ワークエンゲージメントを向上させるには?測定方法や必要な理由、メリットを解説

ワークエンゲージメントを向上させるには?測定方法や必要な理由、メリットを解説

執筆者

看護師ライターとして活動しています。

総合病院で消化器外科、消化器内科、ICUを経験し、看護師歴7年です。手術や内視鏡手術を行う患者さんに接する機会が多く、術前術後の看護、日常生活のサポート、患者さんやご家族の心のケアなどを行なってきました。

結婚を機に病院を退職し、現在は二児の母です。子育てをしながら医療にも携わっていきたいと看護師ライターを始めて、もうすぐ5年になります。これまで学んできた「患者さんの気持ちに寄り添うことの大切さ」をライティングにも活かせるように精進する毎日です。

読んでいる人が飽きることなく最後まで読める文章づくりを目指し、「読んでよかった」と思っていただけるようなライティングを心がけています。

患者さんの些細な変化に気付くため五感を駆使していたので、おでこや首に触れてその人の体温を当てるのが得意です。

監修者

働く人の心身の健康管理をサポートする専門家です。従業員の皆さんと産業保健業務や面談対応から健康経営優良法人の取得などのサービスを通じて、さまざまな企業課題に向き合っています。私たちは、企業経営者・人事労務の負荷軽減と従業員の健康を実現するとともに、従業員に対する心身のケア実現を通じ、QOL向上と健康な労働力人口の増加への貢献を目指しています。

  • 「ワークエンゲージメントについて詳しく知りたい」
  • 「ワークエンゲージメントを向上させるメリットとは?」
  • 「ワークエンゲージメントを測定するには、どのような方法がある?」

上記のような、ワークエンゲージメントにまつわる悩みを抱えていませんか?

ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブな心理状態をあらわすもので、厚生労働省も取り入れている概念です。

本記事では、ワークエンゲージメントの基礎知識や向上させるメリット、高める方法、測定方法などについて解説します。

ワークエンゲージメントとは?3つの要素について解説

ワークエンゲージメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態のことを指します。オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが確立した概念で、「熱意」「没頭」「活力」という3つの要素で構成されているのが特徴です。

この3要素が満たされているほど、仕事に対してポジティブな心理状態であると定義されます。

  • 熱意(dedication)
    仕事に対して意味を見出し、誇りと情熱をもって意欲的に取り組もうとしている状態です。熱意が満たされていると、仕事に対して積極的になります。
  • 没頭(absorption)
    仕事をすることに幸福感を覚え、時間を忘れるほど深く集中している状態です。一度この状態になると、仕事が終わってからもしばらくは頭の切り替えが難しくなります。
  • 活力(vigor)
    仕事に取り組むうえでのエネルギーがみなぎっていて、逆境に対する打たれ強さがある状態です。活力が満たされていると、困難な仕事であっても挫けず前向きに取り組むことができます。

ワークエンゲージメントが高い人は、自己効力感も高いといわれています。そのため、会社や同僚に対してポジティブに向き合ったり、仕事から高い満足感を得たりすることができます。

ワークエンゲージメントの概念は、日本の働き方改革においても必要不可欠です。厚生労働省も『令和元年版労働経済の分析』のなかで、労働者の生産性の向上やストレスの軽減などを目指す政策や取り組みに力を入れるため、ワークエンゲージメントの概念に注目しています。

ワークエンゲージメントと併せて覚えておきたい、4つの類似概念

ワークエンゲージメントには、「ワーカホリズム」「職務満足感」「バーンアウト」「従業員満足度」という4つの関連する概念があります。ワークエンゲージメントと併せて覚えておくとよいでしょう。

ワーカホリズム(ワーカホリック)

労働者が仕事に対して否定的な感情をもっている一方で、活動水準は高い状態が「ワーカホリズム」です。労働者が仕事を失うことを恐れ、仕事をしなければならない状態に陥っている、といった状況です。

ワークエンゲージメントが高い場合は「働きたい」という気持ちで仕事をしていますが、ワーカホリズムに陥った状態では「働かなければならない」という気持ちで仕事をしています。そのため、一生懸命仕事をしているという点では同じですが、精神的に満たされているとはいえません。

職務満足感

「職務満足感」とは、労働者の仕事に対する感情は肯定的である一方で、活動水準は低い状態のことを指します。この状態の労働者は、仕事に対して「重要で意義のあるものだ」といったポジティブな感情をもっているものの、意欲的に仕事をしているわけではないため、活動水準が低いのが特徴です。

ワークエンゲージメントが「仕事に取り組んでいるときの感情や認知」を示すのに対して、職務満足感は「仕事そのものに対する感情や認知」を示しています。

バーンアウト

「バーンアウト」とは、仕事に対する感情が否定的で、活動水準が低い状態のことです。「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。

この状態の労働者は、労力を費やして仕事に取り組んだにもかかわらず、期待していた結果を得られなかった経験から、仕事に対する意欲を失っています。

仕事に対してポジティブな心理状態であることを示すワークエンゲージメントとは、真逆の概念といえます。

従業員満足度

「従業員満足度(Employee Satisfaction)」とは、職務内容や労働環境、福利厚生、働きがい、人間関係などに対する、従業員の満足度を示す指標のことです。Employee Satisfactionを略して、「ES」とも呼ばれます。

従業員満足度を高めることで、人材が定着しやすくなるほか、労働者の仕事に対する意欲・生産性が向上し、結果的に顧客満足度の向上が見込めます。

労働人口の減少や人材不足が課題となっている近年の企業経営において、従業員満足度を高めることは非常に重要です。従業員満足度の調査を行なう手順や注意点については下記の記事でまとめていますので、ぜひご覧ください。

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ワークエンゲージメントを向上させるメリット

ワークエンゲージメントが満たされていると、仕事に対してポジティブな心理状態を維持できます。本章では、ワークエンゲージメントを高めるメリットについて詳しく解説します。

ストレスの予防

近年では、ストレスチェックを定期的に行ない、メンタルヘルス対策を講じる企業が増えています。しかし、ストレスチェックはストレスの発生を前提とした対策であり、根本的な解決には至らないケースもあります。

ストレスによるメンタルヘルス不調への根本的な対策としては、ワークエンゲージメントの向上を図るのが効果的です。ワークエンゲージメントを高めることができれば、仕事に苦痛を感じることが少なくなり、ストレスの発生そのものを予防できます。

労働者のメンタルヘルス不調を予防できれば、企業全体がストレスに強い組織になっていくでしょう。

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パフォーマンス向上

ワークエンゲージメントが高まると、労働者は積極的にスキルアップに努めるようになり、結果的にパフォーマンスが向上していきます。スキルが身に付けば、自分の可能性を広げるために困難な仕事にも挑戦しようという意欲が生まれ、組織としての仕事の幅も広がるでしょう。労働者が高いパフォーマンスを発揮すれば、企業の生産性や業績の向上も期待できます。

さらに、新しい商品やサービスを開発したり、新規の顧客を獲得したりするチャンスも生まれます。労働者同士も良い影響を与え合い、組織も活性化していくはずです。

離職率の低下

ワークエンゲージメントを高めることは、労働者の離職率の抑制にもつながります。ワークエンゲージメントが向上すれば、会社に対する帰属意識や同僚に対する愛着を、労働者一人ひとりが感じるようになるはずです。

さらに、仕事にも情熱をもって取り組めるようになります。そうなれば、離職する労働者の数を大幅に減らすことができるでしょう。

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顧客満足度の向上

ワークエンゲージメントの向上は、顧客満足度の向上にもつながります。ワークエンゲージメントが高い労働者は、やりがいを感じながら仕事をするようになります。

やりがいをもって働き、自信に満ち溢れて自社のサービスや商品を説明する労働者の姿は、会社そのものをより魅力的に見せるでしょう。

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ワークエンゲージメントを高める方法とは?注目したい2つの資源

ワークエンゲージメントを高める要素として、「個人の資源」と「仕事の資源」があります。これら2つの資源が影響し合うことにより、ワークエンゲージメントは高まります。

個人の資源

個人の資源とは、心理的ストレスの軽減やモチベーションアップにつながる内的要因のことを指します。具体的には、「私ならできる」という自己効力感やポジティブ思考、自尊心など、自分に自信をもつための資源です。個人の資源が十分にあれば、人はストレスに立ち向かうことができます。

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仕事の資源

仕事の資源とは、上司や同僚、顧客などの外部から受ける刺激のことです。労働者の仕事に関する負担を軽減したり、モチベーションを向上させたりする効果があります。具体的には、仕事に対する裁量権、上司や同僚からのサポート、フィードバック、コーチングなどがこれにあたります。企業が労働者のワークエンゲージメントを高めるうえで、まずは「仕事の資源」の充実を目指すことが求められます。

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ワークエンゲージメントの3つの尺度と測定方法

ワークエンゲージメントを測定するには、「UWES(Utrecht Work Engagement Scales)」「MBI-GS(Maslach Burnout Inventory‐General Survey)」「OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)」という3つの方法があります。

UWES

「UWES」はワークエンゲージメントを測定する方法として高い安定性が認められており、最も広く活用されています。ワークエンゲージメントの高さを直接測定できることが大きな特徴です。

具体的には、ワークエンゲージメントの3つの要素(熱意・没頭・活力)に関する最大17項目の質問に答えることで、個人のワークエンゲージメントを測定します。

MBI-GS

「MBI-GS」は、直接ワークエンゲージメントを測るのではなく、バーンアウトを測定する方法です。仕事に対してネガティブな感情をもち、活動水準も低い状態を指すバーンアウトは、ワークエンゲージメントの対極にあります。したがって、直接ワークエンゲージメントを測ることはできませんが、MBI-GSの数値が低いほどワークエンゲージメントが高いと判断できます。

「消耗感(疲労感)」「冷笑的態度(シニシズム)」「職務効力感」という、3つの尺度に関する16項目の質問からなっています。

OLBI

「OLBI」はMBI-GSと同じように、バーンアウトを測定することでワークエンゲージメントを測定する方法です。職種を問わずに使用できることや、各要素で、肯定的または否定的な質問が同じ数設定されていることが特徴です。

質問の内容は、心身を含む「疲弊(Exhaustion)」と「離脱(Disengagement)」という2つの要素で構成されており、OLBIの結果が低いほどワークエンゲージメントが高いということになります。

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まとめ

企業がメンタルヘルス対策に取り組む際には、ワークエンゲージメントに注目することが重要です。ワークエンゲージメントは「熱意」「没頭」「活力」という3つの要素で構成されており、これらが満たされていれば、労働者は仕事に対してポジティブな状態であるといえます。近年、厚生労働省もこのワークエンゲージメントの概念に注目しています。

しかし、自社のリソースのみでワークエンゲージメントを正しく測定し、向上に取り組むのは、難しいケースも多いでしょう。そのような場合には、産業医をはじめとする産業保健スタッフの力を借りるのがおすすめです。

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