常時50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施後に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を作成し、所轄の労働基準監督署へ報告する義務があります。担当者にとっては年に一度の実務であり、記入項目の多さや提出方法の変化に戸惑う場面も少なくありません。
本記事では、報告書の正式名称や提出義務の根拠から、項目別の記入例、提出方法・提出先・提出期限、そして2025年1月から原則義務化された電子申請への対応までを、一次情報に基づいて解説します。
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この記事でわかること
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【1】報告書の正式名称と、提出義務がある事業者・罰則 -
【2】項目別の記入例(労働保険番号・在籍労働者数など13項目) -
【3】提出方法・提出先・提出期限の実務 -
【4】2025年1月から原則義務化された電子申請の内容と経過措置
ストレスチェックの報告書とは?正式名称は「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」
ストレスチェックの報告書とは、常時50人以上の事業場が年1回、労働基準監督署へ提出する法定の報告書です。通称「ストレスチェックの報告書」は、正式名称を「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」といい、労働安全衛生法第66条の10・労働安全衛生規則第52条の21を根拠とする制度です。
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
この検査の実施状況を、事業者は一定の周期で労基署に報告しなければなりません。報告義務そのものは以下のとおり規定されています。
常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、電子情報処理組織を使用して、検査及び面接指導の結果等について、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
ストレスチェックの制度全体(実施対象・実施方法など)については、ストレスチェックとは?対象者や実施義務をわかりやすく解説の記事で扱っています。本記事は、実施後の「報告書の作成・提出」という手続きに絞って解説します。
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ストレスチェックの報告書の提出義務がある事業者と、提出しない場合の罰則
提出義務があるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業者です。提出しない場合や虚偽の報告をした場合は罰則の対象になります。
提出しない場合や虚偽の報告をした場合は罰則の対象になります
労働安全衛生法第120条は、次の各号のいずれかに該当する場合、違反行為をした者を五十万円以下の罰金に処すると定めており、報告義務違反はその第5号にあたります。
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつたとき。
つまり、報告書の未提出・虚偽報告は50万円以下の罰金の対象です。常時50人以上という対象事業場の考え方について詳しくは、産業医の選任義務がある「常時50人以上」の考え方の記事もご覧ください。
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産業医の押印・署名は不要に(記名のみでよい)
ストレスチェックの報告書は、以前と比べて記入・確認の手間が簡素化されています。産業医の押印・署名は不要となり、記名のみで足りる運用になっています。
これは書面の電子化・オンライン申請の推進にあわせた運用変更であり、産業医が報告内容を確認し情報提供を受けるという実務そのものは変わっていません。押印・署名の手続きが不要になりましたが、産業医に内容を確認してもらう工程自体は省略できない点に注意してください。
ストレスチェックの報告書の書き方(記入例つき)
ここでは、報告書の様式入手から作成、産業医の確認までの流れを、項目別の記入例とともに解説します。
(1)ストレスチェックの報告書の様式を入手する
報告書の様式は、厚生労働省の案内ページから入手できます。現行の正式な様式番号は「様式第6号の3」です。
心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告|厚生労働省のページからPDF形式の様式をダウンロードできるほか、労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスを使えば、画面上でエラーチェックや添付漏れの注意喚起を受けながら入力できます。事前の登録は不要です。
(2)ストレスチェックの報告書を作成する
様式を入手したら、項目ごとに記入していきます。あらかじめ完成イメージを確認しておくと、記入ミスを防ぎやすくなります。
労働保険番号
労働保険料の納付に使用している労働保険番号を記入します。労働保険関係成立届や納付書で確認できます。
対象年
報告の対象となる検査実施年度を記入します。
検査実施年月
ストレスチェックを実施した年月を記入します。複数回実施した場合は、報告対象の実施回の年月を記入します。
事業の種類
事業場の業種(日本標準産業分類等に基づく分類)を記入します。
事業場の名称、所在地
報告対象の事業場の名称と所在地を記入します。本社一括ではなく、事業場ごとに作成・提出する点に注意してください。
在籍労働者数
報告時点で事業場に在籍している労働者数を記入します。
検査を受けた労働者数
実際にストレスチェックを受検した労働者数を記入します。
面接指導を受けた労働者数
高ストレス者と判定され、医師による面接指導を受けた労働者数を記入します。
検査を実施した者
ストレスチェックの実施者(医師、保健師など法令で定める者)の氏名を記入します。
面接指導を実施した医師
高ストレス者への面接指導を行った医師の氏名を記入します。
集団ごとの分析の実施の有無
集団ごとの分析を実施したかどうかを記入する欄です。労働安全衛生規則第52条の14では、次のように規定されています。
事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
集団分析は努力義務であり、実施していない場合はその旨を記入すれば問題ありません。集団分析の活用方法については、ストレスチェックの集団分析結果の活用方法の記事で詳しく解説しています。
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産業医の記名欄
産業医の記名欄です。前述のとおり、押印・署名は不要で記名のみで足ります。
事業者職氏名、提出先の労働基準監督署名などの記入
事業者の職名・氏名と、提出先となる労働基準監督署の名称を記入します。提出先は次の章で解説する「事業場を管轄する労働基準監督署」です。
(3)産業医に報告書を確認してもらう
記入が終わったら、報告書の内容を産業医に確認してもらいます。押印・署名が不要になった現在も、産業医への情報提供と内容確認という実務自体は継続しています。
確認の手間を「面倒だから省略する」という判断は避け、記入内容に相違がないかを産業医とすり合わせたうえで提出することが望まれます。最終的な判断が必要な場合は、産業医に相談してください。
ストレスチェックの報告書の提出方法・提出先・提出期限
報告書の提出先は、事業場を管轄する労働基準監督署です。複数事業場がある企業でも、本社一括では提出できず、事業場ごとに提出する必要があります。
提出方法には、直接提出・郵送提出・電子申請の3種類があります。
直接提出
事業場を管轄する労働基準監督署の窓口へ、記入済みの報告書を直接持参して提出する方法です。窓口で受付印を押してもらえるため、提出の記録をその場で確認できます。
郵送提出
報告書を管轄の労働基準監督署へ郵送する方法です。控えを保管したい場合は、返信用封筒を同封して控えへの受付印の押印を依頼するか、コピーを取ったうえで郵送してください。
電子申請(2025年1月から原則義務化)
2025年1月1日より、ストレスチェック結果等報告を含む一部の手続について、電子申請が原則の提出方法になりました。以前は選択できる方法の一つでしたが、現在は原則の方法という位置づけに変わっています。
労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます(厚生労働省)の案内では、2025年1月1日から電子申請が原則義務化される手続として、労働者死傷病報告、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告、定期健康診断結果報告、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告、有害な業務に係る歯科健康診断結果報告、有機溶剤等健康診断結果報告、じん肺健康管理実施状況報告の7手続が挙げられています。

(図:結果等報告の提出方法 2025年1月から何が変わった?)
(編集部作成)
一方で、労働安全衛生規則の附則(令和六年三月一八日厚生労働省令第四五号)第二条には、複数の関連規則とあわせて次のような経過措置が定められています。
第五条の規定による改正前の労働安全衛生規則第二条第二項、第四条第二項、第七条第二項、第十三条第二項、第五十二条、第五十二条の二十一、第百条(様式第二十三号に係る部分を除く。)、様式第三号及び様式第六号から様式第六号の三まで並びに第六条の規定による改正前の有機溶剤中毒予防規則第三十条の三及び様式第三号の二の規定の適用については、当分の間、なお従前の例によることができる。
このうち「様式第六号から様式第六号の三まで」にストレスチェック結果等報告(様式第六号の三)が含まれます。つまり、この報告書についても、当分の間は従前どおり書面での提出が認められています。この経過措置の終期は条文上明記されていないため、電子申請への切り替えを前提に準備しておくことが望ましいといえます。
他の労基署提出書類と混同しないために(産業医選任報告書との違い)
ストレスチェック結果等報告書と、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告書は、いずれも労働基準監督署へ提出する書式ですが、提出義務者・提出時期が異なる別の書類です。
選任報告は、選任すべき事由が発生してから14日以内に選任し、選任後は遅滞なく労基署へ報告する書類です。一方、ストレスチェック結果等報告は「一年以内ごとに一回、定期に」報告する書類であり、報告のタイミングが異なります。両者とも常時50人以上の事業場を対象とする点は共通していますが、選任報告書とストレスチェックの報告書を同じ書類だと思い込んで片方を提出し忘れる、という取り違えには注意が必要です。
産業医の選任報告書の書き方については、産業医選任報告書の記入例の記事で解説しています。
よくある質問
ストレスチェックの報告書の提出をめぐって、担当者から寄せられることが多い質問をまとめました。
- Q,従業員が50人未満の事業場でも報告書の提出は必要ですか?
- A
常時50人未満の事業場は、ストレスチェックの実施自体が努力義務であり、現時点では報告書の提出義務の対象外です。50人未満の事業場の実施義務については、常時50人未満の事業場とストレスチェックの記事で解説しています。
- Q,報告書の提出期限を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか?
- A
提出期限を過ぎてしまった場合は、速やかに所轄の労働基準監督署へ提出し、対応方法を相談してください。自己判断で提出を見送ると、未提出のまま罰則の対象になるおそれがあります。
- Q,作成した検査結果の記録はどのくらいの期間保管すればよいですか?
- A
検査を受けた労働者の同意を得て、その検査結果の提供を受けた場合、事業者は当該記録を5年間保存しなければなりません。労働安全衛生規則第52条の13第2項では次のように規定されています。当該検査の結果に基づき、当該検査の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
- Q,集団ごとの分析を実施していない場合、報告書にはどう記載しますか?
- A
集団ごとの分析は努力義務であるため、未実施であればその旨をありのまま記入して差し支えありません。実施の有無にかかわらず、正確に記入することが重要です。集団分析の活用方法は、ストレスチェックの集団分析結果の活用方法の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
ストレスチェックの報告書は、常時50人以上の事業場が年1回、労働基準監督署へ提出する法定の報告書です。準備の手間はあるものの、項目別の記入例や産業医への確認プロセスを押さえれば対応は可能です。2025年1月からは電子申請が原則の提出方法となった一方、当分の間は書面提出の経過措置も設けられているため、自社の提出方法を確認しておくことをおすすめします。
報告書の作成・産業医との確認・提出期限の管理まで、社内のリソースだけで対応しきれないと感じる企業も少なくありません。既存の自社体制や地域の産業医契約で十分に対応できている企業もありますが、既存の自社体制では対応が難しいと感じる企業にとっては、こうした実務を外部のリモート産業保健サービスに任せる選択肢が現実的です。
産業医と産業看護職の2名体制で、ストレスチェックの実施から報告書作成後の産業医面談まで一貫してサポートします。衛生委員会の支援にも対応しており、人事労務担当者様の実務負荷を軽減します。産業医の選任・交代をご検討中の企業様にもおすすめの1冊です。




