健康リスク評価・総合健康リスクとは?健康課題の生じやすい業種も紹介

健康リスク評価・総合健康リスクとは?健康課題の生じやすい業種も紹介

経済産業省が行なった「健康リスク評価」とは?

働き方改革やメンタルヘルス不調者の増加、新型コロナウイルスの影響により、近年、労働者の健康保持・増進を企業経営の一環ととらえる「健康経営」が、広く認知されるようになりました。

効果的な健康経営をしたい企業や健康経営を導入したい企業にとって、「健康リスク評価」を押さえることは重要です。

ここでは、経済産業省の事業「健康経営評価指標の策定・活用事業」の一環として、東大ワーキンググループ(WG)により行なわれた「健康リスク評価」について解説します。

健康リスク評価の目的

健康リスク評価の目的は健康課題の可視化です。可視化することで、組織の健康課題を経営陣と労働者間で共有しやすくなり、取り組みへの共通認識を持つことができます。

また、健康経営はデータ検証を行ないながら、中・長期的に実施していく必要があるため、現状把握に加えて、実施後の測定や評価も重要です。

可視化した健康課題とデータを活用して健康経営を行ない、健康リスク評価を活用してPDCAサイクルを回していくことで、労働者への適切なフォローが期待できます。

健康リスク評価の方法

東大ワーキンググループ(WG)で実施されたのは、以下の13項目のうち、当てはまる項目数を調べて判定する方法です。

  • 生物学的リスク(血圧、血中脂質、肥満、血糖、既往歴)
  • 生活習慣リスク(喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、睡眠休養)
  • 心理的リスク(主観的健康感、生活満足度、仕事満足度、ストレス)

上記項目のうち、5項目以上に該当すると「高リスク」、3〜4項目に該当すると「中リスク」、0〜2項目に該当すると「低リスク」という判定となります。

ストレスチェックの分析結果「総合健康リスク」とは?

ストレスチェックの分析結果では、各部署や事業場ごとの「健康リスク」を算出できます。ストレスチェックの結果を職場環境の改善へ効果的に反映させるためには、分析結果の意味を理解し、正しく読み取ることが重要です。

ここからは、ストレスチェックの分析結果で最終的に算出される「総合健康リスク」と、算出のために必要になる「健康リスクA」「健康リスクB」について解説します。

総合健康リスクは、ストレスチェックの集団分析から算出される

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度で、労働者数50人以上の事業場では年に1回の実施が義務付けられています。

ストレスチェック後に行なう集団分析から「総合健康リスク」を算出することで、企業や部署、事業場ごとのストレス状況を把握できます。(具体的な計算方法については後述)

集団分析は努力義務ですが、職場環境の改善や労働者の生産性アップのためにも、実施することが望ましいでしょう。

仕事のストレス判定図について

ストレスチェックの集団分析は、職業性ストレス簡易調査票で得た数値をもとに行ないます。調査票の回答を「仕事のストレス判定図」に反映させることで、ストレスの度合いを評価します。

仕事のストレス判定図は、以下の2つの図からなります。

  • 量ーコントロール判定図(=健康リスクA)
    横軸:仕事の量的負担、縦軸:仕事のコントロール
  • 職場の支援判定図(=健康リスクB)
    横軸:上司の支援、縦軸:同僚の支援

「総合健康リスク」は上記の判定図を踏まえて判断します。

健康リスクA(仕事の量的負担・仕事のコントロール)

健康リスクAは、仕事量の負担の程度と、仕事をうまくコントロールできているかどうかを判定するものです。

「仕事の量的負担」の数値が高い場合は、長時間労働による高ストレス状態や心身への影響が懸念されます。つまり、「仕事量が多く長時間労働になり、十分な休息時間が取れない」状態です。

ただし、「仕事の量的負担」の数値の高低が、ストレスの程度にそのまま反映されるわけではありません。

仕事量が多くても、自分のペースで仕事ができていて意見を出せる環境なら、それほどストレスは大きくならないでしょう。そのため、「仕事のコントロール(自由度、ペース)」の数値も健康リスクAの評価に関わってきます。

健康リスクB(上司の支援・同僚の支援)

健康リスクBは、上司や同僚からの支援の程度を判定するものです。「上司の支援」の点数が低い場合は、上司が適切にマネジメントできていない可能性があります。また、「同僚の支援」の数値が低い場合は、職場での人間関係がうまくいっていないことが考えられます。

周囲と円滑なコミュニケーションが取れていない、困ったときに相談できる相手がいないなどの場合、労働者のストレスは大きくなります。その状況が続けば、心身の不調や職場環境の悪化に至ってしまうかもしれません。

総合健康リスクの計算方法

健康リスクAと健康リスクBの判定図をもとに、「総合健康リスク」を算出します。企業の健康リスクの全国平均を100として比較することで、自社や自社の事業場・部署が、労働者の健康にどの程度の影響を与えているかを確認します。

総合健康リスクの算出方法は以下のとおりです。

(健康リスクA)×(健康リスクB)/100=総合健康リスク

総合健康リスクの数値が高い(100を超える)ほど、職場環境が労働者の健康に悪影響を与えているリスクが高いと判定されます。

企業や事業場、部署ごとにストレスチェックの集団分析を行ない、総合健康リスクの算出結果からリスクが高いと判定された場合は、ストレス要因の特定や対応を早急に行なうことが求められます。

総合健康リスクの高い業種3選

総合健康リスクが高い場合、仕事におけるストレスの負担が大きく、労働者が心身の不調に陥る危険性が高くなるため、早急かつ細やかな対応が必要です。では、総合健康リスクが高い業種とは何でしょうか。

総合健康リスクの高い業種(1)医療・福祉

最も総合健康リスクが高い業種は「医療・福祉」です。「医療・福祉」については、「仕事のコントロール」の数値が特に低い結果が出ており、これは自分の手で仕事をコントロールしづらいことを示しています。一刻を争う場面で命を扱う業種であることから、労働者自身のペースややり方で仕事を行なうのが難しい傾向にあります。

総合健康リスクの高い業種(2)運輸業・郵便業

次に総合健康リスクが高い業種は「運輸業・郵便業」です。「運輸業・郵便業」では、「上司・同僚とのコミュニケーション」の数値が特に低く、慢性的なコミュニケーション不足が健康リスクを高める大きな要因の一つになっていることが読み取れます。

運輸業・郵便業は1人で行なう業務が多いため、仕事に関する悩みや困りごとを相談する機会がないケースも珍しくないでしょう。

対策として、コミュニケーションの場を積極的に増やすことが重要です。上司や同僚との情報共有や雑談などを通して、仕事へのモチベーションや生産性の向上が期待できます。

総合健康リスクの高い業種(3)製造業

「製造業」も、「上司・同僚とのコミュニケーション」のリスクが高い結果が出ています。「運輸業・郵便業」と同じく、周囲とのコミュニケーションよりも1人で集中して行なう業務が多く、コミュニケーション不足に陥りがちです。

製造業においては特に、上司とのコミュニケーションに問題を抱えている企業が多い傾向にあります。わからないことや小さなミスをそのままにしてしまうと、大きな事故や怪我につながる危険性があるため注意が必要です。

毎日の挨拶や雑談など、細やかなコミュニケーションを取りつつ、報告・連絡・相談がしやすい職場環境を整えることが大切でしょう。

参考:共同通信PRワイヤー『健康リスクの高い業種は「医療、福祉」と「運輸業、郵便業」』

まとめ

今回は、「健康リスク評価」について解説しました。「健康経営に取り組みたいけれど、何をすればいいかわからない」「優先的に取り組むべき課題が何なのかわからない」と悩んでいる企業こそ、積極的に「健康リスク評価」を活用すべきといえるでしょう。

しかし、今回紹介したストレスチェックの集団分析を行なうのはハードルが高く、分析の経験や産業保健に関する知識が必要であるため、すぐに実施できない企業が多いのが現状です。

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