ストレスチェックの集団分析結果を毎年受け取ってはいるものの、判定図の数値をどう読み、誰にどこまで共有してよいのか判断がつかないまま、衛生委員会への報告資料作りが後回しになっている人事労務担当者は少なくありません。個人結果を部署単位で集計するだけで終わり、そこから職場環境改善につなげる具体的な手順が社内に無いケースもあります。この記事では、集団分析の実施手順から判定図・総合健康リスクの見方、10人未満の部署の扱い、結果の開示範囲、職場環境改善への活用方法までを一次資料に基づいて整理します。
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この記事でわかること
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【1】集団分析の基本的な考え方と実施手順 -
【2】仕事のストレス判定図・総合健康リスクの読み方 -
【3】10人未満の部署を集団分析・開示するときの注意点 -
【4】集団分析結果を職場環境改善につなげる進め方
産業医と産業看護職の2名体制で、ストレスチェックの実施から集団分析結果の共有、衛生委員会での報告まで、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を軽減します。産業医面談にも対応しており、産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
ストレスチェックの集団分析とは(概要・対象人数)
ストレスチェックの集団分析とは、個人結果を部署などの集団単位で集計し、傾向を把握する分析手法です。個人ごとの結果だけでは見えにくい、職場やチーム単位のストレス要因を可視化する目的で行われます。対象人数の下限や実施の位置づけを正しく理解しておくことが、後述する開示範囲や活用方法を検討する前提になります。
ストレスチェックの集団分析とは何か
集団分析は、事業場の実施者(医師等)が、検査結果を部署などの一定規模の集団ごとに集計・分析するものです。実施の根拠は労働安全衛生規則にあります。
(検査結果の集団ごとの分析等)
第五十二条の十四 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
条文中の「努めなければならない」という表現のとおり、集団分析とその後の職場環境改善の措置はいずれも努力義務であり、実施そのものが罰則付きの義務ではありません。ただし、努力義務であっても実施しない理由にはならないため、多くの事業場が実施しています。
ストレスチェック全体の流れについては、ストレスチェックの実施方法を解説した記事もご覧ください。
集団分析を行うメリットとは
集団分析を行う最大のメリットは、個人結果だけでは見えない職場単位の傾向を把握できる点です。個々の申告内容を保護したまま部署やチームの課題を客観的な数値で捉えられるため、対応の優先順位も付けやすくなります。具体的には次の3点が挙げられます。
集団分析は個人への対応だけでなく、職場そのものの働きやすさを見直すきっかけとして位置づけられています。
集団分析の対象人数は?10人未満の部署の扱い
結論として、集団分析結果の下限は原則10人であり、10人を下回る集団については原則として結果の提供を受けられません。
集団分析結果については、集計・分析の単位が10人(※)を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。※集団分析の下限人数の「10人」は、在籍労働者数ではなく、実際の受検者数(有効なデータ数)でカウントする必要があります。
ここでの「10人」は在籍人数ではなく、実際にストレスチェックを受検した人数(有効なデータ数)で数える点に注意が必要です。一方で、複数の部署を合算するなど個人が特定されない集計方法であれば、10人を下回っていても集団分析自体は可能とされています。
いくつかの部署を合わせて集団分析を行うことも可能ですし、例えば対象集団について、ストレスチェックの評価点の総計の平均値を求める方法など個人が特定されるおそれのない方法であれば、10人を下回っていても集団分析は可能ですので、事業場の実情に応じ、工夫して対応していただきたいと思います。
つまり「原則として結果の提供を受けない」という原則と、「個人が特定されない方法であれば実施できる」という例外は、それぞれ別の論点を扱っており矛盾するものではありません。小規模な部署の扱いに迷う場合は、集計方法の設計自体を産業医に相談することをおすすめします。
ストレスチェックの集団分析の実施手順(4ステップ)
集団分析は、個人結果の集計から職場環境改善への接続まで、大きく4つのステップで進めます。全体の流れを先に押さえておくと、各ステップで何を判断すればよいかが整理しやすくなります。

(図:ストレスチェックの集団分析の実施手順(4ステップ))
(編集部作成)
実際には、集計や判定図の作成を誰が担当するのか、社内にノウハウが無く手が止まってしまうという実務上のハードルに直面する事業場も少なくありません。
STEP1.個人結果を部署ごとに集計する
最初のステップは、個人のストレスチェック結果を部署などの集団単位で集計することです。この集計・分析の作業は、実施者(医師、保健師等)または実施者の指示を受けた実施事務従事者が担当します。個人が特定されないよう、集計単位や担当者の範囲をあらかじめ決めておくことが重要です。
STEP2.分析対象となる集団(部署・職種)を設定する
集団分析の単位は部署が基本ですが、目的に応じて職種別・年代別・雇用形態別など、区分方法を変えることもできます。例えば同じ部署でも職種によってストレス要因が異なる場合は、職種別の集計を組み合わせることで、より実態に即した分析ができます。
STEP3.仕事のストレス判定図で分析する
集計したデータは、「仕事のストレス判定図」と呼ばれる図を用いて得点化し、標準集団(全国平均)との比較によって分析します。判定図には2種類あり、それぞれの軸の意味は次章で詳しく説明します。
STEP4.分析結果を職場環境改善につなげる
集団分析は、結果を出して終わりにするのではなく、職場環境改善の取り組みに接続することが重要です。具体的な活用の進め方は、後述の「職場環境改善の進め方」で解説します。
詳しくは、ストレスチェックの基本的な流れを解説した記事もあわせてご覧ください。
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ストレスチェックの流れってどうなっているの?現役産業医が徹底解説!
ストレスチェックの集団分析結果の見方(判定図と総合健康リスク)
集団分析の結果は、「仕事のストレス判定図」と「総合健康リスク」という2つの指標を用いて読み解きます。それぞれが何を表しているかを理解しないまま数値だけを見ても、職場のどこに課題があるのかを正しく把握できません。

(図:集団分析結果の見方(判定図と総合健康リスク))
(編集部作成)
量-コントロール判定図の見方
量-コントロール判定図は、仕事の量的負担と仕事のコントロール(仕事の裁量権)の2軸でプロットする判定図です。
仕事のストレス判定図は、2つの図からなっています。ひとつは、仕事の量的負担と仕事のコントロール(仕事の裁量権)を要因としてプロットされる「量―コントロール判定図」、もうひとつは、上司の支援と同僚の支援から作成される「職場の支援判定図」です。
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省

(図:量-コントロール判断図_ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
(出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
仕事のストレス判定図上の斜めの線は、仕事のストレス要因から予想される疾病休業などの健康問題のリスクを、標準集団の平均を100として表したものです。数値が100を大きく上回るほど、標準的な集団と比べてリスクが高いと解釈されます。自部署の数値だけを見るのではなく、必ず標準集団の平均(100)との比較で読む点がポイントです。
職場の支援判定図の見方
職場の支援判定図は、上司の支援と同僚の支援という2軸でプロットする判定図です。量-コントロール判定図が仕事そのものの負荷を表すのに対し、こちらは職場の人間関係・サポート体制の面からストレス要因を捉えます。この図でも基準は標準集団の平均を100とした比較です。上司の支援・同僚の支援のいずれかが極端に低い場合は、管理監督者へのフィードバック(後述)で重点的に取り上げる材料になります。

(図:職場の支援判定図_ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
(出典:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省)
総合健康リスクの計算方法と基準値の読み方
総合健康リスクは、2つの判定図の結果を掛け合わせて算出する指標です。
総合健康リスクを算出(「量-コントロール判定図の値」×「職場の支援判定図」/100)することができます。
ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
算出した数値の解釈については、次のような基準値の目安が示されています。
これまでの調査事例では、健康リスクが120を越えている場合には何らかの、仕事のストレスに関する問題が職場で生じている場合が多いので、評価の際の参考となります。
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル|厚生労働省
総合健康リスクが120を超えている場合は、その部署で何らかのストレス要因が生じている可能性が高いと考えられます。ただし、これはあくまで参考値であり、数値の解釈や対応方針の判断は産業医に相談することをおすすめします。
集団分析結果の読み方をさらに詳しく確認したい方は、健康リスクに関する解説記事もご覧ください。
ストレスチェックの集団分析結果の評価方法と高ストレス者の把握
集団分析の「見方」を踏まえたうえで、実務としてどのように評価を進めるかを整理します。判定図や総合健康リスクの数値を確認するだけでなく、誰が・いつ・どのような基準で評価するかをあらかじめ決めておくことが実務上の負担軽減につながります。
高ストレス者の把握と面接指導へのつなげ方
高ストレス者の把握は、集団分析とは別に個人結果に基づいて行われるものです。集団分析はあくまで部署単位の傾向把握であり、個人への対応(医師による面接指導の実施)とは役割が異なります。集団分析の結果、特定の部署に高ストレス者が偏っていることが分かった場合でも、個々の労働者への面接指導の要否は、個人結果に基づいて別途判断する必要があります。
高ストレス者との面談の進め方については、高ストレス者面談のメリット・デメリットを解説した記事で詳しく取り上げています。
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産業医面談のメリット・デメリットとは?ストレスチェックの高ストレス者への対応を解説
ストレスチェックの集団分析結果の開示範囲はどこまで?
集団分析結果は、誰にどこまで開示してよいかが実務上の悩みになりやすいテーマです。結論として、開示範囲・方法は事前に衛生委員会等で規定しておく必要があり、10人未満の集団については開示可否の判断がより慎重になります。
開示できる範囲と衛生委員会での決め方
集団分析結果を誰にどこまで開示するかは、あらかじめ実施規程等で定めておく必要があります。
実施者は、事業者向けに、集団分析の結果を説明しましょう。衛生委員会等の場を利用するのもよいでしょう。集団分析結果の開示方法や範囲については、予め実施規程で定めることが必要です。その上で、各職場に分析結果の説明を行う場合には、管理監督者に対する批評や批判と受け取られることがないように注意しましょう。集団分析結果は、職場の強みを伸ばすためのヒントである、と説明することが効果的です。
ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて|厚生労働省
衛生委員会等の場を活用して開示範囲・方法を事前に決めておくことで、後から「誰が見てよいのか」を都度判断する手間を減らせます。
10人未満の集団を開示するときの注意点
10人未満の集団については、前述のとおり原則として集団分析結果の提供を受けません。この原則は、個人結果を集計・分析する段階だけでなく、開示の段階でも同様に注意が必要です。複数部署を合算する、評価点の総計の平均値を求めるなど、個人が特定されないよう集計方法を工夫した場合に限り、10人未満の集団でも分析・開示ができる場合があります。開示範囲を決める際は、対象人数の下限とあわせて、集計方法そのものが個人を特定しない設計になっているかを確認してください。
開示範囲と会社が取るべき対応の全体像は、会社がストレスチェックで行うべき対応を解説した記事で確認できます。
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ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善の進め方
集団分析は、結果を出すこと自体が目的ではありません。分析結果を管理監督者に共有し、具体的な職場環境改善の取り組みにつなげて初めて意味を持ちます。ここでは、結果の伝え方から実際の改善事例までの進め方を順を追って解説します。
集団分析結果を管理監督者にフィードバックする方法
集団分析結果を管理監督者にフィードバックする際は、批判と受け取られないような伝え方の工夫が必要です。「職場の強みを伸ばすためのヒント」という位置づけで説明し、部署全体への研修と個別の説明を使い分けることで、管理監督者が前向きに受け止めやすくなります。
職場環境改善の取り組み事例
職場環境改善の具体的な取り組みとしては、作業環境の見直し(温熱環境の改善や照明のLED化など)、ハラスメント防止研修の実施、部署内のサブリーダー設置による相談体制の強化、定期的な情報交換会の開催などが、実際の事業場の事例として紹介されています。自社の集団分析結果と照らし合わせ、どの取り組みが該当する課題に近いかを検討する材料として活用できます。
集団分析結果を健康経営の取り組みに活かす方法
集団分析結果を分析・活用すること自体は、健康経営優良法人の認定基準上の直接の評価項目ではありませんが、職場の現状把握・改善活動の一環として位置づけることができます。健康経営の取り組み事例については、健康経営の取組み事例を紹介した記事もご覧ください。
集団分析では、経年での変化を追うことが職場環境改善の効果測定につながります。リモート産業保健のストレスチェックサービスなら、WEB版ストレスチェック(57項目)を無料で提供し、過去データを遡って確認できるため経年比較も可能です。実施者代行にも対応しており、実施体制の構築から高ストレス者への面談まで一貫して支援します。
ストレスチェックの集団分析でよくある質問(FAQ)
集団分析について、実務担当者からよく寄せられる質問に簡潔に回答します。
- Q,集団分析は義務ですか?努力義務ですか?
- A
集団分析は義務ではなく努力義務です。労働安全衛生規則第52条の14は、事業者に対して「集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない」と定めており、罰則を伴う実施義務ではありません。ただし、努力義務であっても実施しない理由にはならず、多くの事業場で実施されています。
- Q,10人未満の部署でも集団分析はできますか?
- A
複数の部署を合算する、個人が特定されない集計方法を用いるなどの工夫をすれば、10人未満の集団でも実施できる場合があります。ただし、個人が特定されるおそれがある方法では実施できないため、集計方法の設計を慎重に検討する必要があります。
- Q,集団分析の結果が悪かった部署には何をすべきですか?
- A
まずは労働時間や業務内容など、他の要因とあわせて状況をすり合わせることが重要です。そのうえで、産業医や産業保健スタッフに相談し、職場環境改善の具体的な進め方について助言を受けることをおすすめします。
まとめ
集団分析は、実施して終わりにするのではなく、判定図・総合健康リスクを正しく読み解き、開示範囲を事前に決め、職場環境改善につなげることで初めて価値を持ちます。判定図の見方や10人未満の部署の扱いなど、判断に迷う場面では医療専門職の視点が欠かせません。自社だけで対応が難しい場合は、リモートで対応できる産業保健の仕組みを活用することも選択肢の一つです。




