時間労働対策について解説しました。企業には、労働者の健康と安全を守る安全配慮義務があります。
「長時間労働対策をしたいけど、何から始めたらいいのかわからない」「すでに長時間労働者が発生しているため、早急に対応したいが社内リソースが足りない」などとお困りの企業担当者の方には、「リモート産業保健」のサービス利用がおすすめです。
「リモート産業保健」では、企業ごとの課題に合った産業医の紹介をはじめ、長時間労働対策を含む産業保健体制を整えるための一括サポートを行ないます。すでに長時間労働者が発生している場合にも、産業医や産業看護職などの専門家が面談を行ない、健康状態の確認やその後の適切な対応などについてアドバイスします。
オンラインでの面談も可能であるため、リモートワーク中心の企業でも安心して相談できます。まずはお気軽に下記リンクよりお問い合わせください。
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