企業が遂行すべき「安全配慮義務」とは?健康診断など具体的な方法を紹介

安全配慮義務

そもそも安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、労働者が安全な環境で健康的に働けるように、企業側が必要な配慮をすることです。労働契約法第5条、労働安全衛生法第3条第1項において、以下のように明記されています。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:労働契約法第5条

(事業者等の責務)
第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

引用:労働安全衛生法第3条第1項

労働者は企業にとって大切な資産であることから、安全配慮義務は労働者が一人でもいれば発生します。労働者が働きやすい環境作りと企業の今後の成長のためには、安全配慮義務を果たすことが必要不可欠です。事業者や企業担当者は必ず押さえておきましょう。

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安全配慮義務の対象者|海外赴任者なども含まれる?

安全配慮義務の対象者には、自社の労働者だけではなく、同じ現場で働く下請け企業の労働者や派遣社員のほか、海外赴任者も含まれます。

海外赴任者に対しては、赴任先の自宅・就労場所の安全確保や定期的な健康状態の確認などを行ない、健康と安全を確保しなければなりません。国内の労働者への対応とは異なる点もありますが、いずれにしても企業として誠実に向き合うことが求められます。

安全配慮義務は、企業の名の下で業務を行なうすべての労働者が対象になると覚えておきましょう。安全配慮義務は企業の責務ですが、部長・課長や工場長・現場リーダーなどの管理監督者も、自社が義務を果たすための補助をすることが求められます。

企業側だけではなく、現場で働く労働者が一丸となって課題を出し合い、改善することで、健康的に働ける環境作りが可能になります。

安全配慮義務に違反した場合、罰則はある?

安全配慮義務違反に対する罰則はありません。ただし、企業側が対策を怠り、労災や健康被害につながった場合、労働者やその家族からの損害賠償請求が起こる可能性があります。

安全配慮義務違反は賠償金の支払い以外にも、企業に大きなダメージをもたらします。「労働者の健康や安全の確保に配慮していない企業」と世間に知られれば、企業イメージの低下はもちろん、売上の減少や社内外の信用失墜につながりかねません。

最悪の場合、経営の危機に立たされるリスクもあります。成長しながら経営を長く続けるためには、安全配慮義務と常に向き合い、労働者が安心して働ける職場を整えることが必要です。

安全配慮義務違反となるのは?押さえておきたいポイント

では、具体的にどのような場合に安全配慮義務違反となるのでしょうか。安全配慮義務違反に該当するかどうかは、以下2つのポイントで判断します。

労働者に過失があったか

まずは、労働者の過失が原因で事故や健康被害が発生したのかという点です。労働者側の過失で労災や健康被害が起こった場合には、賠償金が減額される可能性があります。

労働者の過失の一例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 健康診断で「要精密検査」と出ていたが、検査していなかった
  • 企業側が安全のための指示を出していたにもかかわらず、従わなかった

労働安全衛生法第26条では、労働者側に対する「自己保健義務」を明示しています。つまり、企業側が講ずる対策や措置に応じて、自身を守る義務があるのです。

ただし、労働者に過失があっても、企業側が必要な配慮を怠ったことで事故や健康被害が発生した場合は、労働者だけではなく企業側の安全配慮義務違反も問われます。

健康を害する可能性を予見できていたか

次に、労働者が健康を害する可能性があると予測できたのかという点です。健康被害が起こる可能性が予測できたにもかかわらず、危険回避の配慮を行なわなかった場合は、安全配慮義務違反にあたる可能性があります。

労働者が危険な作業を行なう場合は、危険回避のための服装・装備をさせる必要があります。企業側は、労働者が行なう業務内容や業種、場所などに合わせた予防策をとることで、労働者の怪我や病気を防がなければなりません。

予防策は、有害物質を扱う業種や高所での作業を行なう業種などだけではなく、デスクワークや営業職といった危険と結びつきにくい業種においても必要です。

また、安全配慮義務には体の健康だけではなく、いじめやパワハラなどによるこころへの健康被害防止も含まれます。

予測できる危険は状況によってさまざまであるため、必要な配慮は企業の業種や作業内容、環境によって異なるでしょう。

安全配慮義務を果たすために、企業ができる7つのこと

安全配慮義務を果たすための対策は具体的に決められていません。しかし、安全配慮義務の目的は労働者の健康と安全を守ることであるため、産業保健の専門家である産業医と連携して取り組みを進めるのが有効です。

ここからは、安全配慮義務を果たすために、企業ができる具体的な取り組みを7つ紹介します。

安全配慮義務を果たす方法(1)労働環境の整備

労働環境の整備を行なうことで、労働者の作業負荷の軽減や、健康被害を起こしうる危険の排除につながります。

具体的な対策として、設備・機械の定期点検、安全装置の取り付け、作業場所の温度管理などが挙げられます。その他、オフィスや作業スペースを清潔にすることや、機械の点検・使用方法についてのルールを決めることも重要です。

労働者にとって働きやすい労働環境の条件や、業務に必要なルールなどは、事業場によって異なります。そのため、産業医による職場巡視や労働者からの声をもとに、見直しと改善を繰り返すことが必要です。

安全配慮義務を果たす方法(2)労働時間の適正化

労働者の労働時間を適正に保ち、長時間労働をさせない取り組みも、安全配慮義務の一環として重要です。長時間労働は心身の健康被害や離職率の増加につながることがわかっており、最悪の場合、過労死など命に関わる事態に陥る可能性も否定できません。

そのような状況から、企業外の相談窓口の設置や時間外労働の上限規制、違法な長時間労働を行なった企業名の公表など、国も労働時間の適正化に向けた取り組みを行なっています。

長時間労働削減のためにまずすべきなのは、トップが率先して方針を示すことです。そして、労働者の労働時間を正しく把握しましょう。特に在宅勤務では仕事の様子が見えないため、隠れ残業が発生しているかもしれません。

労働者が適正な労働時間内で働けるよう、業務時間の管理方法を見直して無駄な業務を削減し、タイムパフォーマンスの向上を目指しましょう。

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安全配慮義務を果たす方法(3)健康診断

健康診断では、生活習慣病の予防や病気の早期発見・早期治療を目的として、医師によるさまざまな検査が行なわれます。健康診断は、大きく分けて一般健康診断と特殊健康診断の2種類に分類されます。

一般健康診断には、雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断などがあり、事業者に実施が義務付けられています。(労働安全衛生法第66条、労働安全衛生規則第43条~第45条)

実施しない場合は、違法とみなされて罰則が科される可能性があるため、必ず実施しましょう。健康診断の実施は事業者の義務ですが、健康診断を受けることは労働者の義務です。(労働安全衛生法第66条第5項)

労働者に健康診断を受けてもらい、健康障害を予防することで、安全配慮義務の遂行につながります。企業側は労働者へ健康診断の目的を十分に説明したうえで、スケジュール調整を行ない、必ず受けてもらえるように体制を整えましょう。

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安全配慮義務を果たす方法(4)メンタルヘルス対策

企業が必要なメンタルヘルス対策を行なわず、労働者がメンタルヘルス不調に陥った場合は、安全配慮義務違反にあたる可能性が高いでしょう。

労働者がメンタルヘルス不調に陥ると、日々の業務や生活に支障をきたし、精神疾患や自殺などの問題に発展するおそれがあります。また、メンタルヘルス対策を怠ると、労働者の生産性の低下や休職・離職率の上昇につながります。

企業でできるメンタルヘルス対策として挙げられるのは、ストレスチェックや産業医面談です。ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、1年以内に1回の実施が義務付けられています。(労働安全衛生法第66条の10、労働安全衛生規則第52条の9)

自身のストレス状態に気付いた労働者には対処を促し、高ストレス者に該当した労働者には産業医面談を実施します。

本人の同意を得たうえで産業医面談を行なうことで、業務調整など適切な措置をとることが可能になります。

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安全配慮義務とは?義務の範囲や違反となるケース、具体的な対策法を解説!安全配慮義務とは?義務の範囲や違反となるケース、具体的な対策法を解説!

安全配慮義務を果たす方法(5)安全衛生教育

リスクを最小化するために環境を整備することは大切ですが、労働者本人が安全や健康に関する知識や理解を深めることも同様に大切です。

安全衛生教育では、業務における作業の手順や事故発生時の対処法、危険防止の方法、保護具の正しい使い方などを教えます。労災や業務に起因する怪我・病気が起こらないように、配置転換後の労働者や新入社員に対して、その都度速やかに安全衛生教育を行なうようにしましょう。

安全配慮義務を果たす方法(6)ハラスメント相談窓口の設置

産業医や産業保健の担当者と協力して、ハラスメントの相談窓口など、メンタルヘルス不調者向けの相談の場を設けるのがおすすめです。

近年、ハラスメント対策を進める企業が増加しています。職場でのハラスメントは、労働者のメンタルヘルス不調や休職・離職に直結するからです。

パワハラやセクハラが現場で起きている場合は、速やかに人事施策などを実行する必要があります。ハラスメントを放置すると損害賠償請求などの大問題につながるため、早めの対処を心がけましょう。

なお、ハラスメント相談窓口の設置は外部委託も可能なので、必要に応じて活用を検討してください。

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ハラスメント相談窓口を設置する必要性とは?窓口の種類も解説ハラスメント相談窓口を設置する必要性とは?窓口の種類も解説

安全配慮義務を果たす方法(7)海外赴任者への配慮

海外赴任は短期間であっても心身の負担が大きく、体調を崩しやすいため、企業による十分なサポートが必要です。具体的には、現地の治安への配慮、出張前の健康診断、感染症対策のための予防接種などが挙げられます。

海外赴任者は、生活環境の違いによるストレスや、仕事のプレッシャーが大きい点にも注意が必要です。赴任の準備にも時間が取られるため、労働時間以上の負担があるといえます。

心身の状況を確認するために産業医面談を積極的に実施するなど、専門家によるサポート体制を整えておくとよいでしょう。

まとめ

今回は、企業が遂行すべき「安全配慮義務」の概要と具体的な方法について解説しました。労働者の状況に合わせて対策を重ねていくことで、安全配慮義務を果たし、働きやすい職場を作ることができます。

しかし、労働者の心身の健康確保に有効な対策を検討・導入するためには、産業医や保健師、産業看護職などの専門家の協力が欠かせません。

「安全配慮義務を果たしたいが、何から始めたらいいのかわからない」「専門家のサポートを受けながら労働者の健康管理を行ないたい」という企業担当者の方には、リモート産業保健のサービスをおすすめします。

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