従業員から診断書が提出されたものの、産業医にどう確認してもらえば良いのか、そもそも産業医に診断書を頼めるのか、と手が止まっていませんか。診断書は診察をした医師が作成する書類で、産業医は診断書の内容などを踏まえ、意見書の形で事業者に意見を述べます。
ただ、書類の役割が分かっても迷いやすい点があります。たとえば診断書に「復職可能」とあっても、それは病状の回復の程度を見た判断であり、職場で求められる業務をこなせる状態とは一致しない場合があります。この記事では、診断書と意見書の違い、休職から復職までの書類の流れ、産業医への依頼範囲の決め方をご紹介します。
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この記事でわかること
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【1】診断書を作成する医師と、産業医が述べる意見書の違い -
【2】休職から復職までの各段階で、どの書類を使うか -
【3】診断書だけでは判断しにくいときの、主治医への情報提供の求め方 -
【4】診断書の提出や費用について、事前に決めておくこと
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診断書は診察した医師が作成し、産業医は意見書で事業者に意見を述べる
診断書は、患者を診察した医師が作成する書類です。産業医は、診断書などの内容を踏まえて、意見書の形で事業者に意見を述べます。
診断書が病状の面から本人の状態を示すのに対し、産業医の意見書は、職場の業務内容も踏まえて事業者が判断する材料になります。担当者が診断書だけで復職の可否を決めにくいのは、この2つの書類が見ているものが違うからです。
医師法第20条が定める診断書の交付の条件
診断書を作れるのは、診察をした医師です。医師法第20条は、医師が自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定めています。例外は、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合の死亡診断書です。
あわせて、同じ法律の第19条第2項は、診察をした医師が診断書の交付を求められたときに、正当な理由がなければ拒んではならないとしています。
この2つの条文が見ているのは、診察をしたかどうかという点です。診断書を誰が書けるかは、まず診察の有無で考えることになります。
主治医の診断書と産業医の意見書の違い
主治医の診断書と産業医の意見書は、作成する人、作成の目的、書かれる内容、使う場面の4点で役割が分かれています。診断書は診察をした主治医が書き、意見書は産業医が事業者に向けて書くものです。

(図:診断書と意見書の違い)
(編集部作成)
作成する人は、診断書が患者を診察した主治医です。意見書は、厚生労働省の職場復帰支援の手引きで、産業医等が作成するものとされています。
作成の目的も違います。手引きによると、主治医の診断書は、病状の回復の程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多いものです。一方の意見書は、産業医等が、職場復帰に関する意見と就業上の配慮などを記すもので、事業者が最終的な決定をするときの材料になります。
担当者が迷いやすいのは、この2つがずれるときです。診断書が示す病状の回復と、その職場で求められる業務をこなせる状態とは、一致しない場合があります。そのため手引きは、主治医の判断と職場で必要とされる業務の内容などを、産業医等が精査したうえで、どう対応するかを判断して意見を述べることが重要だとしています。
使う場面は、診断書が主治医による職場復帰可能の判断の段階、意見書が就業上の配慮などをまとめる最終的な決定の段階です。産業医は、主治医からの意見を踏まえたうえで、就業の可否の判断や、就業上の措置が必要かどうか、必要な場合はその内容について、事業者に意見を述べます。この内容は、厚生労働省の産業医ができることにも示されています。
休職の診断書を医療機関でどうもらうかは、休職の診断書を扱った記事で詳しく解説しています。
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産業医の職務として法令に定められていること
産業医が事業者に意見を述べられる根拠は、労働安全衛生規則と労働安全衛生法にあります。産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に、医学の専門知識が必要な事項として次の9つが挙げられています。
事業者への意見の根拠は、労働安全衛生法第13条第5項です。産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときに、事業者に対して労働者の健康管理などについて必要な勧告ができます。勧告を受けた事業者は、その勧告を尊重しなければなりません。さらに第6項により、勧告を受けた事業者は、勧告の内容などを衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければなりません。
産業医の意見は、職務の一部として法令に位置づけられています。産業医の勧告は、事業者が尊重しなければならないものとされています。
産業医の役割の全体像は、産業医の役割や面談を解説した記事で詳しく解説しています。
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面接指導の結果として医療機関の受診を勧める場面と紹介状の扱い
受診を勧める場面と紹介状の扱いは、厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルに記載があります。診断書とは別に、医療機関への橋渡しとして紹介状が出てくる場面を知っておくと、担当者が本人に説明するときに役立ちます。
マニュアルでは、高ストレス者への面接指導の結果によっては、専門の医療機関への受診を勧め、必要であれば紹介状を作成するとしています。すでに受診している人には、継続して受診するよう指導します。
また、面接指導による評価は、セルフケアの指導・助言と、専門の医療機関への受診を勧める必要があるかどうかを判定するにとどまり、うつ病などの診断を行うものではないと書かれています。受診を勧める判断と、診断をすることは、別のものとして扱われているわけです。
休職から復職までの流れと、各段階で使う書類
休職から復職までの流れの中で、診断書と意見書は別々の段階で使われます。厚生労働省の職場復帰支援の手引きは、職場復帰支援を次の5つのステップに分けています。
主治医の診断書が関わるのは、第2ステップの主治医による判断です。産業医の意見書は、第4ステップの最終的な決定の前に、就業上の配慮などをまとめるときに使われます。どの段階でどの書類が出てくるかを押さえておくと、書類を受け取ったときに何を確認する場面なのかを見失いにくくなります。
休職の相談から手続きまでは、産業医への休職の相談を扱った記事で詳しく解説しています。
復職の判断に使う書類と、産業医等による精査で確認すること
復職の判断は、診断書の提出、産業医等による精査、意見書、事業者の決定の順に進みます。このうち産業医等による精査では、診断書の内容を職場の業務内容と照らして確かめます。

(図:復職の判断に使う書類の流れ)
(編集部作成)
まず、従業員が主治医の診断書を提出します。この診断書は、病状の回復の程度から職場復帰の可能性を判断した内容であることが多く、その職場で求められる業務をこなせるかどうかまでを示しているとは限りません。
そこで産業医等が、診断書に書かれた主治医の判断と、職場で必要とされる業務の内容などを突き合わせて精査します。そのうえで産業医が、職場復帰に関する意見と就業上の配慮などを意見書にまとめ、事業者に伝えます。
意見書を受け取った後に、事業者が最終的な職場復帰の決定を行います。職場復帰の可否についての判断と職場復帰支援プランの作成を経て、事業者として最終的な職場復帰の決定を行うと、手引きに示されています。最終的な決定を行うのは産業医ではなく事業者です。意見書は、その判断を支える材料になります。
復職面談の進め方は、復職時の産業医面談を扱った記事で詳しく解説しています。
診断書だけでは判断しにくいときに主治医へ情報提供を求める方法
診断書の内容だけでは、職場で求める業務ができる状態かどうか判断しにくい場合があります。そのときは、主治医に情報を提供してもらえないかを、本人の同意を得たうえで求めることになります。
手引きには、主治医との連携に当たっては、事前に労働者へ説明して同意を得ておく必要があると書かれています。本人の同意なく主治医に連絡を取らないよう、順序を間違えないことが大切です。
主治医の意見を求めるときの書式には、厚生労働省の事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドラインに、主治医の意見を求める様式例として次のものが示されています。
このうち2つ目は、診断書と兼用できる様式として示されています。診断書の内容では足りないと感じたときに、新しく診断書を出し直してもらうのではなく、こうした様式を使って必要な情報を主治医に尋ねる方法があります。
休業期間などの定めは、就業規則などで整えておく
休業の期間など、休職の取り扱いに関わる定めは、会社の規則などにあらかじめ書いておくと、運用しやすくなります。そのつど個別に説明するより、行き違いを防ぎやすいからです。
職場復帰支援の手引きは、私傷病による休業の最長期間やクーリング期間を定める場合、あるいは最長期間が満了した後に雇用契約を解除する場合には、労使で十分に協議して決めたうえで、あらかじめ就業規則などに定めて周知しておくことが望ましいとしています。
背景として、2つの条文があります。労働安全衛生法第4条は、労働者に対し、事業者などが実施する労働災害の防止に関する措置に協力するよう努めることを求めています。労働契約法第5条は、使用者に対し、労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう、必要な配慮をすることを求めています。
労働者の協力と使用者の配慮は、どちらか一方だけで成り立つものではありません。診断書の提出を求める手順も、本人に協力を求める面と、会社が配慮を尽くす面の両方から整えておくと、双方が納得しやすくなります。
診断書の費用の負担は、診断書を求める前に決めて本人に伝える
診断書の費用を会社と本人のどちらが負担するかは、診断書を求める前に決めて、従業員に伝えておくと安心です。あとから費用をめぐって行き違いが起きるのを防げます。
費用の負担の考え方は会社ごとに分かれる部分です。そのため、診断書の提出を求める手順と合わせて、規則や案内文書に書いておくと、担当者ごとの対応のばらつきも抑えやすくなります。
産業医に意見書の作成を頼むときは、契約で依頼の範囲を決めておく
産業医に、診断書の内容を踏まえた意見を求めたいときは、産業医に求める内容を契約で定めておくと整理しやすくなります。厚生労働省の産業医ができることにある産業医契約書の例が参考になります。
契約書の例では、第2条第1項に産業医の職務が列挙されています。その中に、診断書その他に記された労働者の心身の状態の情報を解釈し、加工し、就業上の措置に関する意見を述べることが含まれています。事業者が産業医に依頼できる事項を挙げた項は別にあり、そちらは第2条第2項です。長時間労働者の面接指導、ストレスチェックの結果に基づく面接指導、職場復帰の支援をはじめとする治療と仕事の両立支援、労働者からの健康相談の4つが挙げられています。
診断書の内容を解釈して意見を述べることは、契約書の例では産業医の職務として整理されている、ということです。意見書をどの範囲まで頼むのかをあいまいにしたまま進めると、担当者が書類を受け取った後に困りやすくなります。契約を結ぶ段階で、どこまでを産業医に求めるのかをすり合わせておくのが良いでしょう。
現在の産業医の対応に不安がある場合は、依頼の範囲が合っているか、その範囲を契約でどう定めているかを見直す方法があります。見直しの結果として産業医を変えるときの手順は、産業医の変更の手順を扱った記事で詳しく解説しています。
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産業医と産業看護職の2名体制による支援で、産業医面談はもちろん、ストレスチェックや衛生委員会の支援など、人事労務担当者様の産業保健業務の負荷を軽減し、従業員の健康をサポートします。産業医の選任・交代をご検討の方にもおすすめの1冊です。
よくある質問
産業医と診断書について、担当者の方から出やすい疑問を3つ取り上げます。
- Q,診断書だけでは復職の可否を判断しにくいとき、産業医に意見を求めてよいですか?
- A
はい、産業医に意見を求めて構いません。診断書の内容は病状の回復の程度に基づくことが多く、職場で求められる業務をこなせる状態までを示しているとは限らないためです。
そのため、産業医が診断書に書かれた主治医の判断と職場の業務内容などを突き合わせて、どう対応するかを判断し、意見を述べます。
- Q,主治医に会社から情報提供を求めるとき、本人の同意は必要ですか?
- A
はい、事前に本人へ説明して同意を得ておく必要があります。職場復帰支援の手引きに、主治医との連携に当たっては、あらかじめ労働者に説明して同意を得ておくことが示されているためです。
同意を得たうえで、主治医の意見を求める様式例を使うと、必要な情報を尋ねやすくなります。
- Q,復職の可否は、診断書と産業医の意見書のどちらを基に決めますか?
- A
復職の可否を最終的に決めるのは、事業者です。診断書も産業医の意見書も、事業者が判断するための材料という位置づけになります。
診断書は主治医が病状の面から示した判断、意見書は産業医が職場の業務内容も踏まえて述べた意見です。事業者は、職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成を経て、最終的な決定を行います。
まとめ
診断書は診察した医師が作成し、産業医は意見書で事業者に意見を述べます。復職の可否を決めるのは事業者で、2つの書類はその判断の材料になります。
この流れをふまえ、次の3点を整えておくと、書類を受け取ったときの対応が落ち着いて進められます。
産業医の選任や選び方の基礎から確認したい方は、次のガイドブックも参考になります。
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