モチベーションアップに役立つ理論・活用方法6選&モチベーションを維持するポイント

モチベーションアップに役立つ理論・活用方法6選&モチベーションを維持するポイント

そもそも「モチベーション」とは?

モチベーションとは、人が行動を起こす際の「動機付け」や「やる気」のことです。報酬や利益などの発生によって行動が始まる「誘因(インセンティブ)」と、自分自身の内側から湧き上がる感情によって行動が始まる「動因(ドライブ)」の2種類があります。

人事領域では、労働者の仕事や業務に対する意欲という意味で用いられます。意欲は体調や精神面の状態によって変動するため、企業が適切な動機付けを行なうことで、労働者のモチベーションを維持することが重要です。

動機付けには、報酬やペナルティといった誘因を用いた「外発的動機付け」と、労働者の興味・関心がもととなる動因をきっかけとした「内発的動機付け」があります。

企業がさまざまな手法で動機付けを行ない、従業員のモチベーションアップを図れば、以下のような嬉しい効果が期待できます。

  • 従業員個人の生産性や業務の質の向上
  • 職場やチーム内の雰囲気改善
  • 離職率の低下
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企業におけるモチベーションの重要性とは?

モチベーションが高くなると、従業員は意欲を持って仕事に取り組むようになるので、新たなアイデアがうまれたり、仕事の質が向上したりします。

また、モチベーションが高い従業員が前向きな気持ちで仕事に取り組むことで、職場やチーム内の雰囲気が良くなり、離職率の低下にもつながります。

とはいえ、個人での動機付けには限界があるため、従業員のモチベーションアップへの取り組みは、企業一丸となって進めることが重要です。

モチベーションアップに役立つ理論と活用方法

労働者のモチベーションをアップさせる要因は、個人によってさまざまです。今回は、理論家の提唱する理論を活用し、モチベーションを高めるためのポイントを解説します。

マズローの5段階欲求説

「マズローの5段階欲求説」は自己実現理論ともいわれ、人間は自己実現のために成長するという考え方を前提とした理論です。以下のように、人間の欲求を低次元なものから高次元なものへ5段階に分類しています。

  • 生理的欲求:生きていくために最低限必要な、基本的欲求
  • 安全の欲求:生活をするうえで安全な(病気や事故のない)状態を求める欲求
  • 社会的欲求:所属や愛の欲求ともいわれる、集団への帰属意識や愛情を求める欲求
  • 承認欲求:他者から尊敬され、自分の行動を認められたいという欲求
  • 自己実現の欲求:自分の理想の姿への可能性の探求や、創造性の発揮を求める欲求

生理的欲求・安全の欲求・社会的欲求は低次元の欲求、承認欲求・自己実現の欲求は高次元の欲求とされ、高次元の欲求は他者からの評価や社会的地位を得ることで満たされます。

低い次元の欲求が満たされると次の段階の欲求がうまれるというのが、マズローの5段階欲求説の考え方です。この理論を活用する際は、労働者の立場や環境を加味したうえで、満たすべき欲求を判断する必要があります。

ハーズバーグの二要因理論

「二要因理論」とは、人が仕事に対して満足だと感じる「動機付け要因」と、不満を感じる「衛生要因」がモチベーションに影響するという理論です。仕事上で満足を感じたこと、不満を感じたことを、実際にアンケート調査した結果から誕生しました。

この理論で重要なのは、「この2つの要因は独立しており、互いに影響しない」ということです。つまり、不満の原因を解消しても、満足にはつながらないのです。

正当な給与や労働環境、人間関係などの衛生要因は「提供されて当たり前」と感じる労働者が多く、これらを満たし続けても満足にはつながりにくいといえます。

モチベーションアップのためには、仕事上での成功体験や正当な評価などの動機付け要因を満たす必要があります。個人の力量に応じた仕事の割り振りや、達成感を味わえる目標設定など、適切な施策を行なうことが重要です。

ブルームの期待理論

「期待理論」とは、行動を起こしたことで得られる結果への期待値と、その報酬の魅力によってモチベーションが決まるという考え方です。具体的には、「努力」「成果」「魅力」の3要素がかけ合わさることで、モチベーションが高まるとされています。

努力
どの程度の努力をすれば、成果に結びつくかを示します。モチベーションアップのためには適切な量の努力が必要で、簡単なルーティン作業や、達成が見込めないほどの努力を要する業務では、モチベーションアップにはつながりにくいでしょう。

成果
どの程度のレベルの仕事をすれば、目標とする成果を出せるかを示しています。努力した先の成果が自身の目標とするものでなければ、努力しようというモチベーションは上がりません。

魅力
最終的に得られる報酬に感じる魅力のことを示した言葉です。努力して成果を出しても、得られる報酬に魅力を感じなければ、前向きな行動にはつながらないでしょう。

この3要素はそれぞれ独立したものではなく、かけ合わさって作用することが前提なので、どれか1つでも欠けるとモチベーションの維持は難しくなります。

理由や目的がなくただ行なうだけの業務では、仕事に対するモチベーションが低下するため、適切な目標を設定したり、報酬を開示したりして、労働者が納得して仕事に取り組めるようにすることが大切です。

ロックの目標設定理論

「目標設定理論」とは、設定する目標の内容がモチベーションを左右するという理論です。明確で適度な難易度の目標を設定すれば、高い成果をあげることができるという研究結果が出ています。

なお目標には、以下の4つの要件がそろっていることが必須です。

  1. 困難を感じつつも達成可能な目標であること
  2. 目標の達成度を実感できるよう、具体的に可視化できる目標であること
  3. 自らが目標設定にかかわり、納得したうえでの目標であること
  4. 目標の達成度や努力によって得られた成果を、定期的にフィードバックすること

これら4つの要件のうち1つでも欠落すると、モチベーションアップの効果を発揮しにくくなります。労働者個人の力量に応じた具体的な目標設定をし、定期的にフィードバックすることで、目標の形骸化を防ぎ、モチベーションを維持できるようになるでしょう。

マクレガーのX理論Y理論

「X理論Y理論」とは、マズローの5段階欲求説を、経営組織の視点で深堀りした理論です。

「仕事嫌いで怠け者」というネガティブな部分をX、「自己実現したい自分」というポジティブな部分をYとして、人間の本質的な部分を2つに分け、管理者はそれぞれに合った対処法を行なうべきと主張しています。

X理論は、生理的欲求・安全の欲求・社会的欲求が強い人材に対する考え方です。ネガティブな要素が強いXは、指示や命令をされなければ仕事をしないとされ、ペナルティや賃金アップなどの「アメとムチ」によってモチベーションをコントロールすべきと提唱しています。

Y理論は、承認欲求・自己実現の欲求が強い人材に対する考え方です。ポジティブな要素が強いYは、自ら進んで自己実現のために行動するとされています。そのため、管理者は企業と労働者の間に立ち、双方の目標の方向性が一致するようサポートすることが求められます。

マクレランドの欲求理論

「欲求理論」は、冒頭で説明した「内発的動機付け」に着目し、人間の欲求を4つに分類したものです。

1.達成欲求
達成欲求が強い人は、報酬よりも自分の目標や努力に対しての達成度に重点を置き、向上心を持って行動します。1人で作業することを好み、自分の成果に対して迅速なフィードバックを求める傾向にあります。

2.権力欲求
権力欲求が強い人は、他者に指示されることを嫌い、周囲にいる同僚や部下を自分の影響下に置き、相手をコントロールしたいと考えています。効率的に成果を出すことよりも、周囲からの信望や高い地位を得ることを重視します。

3.親和欲求
親和欲求の強い人は、周囲との協調性を重視し、人の役に立ちたいと考えて努力を惜しまない性質があります。チームにおいては、リーダーではなく周囲のサポート役など、自分が役に立っている実感を得られる環境でこそ能力を発揮できるでしょう。

4.回避欲求
回避欲求の強い人は、失敗を恐れて目標を低く設定したり、適切な目標でも避けようとしたりする傾向があります。マイナスの要素の多い人材ですが、弱点を克服できるようサポートすることが管理者に求められます。

部下をマネジメントする際には、この4つの特性を理解したうえで、適切なモチベーションの引き出し方を工夫するとよいでしょう。

仕事へのモチベーションを維持するポイント【労働者編】

仕事へのモチベーションを維持するには、労働者自らが積極的に行動することが重要です。そこで本章では、仕事へのモチベーションを維持するポイントを、労働者目線で紹介します。

段階的な目標設定を行なう

最初は少しの努力で達成できる目標を設定し、成功体験を積み重ねていくことで、モチベーションはアップしていきます。例えば、一週間単位の目標を細分化して一つひとつクリアすれば、挫折することなく習慣化でき、やがては大きな目標を達成できるようになるでしょう。

進捗状況を可視化する

目標に対する進捗状況が可視化できるようになると、モチベーションを維持しやすくなります。特に、自分が思っていたよりも進捗が進んでいる場合には、努力を実感でき、もっと頑張ろうと前向きになれるはずです。

進捗状況の可視化では、ToDoリストを活用するのがおすすめです。メモでもアプリでも、自分にとって負担にならない方法で行なうとよいでしょう。

目標を周囲に公言する

目標を周囲に公言し、他人に注目される環境をあえて作ることで、適度な緊張感やプレッシャーが生じ、モチベーションを維持できるようになります。

また、同じ目標を持つ仲間がいるほうがお互いに士気を高めあえるので、ともに切磋琢磨する仲間を見つけるのもおすすめです。

オン・オフを意識する

オン・オフを意識的に切り替えるようにすることも、モチベーションの維持に役立ちます。リモートワークや持ち帰り業務の多い方は、オン・オフの切り替えがうまくできず、不調を抱えていることもあるでしょう。

モチベーションを維持するためには、心身の健康が欠かせません。改めて、十分な睡眠時間を確保できているかを確認したり、プライベートな時間を趣味に費やしてリフレッシュしたりすることで、仕事のときに集中力を発揮できるようになります。

仕事へのモチベーションを維持するポイント【管理者編】

モチベーション維持のためには、管理者が部下のモチベーションを適切に管理することも重要です。

そこで本章では、仕事へのモチベーションを維持するポイントを管理者目線で紹介します。「何のために行動するのか」という「動機付け」を、部下に意識させながら進めましょう。

業務量や労働環境の見直しを行なう

不要な業務や負荷のかかり過ぎる業務を削り、労働者の特性に合った業務を与えることで、モチベーションが高まって仕事に集中できるようになります。

業務量の増加や長時間労働は、モチベーションの低下につながる大きな要因です。能力やモチベーションの高い労働者であっても、キャパシティーを超える業務内容や長時間労働が続くと、次第にモチベーションが下がってくるでしょう。

管理者には、業務の量や内容をチェックするだけでなく、優先順位の見直しや、労働者の力量に合わせた業務の振り分けなどのマネジメントが求められます。

定期的に面談を実施する

定期的に面談を実施することは、部下のモチベーション維持につながります。現在抱えている課題を明確にし、問題解決に向けてのアドバイスをしたり、進捗状況を確認したりすれば、部下は安心して仕事に取り組めるようになります。

ただし、形だけの面談になっては意味がありません。「何のために面談を行なうのか」という目的や、最終的なゴールを設定するなどの適切な事前準備を、部下に促すことが重要です。上司・部下の両者が、面談の意味や主旨、ゴールを共有しながら進めることで、面談の効果を最大化できます。

部下の適切な目標設定をサポートする

具体的で達成可能な目標を設定できるように上司がサポートすることで、部下は自分が目標に近づいていることを実感できるようになります。

目標が曖昧だったり、非現実的だったりすると、「目標に近づけているのかわからない」「いつまで経っても目標に到達できない」などと感じ、モチベーションは低下していくでしょう。

適切な目標を設定し、仕事の意味を理解することで、労働者は「自分は会社に貢献できている」という実感を抱きます。その結果、モチベーションの維持はもちろん、従業員ロイヤリティの強化も期待できるでしょう。

必要に応じて、リモートワークなどを導入する

労働者のライフスタイルに合わせた働き方を用意することも、モチベーションをアップさせる効果があります。特に、近年普及が進んでいるリモートワークでは、通勤する必要がなくなるので、自分の時間が増えるほか、仕事へのストレスも緩和されるでしょう。

しかし、リモートワークではモチベーションの維持が難しいという側面もあるため、管理者によるマネジメント・コントロールが不可欠です。リモートワークに合ったコミュニケーションツールを使ってお互いの状況を共有し、部下が上司からのフィードバックを適切なタイミングで受けられるようにするなど、工夫する必要があります。

労働者のモチベーションアップには、産業医のサポートが欠かせない

労働者のモチベーションを維持するには、適切なメンタルヘルスケアが必須です。業務過多や長時間労働はメンタルヘルスに悪影響をおよぼすため、企業は責任を持って対処する必要があります。

具体的には、法令で定められたストレスチェックや、メンタルヘルス不調者に対する産業医や看護師との面談などを確実に実施していく必要があります。

自社だけでメンタルヘルス対策を行なうのが困難な場合は、外部に依頼するのがおすすめです。産業医の選任やその他産業保健活動のアウトソースを検討中の企業担当者様は、ぜひリモート産業保健のサービス利用をご検討ください。

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まとめ

今回は、理論家が提唱する理論をもとにした労働者のモチベーションアップの方法や、モチベーションを維持するポイントについて解説しました。モチベーションを維持することで、労働者個人は満足のいく働き方ができ、企業側は生産性を向上させられるため、企業全体で実践することが求められます。

しかし、実際に取り組みを進めるには健康経営に関する専門的な知識が必要であり、また産業医の協力が不可欠な場面も数多くあるでしょう。そのようなときにご活用いただきたいのが、リモート産業保健のサービスです。リモート産業保健では、業界最安値の月額3万円からで、医師や看護師などの産業保健スタッフによる、産業保健活動の一括サポートを受けられます。

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