従業員が休職する際に必要な産業医の面談とは?メンタルヘルス対応に関して解説!

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人事・労務の方必見!従業員のメンタルに不調が出たら休職の判断を!

休職に関しては、法律上で定められていることではないため、各企業の就業規則に基づいて行うことになります。もちろん、企業や事業者には安全配慮義務が課せられているため、従業員の健康と安全を守ることが何よりも重要なことは押さえておきましょう。

では、従業員にメンタルヘルス不調が発生した場合、休職の判断ポイントはどこなのでしょうか?

これから紹介する流れの他にも、従業員本人が体調不良を自覚して医療機関を受診し、診断書が企業に届いてそのまま休職という流れもあります。その際は、産業医を通さず休職になりますが、休職後、本人が回復傾向にあり、産業医や企業担当者と話ができるようになったら、少しずつ状態を確認していくことが必要ですので、そういったケースもあることを押さえておきましょう。

ここからは企業がメンタルヘルス不調のある従業員に気づき、休職判断をする流れを紹介します。

  1. メンタルヘルス不調が発生
  2. 医療機関への受診勧奨
  3. 主治医から診断書をもらう
  4. 企業が診断書を受理し、本人へ連絡して休職措置を取る

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上記の流れを詳しく説明しながら、判断ポイントを確認していきましょう。

1)メンタルヘルス不調が発生

メンタルヘルス不調者に気づく方法はいくつかありますが、代表的なのは以下の3つです。

  • ストレスチェック ⇒ 高ストレス判定がでた場合
  • 過重労働 ⇒ 長時間労働や身体的・精神的に負荷の大きい労働を行っている
  • 日々の業務の様子 ⇒ 欠席・遅刻・早退が増えた、イライラしている、落ち込んでいる等

上記を把握して、対応が必要かどうか判断していきます。メンタルヘルス不調が発生した場合は、早期発見と適切な対応が重要になります。

企業や事業者だけで曖昧な判断をすることで、従業員の症状の悪化を予防できない可能性もあります。そうなると、安全配慮義務違反となることもあり得ますので、「おそらく大丈夫だろう」という判断はしないようにしましょう。

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2) 医療機関への受診勧奨

先述している通り、メンタルヘルス不調者が発生した場合、できる限り早期に対応することが求められます。特に管理監督者(上司)は、従業員の様子が「いつもと違う」ことにいち早く気づき、声をかけたり、話を聞くことが大切です。

その際に必要であれば医療機関への受診を促したり、産業医等の産業保健スタッフへの相談を勧めることが必要です。

メンタルヘルス不調は本人も含めて専門知識がなければ判断が難しいですが、いち早く発見し、医療機関や産業保健スタッフへつなぐことで、その後の治療や回復の経過にも影響を及ぼします。

早期対応・治療が行えるよう、企業側は相談しやすい環境づくりや受診等に伴う業務内容や勤務時間の変更等、柔軟な対応を行えるように整備しておきましょう。

3) 主治医から診断書をもらう

メンタルヘルス分野は判断がとても難しく、曖昧な見解で判断すると取り返しのつかない事態になりかねません。そのため、産業医や従業員の主治医に意見をもらうことがとても重要です。

ただし、産業医や主治医が行うのはあくまで医学的な判断なので、最終的に休職等の判断を行うのは企業や事業者です。企業に産業医がいる場合は従業員と産業医面談を実施し意見書を提出してもらい、主治医に意見をもらう際は就業についての診断書を作成してもらうようにしましょう。

また、就業に関する判断として、業務時間や作業内容の調整についての意見をもらうこともあります。そういった場合は、主治医に意見をもらいたい項目を入れた文書を事前に従業員本人へ渡し、受診時に記入してもらう等、企業として適切でスムーズな対応を行えると良いでしょう。

4) 企業が診断書を受理し、本人へ連絡して休職措置を取る

企業として休職措置を取ることになったら、本人へ連絡し、休職に入ってもらいましょう。また、休職措置に確認や対応等で時間がかかる場合は、本人の状態を考慮して、有給や休業等で休んでもらい、そのまま休職に切り替わる旨を伝えても良いでしょう。

休職措置となる場合は、従業員本人へ休職の目的を説明して、納得してもらった上で休職に入れるようにしましょう。
今後の人事評価に関わることや生活への不安などから休職を拒否する従業員も実際にはいます。しかし、メンタルヘルス不調者を無理に働かせると、症状が悪化し、さらに悪い状態になりますし、責任を取るのは企業や事業者です。

休職の必要性や「今まで頑張ってきたから休むことも大切な仕事」と説明し、従業員本人が納得できるように寄り添い、不安があれば1つずつしっかりと説明していくように心がけましょう。

従業員が休職したらどうする?必要な手続きとは

では、従業員が休職した場合、どのような手続きが必要なのでしょうか?それぞれ役割が異なるため、企業側と産業医に分けて考えて行きましょう。
【企業側】
就業規則に則った対応を進めていき、以下の内容を休職者へ確認します。

・休職〜復職までの大まかな流れ
・休職期間(医師の診断書と就業規則における休職期間)
・給与の支払いや社会保険料
・傷病手当金等の給付金(支給要件や健康保険組合への申請方法等)
・自立支援医療制度の説明(対象者あり)
・休職中の連絡方法(月に1回程度と最低限にする)
・復職時に必要な書類(主治医の職場復帰可能の意見書等)

【産業医】
休職中でも不安や悩みを相談できる場を設けたり、会社内の相談体制や外部の相談機関についての情報提供を行います。必要があれば、従業員本人の同意を得た上で、主治医との情報共有を行いましょう。

産業保健スタッフの中でも、産業医はスタッフの中心となって、主治医との連携や事業者に対する情報提供や意見を行います。

また、経済的に不安を抱える休職者の場合は、通院を中断してしまう可能性もあるため、「自立支援医療制度」について説明しておきましょう。

「自立支援医療制度」とは、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

対象となる障害や治療がありますが、制度を活用しながら、休職中も安心して継続的に通院できるようサポートしていきましょう。

従業員の休職中に企業側ができるサポートと産業医の役割

従業員の休職時の手続きについて説明しましたが、休職中はどのように対応するべきでしょうか?休職中の対応も企業側と産業医で分かれますので、それぞれ確認していきましょう。

【企業側】
休職直後は、休職者の心身を回復させるために、連絡は最小限に留めておきましょう。メンタルヘルス不調による休職だと、会社から連絡があるだけで心理的負担になってしまう可能性があります。

ただし、休職していることへの罪悪感や不安から、会社から連絡が来ないことに対して、「会社にとって不必要かもしれない」という孤独感を感じ、「もう復職できないかもしれない」と思う休職者は少なくないため、連絡を取らないことがストレスになっていることもあり、注意が必要です。

適度な距離感を保ちつつ、できる限り同じ人が連絡することで、信頼関係が構築されやすいため、そういったことに注意しながら対応していくことが大切です。

休職からしばらく経ち、休職者本人は日常の生活サイクルが整ってきたら、復職に向けて準備を行っていきます。

この時期に急に担当者からの連絡頻度が増えることで、本人が復職に対して焦りやプレッシャーを感じてしまう可能性もあるため、企業担当者は本人から復職についての連絡があるまで待つことが望ましいでしょう。

そして、休職者本人の社会生活が可能な段階になると、復職へ向けて企業担当者は手続きを行っていきます。

ただし、復職直後に責任のある業務を担当したり、長時間労働が必要な環境である場合は症状が再発することも考えられるため、企業は復職後の配属先や環境の調整を慎重に行っていく必要があります。

休職者から復職の意思が確認できたら、企業側は従業員に対して、主治医による職場復帰可能と判断が記された診断書を提出するように伝えます。

会社として就業上の配慮に対する主治医の意見が必要であれば、事前に決まった書式を準備しておき、その書式へ主治医に記入してもらうと復職への準備が比較的スムーズに進みやすいでしょう。

しかし、主治医の判断は日常生活の状態において職場復帰が可能と判断されている事が多く、必ずしも業務上問題なく復帰できる状態と判断されているとは限りません。そのため、企業側は主治医の判断と併せて、産業医による就業可否の意見をもらい、職場復帰の判断をする必要があります。

休職開始から復職判断まで説明してきましたが、どの段階でも「休職者が安心して働くことができる状態へ回復できるようなサポートを行う」ことが大切です。急いで復職させて、病気が再発してしまっては意味がありません。

休職者にできる最大のサポートは、適度な距離感をとりながら、安心して復職できるような環境づくりです。ぜひ、意識して環境づくりを行いましょう。

【産業医】
前項で記載しているように、産業医は休職者の相談先として休職者に不安の傾聴や情報提供等を行いましょう。休職初期は、まずは自身の状態を理解できるようにすることが大切です。

連絡をとりすぎると休職者にストレスがかかる場合があるため、企業側と同様に、必要以上の連絡は取らず、事前に定期連絡の頻度を決めたり、休職者から連絡や要望があった際に対応する等の適度な距離感で関わっていきましょう。

休職者の復職意思があり、主治医による職場復帰可能と判断が記された診断書が提出されたら、産業医面談を行っていきます。もちろん、企業の方針により、診断書提出前に産業医面談を行うこともあります。

主治医の診断書を参考に、産業医面談で本当に復職が可能なのかを判断し、企業に報告します。主治医の診断書は病状の回復程度の確認、産業医の報告は実際の業務内容や環境で就業可能かどうかの確認として行い、企業側は復職の最終判断を行います。

産業医は企業と従業員の中立の立場として、実際の業務内容を把握した上で就業可能な状態かを判断する役割があります。従業員と企業の中立かつ、医学的立場として「本当に就業可能なのか」、「業務内容や作業環境は適切なのか」等を判断し、職場復帰のサポートを行いましょう。

産業医がやるべき従業員の復職支援!

では、具体的な復職支援について説明していきます。従業員の職場復帰に向けて、産業医がやるべきことは以下の通りです。

    1)職場復帰可能かどうか判断する
    2)職場復帰支援プラン作成時の意見を行う
    3)職場復帰後のフォローアップ

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順番に確認していきましょう。

1)職場復帰可能かどうか判断する

こちらは前項で記載した通り、主治医の診断書や実際の業務内容・作業環境を確認し、「本当に就業可能なのか」を判断していきます。従業員本人や主治医の判断だけでは業務遂行能力まで回復しているのかわからないことが多いため、面談を行うなどをして、本人の状態を確認します。

2)職場復帰支援プラン作成時の意見を行う

職場復帰が可能と判断された場合には、企業側が職場復帰支援プランの作成を行います。その際は、業務遂行能力の有無も関わってくるため、主治医や産業医の意見は不可欠です。

そのため、職場復帰支援プランは、企業側や従業員本人だけの希望で作成せず、産業医の意見を踏まえて決定されるため、医学的専門家として、従業員個々に合わせたプランの作成をサポートしていきましょう。

3)職場復帰後のフォローアップ

産業医は疾患の再発防止のために、従業員本人と面談を行い、症状や治療の状況を確認していきます。治療については必要時、主治医との連携も行っていきます。

また、産業医は職場復帰支援プランの実施状況を確認し、評価と見直しを行うため、企業側と連携し情報共有を行います。そのため産業医は、従業員と企業側のどちらのフォローも行い、従業員が通常業務に復帰し、安定するのを継続的に支援していく必要があります。

産業医面談〜従業員の復職後はどのくらいの頻度で行うべきか〜

では、従業員の職場復帰後はどのくらいの頻度で産業医面談を行うべきでしょうか?早速結論になりますが、就業制限が解除され、通常業務に戻るまでは1ヶ月に1回、その後は2〜3ヶ月に1回程度面談を行いましょう。

従業員本人と相談をしながら、面談によるフォローが必要なくなった場合は実施しなくても良いでしょう。ただし、メンタルヘルス不調はきっかけ1つで再発しやすいため、本人や主治医と確認しながら、慎重に判断していきましょう。

また、従業員本人には「いつでも相談に来て良いこと」を伝え、今後メンタルヘルス不調があっても、再休職を回避できるようなサポートを行っていきましょう。

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まとめ

いかがでしたか?メンタルヘルス不調は対応を間違えてしまうと取り返しのつかないことになりかねません。しかし、産業医と連携し、適切なサポートを行うことで、休職してしまっても、改めて通常業務が行えるまでの回復が可能です。

企業や事業者は従業員を守り安全配慮義務をしっかり果たすために、メンタルヘルスへ早期対応できる環境づくりやメンタルヘルス不調が発生した場合は産業医と連携を取るなど、職場のメンタルヘルス防止体制を整えていきましょう。

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